しかしこれは余りと言えば余りに悪質なケースです。
11月1日の参議院厚生労働委員会で、維新の会の東徹議員の質問です。
生活保護受給者の医療費は全額国庫負担で、当人は全く支払う必要がありません。
生活保護受給者の中にはこれを利用し、多数の医療機関を受診して、抗精神罪や睡眠薬などの薬物を大量に処方してもらい、それを薬物中毒者に転売している人間がいると言われていました。
この話は前々から問題になっていたので、生活保護費の支払い等の事務をつかさどる各自治体も、様々な対策を立てていたようです。
この東議員が取り上げているのは大阪市の例ですが、大阪市も抗精神済の処方を要求する患者には、他の医療機関で同様の薬剤を処方されていないかを確認するなどの対策を立てていたようです。
しかしこの受給者は明らかに、こうした不正入手防止手段の裏をかいて、このような大阪府でこのような確認作業を行う部署が休業する日を狙って、複数の病院を回るなどしていました。
そうやって回った医療機関や入手した薬剤の量も膨大な物です。
こうしてみるとこの受給者は、明らかに薬物の不正売買のプロで、自治体側の対応策も熟知していたのです。
そして受診した病院の数から推定すると、薬物を入手しやすい日には、多数の病院を回っていますから、タクシーを使うなど相応の金と労力もかけていたのでしょう。
またこうした事を行える体力と知力があるのですから、十分働く事の出来る人間だったと思われます。
これは非常に深刻な問題です。
生活保護費が不正に使われるという事も問題ですが、こういう事を防止できないのであれば、国費で薬物中毒者を作っている事になってしまいます。
こうやって不正に入手された薬物を買っているのは、こうした薬物を麻薬のように利用する薬物中毒者なのですから。
現在、生活保護費の総額の半分は医療費が占めています。
これはある程度理解できます。
こういう不正については、度々問題になりますが、一方で現在生活保護の受給者の大多数は高齢者や病人なのです。
特に厄介な慢性病、難病を抱えた人達の唯一のセーフティネットは生活保護です。
障碍者ではないのです。
実は障碍者の場合、障碍者である事を申請し、障碍者手帳を得られると、障碍者年金が支給されます。 これは障害に応じて差がありますが、そこそこの金額になるので、ホントに重度の障碍者であれば、生活保護を申請する必要はないのです。
しかし厄介な慢性病や難病を抱えて入退院を繰り返すという状態になったら、仕事は解雇されて新しい仕事は見つかりません。
実はワタシも難病患者ですので、この辺りの話は結構見てきました。
結構重い症状でも働いているというから「凄い!」と思ったら、実は親の稼業を手伝っているなんて話ばかりでした。
入退院が重なると公務員でも結構職場にいづらくなってやめる人も多いようでした。
ワタシは父が幾ばくか残してくれたので、生活保護の厄介にならずに済んだのですが、しかしもしこれがなければ絶対に生活保護に頼るか、或いは無理に働いて障害を抱えて障碍者年金を狙うしかなかったと思います。
因みにワタシの抱えている病気は「多発性硬化症」なのですが、これは悪化すると四肢の麻痺や失明などの症状が出て、そのまま固定化します。 最悪下半身麻痺など非常に深刻な状態になります。
しかしワタシのようにグータラ暮らしてストレスを溜めず、好き放題休んでいれば病状の悪化も結構防げます。
だからワタシは病気がわかってから30年余、時々気持ちの悪い麻痺は体験したけれど、それも暫く休息を取れば収まって、無事グータラ生活を続ける事ができてきました。
そして障害を抱え込んだ病気仲間を思い出すと、皆凄い頑張り屋さんだったなあ‥‥、などと思うのです。
で、こういう現実を見てきた身からすると、生活保護って絶対に必要なのです。
実際、一家の大黒柱の立場で難病を抱え込んだ人など、「首を吊りたい」と言っていましたし。
だって難病を抱えて長期入院でされても、新しい就職先なんて見つかるわけもないし、生命保険等に加入していも、保険の対象にもなりません。
障害を抱え込まないで済んだのラッキーでも、障碍者年金ももらえないし、障碍者の支援や保護などの対象にもなりません。
市営住宅等の入居さへ、難病患者や慢性病患者に対する優遇なんかないのです。
だからこれで生活保護制度がないと、貯えが尽きたらホントに一貫の終わりなのです。
それ故にこそ生活保護と言う制度は大切にするべきだと思うのです。
しかし大変奇妙な事に、弱者の味方を自称する人達は違うようです。
彼等は今ある制度をトコトン食いつぶそうとしているようにしか見えません。
実はワタシはこの問題を以前もエントリーしました。
その時も大阪で生活保護受給者が薬物を横流しする事が問題になって、その時大阪市側は「医療機関登録制度」と言うモノを作ってこれを防止しようとしました。
これは大阪市が生活保護受給者が受診できる医療機関をあらかじめ登録し、その医療機関の診療や投薬の情報を一括管理しようというモノでした。
なるほどこれなら一人の受給者が数百もの病院を回って、同じ薬を大量に処方してもらうなどと言う事はできません。
しかしこれには「弱者の味方」を自称する左翼団体が、反対の声明を出して、結局この制度を潰しました。
今回の東議員の国会質問を見る限り、大阪市はそれでも頑張って何とか薬物の不正入手は防ごうとしたようです。
しかし確定的な方法にはならなかったので、こういうプロが出現したわけです。
そして生活保護受給者の医療費が無償である事は、山本病院事件のような恐ろしい事件も引き起こしました。
これは奈良県の山本病院が、多数のホームレスに生活保護を申請させたうえで、入院させ140人余に必要のない手術を行って、その中からかなりの死者が出たという事件です。
ホームレスになるような人は、全く身寄りがなく、手術で死亡しても遺族から抗議される事もないし、さらに言えばホームレスの中には精神障碍や知的障害の為に、自分で生活保護を申請することもできなし、病院に何をされても抵抗できない人も多いのです。
山本病院はこれに目をつけて、ホームレスに生活保護を申請させて過剰医療を行って稼ぐというビジネスを続けていたのですが、余りに死者が多い事で発覚しました。
これは生活保護受給者の医療費は全額国庫負担と言う事が招いた最悪の結果です。
だから当然「弱者を守る」立場の人々からは、大変な抗議が出る物と思っていました。
しかしワタシの知る限り、これに抗議した「弱者の味方」は全くいませんでした。
そんなわけで生活保護費受給者の医療国庫負担と言う制度は、色々と問題はあります。
但し生活保護と言う制度が病人にとって死活的に必要な制度であり、そうであるならば医療費の国庫補助も絶対に必要でしょう。
だからこそ山本病院のような病院による過剰医療から受給者を守り、一方で受給者が薬を横流しするような事も絶対に阻止しなければなりません。
その為には大阪府が最初に考えた「医療機関登録制度」のようなモノは結構有効だったのではないかと思います。
最初から受給できる医療機関を選抜して、そこを集中的に監視すればよいのですから。
だから今度、このような制度を作ると言う話が出た時に、これに反対する連中がいたら、彼等は確実に生活保護受給者など弱者を食い物にする気満々のハイエナなのだと認識してよいと思います。