少し前から町内のあちこちで除雪作業をしているのを見かけるようになりました。
大型のロータリー除雪車、ブルドーザー、さらに雪を運ぶ大型ダンプカー数台がチームを組んで、道と道の両側に溜まった雪を、ブルドーザーに積んで排雪場まで持って行って捨てるのです。
国道・道道・市道などは、国・道・市が除雪をします。
これは凄く大変な作業で、ある程度の雪が降ると夜中でも除雪チームが出動します。
お陰で余程の大雪でない限り、車の通行には差し支えません。
しかしそれでも2月ぐらいになると、道の両側に雪の山ができてきます。 特に住宅街の中の間道などは、除雪車が雪を片側に寄せるだけなので、2月ぐらいになると道幅が元の半分ぐらいになり、両側には高い雪の壁がそびえるようになります。
幹線道路でもやはり歩道と車道の間に、除雪しきれなれない雪の山ができて、これが高い壁のように連なり、車道を狭めます。
それで2月過ぎぐらいからこうした雪の排雪作業が始まるのです。
これは各町内会がやっています。 費用も町内会で出します。 前にワタシが住んでいた所の町内会では、毎年町内会費とは別に除雪費を集めていました。 戸建てが3000円、集合住宅が1500円でした。
今現在住んでいる所では、除雪費は集めておらず全部町内会費から出ています。 にも拘らず除雪は完璧で「ヒョッとして札幌で一番除雪の完璧な町内会」と思える程です。
ワタシのアパートの大家さんによると、これは町内会で資源ゴミの回収を頑張っていて、その収益を除雪費に充てているからのようです。
実際、資源ゴミの回収システムが前にいた所の町内会に比べて非常に合理的で、資源ゴミを出しやすいし、回収もしやすいのではないかと思います。
また前の町内会がやっていた町内会のバス旅行のような行事もやっていません。 前の町内会ではこのバス旅行に随分と会費を使っていたようでしたから。
因みに札幌最悪なのは、北海道神宮の裏参道周辺のようです。
ここは町内会が全く機能しないのか、この2月の排雪作業が全く行われていないようなのです。
それで去年の大雪の時には、北一条通りの壮大な雪山ができて、道幅がせばまり、道全体がスノーボードのハーフパイプのような有様だったそうです。
お陰で車が通れるのは、このハーフパイプの底だけになりました。 勿論ハーフパイプの周辺は大渋滞になりました。
こんな為体ですが、しかしこの辺りは実は札幌でも最高級のマンション街です。
この辺りは元々は瀟洒なお屋敷町だったのですが、バブルの頃からこのお屋敷がドンドンマンションに化け始め、今は全部マンションです。
しかもこの辺りのマンションは凄く高いのです。 同じ宮の森でも、このハーフパイプ周辺だと値段が倍になるのです。
そんなマンションを買える金持ちばかりが暮らしているはずなのに、除雪一つ満足にできないのは、住民がマンション毎に分裂していて、マンション街を貫く北一条通りの除雪の面倒を見る町内会の機能が死んでいる・・・・、あるいはそもそも存在しないからでしょう。
オマイラ、金持ちの癖に何で満足に除雪もできないんだよ?
周りを大渋滞させて平気なんだろうけど、こんなんだと消防車も救急車も来てくれないぞ!!
逆に我が家の辺りの除雪が完璧なのは、町内会がしっかりしていて、こういう町内の環境維持には、しっかりと気合を入れているからでしょう。
町内会で役員等をして頑張っているのは、大体、うちの大家さんみたいな昔ここに入植した開拓農家の子孫で、この辺りの地主さんたちです。
で、この人達は今も町内に広い土地をもっているし、またうちの大家さんのように持っていた土地にアパート等を建てて不動産経営をやっています。
だから町内の環境を良くしておくことは、自分達の土地の価値や資産の維持にも非常に重要なのです。 それで除雪その他にも一生懸命なのでしょうね。
町内の環境をよくしたいと言う事ですから、保育所の誘致その他の陳情をやっているのもこうした地主さんたちだと思います。 だから地元議員との関係も深いのでしょう。
その為かこういう地主さんの豪邸には、自民党の看板が立っているのよく見かけます。
これは陳情を実現してもらう為には、与党との関係が絶対に必要だからでしょう。
つまり町内会って日本の民主主義の最小単位なのです。
でも町内会の仕事ってホントに面倒だと思います。
ワタシは店子なので町内会費を払うだけで、ホントに何もしなくていいから、ラクチンその物です。
しかし役員になれば資源ゴミを集めるシステムを作り、回収業者と契約したり、また除雪の為に土建屋と契約するなどの実務は結構面倒じゃないかと思います。
自腹でも大変だけれど、町内会費から出すわけですから、業者の選定や値段だって、他の会員の了承が必要ですし。
市議会議員への陳情その他の仕事だってあります。
しかもこれらの仕事は完全に無償です。
逆に言えばこういう事を進んでやるなんて、余程町内の繁栄が自身の利益と一致しなければ、また町内会に対する余程の愛着がなければできる事じゃないでしょう?
だから結局一生懸命、役員の仕事をやるのは、元々の開拓農家の子孫だった地主さんたちばかりが役員になると言う事になてしまうのです。
こういうの見ていると、中世の共和制国家と同じではありませんか?
フィレンツェやヴェネツィア、或いはハンザ同盟都市などで、参政権をもって市政で権力を振るったのは、実はそれぞれの都市の老舗の当主かその親族だけでした。
住民の多数は市民権さへなかったのですが、しかし今の町内でのワタシの立場を考えると、それで済んでいたのも凄くわかります。
だって家賃を払うだけなのに、態々面倒な仕事を引き受けたくないわさ。 面倒なら引っ越せば済む話だし。
但しこれはワタシが所属してきた町内会が、結構な規模で、ワタシと同様の立場の住民、つまり中世都市なら「市民権」もない住民が凄く多かったから言える事かもしれません。
前の町内会は実は会員が3000人もいたし、今の町内会だってそれに匹敵する規模です。
これは実は中世なら立派に都市と言えるレベルです。
しかしこれが都市でなくて農村レベルならそうもいかないでしょうね。
だからこういう話が出てくるのでしょう。
そもそも人口の少ない農村なら、村内の神社・道路・用水路などの管理を村民の手で行ってきました。
これもホントに草の根の民主主義なのですが、しかし当然これを何百年も続け来れば、住民の結束は非常に固くなるでしょうし、色々なしがらみも出て、余所者が入り込むと大変な目に遭う事は想像できます。
しかしこの面倒と引き換えに、村民の権利を強固に守っているとも言えます。
因みに小規模村落の町内会と同様に面倒なのが、マンションの管理組合です。 何しろ苦労してローンを払い続けているマンションの価値を住民皆で話し合って維持していかなければならないのですから。
しかも伝統的な村落なら村中の人と先祖代々気心が知れているのですが、マンションの住民はマンション購入までは全く見知らぬ人同士なのです。
そういう間柄で管理費、修繕積立費など相当な金に対する問題を議論していかなければならないのですから、想像を絶する面倒さです。
ワタシはここに引っ越す前にマンションを買う事も考えたのですが、こういう事を思うとやっぱり買わなくて大正解でした。
逆に自治会も町内会もない武蔵小杉って、さしあたりは快適でしょうが、しかしそういう街って、実はマトモに民主主義が機能していなくて、ヘンな外国人優遇条例が出てきた李するんじゃないですか?
民主主義はやたらに金と手間がかかる制度です。
そして手間と金が元で起きるもめ事は話し合いで解決ですから、解決するどころか人間関係がグチャグチャになって、大変な事になる場合もあります。
自分の権利を自分で守るって、そういう事じゃないですか?
これを理解しない限り、民主主義を理解する事はできないし、民主主義を守る事だってできないのです。
ワタシは戦後生まれですから、戦後民主主義の教育しか受けていません。 戦後民主主義の教育では、民主主義って何から何かまで権利が保障され、自分の思いが叶い、面倒なしがらみなどは封建的と切り捨てきました。
でも西洋史、特にフィレンツェやヴェネツィア、或いはハンザ同盟都市や古代ギリシャやローマなどの歴史を学べば、実はそんな夢の世界ではない事がわかります。
むしろ数々しがらみに感情問題が絡んだでギンギンギラギラ人間関係がこじれにこじれると言う世界です。
それでも頑張り続けた事で民主主義は守られるのです。
それを思うと、日本で民主主義が根付き、育ち続けたのは、実は町内会や自治会などのが民主主義の最小単位として、きちんと機能し続けたからではないかと思うのです。