イスラム諸国の元首は皆揃って、全面的にハマスを擁護し、イスラエルを非難するとしか読めないような声明を出していました。
またイスラム諸国の多くが金額の差こそあれ、ハマスなどイスラエルを攻撃するテロ組織に資金援助をしています。
こういうのを見ると、イスラム圏には全く部外者である日本人などは、イスラム諸国は反イスラエルに関しては一致団結してハマスなどテロ組織を応援していると思ってしまいます。
しかしどうもそうではないようです。
先日、飯山陽博士がYou tubeでサウジアラビアのテレビでのハマス幹部へのインタビュー番組を紹介していましたが、このインタビューをしたのはサウジアラビアの女性キャスターで彼女は「アンタ、赤ん坊や女性を殺すようなテロをやって、どういう心算だ!!」と強烈に突っ込んだと言うのです。
サウジアラビアのテレビ番組にベールなしで女性キャスターが登場すると言うのもビックリですが、その女性キャスターが強烈にハマス幹部を突っ込むと言うのも驚きです。
サウジアラビアの王家はワッハーブ派と言うイスラム教の中でも厳格で原理主義的な宗派の本家で、その権威で王家の独裁を行ってきました。
そういう意味ではイスラム原理主義に非常に近い国と思われてきたし、オサマ・ビン・ラディンなどサウジアラビア出身の大物テロリストもいました。
しかしこんな番組を放映するのを見ると、サウジアラビアの王家も実はハマスなどテロ組織を本心では迷惑しているのではないかと思います。
だってハマス等イスラムテロ組織の理想は実はISと同じで、イスラム教のカリフの独裁、ムハンマドがジハードを始めてアラビア半島を征服した当時と同じ政体を作る事です。
このカリフによる独裁は、ムハンマドが始めた制度ですから、イスラム教の教理、コーランやイスラム法などで定められた政治制度です。
しかしこんな政治制度による国家の建設なんて、現在現実に存在する国々の元首や政権幹部が認められるわけないでしょう?
政権幹部だけでなく、一般庶民だって「こんなの困る」でしょう?
ハマスはムスリム同胞団と言うイスラム原理主義団体から生まれたのですが、このイスラム同胞団は実は2011年の「アラブの春」の後、エジプトの政権を取った事がありました。
それまでムバラク政権は軍事独裁政権で、腐敗などの問題が一杯ありました。 だから「アラブの春」で「民主化」が進み、選挙をするとムスリム同胞団の政党が政権を取ったのです。
しかしこのムスリム同胞団って元々非常に過激な原理主義団体で、エジプト国内でもテロを繰り返してきました。
その標的もエジプト国内のコプト教徒など非イスラムのマイノリティ、スーフィなど主流派から離れたイスラム教徒、外国人観光客など様々です。
因みにイスラム原理主義者のテロ事件は発生件数も犠牲者数も、実はイスラム圏内の方が圧倒的に多く、欧米で起きる物はむしろ少ないのです。
勿論、原理主義に嵌るイスラム教徒は本来敬虔なイスラム教徒なので、戒律も厳格に守るし、また貧者への施しなども一生懸命する「立派な人」も多いのです。 また医師など高学歴者も多く、彼等を利用して貧者の為の無料の病院などを運営したりしています。
それで貧しい人々から賞賛されて支持されていたりもするのです。
しかしテロを頻発させるような原理主義者がマトモな政権運営などできるのでしょうか?
勿論できませんでした。
結局ムスリム同胞団の政権は一年で潰れました。
ムスリム同胞団の政権に不満がたまった所で、軍がクーデターを起こして潰したのです。
現在のエジプトのシシ政権は、実はクーデターでムスリム同胞団を潰した政権です。 だから現在エジプト国内ではムスリム同胞団は非合法化されています。
ところがこのシシ大統領も今回のハマスのテロについては、ハマスを非難していないのです。
しかしハマスは絶対に国内に入れたくないのです。 だからガザ地区から避難民もエジプトには入れたくないのです。 ガザ地区の住民を避難させると、必ずハマスが紛れ込んでくるでしょうから。
そもそもガザ地区はエジプト領でした。 ガザ地区はシナイ半島にくっついています。
シナイ半島全体が元々エジプト領だったのですが、3回の中東戦争でイスラエルに取られてしまいました。 しかし第4回中東戦争で取り戻したのです。
この時にイスラエルはガザ地区も一緒に返すと言ったのですが、エジプトは断りました。
エジプト政府にすれば断って大正解です。
だって第4次中東戦争の英雄サダト大統領も、イスラム原理主義者のテロにより暗殺されたのです。
それまでエジプトは三回の中東戦争でボコボコにイスラエルにやられる一方だったのに、サダト大統領が指揮する第4回中東戦争で初めてイスラエルに大損害を与える事ができました。
サダト大統領はこの勝利を梃にイスラエルと交渉して、奪われたシナイ半島を奪還したのです。
つまりエジプト最高の英雄だったのです。
それが暗殺されてしまったのは、領土奪還などの交渉を通じてイスラエルと和平条約を締結したからです。
???
そりゃ第4次中東戦争ではエジプトはイスラエルにかなりのダメージを与える事はできたけれど、だからって完勝したとかそういう話じゃないんですよ。
そういう状況で領土を奪還するには、相手国との交渉や和平条約は絶対必要でしょう?
でもイスラム原理主義者にすれば、イスラエルと交渉する事自体が許せないのです。 ただイスラエルと戦って海に追い落とす以外の対応はあり得ないのです。
それでイスラエルに勝利し、イスラエル相手に領土奪還交渉をし、領土を取り戻したサダト大統領を「絶対的に許すべからざる裏切り者」として暗殺してしまったのです。
もう、こんな連中だもの、現エジプト政権が辟易するのも当然でしょう?
こんな連中、一人たりとも余分に国内に入れたくないし、イスラエル軍がコイツラを殲滅してくれたら万々歳でしょう。
だったそう言えば良いのに・・・・・。
でも、それは絶対に言えないでしょう。
だってそんな事言ったら、今度は自分が暗殺されちゃうでしょうから。
エジプト現政権はムスリム同胞団を非合法化しているのですが、全滅させることなど不可能です。
そもそも「敬虔なイスラム教徒」がこのテロリズムの根源なのですから。
為政者として現実的に国民生活や安全保障などを考えたら、イスラム原理主義者どうしようもない厄介者です。
ましてテロなんて絶対放置できません。
しかしイスラム教と言うのは、イスラム諸国にとって「国体」の基本であり、国民倫理道徳の基盤でです。
そしてムスリム同胞団はじめイスラム原理主義団体やテロ組織の言動は、イスラム教理を実践しているのです。
だから本心では「この時代錯誤の厄介者共が!!」と思っても、絶対にそれは口には出せないのです。
因みにエジプトなど軍事独裁国家では、イスラム原理主義者の幹部等は問答無用でしょっ引いて投獄処刑したり、拷問にかけてボコボコにしています。
人権も糞もないやり方ですが、しかし裁判とかにかけて法廷で宗教問答になったりすれば「敬虔なイスラム教徒」達が大騒ぎをするから仕方ありません。
欧州諸国はこれまでそれを「人権侵害と」と非難していました。 そこでイスラム原理主義者者達を「難民」として受け入れてきました。
するとこの「難民」達は、受け入れ先でテロを扇動して、実際に欧州にテロが輸出される嵌めになったのです。
イスラム原理主義者側には「自分達の人権を守ってくれてありがとう」なんて発想はなかったわけです。
こういう連中を沢山抱えてているのがイスラム諸国です。
そういう事情を考えると、テロ組織に対する本音と建て前との間に凄い乖離が出るのも仕方ありません。
そして連中は本心では「テロリストは国内からは出ていけ。 どうしても暴れたいならガザ地区とかヨルダン川西岸に行ってくれ。」と思ってるんじゃないですか?
こう考えるとイスラム諸国がテロリスト団体を「支援」しているのもわかります。 支援金額は個人の感覚では莫大ですが、国家レベルでは目腐れ金だし、それで国内でテロを止めてくれるなら安いモノと言う感覚ではないのでしょうか?
コイツラに目腐れ金を与えていれば、サダト大統領みたいに暗殺される心配もないですから。