【書籍】 西欧の帝国主義より日本の帝国主義が良い?~塩野七生「ローマ人の物語」の隠れた論理、解剖[06/14]
「天皇vs法王」。塩野七生(しおの ななみ)が書いて空前のヒットを記録した「ローマ人の物語」を圧縮したキーワードの一つだ。日本では神の数が八万という。いちいち数えた八万ではなく、八はものすごく多いという意味だ。
塩野七生はキリスト教を国教に採択する以前のローマからすぐに多神教社会の日本を読みとろうとした。ローマが唯一神教のキリスト教を採択することによって多民族多国家を一つにまとめる帝国にふさわしい包容力を自ら無くしたと見る。これは大東亜共栄圏の主要論理の一つだ。偏狭で独断的な一神教法王に対抗して広い度量を持った多神教の天皇のふところに抱かれろとの論理だ。西欧帝国主義より日本帝国主義支配がより良いのではないかという話だ。
そのような観点からギリシャローマ史専攻者のキム・ギョンヒョン高麗大史学科教授が塩野七生の「ローマ人の物語」を分析した文を季刊誌「哲学と現実」にのせた。具体的に1~5冊までを要約整理した「もう一つのローマ人の物語」を分析対象とした「私たちにとってローマ史とは何か」という文だ。
しかし、ギリシャローマ史専攻者の立場では「ローマの興起があたえる歴史的教訓を塩野のように 乱暴に扱った例は古今東西、例がない。」と酷評した。なぜこういう結論に達したのだろうか。
塩野はカエサルは孤独だが英雄的な指導力を重視し、知識人キケロとブルータスを戯画化し、民衆はいつも英雄追従的な単一有機体として扱う。これは独裁に対する弁護と民主主義に対する留保に通じる。簡単に言えば朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領とその追従者を思い出せば良い。
塩野の言及はさらに直接的だ。「知識人は時代に対する洞察力は優秀だが具体的提案はない。」「独裁者が民衆を無視するというが事実、中途半端に権力を握っている人々は民意のようなものに気を遣わない。」「自分は確実なビジョンがないが他人がすることには大声で批判する。批判の為の批判だ。」と主張する。「ローマ人の物語」は日本版「私の墓に唾を吐け」であるわけだ。
キム教授は、それでは帝国ローマの膨張は他の異民族にとってどのような意味があったのかと訊ねる。これは「日本帝国主義の侵奪を受けなければならなかった私たちにとって、もう少し身近な質問」だ。塩野によればカエサルのガリア征服は「侵略欲求と領土欲求のために行われたものではなく、ローマの安全を確立するための戦争」だった。同時にローマの征服戦争によって伝播したローマの先進文明によって後代のヨーロッパの軸が置かれたと見る。
キム教授はひとまずカエサルが、ライン川とドナウ川をローマ帝国の境界線と考える遠大な構想を持ったという塩野七生の主張について「歴史的根拠がない。」と一蹴する。ローマ国内の真空のためにガリア地域を制覇する必要があったカエサルの野心を美化しようとして出てきた憶測というものだ。
重要な点は塩野のこのような推測自体がアジア大陸で日本に向かって突き出た朝鮮半島が威嚇的だから自国の安全のために韓国を侵奪したという日帝の「朝鮮腕ぶし論」(訳注:朝鮮半島を大陸から突き出した「前腕」に例え、半島が大陸勢力の手に落ちれば日本の安保が脅かされるという主張)に似ているという事実だ。それなら日帝は韓国と中国、東南アジアを自国の安全のための境界線に確定しようとする遠大な構想の下、帝国拡張政策を継続し、そのため韓国、中国、東南
アジアの今日があることになったのか。それならもはや自国の安全のための防衛線確定計画は何でも賛辞を受けなければならない行動なのか。
キム教授はここで当然出てくる質問を投げる。「日本が過去、大東亜共栄圏を夢見たように、中国が東アジアの永久平和を名分にして大国化を試みるなら、やはり機会を与えるべきか。」当然そのような訳がない。「私がすれば仕方ない自衛行動で、君がすれば帝国主義的侵略野心」なわけだ。キム教授はこれを「帝国主義に対するこういう二重基準はたいてい帝国主義者などが共有する属性」と言う。(後略)
チョ・テソン記者
ソース:ソウル新聞(韓国語) 西欧の帝国主義より日帝国主義がより良いと?
http://www.seoul.co.kr/news/newsView.php?id=20110615022003&spage=1
http://kamome.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1308055612/
ワタシの愛読書「ローマ人の物語」は韓国でも訳本が出て、随分売れたようです。 韓国人が何の為にこの本を読みたがるのかワタシにはとても不可解でした。
と言うのはワタシもこの記事のキム教授の言っている事は、全くその通りで、朝鮮人がこの本を読めば火病を起こすだけじゃないかと思ったのです。
塩野さんはこの「ローマ人の物語」でローマの帝国主義を絶賛しています。 またその為のローマの領土拡張が、本来防衛目的であったとしています。
そしてイギリスの植民地支配や、アメリカ帝国主義など「ローマの帝国主義に比べたら帝国主義とも言えない」と言っています。
ではなぜローマの帝国主義を絶賛したら、朝鮮人が火病を起こすのか?
それはローマの属州民に対する扱いと、イギリスの植民地人に対する扱いの違いを見ればわかります。
ローマでは属州民であっても、ローマの市民権をとることができました。 また属州民の中からも、元老院議員になることもできました。
例えばこのキム教授の火病しているカエサルは、ガリア征服の後、ガリアの有力者多数を元老院議員に任命しました。
カエサル没後も属州民の中から、有力者或はローマに功績のあった人々から多数の元老院議員が出ました。 それだけでなく、それらの人々の中から多数の皇帝も輩出しているのです。
そして塩野さんはイギリスの植民地支配と比べて、「例えばガンジーのような人は、ローマなら間違いなく元老院の議員になることが出来た。」と言います。
また属州に対する対応も違います。
ローマは属州のインフラ整備と防衛に心血を注ぎました。 そのインフラは道路や上下水道だけでなく、識字率の向上や公衆衛生の整備などの社会的インフラも含まれていました。
だからローマの属州だった所には、今の上下水道や劇場などの遺跡が残っています。 ローマ時代に作られた道路や橋は、近代まで重要な交易路として使われました。 今も使われています。
これは満足に道路一つ作らず、愚民政策に徹して、ひたすら経済的収奪にだけ務めた近代ヨーロッパの植民地とは大きな違いです。
防衛目的で属州を持ち、その属州のインフラ整備に努め、しかもその属州民からも国会議員選出を認めた。
そんな帝国が近代にもなかったわけではありません。 その帝国は大日本帝国です。
日本は対ロシア防衛の為に朝鮮を併合しました。 そして朝鮮に道路や水道、病院、学校などを作り、近代社会に必要なインフラ整備に努めました。
また朝鮮の王族や有力者を貴族院議員に任命しました。 そして朝鮮人もまた衆議院議員に立候補する事ができました。
それで当選して議員になった人もいます。
それだけでなく士官学校に入学して士官になることも、大学を出て高級官僚になることもできました。
もし日本の台湾支配が続いていれば李登輝さんが、日本の首相になっていても全然不思議ではありません。 そして朝鮮支配が続いてれば朴正煕が陸軍大臣になることもあり得たのです。
これはイギリスの植民地人ではあり得ない事でした。
ローマの属州には元老院議員が総督になる元老院属州と、皇帝から任命された軍人が総督になる皇帝属州がありました。
前者は経済植民地、後者は防衛の為の植民地です。 当然皇帝属州の方が予算面等で優遇されました。
日本の朝鮮、台湾の併合や支配は実はこのローマの皇帝属州に良く似ているのです。
キム教授が火病るのも当然です。
ローマの帝国主義を肯定したら、日本の帝国主義も否定できません。
そしてキム教授の苦言を入れて、日本が朝鮮の植民地支配を諦めたら、朝鮮はロシアの植民地になっただけです。
その現実を見ないで現実に苦情だけを言い続ければ、無意味に火病を起こすしかないのです。
その意味ではホントにこのキム教授の火病は誠に当を得たものです。
またローマの宗教政策も、キム教授が火病するほど興味深いものです。
ローマ人は30万の神々が居ると信じる多神教でした。
また同じ多神教でもヒンズー教のように、神官が専業で強大な権威を持つことはなく、ローマの神殿は日本式に言えば氏子であるローマ市民達により運営されていました。
ローマの中心であるカピトリーノの神殿は元老院議員達が、管理して祭祀に当たりました。
日本の田舎の神社などと同じやり方です。
ローマは新しい属州を得ると、その属州で崇められる神々の神殿を、ローマの神々の神殿と並べてカピトリーノの丘に作り、ローマの神々と同様に崇める事にしました。
こうしてカピトリーノの丘には様々な神々の神殿が並ぶことになりました。
一方属州にはローマの神々を祭る神殿を建てました。
また多神教であるため、神と人との境界は低く、皇帝が神格化されました。 つまりカエサルが生前から「神君」の称号を得ていたのです。
これなど欧米のローマ研究者には非常に抵抗のあることらしいのです。
塩野さんの「ローマ人の物語」の面白さは、こういうキリスト教的な抵抗感の無い目でローマ史を見ている事です。
その後全ての皇帝が神格化されたことなども、明治神宮や東郷神社などを持つ日本人から見れば、何の違和感もなく理解できる事だからです。
しかしこのキム教授がウリスト教徒なら、とにかく火病らなければなりません。
ところでこのエントリーでアップした写真は北海道神宮の境内です。
この神宮の御祭神の御一柱は明治天皇です。
ここは実は台湾人に大人気の観光スポットで、いつも台湾人の観光客を乗せた観光バスが来ます。
それに台湾のグーグルで北海道神宮を検索すると、神宮に参拝した事を書いたブログがゾロゾロヒットします。
でも韓国人は全然見かけません。