先月末にトランプ大統領が日米同盟の片務性に不満を言ったというニュースがありまりました。
トランプ米大統領は26日、米テレビ局FOXビジネスのインタビューで日米安全保障条約に言及し、「日本が攻撃されれば、米国は第3次世界大戦を戦う。我々は命と財産をかけて戦い、彼らを守る」と強調した上で、「でも、我々が攻撃されても、日本は我々を助ける必要はない。彼らができるのは攻撃をテレビで見ることだ」と主張。条約は不平等だと不満を表明した。
トランプ氏は「米国は世界の警察官ではない」が持論。就任以来、米軍の外国駐留は公金の無駄遣いとして、同盟国に「公平な負担」を求めるなど、同盟関係を軽視する発言を繰り返してきた。
日米安保条約では、米国は集団的自衛権を行使して日本を防衛する義務があり、日本は米軍に基地を提供する義務があるが、トランプ氏は条約を「片務的」とみて、不満を表明したとみられる。
トランプ氏は「米国は世界の警察官ではない」が持論。就任以来、米軍の外国駐留は公金の無駄遣いとして、同盟国に「公平な負担」を求めるなど、同盟関係を軽視する発言を繰り返してきた。
日米安保条約では、米国は集団的自衛権を行使して日本を防衛する義務があり、日本は米軍に基地を提供する義務があるが、トランプ氏は条約を「片務的」とみて、不満を表明したとみられる。
日本が攻撃されれば、米国は第3次世界大戦を戦う。我々は命と財産をかけて戦い、彼らを守る
でも、我々が攻撃されても、日本は我々を助ける必要はない。彼らができるのは攻撃をテレビで見ることだ。
ええ、現在の日米同盟の規定では、その通りです。
しかし日米同盟の片務性をなくしたとして、現実の世界でアメリカが攻撃されてアメリカ人が自国を守る為に命がけで戦い、それを日本人がテレビで見るような事態って起きるのでしょうか?
確かに世界中にはイランや北朝鮮などの反米国家や、イスラム原理主義者など反米勢力は沢山あります。
しかしコイツラにできるのはテロぐらいです。
本当にアメリカを脅かすような国と言うは、嘗てのソ連、そして現在は中国だけです。
しかしいずれの国もアメリカを攻略するためには、まず太平洋を越えなければなりません。
太平洋の制海権を確保しないと、アメリカを攻撃する事は絶対に不可能なのです。
ところがソ連もそして中国も、太平洋に出るにはまず日本領海を通らなければなりません。
しかし米ソ冷戦時代もそして現在も、自衛隊は米軍と協力して、中ソの艦船が太平洋に出るのを阻止する体制を作っています。
逆に言えば中ソがアメリカを攻略する前には、まず日本を攻略するか日本を味方につけるしかないのです。
つまり中ソがアメリカを攻撃するつもりなら、その前にまず日本が攻撃される事になります。
アメリカとしては自国の安全を守る為には、ここで日本に加勢をして中ソを撃退しなければならないのです。
だからトランプ大統領が言うような「日本が攻撃されれば、米国は第3次世界大戦を戦う。我々は命と財産をかけて戦い、彼らを守るでも、我々が攻撃されても、日本は我々を助ける必要はない。彼らができるのは攻撃をテレビで見ることだ。」などと言う事態が、現実に起きる可能性は皆無なのです。
それどころか日米安保条約なんてなくても、アメリカとしては自国の安全の為には、日本がソ連や中国の支配下に入る事は、絶対に阻止しなければならないのです。
オイオイ、核ミサイルの事を忘れてないか?
ええ、勿論中ソがIGBMをアメリカにぶっ放すという事はあり得ます。
これなら太平洋の制海権なんか関係ありません。
しかしこうなるともう日本が加勢をしてどうなるって話じゃないですよね?
アメリカの同盟国であるイギリスやフランスも核ミサイルを持っていますが、しかしこれソ連までならともかく中国に届くんでしょうか?
超大国同志が核戦争になった場合、同レベルの超大国でなければ何の役にも立たないとしか思えません。
むしろこういう場合アメリカ国民の生命を守るのは、同盟国の核ミサイルじゃなくて、ミサイル防衛システムでしょう。
そのミサイル防衛システムをアメリカと共同開発したのは、日本です。
ミサイル防衛システムのような国家にとって死活的に重要な技術は、アメリカ一国で作るのがベストですが、しかし日本の技術と資金抜きのアメリカ単独では厳しいと考えたからこそ、共同開発を持ちかけたのです。
つまり日本こそが核戦争に備えてアメリカ国民の命を守る為に、最も重大な貢献をしている同盟国なのです。
そもそも日米同盟が片務性を抱え込むようになったのは、アメリカが日本に押し付けた日本国憲法の為です。
あの憲法は元来、アメリカが日本に軍事力を持たせない為に押し付けた憲法なのです。
米ソ冷戦は第二次大戦が終結する前に始まりました。
しかしそれでも終戦当時のアメリカの腹心算では、日本人は無類に野蛮で好戦的な民族なので、牙を抜いて去勢しておくべきだ、軍隊なんぞ持たせない方が良いという事だったのでしょう。
ところが朝鮮戦争勃発で、共産主義の脅威は終戦当時の想定以上に深刻である事に気づいたのでしょう。
そしてアメリカの安全の為には、日本を絶対にソ連に渡してはならないという事がわかったのでしょう。
しかし日本は憲法を変える事ができませんでした。
だったら片務性があってもそれでよいから、それで日米安保条約を締結しちゃったのです。
日本にすればこれでソ連や中国の侵略からアメリカが守ってくれる事になります。
米軍基地があり、自国は軍隊も持てない状態では事実上属国なのですが、それでもアメリカの属国でいる方がソ連や中国の属国になるより百倍良いのですから、我慢するしかないのです。
それにアメリカと同盟国だったお陰で、アメリカ市場に進出できて、戦後の経済発展は実に順調でした。
それで戦前をはるかに凌ぐ経済力と技術力を得る事ができたのです。
一方アメリカにすれば片務性はあっても、日米安保条約は美味しい条約です。
例えば在日米軍基地の維持費用は、日本が7割以上を出しているのです。
在日米軍の駐留経費は44億ドル余もかかるのですが、その7割以上は日本政府が出しているのです。
しかも日本の基地は日本本土防衛だけでなく、東シナ海は勿論、南シナ海、西太平洋全域の防衛をカバーできるのです。
例えば湾岸戦争でイラクを攻撃した戦闘機は日本の基地から発進しました。
ホントはヨーロッパの基地から飛ぶ方が近いのですが、しかし日本の基地の整備員は優秀なので、米軍のパイロットにとっては、日本の基地で整備した機に乗っていく方が安心なのです。
その整備員の給料も全部日本政府が払っているのです。
日本の米軍基地って地理的に非常に重要な位置にあるばかりか、補給や戦闘機その他の武器の整備などの機能から言っても最高のレベルなのです。
ここを喪うとアメリカのアジア・太平洋戦略は機能しないのです。
こうなると日米同盟の片務性で、アメリカが困るのは、アメリカが時々やらかす小国相手の戦争、湾岸戦争とかアフガン侵攻とかに、日本が参戦しない事ぐらいです。
しかしこの手の戦争の相手がどこまでアメリカにとって危険かどうかも怪しいばかりか、そもそも何の為にこんな戦争をしているのかさへ今一釈然としない場合も少なくありません。
そしてこうした戦争でも戦力は圧倒的にアメリカ軍ですから、お付き合いで参戦した同盟国軍は、戦力としては殆ど意味はないのです。
勿論アメリカ人の気持ちの上では、お付き合いでもしてくれるのは嬉しいです。
戦争の動機が不純で、内心後ろめたい気持ちで戦う場合は、猶更です。
内心後ろめたい気持ちで戦争をしているのに、したり顔で「平和が大切」「子供達を殺すな」なんて言われると、心底腹が立ちますよね?
そこへ行くとイギリスなんか、アフガニスタンに王子様まで送ってくれるのですから、アメリカ人から見れば心強く嬉しい限りでしょう?
そしてお金や戦略がどうあれ、人の命とは別問題なのです。
ホルムズ海峡で日本のタンカーを守る為に米兵が戦死しても、日本は知らん顔なんて事をしていれば、そりゃ一般のアメリカ人は頭に来るのです。
そこでヤッパリ、トランプ大統領のような不満が出てくるわけです。
逆に言えばこの片務性があるからこそ、日本は他国と比べて突出した予算を米軍の駐留経費に出さざるを得なくなっているのです。
軍事と外交は元来冷酷でドライですから、アメリカの外交軍事の中枢から見れば、日米安保条約は片務性のまま維持するのが理想ではないでしょうか?
そうすれば日本には在日米軍の駐留経費を出させるほかにも、様々な要求を通す事ができるのです。
何しろ日本は自力防衛が不可能ですから、イザとなればアメリカに従わざるを得ないのですから。
一方日本は憲法9条のくびきがあるので、自分から戦争はできません。
防衛戦でも自衛隊独自ではできる事は限られています。
だって自衛隊には「攻撃型」の兵器や部隊がありません。
これはバッターのいない野球チームみたいなものですから、このチームだけでだけで戦い続ける事は不可能なのです。
だから米軍が主力となって自衛隊はその警護をするような体制で戦う事になっているのです。
これだとアメリカの協力なしには日本は防衛戦も戦えないのです。
これだと日本は防衛について全面的にアメリカに従うしかなく、そうなるとホントの意味での独自外交など不可能なのです。
だから属国なのです。
そして日本がこの片務性を宛にして憲法9条で引き籠っているおかげで、日本の武器が武器市場に出てこないなんて事だってアメリカには利益でしょう?
これってアメリカからすれば最高ですよね?
もし日本が
ごめん、長い間、日米安保の片務性で迷惑かけちゃって。
でも憲法変えたから、これからはちゃんとアメリカが攻撃された時は、日本も参戦するよ。
だから在日米軍駐留経費の負担割合はイギリス並みにしてね。
それからオレ、韓国から竹島を取り返すから文句言わないでね。
イギリスがフォークランド取り返す為にアルゼンチンと戦争した時も文句言わなかったでしょう?
あと拉致被害者を奪還するために北朝鮮も攻撃するからね。
人権問題なんだから応援してね。
って言ったらどうするんでしょうか?
アメリカとしては、これが困るから日本に憲法9条を押し付けて、日米安保条約の片務性を我慢してきたのでしょう?
実利を考えたら日米安保条約の片務性は、アメリカにはちっとも困らない、むしろ有利な事ばかりなので、アメリカは社会党に金を出して護憲運動をやらせていたとさへ言われます。
今9条教を信奉する人達もその系列でしょう?
逆に言えば日米安保条約の片務性はマジに、アメリカに有利であり、日本の不利なのです。
本来ならこれを改定して、日本が攻撃された時には、アメリカは日本を助ける、その代わりアメリカが攻撃された時は、日本がアメリカを助けるという風に完全に対等な条約にすれば、日本もアメリカの属国を止めてアメリカと対等になれるのです。
そしてイギリスがフォークランドを取り戻したように、自力で竹島を取り返す事もできるし、また拉致被害者を奪還する事もできるのです。
勿論、それ以外でも外交上の自由度は遥かに広がります。
しかしワタシはもっと根源的な問題があると思います。
それはアメリカの国力が相対的に落ちているという事です。
アメリカだけでなく欧米先進国の力全体が相対的に落ちているのです。
例えば第二次大戦直後、アメリカのGDPは世界の半分を占めていました。
それが現在では20%です。
アメリカが衰退したわけではありませんが、アジア諸国を中心に過去に欧米の植民地だった国々が発展てきたのです。
そして中国のようなモンスターも出現したのです。
こういう中で民主主義・法の支配と言った価値観に基づいた世界秩序をアメリカの力だけ守る事は難しくなってきたのです。
そのような状況で日本がいつまでもアメリカの庇護を宛にできるのでしょうか?
日本がいつまでもアメリカに防衛を任せて、自分は稼ぐばかりと言う事をやっていて良いのでしょうか?
民主主義や法の支配と言った価値観による世界秩序を守り続けたいなら、日本ももっと積極的に行動するしかないのではありませんか?
例えばアジア諸国が力を合わせて中国の侵略を防ごうと思っても、アジアの中で一番力のある日本が、何もできない、する気もないではどうしようもないでしょう?
もしも日本以外にアメリカと協力して世界秩序を守っていける国が他にあるなら、その国に任せておけばよいでしょう?
でも残念ながらそんな国はこの世にないのです。
残念だけれど日本以外にアメリカと協力して世界の民主主義を、そしてアジア諸国を守っていけるような国はないのです。
だったら日本は一刻も早く憲法を改正して、日米同盟の片務性を解消できるようにするべきでしょう?
トランプ大統領が日米同盟の片務性に文句を言っている今こそ、そのチャンスではありませんか?