昨年9月末からプーチンは予備役兵に大量動員をかけて、現在その兵士達の一部をバフムト周辺の攻撃に使い、連日物凄い戦死者を出している状態です。
それで兵士がドンドン減っているので、プーチンはさらなる動員をかけると言う噂が流れています。 昨年9月末の動員は30万人でしたが、今度は150万人動員すると言うのです。
そしてこれまで徴兵対象から外された博士課程の学生や、子供の三人いる父親まで動員すると言うのです。
博士課程とか子供が三人いる父親って、大多数は30歳前後で、これは社会人として、また研究者としては最も重要な人材ではありますが、兵士としては体力不足今一です。
そういう人達を戦場に送り込み、大砲の餌食にして、ウクライナの畑の肥料にしようと言うのです。
これはもう戦争も末期的としか言えない話です。
どうやらプーチンはこの戦争を総力戦に持ち込む心算のようです。
戦争は攻め込む方が、攻められる側の3倍の兵力が必要と言われます。
ウクライナの総人口は4000万人、ロシアの総人口は14600万人です。
つまりロシアの人口はウクライナの3倍強、だったら動員できる兵士の数はロシアがウクライナ3倍です。
現在ウクライナはすでに総力戦に入っています。
だからロシアも総力戦にすれば、ウクライナに勝てるだけの兵力を動員できて、ウクライナに勝利できるとでも言う心算でしょうか?
だったら最初からこれで行くべきでした。
でもプーチンは最初は「特殊軍事作戦」なんて奇妙な言葉を使い、この戦争を「戦争」と言ったロシア人やロシアのメディアを処罰していました。 今もまだ「戦争」とは言っていません。
結果、この戦争は「兵力の遂時的投入」と言う、一番まずい状況に陥っています。
「兵力の遂時的投入」って、最初に戦争になった時に、兵力を出し惜しみ、それで負けるとチョッと補充して、また負けるとまたチョッと補充するのを続ける事を言うのです。
こうなると敵側は敵を少しずつ確実に撃破できるので、ウクライナのような小国からすると凄く有利です。 何しろ小国なので一度にドサッと来られると対応不能なのですが、時間をかけて少しずつ来るのだから、一度に全部対応しなくて良いのです。
一方ロシアの方からすると、小分けにして送り込んだ兵士が、その都度やられてしまうと言う無残な結果になっています。
プーチンがこんな馬鹿な事をしたのは、ウクライナ軍がここまで頑張るとは思っていなかったからでしょう。
プーチンは昨年2月24日にウクライナに侵攻した時に、数日でウクライナが降伏すると信じていたのでしょう。
そしてそれが失敗した時の事は何も考えていなかったのではないでしょうか?
まあ、それも道理だと思います。
ロシアのウクライナ侵略戦争直前の世界軍事力ランキングでは、ロシアは世界2位、ウクライナは22位です。 戦闘機や戦車の数はロシアより一桁少ないのです。
だからアメリカのミリー参謀長だって「ウクライナは72時間で降伏する」なんて言ったのです。 そしてバイデン大統領はゼレンスキーに「逃亡の為の飛行機を提供する」と言いました。
ところがゼレンスキーがこれを断り「自分はウクライナで戦う」と言った事で、プーチンのプランは全部ひっくり返りました。
これはプーチンにとっても、バイデンやショルツなど西側首脳にも驚天動地だったでしょう。
これで彼等の予想が全部ひっくり返りました。
思うに彼等の予想では、ここまで状況が絶望的なら、ゼレンスキーはバイデンの提供する飛行機に乗ってウクライナを逃げ出し、そうなるとウクライナ軍は自動的に崩壊し、ウクライナはそのままロシア領になったのです。
で暫く適当にNATO側がロシアを非難していれば、「世界は平和」だったのです。
ところがゼレンスキーはここで逃げる事は考えず、腹を決めて徹底抗戦の指揮を執ると言い出したのです。
実際、彼はその後キーウ市内や、危険な前線に出て、ウクライナ軍とウクライナ国民を鼓舞し続けているのです。
これって西洋史上、非常に稀有です。
日本史だと君主が最後まで戦って、城を枕に討ち死にとか、更には自身と親族の命と引き換えに臣下の除名を嘆願して、家族一同自決したりすることが普通にあります。
でも西欧史ではそういうのないんですよね。
キリスト教が自殺を禁じているからか、君主やリーダーは自身の命が危険になればとりあえず逃げるんです。
逃げて自身の安全を確保してから、残って戦う人達を指揮するのです。
だからゼレンスキーがあの状況で、逃亡を拒否、徹底抗戦を宣言したことのインパクトは日本人が想像するよりはるかにすごかったんじゃないでしょうか?
これでウクライナ人のコサック魂に火がついてしまい、これがプーチン始め西欧指導者の思惑を全部ひっくり返したのです。
こうなったらバイデンら西欧の指導者もウクライナを支援せざるを得ません。
だったらもうプーチンはこれで観念して引けば良いのですが、しかし彼にはそんな決断力はできないのでしょうね。
だってここで引いたら「なんでこんなことをやったんだ?!! 馬鹿!!」と言われて、失脚するしかないですから。
で戦争はウクライナ優勢で現在に至り、でもウクライナ側もロシアへの止めが刺せない。 止めを刺すにはまとまった数の戦車が必要なのですが、それも優秀な戦車が必要なのですが、なぜかそれをドイツが出し渋り続けているのです。
ウクライナはロシア軍をウクライナ領から追い出す為に、ソ連製ではなく、ドイツ製の戦車レオパルト2を300両前後欲しいと言っています。
何でレオパルト2かと言うと、これは戦車として非常に優秀であり、その為NATO加盟国の戦車の殆んどがレオパルト2なので、この戦車はNATO加盟国全体で2000~3000両もあると言われています。
だからここから300両程ウクライナに供与するのは至って簡単なのです。
イギリスのチャレンジャーとかアメリカのエイブラムはここまで沢山はなく、戦車隊として行動するには、あんまり色々な戦車が混ざるとメンテナンス等が面倒になるばかりで大変みたいです。
だから最初から数が揃い、性能の抜群のレオパルト2が欲しい!!
ところがドイツがNoin!!と言うのです。
ドイツが外国にレオパルト2を売った時の契約で、売った先の国から別に国に渡す時には、ドイツの許可が必要と言う事になっているのです。
ところがドイツはその許可を出さずに頑張っているのです。
何で?
これについてロシアが負けた時に、ドイツのせいにされるのが嫌と言う説があります。
ドイツはロシア敗戦後もロシアとは良好な関係を維持したいので、ロシア敗戦後「ドイツが戦車を出したからオレタチは負けた」と言われたくないと言うのです。
また第二次大戦時のトラウマが原因ともいいます。
でもこれも不可解です。
だってポーランドやバルト三国などは、ウクライナの勝利を切望しています。 ウクライナが敗戦し、ロシア領になれば次は自分達がロシアと国境を接してロシアに脅かされるからです。
ウクライナ勝利後、ドイツは「ドイツが戦車を出渋ったので大変な苦労をした」と、これらNATO諸国とそしてウクライナから恨まれても良いのでしょうか?
それに第二次大戦時にはドイツは、ポーランドやチェコなど東欧諸国にも大変な惨禍を齎しました。 それなのにロシアには配慮するけど、これら東欧諸国に配慮しないってオカシイでしょう?
それにこんなことしちゃうと、今後、これらの国々はドイツ製の武器を買うのをためらいますよ。
ドイツにとってはこれ非常にまずくないですか?
これだったら、日本が90式戦車か10式戦車を提供すれば、戦後ヨーロッパの戦車市場をドイツから奪えるかもしれません。
だからドイツの戦車出し渋りは、全然納得できません。
そしてワタシはそもそもこの戦争の引き金を引いたのは、ドイツの脱炭素・脱原発だったと思っています。
この戦争の前に、ドイツは脱原発・脱炭素で、自国内の原発を廃炉にし、炭鉱も閉鎖する事が決まっていました。
それで必要なエネルギーは一部はフランスの原発から買うのですが、しかし大部分をロシアの天然ガスに依存する事になっていました。
ロシアの天然ガスはパイプラインで来るので、価格も安く、非常に使い勝手も良かったのです。
しかしパイプラインって、向こうが弁を閉めたら終わりでしょう?
つまりドイツはロシアにエネルギー源を全面依存したのです。
これではプーチンから見ればドイツの首根っこをつかんだ、ドイツの生殺与奪はロシアが握ったと思って当然でしょう?
だったら多少の事をやってもドイツが逆らう心配はないのです。
プーチンはNATO最大の大国を抑え込んだのだから、安心してウクライナに侵略できると思うのは当然でしょう?
実際ドイツは今もプーチンに首根っこを抑えられているとしか思えない言動を続けているわけだし。
でもレオパルト2は現実にはドイツではなく、既にポーランド他NATO諸国にあるわけで、いよいよとなれば所有国がみんな揃ってドイツとの契約を無視する事も十分あり得ます。
ウクライナ兵への訓練などは既に始めているんじゃないですか?
しかしこれでレオパルト2の大軍が揃い、ロシア軍をウクライナ領から追い出しても、戦争が終わらないかもしれません。
ロシア軍がすべてウクライナ領が放逐されても、ロシアが変わらない限り、ロシアはウクライナの領有権を主張して、ロシア領内からミサイル等でウクライナへの攻撃を続ける可能性が高いと言うのです。
そうなったらどうなるのか?
本当に厄介です。
こうなったらウクライナがイスラエルになるわけですが、しかしそれも想定せざるを得ない状況です。
ホントに厄介です。