鈴木宗男の国会での発言です。
なるほどアメリカに人種差別がある事は事実です。
しかし現在のアメリカの公的な制度では人種差別は一切ありません。
また民間企業の雇用や就業規則等でも、人種差別は厳しく禁じられています。
一方アメリカは民主主義国家ですから、全て国民の思想・宗教・信条の自由は尊重されますし、まして感情や好悪にまで国家が介入することなど不可能です。
だから白人至上主義団体だって存在しますし、まして個人的に「オレは黒人とは付き合いたくない」と言う人が多数いるのも事実です。
現在「アメリカには黒人差別がある」と言うのは、このようにアメリカの社会や国家の制度の問題ではなく、個人の好悪の問題なのです。
個人の好悪のようなモノを力づくで変える事は不可能なので、この種の「人種差別」は今後も簡単にはなくならないでしょう。
しかし中国の人権問題は違います。
現在、中国はジェノサイトを行っているのです。
ウィグル人を強制収容所に入れて、強制労働を課し、またウィグル人に断種や不妊手術を強制して、ウィグル人と言う民族を絶滅させようとしているのです。
中国政府が、中国と言う国家が、ウィグル人をこの世から抹殺しようとしているのです。
このような国家による民族抹殺と、アメリカ人の一部が個人の好悪として続けている黒人差別とを等価に比較できる物でしょうか?
因みにこのような個人の好悪による差別と、ジェノサイトが等価であると言うなら、ナチスドイツのユダヤ人虐殺やスラブ殲滅作戦だって敢えて非難するべきではありません。
ユダヤ人への差別や迫害、スラブ人を一段下に見る傾向は、当時の連合国側にも共通していました。
反ユダヤ団体はアメリカにもイギリスにもフランスにもあったし、ポーランドなど東欧諸国に至っては、近隣住民がユダヤ人の集落を襲撃するなどと言う事件が再々起きていたぐらいです。
西欧諸国全体にこの種の反ユダヤ主義が横溢してたからこそ、ナチス党がドイツで政権を取ってドイツ政府が国家政策としてユダヤ人迫害を初め、それに恐怖したユダヤ人がドイツから脱出を図っても、近隣諸国はこうしたユダヤ人難民の受け入れには至って消極的だったのです。
1936年、ベルリンオリンピックが開会されたときは、既にドイツ国内にはユダヤ人の強制収容所ができており、その後の大虐殺への準備は着々と整いつつあったのですが、しかしそれを問題にした国はありませんでした。
因みに反ユダヤ主義はナチス党の政権公約ですから、ナチス党がユダヤ人を迫害することは秘密でもなんでもないのです。
このような西欧諸国の姿勢が、ナチの大虐殺の犠牲者を増やしたのです。
その意味では西欧諸国全体が、ナチのユダヤ人虐殺の共犯ともいえます。
それでもナチスドイツが非難されたのは、ナチスドイツのユダヤ人虐殺が規模においてもやり方を見てもあまりと言えば余りに凄惨で、反ユダヤ主義に違和感のなかった当時のイギリス人やアメリカ人も仰天するレベルだったからです。
だから鈴木宗男理論だと「連合国もユダヤ人への差別や迫害はあったのだから、ナチのユダヤ人虐殺も非難してはいけない、大人の対応をするべきだ。」と言う事になります。
こんなのマトモな話だと思いますか?
そもそも現在、虐殺真っ最中の相手に「大人の対応」って何ですか?
鈴木宗男は目の前で人殺しをしている奴を見ても、殺されかけている人を助けるでもなく、殺そうとしている奴を止めるでもなく、通報するでもなく、時候の挨拶でもするのでしょうか?
勿論中国は経済大国で世界中どの国にとっても重要な商売相手です。
また軍事大国でもありますから、安易に喧嘩を売れる相手でもありません。
しかしそれはベルリンオリンピック当時のドイツも同様でした。
ついでに言えば現在の中国が経済大国・軍事大国ではあっても、文化的には至ってつまらない国であるのに対して、当時のドイツが自然科学から哲学まで、すべての学問で世界をリードする国であり、映画や音楽など芸術出もまた世界有数の大国でした。
因みにヒトラーの肝いりで作られたベルリンオリンピックの記録映画は、歴史に残る名作になりました。
しかしこういうドイツの国力と、そしてそうした国力を持つ国と友好関係が持つ国益を考えても、やっぱり民族抹殺を実効しようとしているような国との友好関係と言うのはマトモではないでしょう?
どんなに経済力のある国であっても、学問芸術に優れた国であっても、一つの民族を抹殺しようとするような国とは友好関係なんか持つべきじゃないのです。
日本はそういう国と同盟を結んだ事でどんな目に遭ったか?思い出すべきでしょう?
日頃、第二次大戦に至る日本の外交を批判している連中は、なぜ現在の日本が対中関係で、戦前の轍を踏むことに警告しないのでしょうか?
アメリカには人種差別はあります。 でもアメリカでは黒人を強制収容所に入れて強制労働させているわけではありません。
黒人に断種や不妊手術を強制しているわけではありません。
唯アメリカ人の一部に、黒人が嫌う人や蔑む人がいると言うだけです。
しかし中国ではウィグル人は強制収容所に入れられて強制労働をさせられ、断種や不妊手術を強制されて、民族が抹殺されようとしています。
どうしてこれを等価に考えて「アメリカは黒人差別をしているのだから、中国がウィグル人を絶滅させることに文句を言うな」なんて言えるのでしょうか?
ワタシは大変不思議です。