これはチョッと驚きのニュースです。
元外国籍であることを理由に入会を断られ精神的苦痛を受けたなどとして、三重県桑名市の40代男性が愛岐カントリークラブ(岐阜県可児市)に対し、慰謝料など約330万円の損害賠償を求めた訴訟で、津地裁四日市支部は19日、男性の請求を棄却した。私的団体であるゴルフクラブが元外国籍であることを理由に入会を拒否することに違法性はないと判断した。男性は控訴する方針。
判決によると、元韓国籍で2018年に日本国籍を取得した男性は22年2月、知人と同クラブでプレーし、入会を申し込んだ。その後、クラブ側から「元外国籍を含む外国籍の会員の枠に空きがないためすぐに入会することはできない」として入会を断られた。男性は「法の下の平等」を定めた憲法14条に抵触する、などと主張していた。
判決理由で升川智道裁判長(日比野幹裁判長代読)は、「元外国籍であることが入会拒否の唯一の理由ではない」というクラブ側の主張を退け、入会拒否は元外国籍であることが理由だと認めた。一方で、クラブは会員となるために正会員2人の紹介と理事会の承認を得る必要があるなど「会員同士の人的つながりが強い閉鎖的かつ私的な団体」だと指摘。「平等の権利への侵害の程度は憲法の趣旨に照らし、社会的に許容しうる限界を超えるとは認められない」とした。
原告代理人の尾市淳二弁護士は「非常に残念。時代の流れとも逆行する」と話した。男性は「まったく納得できない。差別を受け精神的苦痛を受けることも私的団体内であれば許されるのか」と述べた。【寺原多恵子】
原告男性は元在日コリアンでしたが、日本国籍を取得していました。
しかしゴルフ場側は元外国人である事を理由に入会拒否をしました。
入会拒否の理由が元外国籍だったことは、裁判所も認めています。
しかし裁判所はそれでも「会員同士の人的つながりが強い閉鎖的かつ私的な団体」「平等の権利への侵害の程度は憲法の趣旨に照らし、社会的に許容しうる限界を超えるとは認められない」として原告敗訴になりました。
因みに2002年にも同様の裁判があって、最高裁でも原告が敗訴しています。
2002年 ゴルフダイジェスト社
おそらくこの判例が影響したのでしょうね。
ここでも津地裁の判決と同様、ゴルフ場側の結社の自由が重視された形です。
理論的には当然の判決だと思います。
会員制ゴルフ場始め、会員制クラブなどは、会員になるのに所得制限、他の会員から紹介が必要などの条件を課しています。
法の下の平等を言えば、こうした条件だって憲法違反です。
さらに言えば、会員と会員以外の客で、料金やクラブハウスの使用などに差をつけている所もあります。
これだって法の下の平等に反します。
しかし会員の「質」も選べない、まして会員と会員以外で待遇の差もつけられないとなると会員制のゴルフ場やクラブなど存在できないのです。
むしろ会員制のクラブのような物に、法の下の平等を強制する事自体がオカシイとしか言えません。
そんなことをしたら「結社の自由」など吹き飛んでしまいます。
法の下の平等を守る為に、結社の自由がなくなれば、政党や政治団体、宗教団体のような物でも、構成員を選べない事になり、こうした団体は存続できなくなります。
そしてそうなると民主主義その物が存続できないのです。
自由と平等は民主主義の根幹ですが、しかし残念だけれど両立は不可能です。
全体の状況を見て、お互いが折り合う所を探すだけです。
ゴルフ場と言うのは、唯の娯楽施設だし、しかも会員にならなければ生活に困るわけでもない、だからゴルフ場側の結社の自由が法の下の平等に優先したのです。
尤もワタシはチョッと以外でした。
とりあえず「差別が~~!!」と喚けば、自由権が蹂躙される例ばかり見ていましたから。
ゴルフ場会員の問題での裁判について解説しているサイトがありました。
ワタシとしてはここに出てくる性同一障害による入会拒否で、ゴルフ場側が敗訴した方が気になりました。
Hカントリークラブ事件(東京高判平成27年7月1日)
B氏は、性同一性障害により男性から女性へ性別変更しており、これを理由に入会及びゴルフ場経営会社の株式譲渡承認を拒否されました。
そこで、B氏は、Hカントリークラブとゴルフ場経営会社に対して慰謝料等の支払いを求めて訴えを提起しました。
クラブ側は①性同一性障害者(性転換者)の入会は、会員(特に女性会員)がロッカールーム、浴室等を使用する際などに不安感を抱き、クラブ競技の出場資格などに疑義を生じ、親睦、交流のクラブ目的に反する結果となる、②50年以上皆で築いてきたクラブの親睦、交流の一体感を傷つけたくない等と主張しました。
しかしながら、裁判所は、性同一性障害が本人の意思に関わりなく生ずる疾患であることが社会的にも認識されており、被告らが構成員選択の自由を有することを考慮しても、憲法14条などの趣旨に照らし、社会的に許容しうる限界を超え、違法であると判断し、原審の静岡地裁浜松支部、東京高裁ともに、慰謝料100万円、弁護士費用10万円の損害を認めました。
本件は、医学的疾患である性同一性障害が問題となった特殊な事例であって、①B氏が戸籍のみならず声や外性器を含めた外見も女性であったこと、②B氏が女性用の施設を使用した際特段の混乱等は生じていないことからすれば、被告らが危惧するような事態が生じるとは考え難いこと、といった事情が影響したものであって、一般化することは困難であろうと思われます。
女性としたら外国人の男性が入会するより、性適合手術を受けて戸籍変更をしていても、前は男だったとわかっている人と更衣室や浴室で一緒になる方が嫌です。
前は男性だったと知らなければ気にならないけれど、男性だったことを知ってしまえばやっぱり違和感はあります。
だから女性会員の気持ちを尊重して、入会を拒否したゴルフ場側の対応が当然だと思うのです。
但しこちらは「法の下の平等」が優先して、原告が勝訴しています。
こうした裁量の基準はどこにあるのでしょうか?