先週、you tubeで柏原竜一先生の「日本人だけが知らないインテリジェンス」を見ていたら、その中でヴェノナ文書とソ連の情報工作について取り上げ、「ソ連が建国20年足らずで高度な情報機関を完成させていた事は驚異だ。」という意味の事をおっしゃっていました。
柏原先生の「日本人だけが知らないインテリジェンス」は、インテリジェンス、つまり情報機関の活動と言う面から世界史を解説していて非常に興味深いので、ワタシも毎週楽しみにしています。
しかし全くの素人であるワタシがこんな事をいうのもなんですが、ソ連が建国20年足らずで高度な情報機関を持っていたのは、当然でないかと思ったのです。
なぜなら共産主義国家とは、共産主義者による情報工作によってできた物です。
革命家とは情報工作を駆使して国家を転覆させ乗っ取った人間です。
その情報工作が成功して国家乗っ取りに成功した時、工作員の中で最高の人間が独裁者して君臨する国家なのです。
だから共産主義国家が軍隊や外交官を持つのは、革命成功以降ですが、情報工作はその遥か前から継続していたのです。
これは普通の国家とは真逆です。
普通の国家、例えば日本や柏原先生がこのシリーズの初期に取り上げたヴェネツィア共和国などとは、完全に逆なのです。
ヴェネツィア共和国は近代以前に高度な情報機関を持った国家として知られていますが、これはヴェネツィア共和国が国家として完成したのちにできたものです。
古代ローマが崩壊する前から、アドリア海の干潟に人間が住み始め、彼等が海運や商業に乗り出して成功するようになりました。
しかしローマ帝国が崩壊に向かい、イタリア半島全域が蛮族の侵入で混乱で混乱する中、彼等は自分達の生命と財産を守る為に団結し、国家を作りました。
そしてその国家を守る為に軍隊を持ちました。
しかし軍隊だけでは、自分達の安全も、また地中海一円に広がった商業権益も守れません。
国家と国益を守る為には、外国の情報を収集し、更に進んで自分に都合の良い情報を拡散したり、他国の君主や高位聖職者などを取り込むような工作も必要である事がわかってきます。
それでヴェネツィア共和国は情報工作機関を作り、それを地道に発達させ続けたのです。
幸いヴェネツィア共和国は800年間もの間、同じ共和政体を守り続けました。 だから情報工作機関もその間に連綿と発達し続けたのです。
逆にいえば地道に情報工作活動を続けて、その成果を有効に活用し続けたので、人口15万の小国が、法王庁やオスマントルコ帝国と言った強大な敵と対峙しながら800年間も安定して存続できたのです。
しかし共産主義国家と言うのは、そもそも国家としては存在していませんでした。
共産主義国家と言うのは、軍隊も外交官も、それどころか国民も領土もなく、あるのは共産主義と言うツールを使って国家を我が物として権力を得たいという人間だけでした。
なぜなら共産主義により国家権力を簒奪すれば、無限の権力を得る事ができます。
絶対王政の君主も、古代エジプトのファラオやローマ帝国の皇帝も、このような権力は持てません。
絶対王政の君主や古代エジプトのファラオは、神を恐れ神に従わねばなりませんでした。
ローマ帝国の皇帝に至っては、終身ではあるものの、アメリカ大統領とさして違わない存在でした。 そしてチョイチョイ、暗殺されたのです。
しかも彼等が支配できるのは、所詮現実の世界だけです。
人間の精神を支配する事はできませんでした。
しかし共産主義は神の存在も、魂の存在も否定したので、共産主義国家の支配者になれば、神も恐れず、人間の精神のすべてを支配する事ができるのです。
しかし共産主義革命で得られる権力がいかに絶大であろうとも、革命に成功しなければタダの人。
何の権力もありません。
その彼等ができるのは、情報工作だけです。
そこで彼等は共産主義の宣伝工作を行い、自分達同様に権勢欲に燃える人間や、更に純真無垢だけれど現実認識能力の弱い若者達を共産主義者にしていきました。
そうやって人数が増えると、それが組織になり、大学や言論界、そして政治家などへの浸透工作を図るようになりました。
そういう浸透工作の結果、いろいろな情報が得られるようになると、その情報から政治家の弱みを握り、それを梃に利権を獲得して、工作資金を得るようになりました。
因みにこれは日本共産党もやっていて、有名女優や大企業の幹部や高級官僚の中にも秘密党員がいて、共産党の宣伝活動や企業や政府の重要情報を共産党にリークしたりしていると言われます。
また北朝鮮の主体思想派も、同様に日本で工作活動を続け、浸透工作と利権で政治家に入り込み、アイヌ新法なんてモノまで成立させています。
こうやって組織を拡大して、力をつけたところで、戦争などの混乱が起きた時に、それに乗じて国家を乗っ取ろうというのです。
そしてロシアや中国ではそれに成功したのです。
だから国家ができて、外交や国防の必要ができてから、それに必要な情報を得る為に、情報機関ができて情報工作活動を始めたのではないのです。
共産主義者が情報工作組織を作り、その活動を続けて、最終目標を達成してできたのが共産主義国家なのです。
軍隊や外交官やその他の官僚は、国家乗っ取りに成功してから得た物ですが、情報機関は革命前から連綿と存続し発展してきた物です。
勿論それが国家組織として認知されたのは、革命成功の後です。
しかしそれは政府そのものも同じです。
革命家の組織が革命に成功して、政府になり、そして国家の情報機関になったのです。
その政府と情報機関って、実は不可分と言うか中身の人間が殆ど同じでしょう?
そしてその仲間内で熾烈な権力闘争を続けて、そこでお互いが情報工作や謀略を駆使して仲間を陥れようと争い、最後に生き残った人間が共産主義国家の最高権力者になったのです。
つまり共産主義国家の最高権力者と言うのは、情報工作や謀略活動の大天才なのです。
だからソ連のような国では、国家成立とともにで情報工作活動を始める事ができるのです。
というより、共産主義国家のインテリジェンス活動と言うのは、革命に成功して権力を得た人間達は、それまでやってきたことをそのまま続けているだけなのです。
違いと言えば、革命成功で国家を我が物にしたので、国家権力と国家予算を潤沢に使えるようになったことぐらいです。
それを考えれば、ソ連が成立して間もなく、強大な情報機関が成立して、それが全世界で工作活動を始めた事は、当然ではありませんか?
そもそもソ連の工作活動に協力したアメリカや日本などの共産主義者や、その親派などは、ソ連が成立する前から同志です。
仲間が革命に成功したのだから、オレタチも続けとばかりに喜んで協力するし、ソ連側にも助ける義理があるのです。
だから共産主義者のネットワークだって、昔からあった物が、ロシア革命成功で資金力を得てパワーアップしただけではないでしょうか?
これは例えば、共産主義国家でない国が、共産主義国家のインテリジェンスに対抗するためには、自国内で活動する共産主義者の実態を知るところから始めなければならないのと比べたら、大変な優位です。
そしてソ連が対独戦でアメリカの支援を得ながらも、アメリカへの敵意を捨てず執拗に工作活動を続けるのも当然でしょう。
だってコイツラ、自分達の祖国にも敵意を抱いて国家乗っ取りをやったのです。
コイツラ、自分達の皇帝一家を子供まで皆殺しにして、硫酸で焼きつくしたのです。
コイツラ、自分達の農民を意図的に大量に餓死させたのです。
コイツラ、自分達の軍隊の軍人達を徹底的に粛清して、優秀な将軍をあらかた殺したのです。
共産主義では、共産主義が世界を征服しなければならないことになっています。
そしてそうなれば、自分達は世界の支配者になれます。
それが共産主義の正義です。
だから一般アメリカ人がいくら対独戦の仲間だと信じて、善意でソ連を支援しても、そのアメリカ人達に工作活動を仕掛けて、アメリカを破壊しようとすることに、良心の呵責など感じるはずもないのです。
だからソ連政府の中では冷戦は、実は独ソ戦の最中から始まっていたのです。
と、言うよりそもそも共産主義が成立した時から、資本主義国家は敵なのです。
でもドイツとの戦争で困っているからアメリカを利用しただけなのです。
利用している間も、利用し終わった後から、相手を倒す事を考えているのです。
これは中国だって同じでしょう?
中国だって共産主義で世界を征服するべきだと考えている国なのです。
だからいくら日本が善意で経済支援をしても関係ないのです。
日本が中国共産党の支配下に服するべきでアル。
日本人が勝手に自分達の政府を作っているのが間違いアル。
彼等は本気でこう考えているのではありませんか?
しかしこれは共産主義国家だけではなく、イデオロギーや宗教により作られた国家、そしてイデオロギーや宗教による組織、イデオロギーや宗教に生きる個人はみな同じではありませんか?
例えばサウジアラビアはアメリカとはきわめて親しい同盟国ですが、しかしあの国はイスラム過激派への資金提供をやめません。
そもそもイスラム過激派が生まれた一因は、サウジアラビアが金に飽かせてイスラム諸国の若者達を招聘して、極めて原理主義的なイスラム神学を教え込んだ事です。 そしてサウジアラビアは今もそれを続けています。
だってあの国は、元来ワッハーブ派と言う極めて厳格なイスラム教の一派が作った宗教国家です。
国家の理念からは、世界中をイスラム化しなければならないのです。
これはイランも同様です。
そしてオウム真理教だって同じ事を考えたけれど、国家を作る前に挫折しちゃったのです。
イデオロギー国家や宗教国家は、宗教やイデオロギーの違う国とは常に戦い続けるのです。
ヴェネツィア共和国のような、日本やアメリカのような国は、現在自国の国民が安全に平和に、そして豊に暮らせればそれで満足なのです。
そしてそれが危うくなった時、経済や安全保障で、他国との対立がどうしようもなくなった時に、初めて戦争を考えます。
そしてそれで戦争になっても戦争が終われば、また友好関係を回復します。
戦争は意見の対立の調整が不可能になった場合にそれを突破する非常手段の一つとして有効だと考えていますが、しかしリスクが大きすぎるので、できるだけ避けるべきだと考えています。
しかしイデオロギーや宗教により成立した国家は、経済も安全保障も関係なく、イデオロギーや宗教が違う国は敵なのです。
なぜならそういう国にとって、自国のイデオロギーや宗教は人類普遍の真理であり、人類はすべてその宗教やイデオロギーで統一されるべきと言う理念で成り立っているのです。
だからどんなに経済援助や技術援助を受けても、関係ないのです。
そしてどんなに経済関係その他が良好でも、イデオロギーや宗教が異なる国は常に敵国であり、そのような国は滅ぼさなければならないのですから、常に戦争状態と言う事になります。
勿論、ミサイルや大砲を撃ち合うような戦争を常に続ける事は不可能なので、相手国を破壊するための情報工作を続ける事になるのです。
これは最初に戻りますが、革命家達が自国乗っ取る為にやってきたことを、そのまま他国相手に続けるという事です。
そしてその国を乗っ取るまで永遠に続けるのです。
こうなると戦争と平和の間に境界はなくなります。
中国では今、超限戦と言うのをやっていると言います。
これはまさに戦争を軍事だけに限定せずに、経済活動や文化活動などあらゆる分野で、ありとあらゆる手段を用いて、敵国に浸透しその国を侵略するという物だそうです。
これは孫子の兵法に由来すると言われます。
しかしそれだけでなく共産主義者が革命を起こす為に、過去に自国内でやってきた事と同じでしょう?
そして革命に成功し権力を得た後、自国民相手にやっていることでしょう?
日本の隣国はそういう国なのです。
本当に怖い話ですが・・・・・。
勿論、ワタシはインテリジェンスの知識などほとんどありません。 柏原先生などのインテリジェンスや中国の浸透工作に関する動画を見ただけです。
で、それを元に自分で考えると、イデオロギー国家や宗教国家はホントに怖いと思ったのでこのエントリーを書きました。
皆様はどうお考えですか?
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