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2022-10-12 11:39

真の国家・中国とインド

 先日ワタシは「真の国家と半国家 プーチンの国家観」と言うエントリーをしました。
 プーチンによれば「真の国家」とは、自国の意思だけで国家主権を行使できる国家であり、国家主権の行使を同盟などで制約されている国は「半国家」だというのです。

 このプーチンの国家観からすると、ドイツや日本は経済力ではロシアを遥かにしのいでいるのですが「半国家」です。 なぜならドイツは軍事的には今は殆ど無力であり、そもそもNATOに所属しているので、自国の意思だけで勝手に軍事力を行使するようなことはできません。 日本が「半国家」である理由は言うまでもないでしょう。

 このようなプーチンの国家観からすると、現在「真の国家」と言えるのは中国やインドなどごく少数しかありません。
 
 ところで中国は「真の国家」でしょうか?

 エドワード・ルトワックは「台湾の有事危機は起きない」と断言しました
 理由は概ね以下の通りです。

 中国はエネルギーも食糧も輸入に頼っている為、台湾侵攻などやらかしてこれらが輸入できなくなると、直ちに中国国内で食料やエネルギーが枯渇する。
 ロシアが苦戦しながらも、ウクライナ侵略戦争を続けていられるのは、ロシアはエネルギーと食料の輸出国であり、経済制裁を食らっても、ロシア人が飢える事も凍える事もないからである。
 しかし中国が台湾に侵攻すれば、中国人はたちまち飢え凍える事になる。
 だから戦争はできない。
 人民解放軍は「張り子の虎」である。

 なるほどこれなら実は中国も「真の国家」ではないかもしれません。
 しかし思い返すと改革開放前なら中国は「真の国家」でした。 だって改革開放前は中国は石油などエネルギーを輸入するどころか輸出していました。
 食料も同様です。
 
 日中国交正常化が始まった半世紀前は、中国から日本への輸出品は石油など天然資源、そして飼料作物、そして雑貨類でした。
 この雑貨類は景徳鎮の磁器など中国の伝統工芸品や、民芸品、刺繍やレースなど手芸品などです。

 少し脱線するけど70年代、ワタシは中国製の手工芸品が好きでちょこちょこ買っていました。 今も大切に持っています。
 小さな可愛い陶俑とか、刺繍製品です。
 この刺繍製品は素晴らしく精巧でした。 ワタシは手芸が結構好きなので刺繍もしたことがありますが、こんなものは趣味のレベルではとても作れません。
 しかし熟練した職人でも一体どのぐらい時間がかかるかわからないと思えるような刺繍を施したテーブルクロスやピローケースが、数千円です。 ドイリーやハンカチなど小さな物なら百円チョッとでした。
 これだとこの刺繍をした職人さんはどのぐらいの賃金を貰っているのか?想像すると気の毒になりました。
 
 しかし当時の中国政府は、刺繍職人を飢餓賃金で働かせて必死で外貨を稼ぎ、その外貨でソ連やその他の国から武器を輸入し、また核開発の資金にしていたのでしょう。
 何しろ核開発のスローガンが「ズボンを履かずに原爆を作ろう!!」でしたから。
 ズボンを履かないのは、行儀が悪いからではありません。 ズボンを買うお金を核開発に回そうと言うのです。

 それでもこんな状況では、軍艦とか戦闘機などお金のかかる兵器は殆ど持てませんでした。
 だからこの当時は幾ら中国が「打倒、米帝国主義!!」とか喚いても、ホントの所は脅威でもなんでもなかったのです。
 当時の脅威はもっぱらソ連でした。
 
 しかしこの状態なら食料やエネルギーの心配もなく、好き放題他国に喧嘩を売っていられたのです。
 何しろ毛沢東の政策の失敗で、戦争もしないのに大飢餓を起こして人民を大量餓死させても国家を維持できるような国ですから、怖い物なしでした。

 それが改革開放でお金ができて、ステルス戦闘機や空母まで持てるようになると、今度は食料やエネルギーを他国に依存して、戦争をしたら食料やエネルギーの不足に陥って国家の維持が危うくなるという状態になったです。
 だってロシアと違って中国は無暗に人口が多く、しかし人口の割には国土は広いわけでもないし、資源も限られているので、国家を豊かにするためには、食料やエネルギーを海外に依存するしかないのです。
 つまりその点は日本と同じなのです。 なるほどこれじゃ気楽に戦争なんかできるわけないです。
 でも、それじゃ一体何のために、軍拡に励んでいるのでしょうか?
 ホントに馬鹿馬鹿し話です。

 その点賢いのはインドです。
 インドはそのあたりをちゃんと心得ているようです。
 インドは元々人口が多かったうえ、強権的な人口抑制策も取らなかったので、今は人口では中国に迫っているのですが、しかし国土は中国より狭いのです。
 そして地道に経済発展を続けているので、食料やエネルギーの対外依存も増えています。
 経済発展に相応して、軍事力の強化も続けています。
 でも中国やロシアみたいに他国に喧嘩を売るようなこともせず、民主主義国家としてアメリカや日本とも良好な関係を維持しながら、しかしロシアや中国とも仲良くやっているのです。

 プーチンがインドを「真の国家」と言うのは、ロシアが今回のロシアのウクライナ侵略戦争でもロシアを非難する側に回らず、9月に行われたロシアの大規模軍事演習ボストーク2022にも参加したりしているからでしょう。
 インドは実はクアッドにも参加しているのですが、しかし日本やオーストラリアと違ってアメリカの同盟国ではないので、アメリカに「国家主権」を制約されないのです。
 お陰でロシアへの経済制裁に加わる必要もなく、ロシアの石油を安く買って転売して儲けているとも言われます。
 しかもそれでアメリカやNATO諸国からも非難されていないのです。

 だから「日本もインドを見習え」と言う人もいるのですが、しかしインドがこんな美味しいポジションを取っていられるのは、そもそもインドの領土のポジション故で、日本はそういうわけにはいきません。
 
 インドは現在、中国と領土紛争を起こしています。
 領土紛争になっている地域の民族宗教がラマ教なので、ダライ・ラマとその亡命政権を受け入れているのです。
 インドは核兵器を開発し、現在相当な核兵力を保有しています。 これは一応パキスタンに対抗する為と言っているのですが、しかし本当の敵は中国でしょう?

 でも中国から侵略される危険は限定的でしょう。
 だって中国とインドの間にはヒマラヤ山脈が連なっているのです。 ここを大軍で超えるなど絶対不可能なのです。
 それでも不安がゼロではないから、核兵器を持ち、更に中国の背後にある大国ロシアとも良好な関係を維持しているのです。 
 それにロシアと良好ならロシア製の兵器が買えます。 ロシア製兵器はアメリカ製より安いですし。
 
 でも海の方から侵略される心配があるのでは?
 中国は海軍の増強を続けて来たし、一帯一路でバングラディッシュやスリランカを取り込もうとしていましたから。
 
 だからその為にクアッドです。
 インド海軍はクアッドの演習にも加わり、中国の海洋進出にはアメリカや日本とも協力して対抗しています。

 インドが対中防衛で日米豪と組むという構想は安倍総理の提案でした。 そしてインドが最初にそれに応じたのはシン政権時です。 安倍総理はシン首相とも非常に親密でした。
 でもシン政権がモディ政権に代わっても、このインドの外交姿勢はそのまま踏襲されており、モディ首相は安倍総理に国葬にも参列されました。
 政権交代しても有益な外交方針は引き継ぐ。
 まことに立派な物です。
 こうしてインドは極めて現実的に強かに、国益を守っているです。

 但し残念だけれど、日本はインドを見習ってアメリカと距離を置く事などできません。
 だって日本と中国の間にはヒマラヤ山脈はありません。
 現在の軍事技術と中国の海軍力からすれば、海はヒマラヤ山脈程あてになる防壁ではありません。
 しかもロシアや北朝鮮も核兵器も持って日本を脅かしている状態です。
 
 この状態では日本が核兵器を持ったとしても、アメリカとの同盟関係は必要なのです。
 因みにルトワックは中国による台湾有事はないと言っていますが、しかし対中防衛が必要ないという事にはなりません。

 今の状態なら中国が台湾に侵攻したら戦争になります。
 だって台湾側も日本側も相応の防衛体制を持っているうえ、バイデン大統領が4回も「台湾が侵略されたら米軍が出動する」と失言してしまいました。
 だから中国が戦争を避けたいなら、中国は台湾に侵攻しないでしょう。

 でも台湾側にも日米にも台湾を守る体制がないのなら、香港と同じです。
 これなら中国が台湾に攻め込んだら戦争にもならないまま、台湾は占領され中国領になってしまいます。

 中国が香港返還時の約束を破って一国二制度を破棄し、香港を完全に中国化した時、戦争になりましたか?
 この問題で中国が厳しい経済制裁を受けましたか?
 
 そして国家も常に理性的にふるまうとは限りません。
 現在のロシアのウクライナ侵略戦争だって、ロシアが理性的であれば起きなかったでしょう。 
 この戦争が始まる前、ロシア内にもこの戦争を行う事のデメリットを指摘して反対した人は多数いたのです。 
 でもプーチンはこうした意見は聞き入れませんでした。
 
 ドイツのポーランド侵攻だって、日本の真珠湾攻撃だって同じです。
 アメリカとの工業力の違いを指摘して、開戦に反対した人は多数いました。 
 でも結局、日独共に理性に従わず開戦したのです。
 
 そして現在のウクライナを見ればわかりますが、一旦攻め込まれたら大変な被害が出るのです。
 だから相手国に「簡単に勝てる」などと誤解させてはイケナイのです。
 
 これを考えると中国が実質「半国家」でも対中防衛は絶対に必要なのです。
 そして中国もまた軍隊は脅迫の道具と割り切って、強大な軍事力を誇示することで、恐怖を煽りながら、実は戦争は避けて内部工作で台湾を切り崩す事を考えているのですから。

  1. ロシアのウクライナ侵略
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コメント

>一体何のために軍拡に励んでいる

旧ソ連時代のKGBのような軍と「均衡」を取る「準軍事組織(パラ・ミリタリー)」が存在せず、人民解放軍が唯一の「暴力集団」だから、こいつらを制御するためには、「予算増大=軍拡」という「餌」をケチるわけにはいかないのでは?

>小さな可愛い土偶とか

土偶? 「陶俑」のことですか?
  1. 2022-10-12 17:00
  2. URL
  3. 温泉猫 #-
  4. 編集

前回の記事を読んだとき中国とインドの事を知りたかったのでうれしかったです。
中国って広いけど人の住めないところも多い感じですよね。

私も中国手芸の細密さに驚嘆しました!
やっすいティッシュカバーとかも驚異的な細かさでカットワークとかしてますね。。
手先が器用だから、張子の虎も上手に作るのか・・

  1. 2022-10-12 18:15
  2. URL
  3. カプチーノ #-
  4. 編集

ヒマラヤの利用

インドやインドシナ半島は、中共にヒマラヤ河川という水源を押さえられています。中共はヒマラヤに多数のダムを開発中で、洪水や渇水をコントロールできるようになると、東南アジアとインドは危機に陥ります。また、山奥のネパールやブータンも中共の露骨な浸透に晒されています。ヒマラヤ山中での火器を使わぬ中印の「殴り合い」、インド軍に対する中共側からの電磁波攻撃とおぼしき実験など、実に禍々しい交戦もあります。中共がチベットを手離せないのは、インド・東南アジア攻略のためです。
  1. 2022-10-13 07:41
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  3. 幌延の青いケシ #-
  4. 編集

Re: タイトルなし

> >一体何のために軍拡に励んでいる
>
> 旧ソ連時代のKGBのような軍と「均衡」を取る「準軍事組織(パラ・ミリタリー)」が存在せず、人民解放軍が唯一の「暴力集団」だから、こいつらを制御するためには、「予算増大=軍拡」という「餌」をケチるわけにはいかないのでは?

 中国は国家警察と言うのあって、実はそれが人民解放軍と同等の予算を食って、今は凄い重武装になっているそうです。
 むしろ外交でも内政でも力で押し切ろうというのが中国の姿勢なのでしょう。
 だって力以外に何もない政権ですから。
>
> >小さな可愛い土偶とか
>
> 土偶? 「陶俑」のことですか?

 そうです。
 訂正します。
  1. 2022-10-13 09:43
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  3. よもぎねこ #-
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Re: タイトルなし

> 前回の記事を読んだとき中国とインドの事を知りたかったのでうれしかったです。
> 中国って広いけど人の住めないところも多い感じですよね。

 中国の農家一戸当たりの平均耕地面積ってなんと日本の農家の三分の1だそうです。 日本だって世界的には異常に狭いのに、その3分の1ですから、これではホントに農家が食べる分だけで手一杯でしょう。
 
 因みにワタシの叔父の農地がそのぐらいなのですが、叔父は岡山で高級果実を作る果樹農家だったので、十分リッチに暮らしていました。
 だから中国の農家もシャインマスカットの品種を盗んだりするんでしょうね。

 しかし農地も少ないのだけれど、人口密度を考えても、人口比からするとそんなに国土が広いとは言えない国です。
>
> 私も中国手芸の細密さに驚嘆しました!
> やっすいティッシュカバーとかも驚異的な細かさでカットワークとかしてますね。。
> 手先が器用だから、張子の虎も上手に作るのか・・

 あの精巧で美しい刺繍製品は、値段を考えると作っている人達が気の毒で申し訳なくて・・・・。
 ワタシは学生時代から使っていたピローケースの布地が弱って敗れた後も、刺繍の部分は大切に取ってあります。 この美しい刺繍をしてくれた人に申し訳なくて捨てられません。
 繊細な刺繍なのに非常に堅牢で、全く痛んでいないのです。

 でもこんな素晴らし仕事を、信じられないほどの低賃金でやらされたら、恨みが募るのかもしれませんね。
 そういう恨みが空母や核兵器に化けているのかも?
 
  1. 2022-10-13 10:01
  2. URL
  3. よもぎねこ #-
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Re: ヒマラヤの利用

> インドやインドシナ半島は、中共にヒマラヤ河川という水源を押さえられています。中共はヒマラヤに多数のダムを開発中で、洪水や渇水をコントロールできるようになると、東南アジアとインドは危機に陥ります。また、山奥のネパールやブータンも中共の露骨な浸透に晒されています。ヒマラヤ山中での火器を使わぬ中印の「殴り合い」、インド軍に対する中共側からの電磁波攻撃とおぼしき実験など、実に禍々しい交戦もあります。中共がチベットを手離せないのは、インド・東南アジア攻略のためです。

 そうですね。
 だから東南アジア諸国でも反中国世論が盛り上がっていくのでしょう。
 
 チベットの独立は絶望的に思えるけれど、逆に中国がこういう事をやり続けたら、国際社会で何とかしようという事になるのかもしれません。

  1. 2022-10-13 10:05
  2. URL
  3. よもぎねこ #-
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ルトワックは「台湾の有事危機は起きない」と断言しました

 >エドワード・ルトワックは「台湾の有事危機は起きない」と断言しました

ウクライナはクリミヤ半島もドネツクも簡単に取られています。
プーチンが欲をかいて一気に占領地区を拡げ、あわよくばウクライナ全体も支配下に占領しようとして、予期せぬ反撃にあったのですよね。
・プーチンが欲をだして戦線を広げ過ぎた。
・ウクライナ国民が纏まって反撃してきた。
・ゼレンスキ―の指導力が卓越していた。
・西洋諸国の政治、民心の心を捉えた宣伝

台湾の場合、ウクライナと似た状況を作り出せると思います。

しかし、日本の場合を考えた場合には心配に成ります。半分、韓国と似たような国情にあると思っています。
・在外外国人に関連した左翼運動・政治家が元気だ。
・マスコミが完全に左翼に偏っている。
・国民の心が緩み切っている。

ドネツク州と同じ状況の沖縄を重点的に攻められたら、日本国民が纏まって反戦体制にできるのでしょうか?
自分が戦うのなら、日本各地にクライナのようにミサイルを撃ち込まれたら、沖縄なんかくれてやれ、という気持ちにもなりかねません。
  1. 2022-10-14 11:25
  2. URL
  3. トラウマ #RWLNmTs6
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Re: ルトワックは「台湾の有事危機は起きない」と断言しました

>  >エドワード・ルトワックは「台湾の有事危機は起きない」と断言しました
>
> ウクライナはクリミヤ半島もドネツクも簡単に取られています。
> プーチンが欲をかいて一気に占領地区を拡げ、あわよくばウクライナ全体も支配下に占領しようとして、予期せぬ反撃にあったのですよね。
> ・プーチンが欲をだして戦線を広げ過ぎた。
> ・ウクライナ国民が纏まって反撃してきた。
> ・ゼレンスキ―の指導力が卓越していた。
> ・西洋諸国の政治、民心の心を捉えた宣伝
>
> 台湾の場合、ウクライナと似た状況を作り出せると思います。
>
> しかし、日本の場合を考えた場合には心配に成ります。半分、韓国と似たような国情にあると思っています。
> ・在外外国人に関連した左翼運動・政治家が元気だ。
> ・マスコミが完全に左翼に偏っている。
> ・国民の心が緩み切っている。
>
> ドネツク州と同じ状況の沖縄を重点的に攻められたら、日本国民が纏まって反戦体制にできるのでしょうか?
> 自分が戦うのなら、日本各地にクライナのようにミサイルを撃ち込まれたら、沖縄なんかくれてやれ、という気持ちにもなりかねません。

 人間は理性に従うとは限りませんからね。
 理性的に考えたら戦争をしてはイケナイ状況でも、戦争を始めた例は幾らでもあるのです。 だから軍備は必要なのです。
 
 だから今は日本でも防衛費増額に賛成する人が過半数を超えています。 こんなことは過去にはなかったのです。
 このまま頑張っていくしかないんじゃないですか?
  1. 2022-10-14 11:58
  2. URL
  3. よもぎねこ #-
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