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2023-12-03 13:25

国際法雑感 イスラエルのガザ攻撃は正当化できない?

 先日、苺畑カカシさんの所(国際法専門家でも国際法違反行為を正確に判断できない理由)で知ったのですが、日本の国際法の専門家とされている東澤靖明治学院大学教授は、イスラエルのガザ攻撃は自衛権では正当化されないと言っていました。
 
 カカシさんはご自身のエントリーで東澤教授の講演動画を紹介してくださいました。 1時間半もある長い長い動画で、しかも非常に冗長な話ぶりなので、見ていて閉口したのですが、しかしカカシさんを見習って頑張ってみました。

 しかしワタシもカカシさん同様、釈然としないのです。
 そもそもイスラエルのガザ攻撃については、日本を除くG6諸国がイスラエルの自衛権を認めるとしています。
 それなのになぜ東澤教授は認めないと言うのでしょうか?

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 東澤教授はまず自衛権には限界があり、以下の条件を満たさなければならないと言います。

 ① 武力攻撃の存在
 ② 急迫性
 ③ 必要性
 ④ 均衡性

 これはわかります。
 国際法では自衛権を認めており、自衛のための戦争も認めています。 因みに自衛隊が憲法9条に違反しないと言うのも、この立場からです。 
 しかし「自衛のため」と称して、多くの侵略戦争が行われた事も事実なのです。 だから国際法でも自衛権の行使には色々と条件を付けているのです。

 そして東澤教授は、イスラエル軍のガザ攻撃はこの条件を満たしていないと言うのです。 それは以下の理由です。

 ① パレスチナ占領による急迫性の製の欠如。
 ② ハマス武装勢力を領域内から排除し急迫性は終了している。
 ③ 将来の攻撃やテロの可能性は必要性としては不十分。専制的自衛を国際検証は認めていない。
 ④ 「反撃」の行っている攻撃は明らかに過剰人質がとられていることは武力攻撃を正当化しない。

 箇条書きだけだとわかりにくいので、補足説明すると以下のような話でしょう。

 パレスチナは既にイスラエルが占領しており、ハマスはテロ攻撃の後直ぐに撤退した。 だからイスラエルの安全は確保されている。 この状態でガザを攻撃するのは、将来の武力攻撃やテロを布防ぐ為だと言える。 しかし国際法では将来の攻撃に備える為の攻撃は認めていない。 人質救出のための武力攻撃の理由にならない。

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 なるほど自衛権を厳密に解釈すればこの通りでしょう。
 しかしこれだと第二次大戦中、連合軍がドイツ領に攻め込んだ事も、国際法違反になります。

 第二次大戦はドイツ軍のポーランド侵攻から始まりまり、ドイツ軍はその後、ソ連やフランスなど周辺全域への侵略を続けました。
 この時、侵略された国々がドイツ軍と戦うのは、自衛権の行使です。
 しかし開戦後半年余りでドイツ軍は劣勢になり、占領地から撤退していきました。
 そして遂には全ての占領地を捨てて、ドイツ領内に逃げ込んだのです。

 東澤理論だと、連合国はここでドイツへの攻撃を止めるべきと言う事になりませんか?

 だってこの時点で連合国側は占領地からドイツ軍を完全に追い出して安全を回復していました。
 一方ドイツ側は戦力も国力も消耗し尽くしていました。 ドイツでは本土防衛の為に少年や病人を動員しなければならなかったのです。 胃潰瘍部隊とか結核部隊など、病人の部隊が作られいたのです。
 そして武器弾薬は勿論、食料まで欠乏して、飢餓が深刻化していました。
 
 この状態ではドイツがここからまた連合国側への侵略を再開する事は不可能です。 
 だから連合国側がこれ以上、ドイツを攻撃するとすれば、それはナチズムなどのイデオロギーを問題にしての将来のドイツの侵略に備えた攻撃、或いはドイツの侵略に対する報復の為だったとしか言えません。 
 これは勿論、連合国側の自衛権として正当化できません。

 で、東澤教授は連合国のドイツ領への進攻を国際法違反とするのでしょうか?
 なんかもう戦争の現実から完全にかけ離れた話としか思えません。

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 一方イスラエルの現実を見ると、ハマスもさらに言えば実はパレスチナ自治政府側も、オスロ合意以降も繰り返しイスラエルへのテロ攻撃を続けていました。

 オスロ合意後、世界中の国の殆んどが、パレスチナ自治政府を国家、或いは国家に準ずる地位を認めて、莫大な経済支援をしてきました。 
 ところがパレスチナ自自政府はこの状態でも、イスラエルへのテロをやめていません。
 そして今回のハマスのテロについても一切非難していません。
 
 このテロでは、純然たる観光客の外国人もになっていますが、しかしパレスチナ自治政府はこうした部外者を殺したテロリストにも報奨金や年金を与えているのです。
 アメリカ政府はトランプ政権時に、ユダヤ系でさへないアメリカ人青年がエルサレムでテロで殺された時、パレスチナ自治政府がこのテロリストに年金を払った事を知って、パレスチナ自治政府への支援を停止しました。
 しかし日本政府始め、世界中殆ど国はパレスチナ自治政府への支援をやめていません。

 「戦争ではない、唯のテロだ」としても、主権国家としてこのような形で常日頃自国民を殺害し続ける「敵国」を放置する事ができるのでしょうか?
 イスラエル側には自国民を守る権利はないのでしょうか?

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 こういうパレスチナ自治政府やハマスなど、イスラム側の対応を見ているとわかりますが、彼等はそもそもテロを悪いとは全く思っていないのです。
 また条約とか合意とかを守る意思が皆無です。
 勿論、国際法とかジュネーブ協定など、所謂国際的なルールを守る意思も皆無です。

 これは別に偏見でもヘイトでもありません。
 ハマスはその定款である「ハマス憲章」で、イスラエルを殲滅し、パレスチナの地をイスラム教の国にする事を定めています。
 ハマスに限らずイスラム過激派・テロ組織は、イスラム教の教理だけを人類が唯一従うべき規範と考えており、異教徒やイスラムに従わない者は、いかなる手段を使っても滅ぼすべきと考えているのです。

 そしてこれはイスラム教の教理その物でもあります。
 だからイスラム教の教理に従えば、イスラム教徒は異教徒へのテロや攻撃を支持しなければならないのです。
 だからハマスに限らず、パレスチナ自治政府もまた他のイスラム諸国も、ハマスのテロは非難できないのです。

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 イスラエルは今現在、こうした狂信と戦っているのです。
 これは国際法の起源を考えると大変興味深い話です。
 国際法の父、グロティウスが生まれたのは、宗教戦争でヨーロッパが血みどろになっていた時代です。
 宗教戦争はカソリック・プロテスタント双方が、「神の為」に戦いました。 だから自分の敵は神の敵、神の敵を倒す為なら、如何なる手段も許される事になります。 また神の敵に憐憫を抱く事は、許されなくなりました。

 その為、それまでの戦争のルールだった騎士道も放棄し、敵側の人間は誰も殺す、女も子供も全部殺す、しかもできるだけ残虐な方法で殺すと言う戦争になりました。
 だから宗教戦争はそれまでの戦争では、想像もつかなかった程に、酸鼻を極めました。
 
 この悲惨さを見て生まれたのが国際法です。
 戦争を止める事はできない。
 けれども戦争のやり方に一定のルールを作る事で、戦争が際限もなく悲惨になる事を防ごうではないか!!
 そしてこれは欧州と日本には広く受け入れられるようになりました。
 
 ところが今、イスラエルの敵はグロチウスの時代の宗教戦争の戦士なのです。
 スペイン国王カルロス二世やアルバ公爵みたいな連中なのです。
 そしてこの状態でイスラエル側にだけ非常に厳格な国際法の順守を要求しているのです。

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 こうなると東澤教授の高邁な国際法についての講演が、悪い冗談みたいにしか思えません。
 ワタシはむしろこした狂信者によるテロが頻発している状況では、国際法の在り方をもっと根本的に考え直すべきじゃないかと思います。
 
 これまで国際法が東澤教授のような高邁な理想を追っていられたのは、戦争の主役が欧米や日本のような騎士道や武士道の文化を持ち、狂信の時代は卒業した文明国だけだったからです。
 ところが今、こうした文明国の影響力はドンドン衰退しています。 
 一方、現実に狂信に駆られたテロリストがドンドン増殖しているのです。

 国際法専門家の側がこれに対応する意思がないのでは、ホントに国際法なんか絵空事になるのではありませんか?
 
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コメント

急迫性について

このエントリーを書いた時に書き忘れたことがあったのですが、ハマスは人質交換の一時停戦中以外はずっとロケットだんを毎日何百発とイスラエルにめがけて無差別に撃ち続けています。イスラエル領内に居なくてもイスラエル領内への攻撃の手を緩めていないのです。

しかも一時停戦中で人質解放中であったにも拘わらず、ハマスはまた停戦を一方的に破ってロケット弾を打ち始めました。すでにこれらの空爆によってイスラエル兵にも戦死者が出ています。

こういう戦争状態にあるのに、イスラエルに自衛する権利がないなんて、そんな解釈があるでしょうか?
  1. 2023-12-03 15:55
  2. URL
  3. 苺畑カカシ #-
  4. 編集

もう、ここまでサクッとハマスの没義道ぶりを無視することができるのを見ると、認識や解釈、意見の相違なんてものではなくて、「オマイラ、いったいハマス(またはその黒幕)からいくら貰ったんだ?」とマジで訊いてみたくなりますな。
  1. 2023-12-03 18:12
  2. URL
  3. 温泉猫 #-
  4. 編集

Re: 急迫性について

> このエントリーを書いた時に書き忘れたことがあったのですが、ハマスは人質交換の一時停戦中以外はずっとロケットだんを毎日何百発とイスラエルにめがけて無差別に撃ち続けています。イスラエル領内に居なくてもイスラエル領内への攻撃の手を緩めていないのです。
>
> しかも一時停戦中で人質解放中であったにも拘わらず、ハマスはまた停戦を一方的に破ってロケット弾を打ち始めました。すでにこれらの空爆によってイスラエル兵にも戦死者が出ています。
>
> こういう戦争状態にあるのに、イスラエルに自衛する権利がないなんて、そんな解釈があるでしょうか?

 ヤッパリ、そういう状態になっていたんですね。
 以前からハマスはイスラエルへのミサイル攻撃を続けていましたから、この戦争でやめるわけはないし、停戦などの協定も守るわけはないのです。

 そもそも最初から停戦協定などの約束の類を一切守る意思がなったのです。
 そういう連中を相手に国際法の話をすると、相手は一切守らない事を前提に、イスラエル側だけが違反を問われる事になります。
 
 これはフェアではありません。

 それで話がまるで警察の凶悪犯逮捕みたいな話になって、凶悪犯の悪行は問題にされず、警察側の態度だけを問題にされるようなそんな感覚になってしまうのです。
 これはイスラエルにとって非常に厄介ですね。
  1. 2023-12-04 10:06
  2. URL
  3. よもぎねこ #-
  4. 編集

Re: タイトルなし

> もう、ここまでサクッとハマスの没義道ぶりを無視することができるのを見ると、認識や解釈、意見の相違なんてものではなくて、「オマイラ、いったいハマス(またはその黒幕)からいくら貰ったんだ?」とマジで訊いてみたくなりますな。

 ハマスから何かを貰ったとは思えませんが、そもそも日本の左翼は日本赤軍のテルアビブ事件の頃から、無意味に反イスラエルでした。
 だからその感覚が日本の知識層全体に横溢しているのだと思います。
  1. 2023-12-04 10:08
  2. URL
  3. よもぎねこ #-
  4. 編集

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