それで「反戦を訴えるエンターテインメント小説がこれだけ読まれることに、希望を感じます。」と言っている人がいます。
因みにこの小説は「戦争は女の顔をしていない」から影響を受けて書かれたのだそうです。 「戦争は女の顔をしていない」も独ソ戦を題材にしたベラルーシの小説です。
しかしワタシは凄く不思議なのです。
独ソ戦はホントに悲惨でした。
独ソ戦でのソ連の死者は2000万人とも4000万人ともいわれ、第二次大戦では最大の死者を出しています。
このように悲惨な結果になったのは、ドイツはヒトラーの独裁下でドイツ軍はスラブ殲滅作戦を掲げて、スラブ人であれば全部殺す心算で侵攻してきたのに対して、ソ連はスターリンの独裁下で反スターリンの疑惑を持たれた人は、戦闘中の指揮官でさへ容赦なく粛清しするようなことを繰り返して、マトモな応戦ができなくなったからです。
そしてあまりに戦死者が増えるので、男性だけでなく女性も戦場に駆り出して、狙撃兵やパイロットとしてドイツ軍と戦わせたました。 しかも彼女達に与えられた銃も飛行機も時代遅れの二級品で、ソ連の男性兵士には使わせないようなモノでした。
こんなもの持たされて戦場に送られたら、そりゃ戦死者だって増えるでしょう。
第二次大戦時のソ連や東欧の悲惨さを見たら、日本の戦争被害なんか殆どゼロと言っていいレベルです。 日本で唯一戦場となった沖縄戦だって、全然比較にもなりません。
で、その悲惨な体験をしたソ連はどうなりましたか?
戦争の悲惨さを体験したので、平和憲法を作り、軍備を放棄しましたか?
真逆ですよね?
第二次大戦終結後、ひたすら軍拡を続けましたよね?
しかもその仮想敵国は独ソ戦の最中にひたすら武器を供与して、ソ連の防衛を助けてくれたアメリカです。
独ソ戦があんなにも悲惨になったのは、独裁者スターリンに大いに責任があったのに、スターリンはその後も苛烈な独裁を続け粛清で独ソ戦以上の犠牲者を出し続けながら、ソ連人民から崇拝され続けて天寿を全うしました。
そして現実の「同志少女」たちは戦後もスターリンの同志として、ソ連の独裁と軍拡を支持してきました。
ソ連の軍事パレードには軍服を着たお婆さんが並んでいました。
独ソ戦の英雄だった老人達は、軍事パレードに招待されて特等席を与えられたのです。
特等席で弾道ミサイルや戦車の隊列に喝采するのが、同志少女たちの老後だったのです。
因みに独ソ戦が起きたのは、スターリンとヒトラーが独ソ密約を結んでポーランド他東欧諸国を同時侵略して独ソで分け取りにしようとしていたのに、ドイツがソ連を裏切ってソ連に侵略してきたからです。
その意味ではソ連側が招いた戦争なのです。
で、同志少女達が、そのようなスターリンや祖国ソ連を恥じたと言う話は聞きません。 尤も恥じたら強制収容所送りですから、本心なんか言えるわけもないのですが。
さらに言えば同志少女達が物心つくころには、スターリンの粛清は始まっていてソ連軍の将官の殆んど、佐官の3分の2、尉官の半分が処刑されました。 だから独ソ戦でも大苦戦したのです。
このような状況では戦争がなくても、少女達に自由で明るい未来などなかったでしょう。
で、今もロシアはウクライナに侵略し、ベラルーシはそのロシアを支援しているのです。 そして同様にロシアやベラルーシと共に独ソ戦を戦い、独ソ戦でも最も悲惨な戦場となったウクライナは、ロシアの侵略に必死に防戦しているのです。
なぜウクライナはロシアに徹底抗戦するのか?
それは独ソ戦やそれ以前のソ連の支配があまりに過酷で、二度とこのような国に支配されたくないと思っているからです。
戦争で戦死者が出るは勿論、非戦闘員が犠牲になるのは自明です。
それはウクライナが独ソ戦で経験したことです。
それでもロシアに支配されてまた大量粛清されたり、大量餓死に追い込まれるよりはマシ。 ウクライナ国民全てが、ソ連支配の悲惨さを再現しないためにも戦うしかないと、覚悟を決めて戦っているのです。
これはポーランドやバルト三国などソ連の支配を受けた国全ての共通した思いです。
だからこれらの国々はソ連崩壊後、早々とNATOに加盟し、貧しい中驚く多額の軍事費を使って軍隊を増強しています。
一方ロシアでもプーチンが事あるごとに独ソ戦を持ち出して、自身の独裁強化やウクライナ侵略戦争遂行の正当化に利用しようとしています。
これが「同志少女」の国の戦後の現実です。
戦争は悲惨です。
だから真面目に戦争を描いた作品を読めば、普通の人間なら誰でも戦争は避けなければならないと思います。
それは世界中同じです。
そして世界中の大多数の人は、戦争は避けるべきだと思っています。
但し世界中の大多数の国々は、日本よりも遥かに多くの戦争経験があるので、戦争を避ける為に現実的な対応を考えているのです。
つまり外交だけで戦争を回避するなんて全く不可能で、抑止力となる軍事力を維持し、強国と同盟しているのです。
そしてどんなに悲惨な目に遭っても、悪意の独裁者をどうすることもできないと言う現実がある事も認識しているのです。
ソ連人民は同志少女達はヒトラーとは戦う事ができたのに、ヒトラー以上に恐ろしいスターリンと戦う事はできず生涯支配されたままでした。
ところが日本の反戦平和論者と言うは、この現実が綺麗に吹っ飛んでいて、戦争は悲惨、だから戦争反対、だから軍備を持たないと言うのです。
なるほど独ソ戦は悲惨でした。
しかしそれは独ソ戦当事国にとって、軍備の放棄にも戦争の放棄にもつながりませんでした。
むしろ二度と同じ目に遭わない為に国力の続く限り軍備を強化し続けたのです。
にも拘らずなぜか日本の自称反戦運動家・自称護憲派は、なぜかそういう現実を吹き飛ばして、戦争の悲惨さを理解すれば軍備を廃止すると言う事になるのです。
現実の認識を完全に放棄して、脳内の妄想だけにすがるのですから、これはカルトと言うしかありません。
一体いつになったら日本人はこのカルトを脱会できるのでしょうか?