fc2ブログ

2022-05-27 13:36

ロシア崩壊は歓迎すべきか? ロシアのウクライナ侵略戦争

 少し前ですが中国のテレビ局がロシア崩壊を予想した画像なるものがネットに出てきました。

ダウンロード

 これを見て「北方領土が取り戻せる」と喜んでいた人が沢山いたようです。
 しかしワタシは全然喜べませんでした。

 この地図のロシア分割にはほとんど何の根拠もなく、またこれを放映した中国のテレビ局は最初はCCTVだと言われたのですが、それは完全なデマで、そもそも中国のテレビ局でさへなく、反ロシア側が流したプロパガンダ画像だったようです。

 しかしそれにしてもロシアが崩壊した後は、非常に厄介な事が起きる、ロシアが崩壊して全てバラ色には決してならないと確信させる画像でした。
 
 なぜならこの画像はほぼインチキだけれど、この画像で「China」と示された部分は、実は中国が前々から「ロシアに奪われた」と主張していた部分です。 
 中国は清朝はロシア沿海州と東シベリア全域を支配していたのに、ロシアがそれを奪ったという認識なのです。 
 だから絶対に奪還すると言い続けてきました。 そしてソ連時代も何度も中ソ国境で衝突していました。

 中華人民共和国が清朝の後継国であるというのは全く根拠がありません。 また清朝のロシア沿海州や東シベリアの支配と言うのも、非常に曖昧と言うか、そもそも近代国家でいう国境管理や支配などとは無縁話です。

 現在もそうですが、この地域は帝政ロシアやソ連時代にロシア人が移住してくるまでは、シベリア原住民しかいませんでした。
 厳しい気候で農業など全く不可能なので、狩猟やトナカイ遊牧などを行う少数民族だけが暮らしていたのです。 こういう生活で養える人口は限られているので、人口も非常に少ない人口希薄地域です。

 実は清朝もロシア帝国もこういう地域にまで、役人を送って支配するような事はせず、それどころか国境周辺だってどうなっているのか調べようともしていなかったのです。
 そしてそこで暮らすシベリア原住民だって、自分がロシア人なのか清朝臣民なのかなんて考えた事もないのです。

 ロシアが崩壊すると、普通に考えられるのは、とりあえず今もロシアに所属している「共和国」が次々に独立することです。
 プーチンはスラブ民族主義に嵌っていますが、しかしロシアにはタタール人、カルムイク人、ヤクート人、ブリヤート人など、そもそも白人でさえなくイスラム教やラマ教の民族が多数いて、それらの民族がそれぞれ「共和国」を作ってロシア連邦に所属しているのです。

 ソ連もこうした「連邦」だったのですが、ソ連崩壊の時にウクライナやジョージアやカザフスタンなど独立する意思と国力のある国々がソ連邦から離れて独立しました。
 しかし独立するだけの力のない国々はロシアを離れず、今もロシア連邦に所属しています。
 けれどもロシアのウクライナ侵略戦争で、ロシアの国力がいよいよ衰えて、ロシア本体がやばくなってくれば、ロシア連邦に残った国々も離反していくでしょう。

 問題はそうやってロシアから離れた「共和国」が独立国としてやっていけるかどうかです。
 ロシアの「共和国」は国土面積も人口も様々で、タタールスタンのように人口もそここそ多く、経済も結構強い国もありますから、そういう国はきっとそのまま普通に独立国としてやっていくでしょう。

 問題は最初に挙げた沿海州や東シベリアです。 更にモンゴルに近いブリヤート共和国などです。
 前記のようにこれらの地域は元来、人口希薄地域です。
 気候があまりに厳しいので、狩猟やトナカイ遊牧ぐらいしかできなかった地域です。
 でも広大な領土があるし、天然資源もあります。
 こういう「共和国」が独立して自力で国土を防衛できるでしょうか?

 更にシベリアの大半は人口が希薄すぎて「共和国」さえ作れず、ロシア政府の直轄地になっています。
 敗戦で弱体化したロシアはこれらの地域を維持管理防衛できるのでしょうか?
 前記のように中国はこの地域を「清朝の領土だかったら我の物アル」と言い続けて、「奪還するアル」と言い続け居るのです。

 これで例えばロシア沿海州が中国の物になれば、ウラジオストークが中国海軍の軍港になります。
 それどころか沿海州には更に多数の軍港ができて、日本海が中国の海になってしまいます。

 中国はロシアよりはるかに厄介です。
 ロシアはロシア人以外の民族を加えても総人口は14800万人で、日本とそう変わりません。
 しかし中国は13億人、16億説もあります。
 ロシアに比べたら人口が非常に多く、その人口の殆んどが貧民で、その貧民たちは貧困から抜け出せるならどんなところへでも喜んで移住するのです。

 例えば中国は南沙諸島を埋め立て、そこに中国人を移住させへて「自分達の領土だ」と言わせています。
 あんな所、普通の国の人間なら絶対に移住しないでしょう?  だって絶海の孤島で何もない埋め立て地ですよ。
 でも中国人ならあれでも本土の自分の故郷より良い生活ができるので、喜んで移住する人間がいるのです。

 これだものロシア沿海州なんかワイワイ押し寄せてくるでしょう。
 だって日本海には豊かな漁業資源と海底資源があり、しかも日本海を渡れば日本だし、津軽海峡から太平洋を抜けてアメリカに行くにも便利ですから、工業の立地としても悪くないのです。
 だから沿海州の海岸沿いに次々と中国人の都市ができて、大規模な港湾が幾つも作られるでしょう。

 実は今でも既にロシア沿海州には大量の中国人が入り込んでいます。 出稼ぎ、不法移民として入っているのです。
 元々中国が領土的野心を明確にしている地域、しかも元来人口希薄地域に大量の中国人が入り込むというのはロシアにとっては非常に危険です。
 だからロシア政府も随分警戒し、中国人を排除しようとしているようですが、何しろあまりに広大な人口希薄地帯で労働力も不足しているし、監視もしきれないので、どうしようもない状況です。

 これでもしロシアが崩壊して、ロシア政府がロシア沿海州の国境を管理できなくなれば、鉄砲水のように中国人が入り込むでしょう。
 そして人口の大多数を中国人が占めるようになったら、そのまま中国の物になってしまいます。
 これは日本にとっては非常に厄介です。
 
 ロシアは国防の重点をヨーロッパにおいているので、ウラジオストークのロシア極東艦隊は旧式のポンコツ船団です。
 そもそもロシア海軍自体がそれほど強力ではありません。
 でも中国が沿海州を手に入れたら、日本海の制海権確保を目指して、海軍をさらに増強して、ウラジオストークには最新鋭艦を揃えた艦隊を配備するでしょう。
 日本海は非常に深い海なので、潜水艦隊の配備にも適しています。

 こうした未来を考えれば、実は中国は中国で、「ロシアがウクライナ侵略戦争で敗戦して、ロシアが崩壊するのも悪くないアル」と思っているのかもしれません。 
 台湾は侵略のチャンスがこれで遠のいても、ロシア沿海州と広大な東シベリアが自分の物になるなら、日本海を中国の海にできるなら、その方が利益が大きいかもしれません。
 逆に日本からすれば台湾が侵略されることも危険ですが、ロシア沿海州が中国領になるのも同じぐらい危険です。

 因みにロシア沿海州や東シベリア、ブリヤート共和国が、中国の支配下にはいるのは、この地に住む原住民にとっても大変な厄災になるでしょう。
 現在ロシアのウクライナ侵略戦争で戦死したロシア兵の中に、ブリヤート人など極東から動員された少数民族の兵士が多いというニュースがありました。
 
 ブリヤートなんて本当に人口の少ない少数民族から多数の戦死者が出るなんて、あんまりでしょう?
 しかもブリヤート人はモンゴル民族の部族なので、プーチンの掲げるロシアの民族主義やルーシ・ミール(ロシアの世界)には何の縁もないのです。  
 非スラブの少数民族をこのように扱うですから、ロシアの少数民族政策は決して褒められた物じゃないです。

 でも、中国がここを支配するようになったら、これらの少数民族をロシア以上に人道的に扱う事はあり得ないでしょう。 中国がそういう国ならチベットやウィグルでジェノサイトが起きるはずもありません。
 
 ワタシの大好きな本「デルスー・ウザーラ」は、1902~1906年、ロシア帝国政府の依頼でロシア沿海州南部の調査・地図作成を行ったううウラジーミル・アルセーニエフの探検記です。
 彼はこの探検中、森林の中で原住民の老人で猟師デルスー・ウザーラに出会い、森の精霊のような人格に感銘を受けました。 
 この探検記にはしかし当時から大量に沿海州に入り込んで濫猟を尽くす中国人や、商人として原住民への搾取を尽くす中国人の姿が諸所に描かれていて、この地域の暗い未来を暗示していました。

 しかし現在、世界中に入り込んでいる中国人、日本で報道される中国人の活動を見ていると、中国人の感覚は実は今もこの時代から全く変わっていません。
 帝政ロシアだって清朝の中国人よりはマシでした。
 何よりロシアは中国よりはるかに人口が少ないので、流刑にでもならない限り、シベリアや極東に移住するロシア人は僅少だったのです。
 だからロシア連邦だって中華人民共和国と中国人よりマシじゃないかと思います。

 ロシアのウクライナ侵略戦争はホントに絵に描いたような侵略戦争で、100%ロシアが悪いです。
 こういう戦争を始めた国を、「戦争反対」などと言って放置したら、これまでの国際秩序は崩壊し、19世紀以前の弱肉強食の帝国主義時代に逆戻りします。 
 19世紀の帝国主義と違うのは、強食側が皆核兵器を持っている事ぐらいです。 
 平和を愛する諸国民は、これを放置してよいのでしょうか?

 しかしそれでロシアを徹底的に追い込んで、ロシアが崩壊したら、ロシア以上の極悪国家である中国がさらに力をつけて、シベリア原住民は絶滅するという事態になりかねません。

 国際社会って面倒ですね。 
 一つの厄災を片付けたら、もっと大きな厄災が出現する。
 世界史ではこういう事は何度もありました。

 例えば第二次世界大戦なんか典型です。
 アメリカのルーズベルト大統領はナチスドイツを絶対悪として徹底的に潰しました。 その為に日本を挑発してアメリカの参戦を可能にして、ソ連を全面的に支援しました。
 しかしヨーロッパ戦線の終結がする頃、気づいてみれば、ソ連と言うナチスドイツより厄介な敵が育っていたのです。

 その後世界は自由主義世界と共産圏の対立になり、アメリカとソ連は世界各地で代理戦争を繰り返しました。
 ソ連の崩壊、そしてさらにロシアが崩壊すれば、ナチスドイツに変わって生まれた厄災は、完全に終わるはず・・・・・。

 しかしそうはなりそうにありません。
 ソ連と言う厄災が片付けば、中国がそれに成り代わって台頭しているからです。

 そういう事態にならないためには、ロシアのウクライナ侵略戦争の戦後処理を今から考えておくべきです。 
 プーチンとその取り巻きの戦争責任は追及するべきですが、しかしロシアとロシア国民の未来は閉ざすべきではありません。

 願わくばロシアが民主主義国家として、ウクライナやNATO諸国と和解して、繁栄できるような戦後処理を今から考えておくべきです。 
 日本やドイツが敗戦後も民主主義国家として繁栄できたように、ロシアもまた敗戦後に民主主義国家として繁栄することを心から望みます。
  1. ロシアのウクライナ侵略
  2. TB(0)
  3. CM(3)

コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  1. 2022-05-27 17:28
  2. #
  3. 編集

私もプーチンは恐ろしくて嫌ですが、プーチンのいないロシアはどうなるんだろうと思うとぞっとします。
同じく共産党のない中国もぞっとするんですが・・。

ロシアはあれほど資源も穀物も文字通り売るほどあるんですから、ちゃんとやれば平和な国になって西側と共存できるはずですよね。


今日ラジオの「音の風景」でニコライ堂のミサが流れていました。
キエフ公国の王様は「ミサが美しい」という理由で東方教会を選んだそうですが、本当に素晴らしく美しい聖歌でした。
美しい音楽もロシアのものですね。。
  1. 2022-05-27 17:51
  2. URL
  3. カプチーノ #-
  4. 編集

Re: タイトルなし

> 私もプーチンは恐ろしくて嫌ですが、プーチンのいないロシアはどうなるんだろうと思うとぞっとします。
> 同じく共産党のない中国もぞっとするんですが・・。

 ホントにゾッとします。
 これはソ連崩壊の時に心配されていましたが、大量の核兵器や原発を抱えたソ連が崩壊し、ユーゴ内戦のような状態になったら、大変な事になりました。

 ロシア崩壊だってまた同様の心配があります。

 だからこそとりあえずロシアを安定させたプーチンを日本や欧米も評価していたのです。
>
> ロシアはあれほど資源も穀物も文字通り売るほどあるんですから、ちゃんとやれば平和な国になって西側と共存できるはずですよね。
>
 ワタシもそう思います。
 ソ連崩壊後、多数のロシア人が欧米に移住したのですが、皆うまく適応しているようです。 だからいずれちゃんと民主化すると信じています。

> 今日ラジオの「音の風景」でニコライ堂のミサが流れていました。
> キエフ公国の王様は「ミサが美しい」という理由で東方教会を選んだそうですが、本当に素晴らしく美しい聖歌でした。
> 美しい音楽もロシアのものですね。。

 ロシアは美しい音楽や素晴らしい文学を生んできました。 だからちゃんと生き延びてロシア文化を守ってほしいです。
  1. 2022-05-27 19:54
  2. URL
  3. よもぎねこ #-
  4. 編集

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する