このところずうっとブログの更新が止まっていましが、実は体調を崩していたのです。
それでぼんやりとyou tubeばかり見ていたのですが、するとこんな動画を見つけました。
凄い迫力です。
この動画の中の歌「タチャンカ」は、ソ連の軍歌で、タチャンカとはこの動画の中の後部に機関銃を据えた馬車の事です。
ウィキによれば第一次大戦中にロシアで発明されて、ロシア騎兵隊に普及したと言います。
それにしても馬車に機関銃と言うのは、馬の時代の最後を象徴する兵器ではありませんか?
馬は古代から重要な兵器でした。
馬の兵器としての価値は、近世以降は大砲や鉄砲の発達、そして鉄道の発明などで、徐々に下がり続けました。
それでも人間が戦争と言う物を始めてから、数千年間、馬のスピードと輸送力を凌ぐ兵器は、顕われませんでした。
だから騎兵はどの国でも重要な兵科でした。
それで明治維新を迎えた日本も、ヨーロッパに倣って近代的な騎兵隊の設立し、それが実際に日清、日露戦争でも活躍しました。
しかし第一次世界大戦になって、戦車、飛行機、そして自動車など、馬が持っていた機能を上回る兵器や動力が出現して、遂に馬の時代が終わるのです。
そして馬の時代の終焉が中国の台頭を招いたのです。
古来、海洋と陸上の双方の覇権を握る国家はないと言われました。
なぜなら陸上の覇権を握る国は、強大な陸軍を抱える必要があるのですが、それはつまり近隣に自国を脅かす敵がいるからです。
例えば近代ヨーロッパの陸軍国、フランス・ドイツ・ロシアは、それぞれ強大な陸軍を持っていましたが、海軍国にはなれませんでした。
なぜならフランスとロシアは常に隣国ドイツの防衛を第一考えるしかなく、ドイツは気の毒にもフランスとロシアの二国からの防衛に追われました。
これでは海洋に出る余裕はないのです。
だから海洋はイギリスの独壇場になるのですが、しかしそのイギリスはこれらの強大な陸軍国に対抗して大陸に勢力を伸ばすような事はできなかったのです。
第二次大戦後のアメリカが、海洋と陸上での覇権を唱える事ができるようなったのは、アメリカ大陸にはアメリカを脅かすような勢力が存在しないからです。
一方中国の周辺にはこうした強大な陸軍国はありませんでした。
しかしそれに代わって中国を脅かし続けたのが騎馬民族です。
騎馬民族は人口では漢民族とは比べ物にならないほど少ないのですが、しかし民族全部が騎兵として活動できるのだから、少数でも軍事力は強大なのです。
だから中国史は騎馬民族との闘いの歴史で、しかも繰り返しその支配下に入っているのです。
中国が騎馬民族から国家を守るには、万里の長城のような防壁を作るか?或いは周辺地域を併呑して支配下に置くか、どちらかしかないのです。
これでは海洋進出なんかできるわけもないのです。
ところが馬の時代の終焉で、騎馬民族の時代も終わりました。
一定の人口と経済力があれば、戦車や飛行機を手に入れ、それで騎馬軍団を簡単に制圧できるようになったのです。
そうなると騎馬民族は唯の少数民族として、一方的に弾圧されるだけの存在になったのです。
だから現在の中国は歴史上初めて、周辺騎馬民族を恐れず、海洋に進出できる状態になったのです。
現在の中国を陸上勢力として抑止できそうな唯一の存在がロシアです。
その意味ではロシアが弱体化するのは、日本にとってもアメリカにとっても、必ずしも好ましい事ではないのです。
ロシアがヨーロッパなど他で悪さをしないなら、少しは支援しても良いのでは?
と言うのが安倍総理やトランプ大統領の本音でしょう?
それにしてもこの動画、ホントにすごい迫力でしょう?
この動画の元の画像は1955年ぐらいに作られたソ連の映画か何かようです。 だからCGなどの技術は全くなく、本物の馬と人間でこの映像を撮っているのです。
実はワタシは騎馬戦や騎兵突撃の動画が大好きでよく見るのだけれど、ここまで凄いのは初めて見ました。
何が凄いって、この動画では馬が馬車もろとも倒れる場面続出なのです。
騎兵突撃の動画についてyou tubeのコメント欄で「機関銃で撃たれて人間がバタバタ倒れるのに、馬が倒れないから不自然」と言うのがありました。
そうなんですよね。
でも馬って下手に倒れるとすぐ足を骨折して、そのまま治療不可能、安楽死と言う事になるのです。
だから映画の撮影で馬が倒れるシーンを撮るのは大変なのです。
ところがこの動画では馬が馬車もろとも倒れる!!
この撮影でどれだけ馬を殺したんだろう?
尤もこの時代のソ連は自国民を平気で殺していたから、馬が死ぬ事なんかに構うわけもないのでしょう。
そして思うにこの時代は、それでもまだ騎兵の末裔が相当数存在したので、現代人の常識超えるような超高度な乗馬技術を持った人間を集めるのも簡単だったのでしょう。
帝政ロシアのコサック騎兵は、ヨーロッパ最強を誇りました。
コサックは元来ウクライナの自作農だったのですが、彼等は騎兵として軍務に就く事と引き換えに、様々な特権を得て、一般のロシア農民とは比べ物にならない程豊な生活を保障されていました。
コサックが優秀な騎兵なのは、幼少時から乗馬に親しみ、高度な乗馬技術を持つからです。
でも幼少期から乗馬に親しむ為には、農耕馬ではなく乗用馬を持てる家庭でなくてはなりません。 しかしそういう馬を持つには、相応の経済力が必要です。
だからロシア皇帝は、コサックには乗用馬を持てる生活を保障していたのです。
その豊かさを背景に、コサックダンス始め豊なフォークロアを育みロシア文化を代表するようになったのです。
こうしたコサックを共産主義者が憎み、その後コサックのみならずコサックの土地であるウクライナ全土への熾烈な迫害を行ったのは当然でしょう?
それでも1950年代にはまだ、この動画のような凄いスタントができる程のコサックの末裔たちが残っていたのでしょうね。
貴重な動画だと思います。