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2018-07-12 13:47

トゥキディデスの罠とペロポネソス戦争 その2(デロス同盟)

 昨日からトゥキディデスの罠とペロポネソス戦争について書き始めたのですが、しかしアテネが軍事強国として台頭するに至ったペルシャ戦役の勝利のところまで書いて終わってしまいました。


 だから今日はその続きを書きます。


 ペルシャ戦役を通じてアテネはギリシャ世界最大最強の海軍国になりました。 アテネ海軍が保有する三段櫂船は200隻、二位のコリントは40隻ですから、当時のアテネの海軍力は現在の世界でのアメリカ海軍に匹敵するでしょう。


 そしてペルシャ戦役を期に、アテネはアテネ市街と外港ピレウスを囲む長城を建設して、アテネの防衛体制を完璧にしました。


 しかしペルシャ戦役はアテネにもう一つの力を与えました。

 それはデロス同盟です。


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 デロス同盟はアテネを中心にした東地中海諸ポリスの対ペルシャ防衛同盟として発足しました。


 現在のギリシャ共和国はアナトリア半島には領土がありませんが、これは第一次世界大戦後にトルコ共和国との協定で決まった事で、それまではギリシャ人の世界はアナトリア半島の沿岸、更には黒海沿岸にまで広がっていました。


 トロイア始め古代ギリシャの遺跡がトルコに散在するのはその為です。


 こうしたアナトリア半島沿岸のポリス、そしてレスボス島やミレトス島などアナトリア半島の沿岸、更に東地中海の島嶼のポリスは、ペルシャの侵攻時にはペルシャの支配下に入りましたが、しかしアテネによるペルシャ戦役の勝利により、ペルシャの支配下から逃れる事ができました。


 そこでこれらのポリスは、再度のペルシャ侵攻に備えて、アテネを中心とする対ペルシャ防衛の為の同盟を作ったのです。


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 この同盟の本部はエーゲ海の中心にあり、アポロ神殿の聖域だったデロス島に置かれました。 それでこの同盟はデロス同盟と呼ばれました。


 そしてアテネがその盟主となったのです。


 アテネはこれ以降、デロス同盟加盟国をペルシャの脅威から守るだけなく、軍船でエーゲ海上をパトロールを行い、海賊行為まで取り締まるようになります。


 これはこの地域の交易の拡大し、地域全体の経済発展を促しました。 そしてデロス同盟は単なる軍事同盟と言うより、一大経済文化圏となっていきます。

 

 そして当然ですが、このデロス同盟により一番発展したのは、アテネなのです。


 デロス同盟の発足によりアテネはこの地域全体を自分の勢力下におくようになったのです。 そしてそれは全ギリシャ世界の半分を超える地域と経済と人がアテネの勢力下にはいったという事です。


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 そしてこれまた当然ですが、スパルタを中心としたペロポネソス同盟諸国は、益々アテネへの懸念を拡大させました。


 しかしそれだけではありません。

 実は後にデロス同盟内からアテネに対する不満が生まれてくるのです。


 ペロポネソス同盟は純然たる軍事同盟ですが、しかしこの同盟は軍事的危機にはお互いに助け合うというだけの物で、それも強制性はありませんでした。 そしてそれ以上の拘束もなかったのです。


 スパルタはこの同盟の盟主として、敬意を得られるだけで満足していました。


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 しかしデロス同盟は違いました。

 デロス同盟は有事には軍船を出して一緒に戦うとだけでなく、平時にもエーゲ海巡回などをやっています。


 デロス同盟加盟国でレスボスなど自前の海軍を持つポリスは、これに加わる事で同盟国として義務を果たしました。


 しかし自前の海軍が持てない弱小ポリスには、このコストを分担金と言う形で負担する義務がありました。


 この分担金がどのぐらいの額だったのかは、今も良くわからないのだそうです。 しかしペルシャ帝国の脅威が薄れるにつれ、アテネの経済発展が進み、アテネが強大化するにつれ、こうしたポリスは不満をためていくのです。


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 当時の軍船の主流である三段櫂船は一隻の建造費が1タラント、これは当時のアテネの一般勤労者の年収の6000倍程でした。

 そしてこの運航費とメンテナンスが費用が掛かります。


 当時のギリシャの弱小ポリスは人口が2000~3000人と言う所も多いのですから、到底こんな軍船は建造も運航もできないのです。 

 そしてこうした弱小ポリスにとってはペルシャ帝国だけでなく、海賊だって大変な脅威です。


 だから一定の分担金を出す事で、デロス同盟の海軍により安全保障を得られる事は大きなメリットがあるはずです。

 その為これらの弱小ポリスも自ら進んでデロス同盟に参加したのです。


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 それなのにこれらのポリスは次第にデロス同盟とアテネに不満を持つようになるのです。


 でもこれ凄くわかりますよね?

 今の日本の左翼や韓国の文在寅政権の言い分を聞いていれば。


 デロス同盟は単なる軍事同盟ではなく、経済文化圏、それも自由貿易経済文化圏となっていきました。 そして現在でも同じですが、こうした自由貿易は圏内の経済や文化を発展させます。


 しかしこれまた現在でも同じですが、全ての国が平等に発展するわけではありません。

 また経済が発展しても全ての人が平等に豊になるわけでもありません。 

 そして経済発展に取り残された側にはより強い不満を持つようになってしまうのです。


 また安全保障が当然になると、その為のお金つまり分担金(アメリカとの同盟なら思いやり予算)を出したくないと思うようになってしまうのです。 


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 一方アテネ市民たちの側は、自分達達がデロス同盟諸国の安全保障しているのだから、加盟国はもっと分担金を出して当然と思うようになります。

 そしてこうした市民意識から、デロス同盟諸国に対して、まるで宗主国か支配者のようにふるまうようになるのです。


 なんかもう2500年前の話ではなく、今の国際情勢みたいじゃないですか?


 後にペロポネソス戦争が深刻化してから、スパルタはこうしたデロス同盟加盟国の不満に付け込んでその分断を図ります。


 そしてアテネはそれに苦慮することになるのです。


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 う~~ん、なんかまた凄く長くなちゃった。

 今日はペロポネソス戦争の勃発まで書きたかったんですが、残念だけれどここでやめます。

 続きはまた今度。

 

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コメント

古代ギリシャ史って、教科書レベル程度の知識しかありませんでしたのが、非常に面白いですね。
歴史は繰り返すは、洋の東西を問わず、人間が変わらぬ限り、言えることなのでしょう。
ナポレオン戦争後やフランス革命あたりの歴史にしても、なかなか面白いのでよく読みましたが、どうもなかなか人名の判別が難しくなってしまいます。
漢字なら孫権、孫乾、孫堅と日本語読みは「そんけん」でもすぐどこの誰かはわかるんですけど、カタカナ洋名の似たような長いのが何人も出てくると、なかなか慣れるまでに時間を要します。
何かコツはありますか?
  1. 2018-07-12 20:30
  2. URL
  3. 二郎 #-
  4. 編集

Re: タイトルなし

> 古代ギリシャ史って、教科書レベル程度の知識しかありませんでしたのが、非常に面白いですね。
> 歴史は繰り返すは、洋の東西を問わず、人間が変わらぬ限り、言えることなのでしょう。
> ナポレオン戦争後やフランス革命あたりの歴史にしても、なかなか面白いのでよく読みましたが、どうもなかなか人名の判別が難しくなってしまいます。

 面白いです。
 古代ギリシャ、特にアテネは2500年も前の話なのに、事実上の普通選挙制の民主主義なので、現代の国家に最も近い政体です。
 だから民主主義の問題が実にクリアにわかって、ホントに面白いです。

> 漢字なら孫権、孫乾、孫堅と日本語読みは「そんけん」でもすぐどこの誰かはわかるんですけど、カタカナ洋名の似たような長いのが何人も出てくると、なかなか慣れるまでに時間を要します。
> 何かコツはありますか?

 ワタシも実はカタカナの名前苦手です。 長いカタカナの名前をちゃんと読まないで、そのまま流し読みしていると、後で似たような名前の人間がぞろぞろ出てきて誰が誰だから区別できなくなることがあります。

 だから名前が出たら、ちゃんと一回声を出して読むしかありません。 でもそれでちゃんと読めば、大体覚えます。
  1. 2018-07-13 11:17
  2. URL
  3. よもぎねこ #-
  4. 編集

当時は新聞もテレビもラジオも鉄道も車もインターネットなかったから、民主主義で実現できる国家の範囲は現代の基礎自治体レベルの規模が精一杯だった。それでは巨大な判図を持つ専制国家に対抗するのは難しかった。
  1. 2018-07-14 08:35
  2. URL
  3. 竹槍 #-
  4. 編集

Re: タイトルなし

> 当時は新聞もテレビもラジオも鉄道も車もインターネットなかったから、民主主義で実現できる国家の範囲は現代の基礎自治体レベルの規模が精一杯だった。それでは巨大な判図を持つ専制国家に対抗するのは難しかった。

 そうですね。 古代や中世の民主主義国家は最大でも人口が10~15万程度なのです。 当時のテクノロジーならこれが限界だったのでしょう。

 しかしそれでもペルシャのような大帝国と戦って勝てるのが民主主義国家なのです。
  1. 2018-07-14 11:30
  2. URL
  3. よもぎねこ #-
  4. 編集

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