しかし八重桜は散り、林檎の花も散って緑が深くなるばかりです。
気温も漸く20℃を超えて、初夏らしくなり昨日は半袖シャツだけで平気でした。
数日前から、ネットで平家物語の朗読を聞き始めました。 一段毎に前後に内容について簡単な解説があり、原文のリズムを生かした力強い声で、とても快いです。
こういう朗読を気楽に無料で楽しめるのは、本当にネットの恩恵です。
ワタシは中学生時代に平家物語に嵌ったのですが、その頃は原文を全編掲載している本さへ見つけるのは難しく、高校の古典の参考書ぐらいしかありませんでした。
その数十年後に、漸く全編掲載した文庫本を買ったのですが、今度はワタシの目がダメになって、買ってはみた物の読めませんでした。
で、平家物語とはずうっと疎遠になっていたのですが、少し前に偶々斎藤別当実盛の事を調べていて朗読を聞いたら凄く感動しました。
それでまた平家物語の朗読を祇園精舎から通して聴く事にしたのです。
実はそれまでワタシはツィッターで時間を潰していたのですが、ところが数日前にアカウント停止を食らいました。
ワタシのツィートは左翼の気に入らないらしく、前にも何度かアカウント停止を食らっています。
それでツィッターはずうっとやめていたのですが、イーロン・マスク氏の買収で少し状況が変わったようなので、また再開したのです。
しかしまたアカウント停止です。
それにしても左翼の連中って「通報」とか「告訴する」とか大好きですね。
自分で反論するとか、話し合うとかいう事は一切せずに「通報しました」「告訴する」です。
こういうの見るとわかりますが、彼等は全く反権力ではありません。
権力大好きなのです。
権力をバックに自分達の気入らない意見を封殺するのが大好きなのです。
彼等は権力を我が物にして自分が世界を支配したいのです。
彼等が反権力・反体制を叫ぶのは、現在の民主主義体制では主権者である国民が彼等に与えてくれないからです。
ワタシは社交的な人間ではない上、病身で無職ですから、交友関係は至って狭いです。
だから左翼など自分とは全く違う価値観の人間と親しく話して人となりを知る機会は殆どありません。
尤も社交的で友人知人の多い人でも、政治的な話をする機会は少ないだろうし、そういう話の中で率直な意見を聞く機会はもっと少ないでしょう。
だからツィッターのようなツールは貴重でしょう。
しかしこれで無限に時間を使うのもね・・・・・・。
と言うわけで暫くツィッターは止める事にしました。
そしてそれでツィッターで潰していた時間を平家物語に充てる事にしました。
それにしても斎藤別当実盛に感動するなんて・・・・・。
斎藤別当実盛の最後は平家物語でも有名な段で、中学の時に読んで覚えているけれど、あの頃は普通に読み飛ばしました。
だから少し前に斎藤別当実盛の件を調べた時だって、特に実盛の人となりを思っての事ではありません。 でも実盛を検索して平家物語の原文にあたり、朗読を聞いてみると凄く感動しました。
実盛は最後の戦に出た時、髭と髪を墨で黒く染めていていた事で有名なのですが、しかしその心意気は以下のようなモノでした。
六十に余っていくさの陣へむかはん時は、びんぴげを黒う染めて、わかやがうど思ふなり。其故(そのゆゑ)は、若殿原(わかとのばら)にあらそひてさきをかけんもおとなげなし、又老武者(おいむしや)とて人のあなどらんも口惜(くちを)しかるべし。
当時の平均寿命を考えると60過ぎは完全な老人です。
当時の大鎧は総重量が30キロ前後もあり、現代人も60過ぎの人がこんなものを着て行動をするのは厳しいでしょう。
しかし実盛は出陣し、そして若い敵に討ち取られました。
その首が木曽義仲の前に差し出されたとき、実盛と知り合いだった義仲の側近が、この実盛の髪や髭が黒い理由を話すのです。
この段では実盛が実は義仲の幼少期に、義仲の命を助けた恩人である事など、その他実盛の人となりを示す逸話が色々と出てきます。
実盛は当時として中級武士でした。 こういう立場の武士は、特定の君主に使えていたわけではありません。
実盛最後の戦では、平家方についていました。
そして篤実な人柄とベテランである事から、平維盛の信頼を得ていました。
実盛がこの戦に出陣の為に錦の直垂を着たいと言うと、平維盛は彼に錦の直垂を与えています。 つまり実盛は自前では錦の直垂を買う事の出来ない身分だったのです。
平維盛は富士川合戦の時の総大将でした。 そして当然、実盛も同行したのです。
しかし平家の軍勢は水取りの羽音に驚て逃亡してしまいました。
ベテラン実盛もこの時はどうしようもなく、戦わず逃亡するしかなかったのでしょう。
実盛はこの恥辱を晴らす為に、この次の出陣で討ち死にする覚悟をしていたのです。
それにしても実盛に錦の直垂を与えた事は、維盛の人柄を表しています。
平家物語の魅力はこうして平家方も源氏方も、またそれ以外の登場人物を実に多面的に描いていくことです。
そして戦いの中で武士達がみせる人となりのゆかしさには本当に感動します。
しかし斎藤別当実盛に大感激するようになったのは、要するにワタシが実盛と同年配になったからでしょうね。
中学生では実盛の心意気を理解できなかったのです。
それにしても優雅な戦争なのです。 平家物語もそれに先立つ保元物語や平治物語でも、非戦闘員が戦争に巻き込まれると言う話は、一切ありません。 あくまで武士だけが名乗りを上げて戦うのです。
平治の乱で源義朝が敗北して敗走するとき、義朝方の武将が戦見物をしている街人達に駄賃を渡して、自分が取った首の番をするように頼んだりしています。
市街戦の最中に街の住民達が、街に残って戦争見物をしていたのです。
近代以前でも、ヨーロッパなど大陸では、戦争となると街の住民全てが城壁の中に立て籠り、負けたら全住民が虐殺されたり奴隷にされたりでした。
だから日本人は古代から戦争に対する感覚が完全に世界とはずれているのかもしれません。
そういう事を色々思い合わせても、平家物語はオモシロイです。
朗読の方は昨日で漸くまた実盛の最後を聞いたところです。 だから壇ノ浦まではまだしばらく楽しめます。
ツィッターのアカウントはどうなるかわかりません。 しかし聴きたい古典朗読は他にも色々あるし、それに明日の午後には新しい眼鏡もできるので、当面ツィッターが無くても困りません。