現在のところ一部が決壊しているだけですが、ノヴァカホフカダムはロックフィルダムなので、一部が決壊するとその後ダム全体に水が浸みこんで強度が落ちて、結局ダム全部が崩壊する恐れがあります。
ノヴァカホフカダムはドニエプル川を渡る橋と一体になっていてこの地図では「ノーバカホフカ」と書かれた所です。
ドニエプル川を渡る橋は限られているので、昨年3月のヘルソン陥落時もこノバカホフカダムの攻撃が心配されたのですが、しかしこのダムが崩壊すると大変な事になると言う事で、攻撃は免れました。
で、その大変な事ですが、まずダムの下流域一体が大洪水になります。
更にクリミアなどこのダムからの水の供給に頼っている地域で渇水が始まります。
そしてザポリージャ原発の冷却水も供給不能になります。
ロシア軍は前々からザポリージャ原発を占領しており、いわば原発を人質に取って立て籠っているような状況です。
これは危険極まりない話ですが、しかしプーチンはすでにザポリージャ原発の国有化に署名しているのですから、原発の破壊も含めて原発を駆け引きに使う気満々でしょう。
だからザポリージャ原発が戦争に巻き込まれて破壊される危険が、いよいよ迫ってきたという事です。
ザポリージャ原発は黒鉛炉ではないので、破壊されてもチェルノブイリのような猛烈な放射能汚染は起きないでしょう。 せいぜい福島第一原発事故を何倍かひどくした程度で済むと思われます。
ウクライナにとってそれよりも電力供給が問題になります。 ウクライナの総電力の5分の1がザポリージャ原発で発電されていたのです。
ロシアはこれまでウクライナの電力インフラ、特に変電所を攻撃する事で、送電を妨害してきました。 こうしたインフラ攻撃は国際法違反なのですが、それがいよいよ原発やダムなどにまでエスカレートしているという事でしょう。
勿論今の時点ではまだ、ノバカホフカダムの破壊がロシア軍であると言う証拠はないのですが。
ところで先日(6月4日)東京新聞に「ウクライナに兵器を供与し続けることが正義なのか 「停戦」を呼びかけた意見広告から考える」と言う記事が出ました。
問題の広告も東京新聞に掲載されましたから、東京新聞に掲載された広告を東京新聞が支持する記事を掲載しているのだから広告主への大サービスです。
しかしこの広告も記事も何とも奇妙です。
ロシアのウクライナ侵略戦争が際限もなくエスカレートして、遂には原発破壊の危機にまで至りました。
これは大変だ!! 早く戦争を終わらせるべきだ!! と言うのはわかります。
でも今、ウクライナへの武器供給を止めたら、ウクライナは一方的に侵略されます。 そしてウクライナを侵略し終えたら、次はポーランドやバルト三国などNATO加盟国が標的になります。
その場合はホントにNATO軍対ロシア軍と言う第三次世界大戦になります。
だからこの状況でウクライナへの武器供給を止める事が「正義」とは思えません。 むしろ本当の戦争拡大を防ぐには、ウクライナ軍により強力な武器を供給して、一刻も早くウクライナ領からロシア軍を撤退させるしかないのです。
それにしても奇妙です。
そもそもこの広告主は一体何で東京新聞なんぞにこんな広告を出すのでしょうか?
停戦呼び掛けるなら、ロシアの有力紙に広告を出して、ロシア軍のウクライナ領からの即時撤退を呼びかけるべきでしょう?
そうすれば戦争は直ぐに終わります。
広告主達の言うロシア側の感じる危機感って、実にオカシナなモノです。 だってこれまでだってNATO側はウクライナへの武器の供給だって、本当に消極的でドイツなんか最初はヘルメットしか送らなかったのです。
そして今もロシアの越境攻撃がある度に、NATO側が皆でウクライナを叱っている状態です。
NATO側は皆、こんな戦争をやって欲しくなかった。 ロシアとは仲良くして、安い石油や天然ガスを買い続けたかったし、ロレックス始め高級ブランド品をロシアで売り続けたかったのです。
ああ、それなのにプーチンの馬鹿がこんなことをやかすから・・・・・。
幾ら何でも自分の玄関口で侵略戦争なんてやられたら放っておくわけにはいかないのです。
それでも当のウクライナがアッサリ降伏するなら、ウクライナは見捨てて自分達で国防を固める気だったのでしょうが、しかしウクライナが頑張るなら頑張ってもらうのがベストだから支援を増やし続けたのです。
こういう現実を無視して、東大教授とか国際政治学者を名乗るような錚々たる知識人が揃ってこんな広告を出すって?
コイツラ一体何を期待しているのでしょうか?
ホントにそんなに戦争を止めたいなら、今から皆でバフムトかノバカホフカにでも行って、人間の盾になってきたらどうでしょうか?