fc2ブログ

2019-05-31 13:59

増税論に合理的な根拠はない 高橋洋一vs増税派・原真人

 夕べ「激論クロスファイア」の反消費税増税派・高橋洋一と増税派・原真人の議論を見ました。

  https://gyao.yahoo.co.jp/title/【BS朝日】激論%EF%BC%81クロスファイア/5ba9f427-1d4f-40a3-ad82-209f6a98c45e

 番組は5月26日に放映された物ですが、ギャオで6月2日まで見る事ができます。



 ワタシは現在増税反対派です。 
 その論拠の殆どは高橋洋一の受け売りです。

 しかし高橋洋一が絶対正しいとも限らないので、反論はできるだけ聞く事にしています。
 だから夕べもこの議論をたわけです。

 で、議論を見た結論ですが「やはり増税派には合理的根拠がない」です。

2019y05m31d_144443855

 そもそも増税派・原真人の言っている事が、支離滅裂なのです。

 彼は日本の国債残高が1000兆円を超えて、GDPの二倍、だからハイパーインフレになる!!!と言います。
 
 一方で「アベノミックスにより、日銀が大量に国債を買い続けているにも関わらず、インフレターゲットが達成できない、だから日銀の金融緩和政策は無駄であり、止めるべき」ともいうのです。

 ??

 日銀が国債を買うという事は、国債をお金に換えるという事です。
 だから日銀による国債の大量買入れが続けば、市中に出回るお金が増えて、インフレになります。

 そしてその国債買い入れが破滅的な量になれば、インフレも破滅的になるというのは、低学歴のワタシにだってわかります。

 だから2012年にアベノミックスが始まって以降、日銀はインフレターゲットつまり年率2%のインフレを実現するために、国債を大量に買い入れて市中に出回るお金を増やそうとしてきたのです。

 ところが現在まで年率2%のインフレにはなっていません。

 この状況について、原真人は「だから日銀の国債買い入れは無駄。」と言いながら、しかしこれを続けると「ハイパーインフレになる。」と言うのです。

 これオカシイでしょう?

 ハイパーインフレになるのが心配だから日銀の国債買い入れを止めろ、言うのであればインフレが起きていない段階で国債買い入れを止める必要はないでしょう?

 これまで日銀が国債を買い入れてもインフレにならなかったのは、つまりはそれでもまだ市中に出回るお金が足りなかったからではありませんか? 
 そもそも買い入れた国債と引き換えに、渡された代金が貯金になってしまい、市中に出なかったのではないでしょうか?

 いずれにせよ現在のところ国債を日銀が国債を買い入れてもインフレターゲットを達成できていないのですから、とりあえずターゲット達成まで買入れを続けるべきでしょう?

 国債買い入れを続けたからと言って、直ぐにハイパーインフレになるわけではありません。 インフレ率が2%になるまで続けて、2%になったところで止めれよいのです。
 最初からそういう予定だったでしょう?

 高橋洋一も番組内で「インフレターゲットに達成するまで、国債の買い入れを続ければ良い。」と言っていました。
 
 それをインフレターゲット達成前に止めなければならない理由が、全然わかりません。

IMG_0027
 
 これについて彼は国債残高について、明治初年から始まる長期のグラフを出して、現在の国債発行残高とそれに至る経過が、第二次大戦直前から貯金封鎖等が行われた戦後のインフレ期までの経過と酷似している事を示して、現在の日本の財政状況がいかに危機的であり、このままいけば戦後のインフレのような状況になる言うのです。

 確かに国債発行残高のグラフは戦前から戦後までと、バブル以降から現代までと大変良く似ています。
 しかしこれも高橋洋一が番組内で反論した通り、戦争で生産力の殆どを破壊されて、国家の資産も灰塵に帰した時代と現在では状況があまりに違います。

 現在の日本は国内の生産力があり余り、世界一の債権国でありその債権から得られる金利輸入で、常に経常収支が黒字になってるのです。
 明治から敗戦までの日本とは全然状況が違うのです。 

 原真人によらず「財政赤字でハイパーインフレが~~!!!」と言う人達が持ち出すハイパーインフレや国債暴落の例って皆この手なんですよね。

 つまり敗戦直後の日本とか、第一次大戦後のドイツとか、南北戦争敗戦後の南部同盟とかです。
 こんな敗戦で国土が荒廃し、国家主権をその物を喪ったような非常時の経済の話が、現在の日本と比較になるんでしょうか?

 財政金融政策の失敗だけで、ハイパーインフレが起きるというなら、戦争をしたわけでもなく、国家主権も国内の生産力も資産も喪われてない状態で、国債が暴落し、ハイパーインフレになった国の例を挙げて貰わないと困ります。

IMG_0033

 そしてアベノミックスへの評価ですが、高橋洋一はインフレターゲットは達成できなかったけど、失業率が減り雇用が改善した時点で、成功だと評価しています。
 因みにインフレターゲットが達成できないのは、前回の消費税増税の為だと言います。

 ワタシも消費税増税とそして本来アベノミックスでやると言っていたはずの財政出動を殆どやらなかったからだと思っています。

 しかし原真人は、失業率が減ったのは、日本の人口減少と高齢化の進行で、労働力不足になってきたからであり、アベノミックスは失敗だったと言います。

 これについて高橋洋一は、労働力の減少は民主党政権時代以前から始まっていたけれど、しかしアベノミックス開始以前には雇用は改善していない事をグラフで示しました。
 
DrJkmeeU0AEGIEd.jpg

DytVRD5UYAAIw8c.jpg
 「記録的な雇用改善」はマクロ経済政策の正しさを示している
 
 これを見ると人口減少は民主党政権時代以前から始まっていたけれど、雇用の増加はアベノミックス開始以降、そしてその増加量は人口減少をはるかに上回っているのです。

 これでは人口減少だけで、雇用の改善を説明するのは不可能です。

 これに対して原真人は、「増えたのは非正規ばかり」と言います。

 ええ、非正規労働者が増えたのは確かです。
 しかし正規雇用も確実に増えています。

 3240.gif

 原真人は「正規雇用が減って、その仕事を非正規が数人で行うようになったので、雇用者数が増えた」と言っていました。
 
 しかし正規雇用者が減ったという事実はないのです。

 むしろ人口が減少する中、フルタイムの正規雇用で働ける人の人数が限られている為、高齢者や主婦と言った人達が非正規雇用者として働くようになったというべきでしょう?

 実はこの図の元の図録(非正規雇用者と正規雇用者の推移)に非正規雇用者の内訳や、非正規雇用を選んだ理由のグラフも示されていますが、実は非正規雇用者の圧倒的多数は主婦のパートです。
 そしてその次が高齢者です。

 だから非正規雇用者の中で正規雇用を望んでいる人は、男性で2割、女性では1割弱なのです。

 こういう状況を無視して「非正規が~!!」と言われてもね・・・・。

 それにしても原真人お粗末です。
 番組で高橋洋一が示した雇用者数の推移のグラフは、彼が他の論文でも何度も使っています。 
 ネットにも一杯出ています。

 原真人は番組に出演する前に、高橋洋一の論文をチェックしてなかったのでしょうか?

2019y05m31d_144648915
 
 雇用について言及したらこのグラフが出る事は自明なのだから、反論の為の資料を自分でも用意しておくべきだと思うんですけどね。
 
 それでも原真人はアベノミックスは失敗、日銀の金融緩和は止め、消費税を増税するべきと言うのです。

 「増税しないと日本経済が破綻する」と言うのです。

 それじゃ破綻の確率は?

 それはわからない・・・・・。
 確率として考えていない。

 と言うのが原真人の答えです。

 一方、高橋洋一は5年以内の破綻の確率を計算して5年以内では1%未満と言います。
 これには国債暴落の保険料の算定にもかかわるので、全世界の国債暴落のリスクを算定する方法が確立しているのです。

 国債を持っている人は、国債が暴落すると大損害を被りますから、その損害に対応する保険があります。 その保険料は国債が暴落する確率で決まるのです。
 それでその暴落が起きる確率を計算する方法があるのです。

 この方法で計算して日本の国債が暴落する確率は、5年以内に1%未満と言うのです。

 これは世界中の他の国の国債の暴落確率と比べても最低レベルなのです。
 だから日本国債の暴落保険の保険料は最低レベルなのです。

2019y05m31d_144817537

 それでは原真人の言う財政破綻とは?
 また財政破綻する、国債が暴落するという話は、一体いつ起きるどのような事を想定しているのでしょうか?

 しかし彼は暴落が起きるとは言うのですが、その確率もまた暴落が起きる時期も全く示しません。
 そもそもそういう数理的を全く考えていないのでしょう。

 だから期間も区切らず、確率も言わないで「いずれ破綻する。 だから増税しろ」と言うのです。

 しかしこれは、降水確率10%未満の快晴の日に、「豪雨になるかもしれにから外出を控えろ」と言うのと同じです。
 
 そりゃ豪雨だっていつかは降るでしょう。
 でも降るかわからない豪雨に備えて外出を控え続けるのですか?

 因みに3年以内に東南海地震が起きる確率は、10%です。
 そして日本国債が暴落確率は5年以内に1%未満です。
 
 だったら今やるべきことは、増税なんかでは耐震化工事などの防災対策であり、その為には国債を発行して国家予算を出すべきでしょう?

 地震が起きれば国家の生産力は減少し、税収も減り、財政は確実に悪化します。
 だったら財政をよくするためにもまず必要なのは、地震被害を軽減するための政策なのです。

IMG_0069

 前記のようにワタシは増税派の意見を知りたくてこの番組を見たのですが、最後まで見ても出てきたのは、今まで散々論破されてきた話だけでした。

 増税派は国債残高だけを見て、とにかく増税しなければ破綻するというだけで、その国債残高と
国家資産のバランスも理解できていません。
 
 しかも現実の世界では日本国債の信用度は非常に高い=日本国債が暴落すると考える人は皆無であるため、超低金利なのです。
 
 それでも何でも増税しなければ国家破綻するというのは、もう唯の欲張り婆さんの金銭感覚でしょう?

 でも財務省の官僚だって同レベルだから、ひたすら増税を推進しているのです。
 だって連中も唯の法学士で、財政や金融の専門家ではありません。
 商業簿記3級も持ってないので、帳簿の見方もわかりません。

 そういう連中だから債務と資産のバランスも理解できずに「国の借金が~~!!」と喚き続けているのです。
 
 こんな連中の話に乗って増税を推進するのがナンセンスなのは自明ですが、しかしそれだけでなくこんな連中に財政を任せるのもいい加減にやめるべきでしょう?


 オマケ

 非正規雇用者の増加と、時給に関する分析が面白いです。

 去年あんなにサンプル入れ替えの実質賃金はインチキだって言ってたのに
  1. お金の話
  2. TB(0)
  3. CM(19)

コメント

私は、経済や財政に詳しくありませんが、財政再建論者=増税≒消費税増税なんですよね。GDPを増やして税収を増やすことを考えないのは不思議に思っています。

彼らは、増税⇒不景気⇒税収減⇒増税⇒不景気・・・ というスパイラルに陥る危険性をまったく考えません。
  1. 2019-05-31 19:04
  2. URL
  3. スカイネット #-
  4. 編集

ひぐらしすずりにむかいひて

「ハイパーインフレ」という言葉には明確な定義があります。
定性的な言葉ではなく、定量的な言葉です。

その言葉を使うなら、さぞ詳細かつ定量的な分析が……と思ったら、何コノヒト。
定量的な分析が欠片もないのですけど。
己の願望を予測と称して言っている様な感じが凄くします。。。
---

財政赤字を減らすには増税ではなく、フローを増やして緩やかなインフレを起こし、"赤字を薄める"しか方法がないという説明、すさまじく説得力があります。
フローを増やすには土地収用を伴わない土木事業が一番という説明も。

えげつないと思ったのは「お金を人に渡したら貯金されてフローにならない。なので有効期限のある電子マネー(地域通貨)として渡す」という手法。
私が年金貰う時、コレになりそうな気配がして嫌だなぁ、と。
---

今回の増税、ミンチン党の残した地雷です。
首相も"大蔵官僚"の圧力には敵わなかったのでしょう……放漫財政って1回でもやられると財布の紐を締めるのは困難ですから。
(逆に、その場のノリで予算案をコロコロされても困りますが)
  1. 2019-06-01 00:37
  2. URL
  3. Dobon #EBUSheBA
  4. 編集

朝日新聞に勤める?た?原真人

>しかし高橋洋一が絶対正しいとも限らないので、反論はできるだけ聞く事にしています。

私もどちらが良いのか判断できていません。きっとやり方次第でどっちにも転ぶ不確実な想定なのでしょう。
自民党がやれば成功するが、民主党がやれば失敗する。

ただ、原真人は朝日新聞の経済専門の論説員でしたよね。かなり前には彼の経済面での記事解説を読んで基礎を勉強しました。しかし組織に属すると言うのは専門性も曲がるんですよね、時折、アレと言う意見が入りました。

朝日新聞は経済記者も踏み絵のように原発の記事も書かされたようでしたね。
先輩の経済の小此木記者がプロメテウスの欄を書いてましたから専門性と言うのは朝日新聞に勤めて出来るはずがないと思うようになってます。
既にボケてる遺跡の田原総太郎など見たくも聞きたくもありません。
老人全てがとは言いませんが、彼は老害の部類で壁が越えられない脳です。
  1. 2019-06-01 07:52
  2. URL
  3. トラウマ #RWLNmTs6
  4. 編集

誤解

>日銀による国債の大量買入れが続けば、市中に出回るお金が増えて

これが根本的な間違い。
三橋貴明の説明を見るべき。
彼が反財務省の中核の一人。
  1. 2019-06-01 09:55
  2. URL
  3. ちび・むぎ・みみ・はな #-
  4. 編集

Re: タイトルなし

> 私は、経済や財政に詳しくありませんが、財政再建論者=増税≒消費税増税なんですよね。GDPを増やして税収を増やすことを考えないのは不思議に思っています。
>
> 彼らは、増税⇒不景気⇒税収減⇒増税⇒不景気・・・ というスパイラルに陥る危険性をまったく考えません。

 結局、彼等は経済財政には無知で、欲張り婆さん、ケチンボ爺さんの思考しかできないのだと思います。
 東大法学部では簿記も教えてくれないので、仕方ありません。

 アイツラ全部クビにして、商業高校卒のオバサンに入れ替えるべきだと思います。
  1. 2019-06-01 11:53
  2. URL
  3. よもぎねこ #-
  4. 編集

Re: ひぐらしすずりにむかいひて

> 「ハイパーインフレ」という言葉には明確な定義があります。
> 定性的な言葉ではなく、定量的な言葉です。
>
> その言葉を使うなら、さぞ詳細かつ定量的な分析が……と思ったら、何コノヒト。
> 定量的な分析が欠片もないのですけど。
> 己の願望を予測と称して言っている様な感じが凄くします。。。
> ---

 文系の人間の特徴ですが、言葉の定義をきちんとしないのです。
 
 因みに日本の敗戦後のインフレはハイパーインフレではありません。 3年間の累計100%を超えるインフレと言う国際会計基準を満たさないからです。
 でも原真人は気楽にハイパーインフレと言っていました。
>
> 財政赤字を減らすには増税ではなく、フローを増やして緩やかなインフレを起こし、"赤字を薄める"しか方法がないという説明、すさまじく説得力があります。
> フローを増やすには土地収用を伴わない土木事業が一番という説明も。
>
> えげつないと思ったのは「お金を人に渡したら貯金されてフローにならない。なので有効期限のある電子マネー(地域通貨)として渡す」という手法。
> 私が年金貰う時、コレになりそうな気配がして嫌だなぁ、と。
> ---

 個人消費を増やすには、何よりも国民が過度に将来を不安視しないようにするべきでしょう?
 その意味では「財政が破綻する!!」「年金がもらえなくなる!!」と言う虚偽の宣伝は止めるべきだと思うんですけどね。
 
> 今回の増税、ミンチン党の残した地雷です。
> 首相も"大蔵官僚"の圧力には敵わなかったのでしょう……放漫財政って1回でもやられると財布の紐を締めるのは困難ですから。
> (逆に、その場のノリで予算案をコロコロされても困りますが)

 あの増税さへしてなければ、今頃日本は完全にデフレから脱却して経済成長路線に入っていたのにね。



  1. 2019-06-01 12:14
  2. URL
  3. よもぎねこ #-
  4. 編集

Re: 朝日新聞に勤める?た?原真人

> >しかし高橋洋一が絶対正しいとも限らないので、反論はできるだけ聞く事にしています。
>
> 私もどちらが良いのか判断できていません。きっとやり方次第でどっちにも転ぶ不確実な想定なのでしょう。
> 自民党がやれば成功するが、民主党がやれば失敗する。

 同じ地図をもって旅行しても、迷子になる人はいますから、同じ方針で経済政策をしても、成功する政党と失敗する政党があるでしょうね。
>
> ただ、原真人は朝日新聞の経済専門の論説員でしたよね。かなり前には彼の経済面での記事解説を読んで基礎を勉強しました。しかし組織に属すると言うのは専門性も曲がるんですよね、時折、アレと言う意見が入りました。
>
> 朝日新聞は経済記者も踏み絵のように原発の記事も書かされたようでしたね。
> 先輩の経済の小此木記者がプロメテウスの欄を書いてましたから専門性と言うのは朝日新聞に勤めて出来るはずがないと思うようになってます。
> 既にボケてる遺跡の田原総太郎など見たくも聞きたくもありません。
> 老人全てがとは言いませんが、彼は老害の部類で壁が越えられない脳です。
 
 原真人が朝日記者だと言う事は、番組の最初で紹介されていましたが、しかしこの議論を見ていると、ホントに経済記者とも思えないレベルですよね?

 コイツは番組で高橋洋一に論破された事を恨むツィートをしているのですが、でも雇用について論じるなら、何で自分もちゃんと資料を用意しないのでしょうか?

 この議論を見る限り、コイツの言い分には定量的な証拠が何もないというより、そもそもそういう形での論証をすると言う発想がないとしか思えないのです。
 
 これじゃあダメだとしか言えません。 


  1. 2019-06-01 12:35
  2. URL
  3. よもぎねこ #-
  4. 編集

Re: 誤解

> >日銀による国債の大量買入れが続けば、市中に出回るお金が増えて
>
> これが根本的な間違い。
> 三橋貴明の説明を見るべき。
> 彼が反財務省の中核の一人。

 お金が市中に出回らなくなったのは、増税のせいだと説明したはずですよ。
  1. 2019-06-01 12:36
  2. URL
  3. よもぎねこ #-
  4. 編集

 実は、この問題に関する議論はもう一歩先まで進んでいて、突き詰めて考えるとかなり根本的なパラダイムシフトが起こる可能性が出てきています。

 それは、いわゆるMMT(Modern Monetary Theory)に関する論争で、この理論が正確に理解されると、経済学を中心に、社会科学的に天動説から地動説への転換レベルの衝撃をもたらす、と指摘されています。


 このMMTは『現代貨幣理論』と翻訳され、「現代における貨幣(の意義・価値)とは何か」を説明する純粋理論であって、必ずしも特定の金融・財政的政策を提唱するものではないと言われています(この意味で、MMTを「現代金融理論」と翻訳することは、意図的な誤訳と言っていいでしょう)。

 ただ、貨幣の定義をMMTのように考えると、論理必然的に、一定の政策的帰結が導かれることはあります。
 現在のMMTに対する批判の多くは、こうした政策的帰結を誇張して、MMTが言ってもいない結論を批判する「藁人形理論」がほとんどで、まともな批判は存在していないように思われます。


 私自身は、まだMMTを充分に理解しているとは言い難く、分からない点や疑問に思う点も多々ありますが、ニクソンショック(金兌換廃止)以降、貨幣とは何かという問いに正面から答える初めて(?)の理論として注目しています。

 ただ、何分にも議論が錯綜しているので、以前のエントリーに関連して、よもぎねこさんはどう考えるのかを聞くためにコメントしようか、と思ったこともありました。


 現在、とくに日本では完全に異端視扱いされているMMTですが、それが何故かについて、私が感じている点を箇条書きにしてみます。

・MMTによると、過去40年間に財務省及びそれに同調した学者・マスコミの主張(消費税増税はもとより新自由主義的政策)は誤りであったことが明らかになる。
・MMT自体からは、特定の金融・財政政策が導かれる訳ではないので、他の経済学説と接合する必要が生じるが、ケインズ派との相性が良く、現在の支配的経済学説の権威が崩壊する。
・その結果、グローバリズムの理論的なバックボーンが失われ、グローバリズムは衰退する(とくにEUのユーロの失敗が明らかになる)。
・一方で、現時点ではMMT理論によって国家を適切に運営していけるであろう国が限られている(日・米・英・スイス他EU以外の先進国が中心)。
 などが考えられます。

 これだけのインパクトがあれは、日本だけでなく世界中でMMTを封じ込めたいと考える勢力が無数にいるであろうことは容易に想像できますね。


 個人的には、久しぶりに大きな思想的な転換に立ち会えたことに、興味津々なのですが。


 一つだけ動画を紹介します。
◇「日本の未来を考える勉強会」ーよくわかるMMT(現代貨幣理論)解説ー平成31年4月22日 講師:評論家 中野 剛志氏
https://www.youtube.com/watch?v=LJWGAp144ak
  1. 2019-06-01 17:04
  2. URL
  3. mythos #-
  4. 編集

 少し具体的な話をしてみます。

>だから日銀による国債の大量買入れが続けば、市中に出回るお金が増えて、インフレになります。

 これは、いわゆるリフレ派を中心に一般的に言われていることですが、実務上は論理に飛躍があります。

 たとえば、銀行の保有する国債を日銀が買い取ると、日銀にある当該銀行名義の日銀当座預金に国債相当額が入金されます。
 この資金が市中に出回るためには、当該銀行から個人や企業が資金を借り入れる必要がありますが、デフレ環境下では誰も銀行から借り入れをしてまで消費や投資をしようとはしません。
 なので、日銀がいくら国債を買い入れて金融を緩和しても、日銀当座預金が積み上がるだけで、市中に資金が供給されず、インフレにはならなかったのです。

 民間がやらない(できない)のであれば、国家が代わりに財政投資を行ない資金を市中に供給すべきだったのですが、前回の消費税増税だけでなく、プライマリーバランスの適正化の名のもとに、財政投資を削って緊縮財政路線に戻ってしまったため、いくら金融を緩和してもデフレから脱却できなかったと言われています。


 以上は、必ずしもMMTによる説明ではありませんが、MMTからすれば、デフレ完全脱却前の消費税増税は愚策であるだけでなく、プライマリーバランスの適正化は無意味ということになるのではないでしょうか。


 話は変わりますが、MMTによる政策的帰結は高橋洋一氏が従来から主張してきたことと非常に近い結論になると言われています。

 この点について、高橋洋一氏は微妙な態度を取っています。
 MMTと同一視されて異端扱いされたくないということもあるでしょうが、高橋氏が得意な数式を用いずとも、論理的に説明できてしまうことに対する複雑な心境もあるのかな、と穿った見方をしています。MMTと高橋洋一氏のような計量経済学的手法は、本来は補完的な関係にあると思うのですが。

 一方、高橋氏は金融緩和をすると失業率が改善することが数式上明らかだとよく主張しますが、論理的な因果関係はさっぱり分かりません。

 他方、MMTでは為替や株価の変動をどう説明するのかがほとんど分かりません。これらは現在、ほとんどが自動化されているので、設定されたアルゴリズムの影響を無視できませんが、どう考えるかはこれからの課題かもしれません。


 少なくともネット上では、真摯な議論が展開されることを期待しています、
  1. 2019-06-01 18:40
  2. URL
  3. mythos #-
  4. 編集

Re: タイトルなし

>  少し具体的な話をしてみます。
>
> >だから日銀による国債の大量買入れが続けば、市中に出回るお金が増えて、インフレになります。
>
>  これは、いわゆるリフレ派を中心に一般的に言われていることですが、実務上は論理に飛躍があります。
>
>  たとえば、銀行の保有する国債を日銀が買い取ると、日銀にある当該銀行名義の日銀当座預金に国債相当額が入金されます。
>  この資金が市中に出回るためには、当該銀行から個人や企業が資金を借り入れる必要がありますが、デフレ環境下では誰も銀行から借り入れをしてまで消費や投資をしようとはしません。
>  なので、日銀がいくら国債を買い入れて金融を緩和しても、日銀当座預金が積み上がるだけで、市中に資金が供給されず、インフレにはならなかったのです。
>
>  民間がやらない(できない)のであれば、国家が代わりに財政投資を行ない資金を市中に供給すべきだったのですが、前回の消費税増税だけでなく、プライマリーバランスの適正化の名のもとに、財政投資を削って緊縮財政路線に戻ってしまったため、いくら金融を緩和してもデフレから脱却できなかったと言われています。
>
>
>  以上は、必ずしもMMTによる説明ではありませんが、MMTからすれば、デフレ完全脱却前の消費税増税は愚策であるだけでなく、プライマリーバランスの適正化は無意味ということになるのではないでしょうか。
>
>
>  話は変わりますが、MMTによる政策的帰結は高橋洋一氏が従来から主張してきたことと非常に近い結論になると言われています。
>
>  この点について、高橋洋一氏は微妙な態度を取っています。
>  MMTと同一視されて異端扱いされたくないということもあるでしょうが、高橋氏が得意な数式を用いずとも、論理的に説明できてしまうことに対する複雑な心境もあるのかな、と穿った見方をしています。MMTと高橋洋一氏のような計量経済学的手法は、本来は補完的な関係にあると思うのですが。
>
>  一方、高橋氏は金融緩和をすると失業率が改善することが数式上明らかだとよく主張しますが、論理的な因果関係はさっぱり分かりません。
>
>  他方、MMTでは為替や株価の変動をどう説明するのかがほとんど分かりません。これらは現在、ほとんどが自動化されているので、設定されたアルゴリズムの影響を無視できませんが、どう考えるかはこれからの課題かもしれません。
>
>
>  少なくともネット上では、真摯な議論が展開されることを期待しています、

 ワタシは経済学者ではないし、そもそも経済学を学んだ事もないので、MMTの正否判定はできません。

 MMTが本当に正しければ、コペルニクスの地動説程の価値があるのかもしれませんが、但しクルーグマンその他の経済学者の意見を聞く限り、MMTには数理的な説明がないとの事です。

 数理的な説明がなく、唯定性的な論理だけで「○○であろう」と言うだけでは、経済学のように実験不可能な学問では、証明も否定も不可能な論理としか言えません。

 よってワタシはこれは全く興味がありません。
 
 そして証明不能でしかも新奇な学説を、直ちに現実の経済政策に持ち込むのは、論理だけで動物実験もしていな新薬を患者の治療に使うような話で、文字通りトンデモ論だと思います。

 特に現在、MMTを持ち上げている人達は、当面の財政出動と増税阻止を、この理論に頼る心算のようですが、しかしそれなら現在のリフレ派の説を頼れば済む事です。

 MMTでは5000兆まで国債を発行しても無問題だそうですが、しかし現在5000兆の国債を出す必要はないし、また出しても意味りません。
 
 当面必要なのは精々数十兆でしょう? 
 これならクルーグマンなどノーベル経済学賞受賞者達が、こぞって推奨しているリフレ派の理論で十分です。

 財務省は意図的にMMTとリフレ派を混同させて「財政出動論怪しい!! だからこんな連中の言う事を聞いてはいけない。」と宣伝する心算なのです。

 そのような状況でMMTに頼るって、飛んで火にいる夏の虫ではありませんか?
  1. 2019-06-01 20:06
  2. URL
  3. よもぎねこ #-
  4. 編集

 少なからぬ誤解があるようです。

 先にコメントしたように、MMTは「貨幣とは何か」に関する純粋理論です。

 wikiにあったので、貨幣の定義の一部を引用すると、貨幣とは、「①負債の一形式であり、経済において交換手段として受け入れられた特殊な負債をいう。②とくに現代経済においては、すべての経済主体が信頼する借用書を指す。今日、多くの国において貨幣として流通するものは、現金通貨(中央銀行券と鋳貨)と銀行預金とされている。現代経済では貨幣の大半が銀行預金であり、借入れの需要に対する商業銀行の貸出しによって、預金という貨幣が新たに創造され、返済されることで消滅する。」と説明されています。

 とくに、②はMMT理論にも組み入れられていますが、内容は10年以上前に世界的に誤解が多すぎるとして、イングランド銀行が公表した単なる事実認識に過ぎません。

 MMTは、ここからさらに一歩踏み込んで、国家財政の問題を含んだ体系的な貨幣理論を目指したものと言えますが、読んで分かるように、一種の事実認識乃至価値判断ですから、数理的説明に馴染まないのは当然ですが、理論の当・不当が判断できない訳ではありません。

>MMTでは5000兆まで国債を発行しても無問題だそうです…

 これがMMTが言ってもいないことを取り上げて批判するという、典型的な藁人形理論です。

 これはおそらく先週の水曜日に虎ノ門ニュースで高橋洋一氏が取り上げた例えだと思いますが、不思議なのは、高橋洋一氏はその一ヶ月程前に、ch桜の経済討論でMMT論者と討論しており、MMTはそんなことを言っていないことは百も承知のはずで、MMT自体にもほとんど反論していませんでしたから(MMTに依らなくとも説明できるとは言っていたかも)、なぜこんな知的誠実さを疑われるような言い方をしたのか疑問に思っています(討論では、クルーグマンの批判は誤解によるものだとアメリカでも指摘されている点に言及もありました)。

>MMTを持ち上げている人達は、当面の財政出動と増税阻止を、この理論に頼る心算のようですが、…

 そうではないと思います。

 20年以上続く日本のデフレに対する抜本的対策や世界的なグローバリズムの終焉に対応する政策生み出す上で、基本的な理論的ツールの一つと考えられているのではないかと思っています。

 むしろ今回の消費税増税問題には間に合わなくとも、将来の消費税増税中止乃至減税、長期的な財政出動に基づく適正なインフレ政策によって、日本経済を確かな成長軌道に乗せていく上で、リフレ理論よりも有力な理論的バックボーンになると考えられてきているように感じます。

 代表的なリフレ論者だった岩田規久男氏も、日銀副総裁としての実務経験を経て、最近はかなりMMT理論に傾倒しているようですし。


 私も経済学は門外漢ですが、経済学論争の異様さには思うところがあって、以前から注目してきました。

 下記の論考でも触れられているように、MMTが日本で一大ムーブメントを起こすとはあまり考えられませんが、アメリカで大勢が決まってから、日本に外圧として入って来るようでは情けないので、少なくともネット上では、真っ当な議論に期待したい思っています。
 その意味で、虎ノ門での高橋氏の発言(須田氏は論外)は残念でした。


◇MMT「インフレ制御不能」批判がありえない理由
「自民党の一部」が支持の動き、国会でも論議
https://toyokeizai.net/articles/-/283186
  1. 2019-06-02 07:32
  2. URL
  3. mythos #-
  4. 編集

Re: タイトルなし

>  少なからぬ誤解があるようです。
>
>  先にコメントしたように、MMTは「貨幣とは何か」に関する純粋理論です。
>
>  wikiにあったので、貨幣の定義の一部を引用すると、貨幣とは、「①負債の一形式であり、経済において交換手段として受け入れられた特殊な負債をいう。②とくに現代経済においては、すべての経済主体が信頼する借用書を指す。今日、多くの国において貨幣として流通するものは、現金通貨(中央銀行券と鋳貨)と銀行預金とされている。現代経済では貨幣の大半が銀行預金であり、借入れの需要に対する商業銀行の貸出しによって、預金という貨幣が新たに創造され、返済されることで消滅する。」と説明されています。
>
>  とくに、②はMMT理論にも組み入れられていますが、内容は10年以上前に世界的に誤解が多すぎるとして、イングランド銀行が公表した単なる事実認識に過ぎません。
>
>  MMTは、ここからさらに一歩踏み込んで、国家財政の問題を含んだ体系的な貨幣理論を目指したものと言えますが、読んで分かるように、一種の事実認識乃至価値判断ですから、数理的説明に馴染まないのは当然ですが、理論の当・不当が判断できない訳ではありません。
>
> >MMTでは5000兆まで国債を発行しても無問題だそうです…
>
>  これがMMTが言ってもいないことを取り上げて批判するという、典型的な藁人形理論です。
>
>  これはおそらく先週の水曜日に虎ノ門ニュースで高橋洋一氏が取り上げた例えだと思いますが、不思議なのは、高橋洋一氏はその一ヶ月程前に、ch桜の経済討論でMMT論者と討論しており、MMTはそんなことを言っていないことは百も承知のはずで、MMT自体にもほとんど反論していませんでしたから(MMTに依らなくとも説明できるとは言っていたかも)、なぜこんな知的誠実さを疑われるような言い方をしたのか疑問に思っています(討論では、クルーグマンの批判は誤解によるものだとアメリカでも指摘されている点に言及もありました)。
>
> >MMTを持ち上げている人達は、当面の財政出動と増税阻止を、この理論に頼る心算のようですが、…
>
>  そうではないと思います。
>
>  20年以上続く日本のデフレに対する抜本的対策や世界的なグローバリズムの終焉に対応する政策生み出す上で、基本的な理論的ツールの一つと考えられているのではないかと思っています。
>
>  むしろ今回の消費税増税問題には間に合わなくとも、将来の消費税増税中止乃至減税、長期的な財政出動に基づく適正なインフレ政策によって、日本経済を確かな成長軌道に乗せていく上で、リフレ理論よりも有力な理論的バックボーンになると考えられてきているように感じます。
>
>  代表的なリフレ論者だった岩田規久男氏も、日銀副総裁としての実務経験を経て、最近はかなりMMT理論に傾倒しているようですし。
>
>
>  私も経済学は門外漢ですが、経済学論争の異様さには思うところがあって、以前から注目してきました。
>
>  下記の論考でも触れられているように、MMTが日本で一大ムーブメントを起こすとはあまり考えられませんが、アメリカで大勢が決まってから、日本に外圧として入って来るようでは情けないので、少なくともネット上では、真っ当な議論に期待したい思っています。
>  その意味で、虎ノ門での高橋氏の発言(須田氏は論外)は残念でした。
>
>
> ◇MMT「インフレ制御不能」批判がありえない理由
> 「自民党の一部」が支持の動き、国会でも論議
> https://toyokeizai.net/articles/-/283186

 物理の場合は、理論物理学で導かれた理論は、実験によりその理論が証明されて初めて価値を持ちます。

 経済学で言う純粋理論って何ですか?

 MMTが理論物理学の理論のように実証可能な理論であれば、現実の経済政策への応用は実証がなされて、それが理論として確立してからの話です。
 
 実証がされない物で現実の経済政策に応用しろと言われても困ります。
 何でそんな物を引っ張り出すのかわかりません。
  1. 2019-06-02 10:21
  2. URL
  3. よもぎねこ #-
  4. 編集

 私の理解ですが、MMTが貨幣価値に関する純粋理論という場合、現代社会における貨幣現象とは何かについて、事実に基づいて論理的・体系的に理解し、定義していく作業をいい、特定の財政政策ないし金融政策を提唱するものではない、という意味だと思っています。

 したがって、MMTは○○○という政策を主張している(だからトンデモだ)、といった批判は、ほぼ全て藁人形理論ということができます。

 ただ、MMTにより、貨幣がこのようなものだとすれば、次のような政策を行なうと以上のような結果になるのではないか、という政策判断はあり得ますが、実際にどうなるかは、他の経済理論の助けを借りつつ、個別に検証するしかないのだろうと思います。

 その結果、MMTに基づく政策提言もほぼ常識的な範囲に収まりますが、いくつかの政策の組み合わせや個々の政策の実効性判断に大きな違いが出てくるように感じています。


>物理の場合は、理論物理学で導かれた理論は、実験によりその理論が証明されて初めて価値を持ちます。
 …
 MMTが理論物理学の理論のように実証可能な理論であれば、現実の経済政策への応用は実証がなされて、それが理論として確立してからの話です。…

 当然ながら、経済学は自然科学ではありません。

 経済学でも自然科学のような普遍的な法則性が認められ、実証も可能なはずだと社会改造を行なった結果、人類に惨憺たる被害を齎したのが、いわゆる唯物史観に基づくマルクス主義です。

 本来、経済学における数理的・実証的な検証というのは、個別の政策に対する一定の効果について、国ごとに行なわれてきました。

 たとえば、有名な話ですが、アメリカでは株価の上昇と消費の増加には、確率的に強い相関関係があることが認められています。したがって、消費を拡大させたければ株価を上昇させることが、アメリカでは効果的な政策になります。

 しかし日本では、株価が上昇しても一向に消費は拡大しないのです。その原因は個人の資産構成にあると考え、アメリカのように相関性を持たせるためにNISAなどの制度が導入されたものの、消費拡大よりむしろ格差拡大の原因になったことは、ご承知の通りです。背後にある文化的・歴史的要因を軽視したからでしょう。


 こうした国ごとの政策的な違いを理論的に後付けていたのが、かつてのケインズ学派です。ケインズは一般理論といった著作もありますが、個々の国の金融・財政政策を医師の診療行為に例え、患者ごとの診断結果や治療計画があるように国ごとの金融・財政政策を行なうべきであり、そうした個別の政策の結果を実証的に検証するために発展したのが計量経済学だと言われています。


 しかし、詳述はしませんが、70年代のスタグフレーションの責任を問われ(冤罪だったと言われています)ケインズが凋落し新自由主義が勃興して来ると、状況は一変します。


 新自由主義、その派生理論であるマネタリズム(リフレ派)、とくに90年代以降のグローバリズムには、ともに共通した『発想の型』があります。

 世界的に、国家による規制などの個別の障害が撤廃されて自由が拡大していけば、数理的に実証可能な「市場」が拡大し、経済も成長し平和になるはずだという観念です。これは、方向性こそ異なりますが、マルクス主義にそっくりです。

 ここに近年の経済学論争に対する私の違和感の一つがあります。


 具体的には、日本のリフレ派は「デフレは貨幣現象」だと言います。
 したがって、金融緩和でインフレになるはずだと言います(実務上の問題もあるので財政投資の重要性も認めていますが、そこが本質ではないようです)。
 と同時に、国内でうまく貨幣が流通せずデフレを解消できないのは、国内に様々な規制があって経済活動を阻害しているからだ、とも言います。

 日本のリフレ派は、総じて規制緩和推進派です。
 しかし、よく考えれば、規制緩和は供給力の拡大を目指すインフレ対策・デフレ悪化政策です。まさに、アクセルとブレーキを同時に踏むようなものですが、当人はあまり矛盾を感じていないようです。
 それは、その背後に数理的・実証的に検証可能な経済政策が通用する社会に改造すべきだ、という信念があるからではないか。


 また、高橋洋一氏は金融緩和によって失業率が改善するのは、統計的に分かっていたことだと言います。
 おそらく理屈としては、金融緩和によって、円安・株高になり、資産状況が改善した企業は雇用に目を向けるようになるので、失業率が改善する、とでも説明するのでしょうし、アメリカではこうした確定的な傾向があるのでしょう。
 なので、今回のアベノミクスでも成功したと。
 しかし、今回は日本の特殊事情として、極端な人口動態の変化(勤労年齢層の減少)もありました。

 果たして、今回の失業率に改善に金融緩和と人口動態の変化、どちらがどの程度寄与したのか。

 このように、経済学も社会科学である以上、実証的データに対して必ず「解釈」が必要になります。そうでなければ、次の政策が打てません。


 かつてこうした事を専門に行なっていた官庁がありました。経済企画庁です。
 また、国土の総合的発展や防災を担当した国土庁もありました。

 1997年、消費税増税ともに省庁再編で経済企画庁・国土庁が廃止されると、日本がデフレの奈落に沈んだのは、無関係ではないと思います。


 以上のように、日本の(おそらく世界も)病は重く、真のパラダイムシフトが求められる時代になって来たように感じます。

 MMT理論は、実際は90年代に確立していたにもかかわらず、最近になって急に脚光を浴びたのも、時代の要請を受け、その起爆剤と成り得るとの期待が集まったからでしょう。


 私自身も、これから真摯な議論が展開されていくことに期待しています。
  1. 2019-06-02 19:18
  2. URL
  3. mythos #-
  4. 編集

Re: タイトルなし

>  私の理解ですが、MMTが貨幣価値に関する純粋理論という場合、現代社会における貨幣現象とは何かについて、事実に基づいて論理的・体系的に理解し、定義していく作業をいい、特定の財政政策ないし金融政策を提唱するものではない、という意味だと思っています。
>
>  したがって、MMTは○○○という政策を主張している(だからトンデモだ)、といった批判は、ほぼ全て藁人形理論ということができます。
>
>  ただ、MMTにより、貨幣がこのようなものだとすれば、次のような政策を行なうと以上のような結果になるのではないか、という政策判断はあり得ますが、実際にどうなるかは、他の経済理論の助けを借りつつ、個別に検証するしかないのだろうと思います。
>
>  その結果、MMTに基づく政策提言もほぼ常識的な範囲に収まりますが、いくつかの政策の組み合わせや個々の政策の実効性判断に大きな違いが出てくるように感じています。
>
>
> >物理の場合は、理論物理学で導かれた理論は、実験によりその理論が証明されて初めて価値を持ちます。
>  …
>  MMTが理論物理学の理論のように実証可能な理論であれば、現実の経済政策への応用は実証がなされて、それが理論として確立してからの話です。…
>
>  当然ながら、経済学は自然科学ではありません。
>
>  経済学でも自然科学のような普遍的な法則性が認められ、実証も可能なはずだと社会改造を行なった結果、人類に惨憺たる被害を齎したのが、いわゆる唯物史観に基づくマルクス主義です。
>
>  本来、経済学における数理的・実証的な検証というのは、個別の政策に対する一定の効果について、国ごとに行なわれてきました。
>
>  たとえば、有名な話ですが、アメリカでは株価の上昇と消費の増加には、確率的に強い相関関係があることが認められています。したがって、消費を拡大させたければ株価を上昇させることが、アメリカでは効果的な政策になります。
>
>  しかし日本では、株価が上昇しても一向に消費は拡大しないのです。その原因は個人の資産構成にあると考え、アメリカのように相関性を持たせるためにNISAなどの制度が導入されたものの、消費拡大よりむしろ格差拡大の原因になったことは、ご承知の通りです。背後にある文化的・歴史的要因を軽視したからでしょう。
>
>
>  こうした国ごとの政策的な違いを理論的に後付けていたのが、かつてのケインズ学派です。ケインズは一般理論といった著作もありますが、個々の国の金融・財政政策を医師の診療行為に例え、患者ごとの診断結果や治療計画があるように国ごとの金融・財政政策を行なうべきであり、そうした個別の政策の結果を実証的に検証するために発展したのが計量経済学だと言われています。
>
>
>  しかし、詳述はしませんが、70年代のスタグフレーションの責任を問われ(冤罪だったと言われています)ケインズが凋落し新自由主義が勃興して来ると、状況は一変します。
>
>
>  新自由主義、その派生理論であるマネタリズム(リフレ派)、とくに90年代以降のグローバリズムには、ともに共通した『発想の型』があります。
>
>  世界的に、国家による規制などの個別の障害が撤廃されて自由が拡大していけば、数理的に実証可能な「市場」が拡大し、経済も成長し平和になるはずだという観念です。これは、方向性こそ異なりますが、マルクス主義にそっくりです。
>
>  ここに近年の経済学論争に対する私の違和感の一つがあります。
>
>
>  具体的には、日本のリフレ派は「デフレは貨幣現象」だと言います。
>  したがって、金融緩和でインフレになるはずだと言います(実務上の問題もあるので財政投資の重要性も認めていますが、そこが本質ではないようです)。
>  と同時に、国内でうまく貨幣が流通せずデフレを解消できないのは、国内に様々な規制があって経済活動を阻害しているからだ、とも言います。
>
>  日本のリフレ派は、総じて規制緩和推進派です。
>  しかし、よく考えれば、規制緩和は供給力の拡大を目指すインフレ対策・デフレ悪化政策です。まさに、アクセルとブレーキを同時に踏むようなものですが、当人はあまり矛盾を感じていないようです。
>  それは、その背後に数理的・実証的に検証可能な経済政策が通用する社会に改造すべきだ、という信念があるからではないか。
>
>
>  また、高橋洋一氏は金融緩和によって失業率が改善するのは、統計的に分かっていたことだと言います。
>  おそらく理屈としては、金融緩和によって、円安・株高になり、資産状況が改善した企業は雇用に目を向けるようになるので、失業率が改善する、とでも説明するのでしょうし、アメリカではこうした確定的な傾向があるのでしょう。
>  なので、今回のアベノミクスでも成功したと。
>  しかし、今回は日本の特殊事情として、極端な人口動態の変化(勤労年齢層の減少)もありました。
>
>  果たして、今回の失業率に改善に金融緩和と人口動態の変化、どちらがどの程度寄与したのか。
>
>  このように、経済学も社会科学である以上、実証的データに対して必ず「解釈」が必要になります。そうでなければ、次の政策が打てません。
>
>
>  かつてこうした事を専門に行なっていた官庁がありました。経済企画庁です。
>  また、国土の総合的発展や防災を担当した国土庁もありました。
>
>  1997年、消費税増税ともに省庁再編で経済企画庁・国土庁が廃止されると、日本がデフレの奈落に沈んだのは、無関係ではないと思います。
>
>
>  以上のように、日本の(おそらく世界も)病は重く、真のパラダイムシフトが求められる時代になって来たように感じます。
>
>  MMT理論は、実際は90年代に確立していたにもかかわらず、最近になって急に脚光を浴びたのも、時代の要請を受け、その起爆剤と成り得るとの期待が集まったからでしょう。
>
>
>  私自身も、これから真摯な議論が展開されていくことに期待しています。

 MMTが学問的に正しいかどうかは、一般国民にはどうでも良い事です。

 なぜなら幾ら学問的に正しくても、現在その証明が不能である以上、単なる仮説にすぎないのです。

 そういう物で現実の財政政策を語れば、「怪しい話」と煽りたい勢力の餌食になるだけです。
 
 仮説の実証は大学でやってくださいとでもしか言えません。 
  1. 2019-06-02 19:42
  2. URL
  3. よもぎねこ #-
  4. 編集

考え方とやり方とやる人、全てはテクニックとさじ加減と

くちの達者な人が不連続点を交えて話すから話が散らかってしまう。
・現代の世界で日本経済がハイパーインフレが起きる可能性はあるのか? 制御可能に成ってるか?
・日本の国債の暴落は在りうる事なのか?有ったらどの様 な事が事が想定されて対応は検討されているのか?
・日本の借金はどの程度なら安心なのか? 借金は少ない 方が安全性は高いのは当たりまえ?。
・税金は無い方が良い(共産党の普遍的な主張)
・地域戦争は起きる可能性はあるのか? 準備は良いか? 戦争が起きても儲ける立場に成ってるか?
・世界貿易は継続可能か?縮退(部分切離し)運用は可能か? 朝鮮半島を全て切り離して可能か?
・日本の民主党が政権を執れば擾乱の可能性は高くなるが安倍政権なら安定継続する。
・借金は少ないほうが良いのか、多い方が得か?
・日本(人)なら安全だか朝鮮(人)なら破綻する。
 ガンの患部を切り離せる準備は出来ているか。
個々の現象の可能性を潰していかなければ詰らない話。

個人がローンを組んで家を買うのは安全かの心配と同じで、要因をモデル化して計算しても結論は出せない、
・シュアな人生生活しかない。
・失業したらお終いか? 転職できる技能はあるのか?
・自分の職業の未来は?
・親はバックアップになるか?
・保険は入ってるのか?貯蓄はしてるのか? 失業に耐えられるか?
・家庭、家族、親族関係は将来も安泰なのか?
・子供は進学できる可能性はあるのか?
・日本社会は順調に進むのか? 民主党が地方政権を執らないか?
・博打はしてないか、タバコは止められる性格か?
  1. 2019-06-03 07:49
  2. URL
  3. トラウマ #RWLNmTs6
  4. 編集

Re: 考え方とやり方とやる人、全てはテクニックとさじ加減と

> くちの達者な人が不連続点を交えて話すから話が散らかってしまう。
> ・現代の世界で日本経済がハイパーインフレが起きる可能性はあるのか? 制御可能に成ってるか?
> ・日本の国債の暴落は在りうる事なのか?有ったらどの様 な事が事が想定されて対応は検討されているのか?
> ・日本の借金はどの程度なら安心なのか? 借金は少ない 方が安全性は高いのは当たりまえ?。
> ・税金は無い方が良い(共産党の普遍的な主張)
> ・地域戦争は起きる可能性はあるのか? 準備は良いか? 戦争が起きても儲ける立場に成ってるか?
> ・世界貿易は継続可能か?縮退(部分切離し)運用は可能か? 朝鮮半島を全て切り離して可能か?
> ・日本の民主党が政権を執れば擾乱の可能性は高くなるが安倍政権なら安定継続する。
> ・借金は少ないほうが良いのか、多い方が得か?
> ・日本(人)なら安全だか朝鮮(人)なら破綻する。
>  ガンの患部を切り離せる準備は出来ているか。
> 個々の現象の可能性を潰していかなければ詰らない話。
>
> 個人がローンを組んで家を買うのは安全かの心配と同じで、要因をモデル化して計算しても結論は出せない、
> ・シュアな人生生活しかない。
> ・失業したらお終いか? 転職できる技能はあるのか?
> ・自分の職業の未来は?
> ・親はバックアップになるか?
> ・保険は入ってるのか?貯蓄はしてるのか? 失業に耐えられるか?
> ・家庭、家族、親族関係は将来も安泰なのか?
> ・子供は進学できる可能性はあるのか?
> ・日本社会は順調に進むのか? 民主党が地方政権を執らないか?
> ・博打はしてないか、タバコは止められる性格か?

 世界的に見ればギリシャのように2年に一回デフォルトを繰り返した来た国もありますから、一概には言えませんが、日本の財政破綻の可能性を現実的に考えたら、ただ財政赤字の総額だけ考えるのは異常でしょう?

 特に資産と借金のバランスを無視して、借金だけで破綻する~~!!と言われたら、ローンで家を買った人や、設備投資に積極的な企業は全て破綻する事になります。
  1. 2019-06-03 09:38
  2. URL
  3. よもぎねこ #-
  4. 編集

プリマリーバラスが実現した世界では名目成長率が名目金利よりも高ければどんなに財政赤字を抱えていても、この累積赤字は将来的に消えていくので財政は破綻しない、というドーマーの定理があります。

これはある意味当たり前で、こうなれば赤字の拡大よりも税収の拡大が大きいわけで破綻するわけがありません。ドーマーの定理と言うらしいんですが、マア当たり前のことでしょう。

問題はプライマリーバランスが実現されない場合です。この場合だって日本人が日本国内で金を回し得る限りは問題にならないはずです。ただ単に政府の借金がかさむだけですから、国家が永続する限りにおいてはただの書類上の数字に過ぎません。結局中央銀行がお札を刷りませばいいだけ、市中に金が流れるかどうかは別にして借金などは問題にならないはずですがね。問題は銀行にあります。

そして名目成長率が名目金利より高い場合はやはり税収は向上します。その場合でも国債発行を問題とする財政赤字はたしかに問題ですが、基本この赤字は税収不足から起こるものであり、税収が臨めれば発行自体は小さくなるはずです。

またこの場合は景気が良くなり、そもそも銀行は企業に銭を貸して収益を上げるというまともな体制になります。銀行が金を貸さない今の状態がおかしいのです。そして日本が景気回復しない原因の多くはここにあると思ってます。
金利をとってカネを貸すという当たり前がこの国でできていないことが問題なんです。

このままでは日本の財政がうんたらと言う前に、おそらく銀行の収益悪化による破綻がこれから怒るような気がします。一度目は悲劇ですが二度目は喜劇でしょう。全部彼らが悪いんですから。

プライマリーバランスがうんたらよりも遥かに重要な問題だと思うんですが皆わかってるんでしょうか。
  1. 2019-06-06 00:45
  2. URL
  3. kazk #cPv2SIBE
  4. 編集

Re: タイトルなし

> プリマリーバラスが実現した世界では名目成長率が名目金利よりも高ければどんなに財政赤字を抱えていても、この累積赤字は将来的に消えていくので財政は破綻しない、というドーマーの定理があります。
>
> これはある意味当たり前で、こうなれば赤字の拡大よりも税収の拡大が大きいわけで破綻するわけがありません。ドーマーの定理と言うらしいんですが、マア当たり前のことでしょう。
>
> 問題はプライマリーバランスが実現されない場合です。この場合だって日本人が日本国内で金を回し得る限りは問題にならないはずです。ただ単に政府の借金がかさむだけですから、国家が永続する限りにおいてはただの書類上の数字に過ぎません。結局中央銀行がお札を刷りませばいいだけ、市中に金が流れるかどうかは別にして借金などは問題にならないはずですがね。問題は銀行にあります。
>
> そして名目成長率が名目金利より高い場合はやはり税収は向上します。その場合でも国債発行を問題とする財政赤字はたしかに問題ですが、基本この赤字は税収不足から起こるものであり、税収が臨めれば発行自体は小さくなるはずです。
>
> またこの場合は景気が良くなり、そもそも銀行は企業に銭を貸して収益を上げるというまともな体制になります。銀行が金を貸さない今の状態がおかしいのです。そして日本が景気回復しない原因の多くはここにあると思ってます。
> 金利をとってカネを貸すという当たり前がこの国でできていないことが問題なんです。
>
> このままでは日本の財政がうんたらと言う前に、おそらく銀行の収益悪化による破綻がこれから怒るような気がします。一度目は悲劇ですが二度目は喜劇でしょう。全部彼らが悪いんですから。
>
> プライマリーバランスがうんたらよりも遥かに重要な問題だと思うんですが皆わかってるんでしょうか。

 バブル以降銀行がオカシクなって、その後オカシイまま全然元の起動に戻っていないのではないでしょうか?

 仰る通り本来なら銀行の仕事は、企業や個人に融資をして、その金利で利益を上げる物なのに、金を貸さなくなっているのです。
 金を貸さないで国債を買い込んでその金利や、日銀当座預金の金利とかで、生きています。

 こんな事を何十年も続けたら、融資をして金利を得るという本来の仕事もできなくなると思うんですけどね。

 日銀のオカシナ政策は全て銀行の保護が目的ではないかと思ってしまいます。

 これじゃ日本経済がオカシクなって当然でしょう?
  1. 2019-06-06 10:16
  2. URL
  3. よもぎねこ #-
  4. 編集

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する