随分な長文でその上グラフも沢山貼ってあるので、なんか一瞬論理的に見えます。 しかしよく読むと、書いている事に矛盾が一杯です。
「矢野論文」が響かない理由 金融市場はなぜ無視するのか 40年前の経済白書が…【解説委員室から】 2021年12月18日 時事通信
まず時事通信の解説者は、矢野論文は絶対正しい、日本は財政危機にある事を、絶対真理とします。
その上で、にも拘らず金融市場が矢野論文を無視して、日本国債を買い続け、日本国債の金利が上がるどころか下がり続ける理由を解説しようとするのです。
それでもこの解説者も「破綻リスクのある債権の金利は上がる」と言う原則は知っているようです。
そして矢野論文では日本国債は破綻リスクの非常に高い債券なのです。
ところが日本国債の金利は上がるどころか、下がり続けて遂にはマイナス金利にまでなっている状態なのです。
マイナス金利ってお金を貸したら、貸した方が借りた方に利息を払うんだから無茶苦茶ですよね?
でも日本国債はホントにこのマイナス金利でも大人気で、売れたのです。
これだといくら国債を発行しても日本政府に金利負担はないばかりか、こっちが利息を貰えてしまいます。
だったらバンバン国債発行して、財政出動すればよいじゃん!!
しかしそれをそのまま認めては、矢野論文の主旨に反します。
財務省様に叱られます。
さあ、困った!!
しかしこの解説者は矢野論文は絶対真理だと言う信仰で思考しますから、これを説明する論理を考えます。
そこで時事通信の解説者は「需給要因」と言う魔法の呪文をひねり出しました。
国債の「需要」が沢山ある事が、国債の金利が上がらない「要因」だと言う話です。
なぜ国債の需要が沢山あるのか?
それはデフレで国民も企業のリスク回避に専念しているので、国民は貯金に励み、企業は投資を避けて内部留保を増やすからだと言うのです。
銀行はこうやって集めた貯金の多くを国債の買い入れに回します。
なぜなら長期のデフレで、銀行も融資先がなくて、結局集めた貯金で国債を買うしかないと言うのです。
つまりデフレで民間の貯金が、銀行を通じて国債を買い続けていると言うのです。
これが国債の「需要」になって、政府が「供給」する国債の量を上回るので、国債の金利は下がり続けると言うのです。
この話を高学歴の解説者が書くとこんなふうになります。
こうした自己完結的な資金循環が形成されるのは、前述したように経済の長期低迷で将来不安が根強く、国民が預金に励むからだ。通常の金融理論では、金利がゼロになると高い金利を求めて資金は動く。国内に有望な運用先がなければ、金利の高い外貨に流れやすい。ただ、日本人は総じて「リスク回避」の性向が強いため、積極的に外貨リスクを取らない。預金は国内滞留を続けるしかないのだ。
しかしこれオカシクないですか?
リスク回避はわかりますよ。
そして一般国民の貯金も企業の内部留保も、多くは資産形成と言うより、病気や事故に備えて、不況や突発的異変に備えて、急場をしのぐ為の資金ですから、価格変動リスクのあるような資産にはできないのです。
でもね。
リスク回避の為に破綻寸前の国の国債買いますか?
リスク回避が目的なら、破綻の危険のある債権を買っては意味がありません。
そして現在の日本では、個人でも簡単に外国債券を買ったり、外貨預金をしたりすることができます。
それなのになんでワザワザ、破綻危機にある日本国債を買うんですか?
日本国債に投資している日本の銀行に日本円で預金しなきゃならないんですか?
因みにマジに破綻リスクのある国の国債だと10%を超える金利がつきます。 トルコリラ建ての債券なんか今は20%超えの金利がつきます。
そしてこういう債券も日本で普通に買えます。
どうせ破綻リスクのある債権を買うなら、金利がマイナスで破綻危機の債券よりも、金利が20%超えの方がマシでしょう?
また米国債やドル建て債券、ユーロ諸国の国債やユーロ建て債券だって、日本国債に比べたら金利は遥かに高いし、破綻の心配もありません。
小学生のお年玉貯金ならともかく、成人や企業が、まして金融機関がこういう日本国債よりも金利も高く「安全性」も高い国債を買わずに、殆ど金利がゼロで「氷山に向かうタイタニック号のような国債」を買ういう事はあり得ません。
ホントに自国通貨が破綻の危機に瀕しているような国の場合、国民は皆必死で自国通貨を外貨に換えようとします。 外貨が無理なら換金可能な商品に換えようとするのです。
ところが日本人は外貨が自由に買えるにも拘らず、敢えて外貨を買うわけでもなく、日本国債を売って外国国債を買おうともしていません。
それどころが日本国債を買う外国人も結構いるのです。 もしホントに日本の財政が危機的ならこうした外国人投資家が円を売り崩して、アジア通貨危機のようなことが起きるはずでしょう?
ところがコイツラは金利の低さを承知で、安全資産として日本国債を買い込んでいるのです。
コイツラはホントに銭ゲバなので、他国の破綻なんか知ったことかで、通貨危機でもなんでも仕掛けるんですが、大変不思議な事に、日本には通貨危機が起きた事はありません。
こういう状況を見たら日本の財政が危機的であると言う話の方がおかしいと考えるべきじゃないでしょうか?
しかしこの解説者は言うのです。
>財務省トップが警告しても金融市場が無反応で、金利が上がらない経済の方が財政よりも深刻な病状を抱えていると言えよう。
どうやらこの解説者にとっては財務省のトップと言うのは、無誤謬の教祖様のようです。
イヤ、だから今の世界で金融市場って日本国内だけじゃないからさ。
ホントに危機なら、ジョージ・ソロスとか世界中の銭ゲバファンドから襲われるはずだからさ。
でもそいつらが矢野論文を無視しているってことは、矢野論文はゴミだと言う事でしょう?
そもそも財務省のトップと言ってもこの人法学士で、商業簿記二級も持っていないし、ましてCDSつまり国債の破綻リスク計算から割り出した国債破綻の保険の保険料の計算もできないんでしょう?
訂正 矢野事務次官は法学士ではなく一ツ橋大学経済学部卒の経済学士でした。
経済学部卒なのにクルーグマンやスティグリッツの提言を理解できないと言うのが信じられないので法学士と思ってしまいました。
ごめんね矢野さん。
そういう人の言う事を有難たがって聞く人って、消費税の控除を受けたり、国有地の払い下げを受けたりしているマスコミ関係者だけじゃないんですか?
自分の金で投資をしている人が聞くわけないでしょう?
日本国民の大多数も、いやこの記事を書いている解説者だってホントは聞いていないのではありませんか?
だってホントに日本の財政が危機的だと思うなら、貯金は全額引き出して、ドル建てとかユーロ建ての債券に換えますよね?
でもそんなことしてないんでしょう?
しかしこれが財務省とマスコミのレベルなのです。
それにしても何でこんなにレベルが低くなってしまったのでしょうか?
江戸時代、幕府や藩の財政を仕切った勘定方の侍達は和算のエキスパートでした。
関孝和の公式な身分は、甲府藩勘定方吟味役でした。
彼等は他の侍からは「算盤侍」と蔑まれましたが、しかし高い計数能力を生かして、暦の編纂など近代以降なら科学者の仕事とされる仕事も行っていたのです。
当時は所謂科学技術に数学を使う機会は限られていたので、和算のエキスパートは経理に集中したのでしょう。
ところが明治以降、近代官僚制が確立したら、なぜか法学士が専業主婦の家計簿レベルの「節約第一」で国家の財政を仕切っているのです。
これはあんまりお粗末ではありませんか?
一体いつになったらこのお粗末な体制を改革できるんでしょうか?
江戸時代のように数理のエキスパートを全部財務省に集めるのは無理でも、欧米並みに合理的な財政政策のできる人材を集める事はできないのでしょうか?
しかも彼等は財布の握っている事で、他の省庁まで支配しているのです。 また税務署が財務省の支配下にある事から、マスコミも財務省に逆らえずに、この時事通信の記事のように財務省様絶対正義、国債金利を上げない市場が悪いなんてトンデモ記事まで書くのです。
日本はバブル崩壊後、経済成長が止まってしまったのですが、しかしコイツラ見ていると、止まって当然じゃないかと思います。