TPP11、6か国承認なら発効…大筋合意
ワタシは良かったと思います。
実はワタシは元々は反TPP派だったのですが、この麻生さんの動画を見て推進派に転向しました。
TPPは当初アメリカが中心になって、関税ゼロの過激な自由貿易圏確立を目指しました。
しかし麻生さんは全ての貿易品目に関税ゼロなんて事を実施できる国は、ブルネイとシンガポールぐらいで、他にそんなことをできる国はないと言うのです。
例えばアメリカは牛肉に関しては、オーストラリアとの間で「今後18年話し合わない」(これは2011年の動画ですから、今後12年ですが)と決めているのです。
つまりアメリカは牛肉に関して今後10年以上もオーストラリアの競争で勝てる見込みがないので、関税に関して話し合いは拒否しているのです。
実はアメリカは乳製品ではニュージーランドにも勝てないので、こっちも関税ゼロは絶対困るのです。
しかし加盟国はどこも同様な問題を抱えているので、関税ゼロなんて絶対無理!!
だからTPPが成立したところで、過激な自由貿易圏なんてモノになるはずはない。
と言うのが麻生さんの見立てでした。
なるほどね。
そう言えば反TPP派の言い分は、農業など日本の競争力の弱い所だけを問題にして「ここが負ける」「あそこが負ける」と言う話しばかりで、他国の事情を一切考慮していないのです。
ところが麻生さんに言わせると、同様の弱みはどの国にもあるのです。
それがないのはそもそも石油しか産業のないブルネイと、中継貿易の都市国家シンガポールぐらいなのです。
なるほどこれではどの国も総論賛成、各論反対。 イザ交渉が始まれば国内の産業界の猛烈な反対に遭います。
そうなると政治家の立場なくなってしまいす。
民主主義国家の政治家と言うのは、それぞれ皆労働組合や産業界の支持のお蔭で当選し、政治家になれた人々です。
だから支持者の不利益になる事は絶対にできないのです。
だからこの政治家達を説得してTPPを成立させるのは大変だし、例え成立したとしても至って形式的な形での自由貿易にしかならないでしょう。
だったら入っても大した害はないのです。
しかしこういうモノは入っておかないと後が面倒。
これも麻生さんの言い分です。
なにしろ締結時に加盟国みんなで散々揉めて、漸く利害の一致をえた結果成立したモノですから、複雑なガラス細工のような代物になります。
ここに新入りが来るとなると、もう一度ガラス細工の組み直しですから、皆ブーブー言って、「オマエ、どうしても入りたいなら、今ある決まりを全部守れ!!」と言う事になるのは必定です。
だから最初から入っておいた方が良い。
と言う事でしょう。
そしてこのTPPの交渉を延々と続けた結果は、麻生さんの予想道理、過激な自由貿易圏にならなかったばかりか、言いだしべいのアメリカが抜けちゃいました。
笑えるのはアメリカの反TPP派も日本の反TPP派と全く同じ事を言っている事です。
オマケにその総大将がアメリカ・ファーストのトランプ大統領!!
で、アメリカが抜けてしまったので、日本の反TPP派が心配したようなアメリカによる日本の経済支配はあり得なくなりました。
その代りTPP推進派が期待した中国包囲網としてのTPPの価値もなくなりました。
こうなるとTPPは毒にも薬にもならない、あってもなくても良い代物になってしまいました。
だったらやらない方が良いのでは?
それともやった方が良いのか?
で、ワタシは取りあえずやった方が良いと思うのです。
だって今現在もまだ反TPPで燃えている人達は、グローバリズムと言うイデオロギーを目の敵にしているのですが、しかし世界的には日本はグローバリズムの国どころか保護主義の国とみられているのです。
実際アメリカなんかまだその心算の人が沢山いるのです。
これは勿論90年代の日米貿易摩擦のイメージが今も残っているのが一因ですが、何よりも日本は今も対米貿易収支で黒字を続けているのです。
実は日本は工業製品の関税は世界一低く、農業製品の関税だって言うほど高くもないし、大量の農産物を輸入しています。
しかし自国が赤字である以上は、アメリカが納得するわけもないのです。
だったらTPPをやる事で「我が国は自由貿易推進に頑張っております」と宣伝するべきです。
TPPは事実上人畜無害、毒にも薬にもならない協定になってしまったのですから、やっても日本の害にはならないのです。
それに今後日本がアジア太平洋地域でのプレゼンスを増せば、対中国包囲網になっていくでしょう。
そうなるとアメリカが入ってくる可能性もあります。
しかしその時は何しろ家主は日本なのですから、極めて有利な交渉ができます。
日本が永遠に今の状態でアメリカの後塵を拝したくないなら、日本が今後アジア太平洋地域の盟主となる為の布石を打っておくべきです。
何より経済ってグローバリズムとか保護主義とかそういうイデオロギーで論じるモノじゃないのです。
反TPP派はグローバリズムを目の敵にして、ひたすらイデオロギー的反対論を続けるのですが、しかし経済はイデオロギーではなく現実で論じるべきなのです。
グローバリズムが有利か保護主義が有利かは、日本の産業の競争力次第、産業を支援する政策の良否次第なのです。
昭和30年代に日本の工業は極めて弱体だったので、手厚い関税で守られていました。
そもそも外貨がないので石油や石炭の輸入さへもままなりませんでした。
だからこれを自由化するときには、大変な抵抗がありました。
しかし自由化したからこそ日本の工業は世界に打って出て成功したのです。
但し石炭産業は競争力を喪って壊滅しました。
因みに日本はこれでイギリスの造船と鉄鋼産業を潰しました。
競争力さえあればグローバリズムは有利、競争力を持つ目途が立たなければ保護主義で行くしかありません。
これはイデオロギーの問題ではなく、日本の産業競争力をいかに守り続けるかと言う問題なのです。
これは財政や金融政策でも同様でしょう。
そして外交や国防も同様です。
こうした問題はイデオロギーではなくリアリズムで対応するしかないのです。
ワタシは54年生まれなので学生運動の余波を受けて育ちました。
それでこの世代の問題を否応なしに見て来ました。
この世代の最大の問題は何でしょうか?
それは物事を安易にイデオロギーで捕えて、安易な善悪論に持っていき現実を見ない事です。
右も左もこの傾向が非常に強いのです。
その意味から言えば今回のアメリカ抜きTPP合意成立などは、この種の議論を排除した現実政策の成功として大いに喜んでいます。
最後にこれまでのエントリーで、常にコメントでイデオロギー右派とはいかなるモノかを示して下さったちび・むぎ・みみ・はなさんに感謝します。