中国が騒いだ事が最大の理由でしょう。
これまで中国の靖国参拝反対は、総理に集中していたのですが、今回は稲田防衛相まで名指しで靖国参拝を止めろと騒ぎました。
これでまた靖国参拝相場がまた一段高になりました。
実に馬鹿馬鹿しい話だけれど、中国が騒ぐお蔭で、元来純然たる年中行事に過ぎなかった、閣僚の靖国参拝が重大な外交カードになったのです。
中国にしてみれば、こうして自分の反対で日本の閣僚の靖国参拝を止める事で、自国の優位を示している心算なのでしょう。
しかし考えてみれば、こんな事をしたって、中国には何の利益にもならないのです。
それどころかこうした中国に嫌がらせが、日本人のナショナリズムと中国への反感を煽り、そして何よりも靖国神社の価値を日本国民に広報しているのです。
中国が靖国参拝を騒ぎ始めたのは、90年代初頭からですが、実はその頃靖国神社の極めて危機的な状況でした。
戦後長らく毎年8月15日には、靖国神社には天皇陛下も首相も参拝していました。
しかしその頃、国民の靖国神社への関心は至って薄かったのです。
この頃靖国神社に参拝し、そして靖国神社を支えていたのは、戦死者の遺族と戦友達だけでした。
しかし当然ですが、こうした人達は年々年を取って他界して行くのです。
そうすると靖国神社を支える人達が、ドンドン減る事になります。
そして90年代には、靖国神社はこれまでのような独立した宗教法人として維持ができるかどうかが、危ぶまれる状況になっていました。
だってこの頃にはご遺族の最大多数だった戦死者の御両親は完全に他界されて、兄弟、妻、戦友と言った人達も、70代になってしまいました。
国民一般の靖国神社への関心が殆どない状況では、戦死者の親族と雖も戦後生まれで実際には顔も知らないご先祖様の一人にすぎない祖父や叔父や大叔父の為に、靖国神社に参拝する人など皆無としか考えらないのです。
こうなると後10年もすれば、靖国神社に参拝できる人がどれほどいるか・・・・・・。
だから靖国神社は一般宗教法人でなく、国家組織にでもして何とか戦死者の御霊を祀り続けたい・・・・・と言う意見も出ていたのです。
ところがそこに降ってわいたのが、中国の靖国参拝反対です。
これで一期に靖国神社へ国民に関心が高まりました。
だって以降、毎年毎年中国の尻馬に乗ったマスゴミが連日「ヤスクニ、ヤスクニ」と大騒ぎするのですから。
そしてそれと共に靖国神社の存立危機は雲散霧消しました。
だって国民の関心が高まったお蔭で、以降靖国神社への参拝客は激増したのですから。
それまで靖国神社に参拝するのは、遺族と戦友と後は街宣右翼ぐらいだったのに、今では多くの一般市民が参拝に押し寄せるようになったのです。
完全にノンポリだったワタシの妹まで、東京観光に行った時には、靖国神社に参拝して、ワタシにお守りを買ってきてくれました。
ワタシだって中島公園に行ったときには必ず札幌護国神社に参拝するようになりました。
特に8月15日など参拝の順番待ちの行列ができるとか、まるでディズニーランドの人気アトラクションのような有様になりました。
90年代靖国神社の存立危機が叫ばれていた頃、誰が一体この光景を想像したでしょうか?
もし中国があの時に馬鹿な騒ぎを起こさなければ、一般国民は靖国神社の事など忘れてしまったでしょう。
そして靖国神社はひっそりと国営化されたかもしれませんが、少数の老人と右翼団体だけが参拝する寂しい神社になっていたでしょう。
だから靖国神社を復活させたのは、実は中国共産党と中国共産党に靖国参拝反対を焚きつけた朝日新聞なのです。
中国政府だってこの因果関係は、十二分にわかっているでしょうね?
だからこんな馬鹿な嫌がらせは良い加減に止めれば良いのですが、しかし止められないのがあの国の文化なのです。
日本の閣僚が靖国神社に参拝すると、中国共産党政権の面子が潰れるのです。
あの国は面子の国ですから、面子を潰されると政権は存続できません。
あの国は法治国家では人治国家です。 人治国家と言うのは要するに「力」のある人間が、権力を恣にする支配体制です。
しかしこうした「力」は法のように成文化されているわけではないので、「力」を持つ人間は常に自分はどれだけの力を持つかを回りの人間に見せ続ける必要があるのです。
それが面子です。
自分の「力」が通用する事を示せると「面子が立った」事になります。
逆に自分の「力」が通用しない事が証明される事が「面子を潰される」事なのです。
中国共産党は日本の総理に靖国参拝を止めさせる事で、面子を立てました。
しかし大変厄介なことにこうやって一度面子を立てると、今度は日本の総理が靖国神社に参拝すると中国の面子が潰れる事になってしまうのです。
日本の総理が中国の一度の反対で未来永劫参拝を諦めてくれたら、良かったのですが、残念ながらそうはなりませんでした。
それどこか前述のように、返って日本国民全体に靖国神社への関心と、そしてナショナリズムと反中感情を煽り立てる事になってしまったのです。
そして今度は多くの日本国民が、総理の靖国参拝を期待するようになったのです。
そこで中国は毎年、毎年この件で大騒ぎしなければならなくなりました。
この騒ぎが日本のナショナリズムを煽り、反中感情を掻き立てて、結果はドンドン中国の不利益になっているのですが、しかしそれでも中国式の面子維持に為には、騒ぎ続けるしかないのです。
だってもし日本の総理が靖国神社に参拝したら、それで中国政府の面子は潰れて、権力維持が不可能になります。
中国人にとっては面子を守る事の出来ない人間は、「力」のない人間です。
そういう人間の言う事は聞く意味がありません。
そのような人間はもう、権力の座から追われて一族全部が破滅するのです。
中国と言うのはこうした実に原始的で不安定な権力構造しか持てないのです。
エドワード・ルトワックに言わせれば、アフリカ小独裁国家並みの原始的で不安定な政権なのです。
倉山満によると戦前のイギリスは、日中の外交について「日本は花を捨てて実を取るが、中国は実を捨てて花を取る」と評価していたそうです。
中国人のリアリスト振りを想うと実に奇異に思えるのですが、しかしこの靖国参拝問題などを見れば当にその通りです。
権力は面子によって維持される構造であれば、一度立てた面子つまり花は、いかなる犠牲を払っても守るしかないのです。
一度、その場の都合で面子確立に使用した話は、その後それがいかに無意味になろうとも、以降未来永劫取り下げる事は不可能になるのです。
結果日本の首相は靖国神社に参拝するだけで、中国の政権を吹き飛ばす事が出来る事になったのです。
で、今度はその破壊力を防衛相までが持つようになったわけです。
勿論今の所、日本政府は敢えて中国を混乱に陥れる気はないので、取りあえず中国の面子を立てて靖国参拝を控えています。
勿論同盟国アメリカの意向も考慮しているでしょう。
アメリカとしても今の状況で、中国の混乱は望まないので、日本政府に靖国参拝を控えろと言っているのでしょう。
しかしもしアメリカと日本が腹を合わせて、中国政権を潰してやる気になったら?
チョッと安倍ちゃん、靖国神社に参拝したら?
と言う事になりますよね?
つまりアメリカもまた日本の閣僚の靖国参拝を、対中外交のカードに使うのです。
ああ、だったらオレ、安倍ちゃんに靖国参拝を薦めちゃおうかな?
だってキンペー君の都合で、靖国参拝を止めて、オレが日本人に恨まれるって割に合わないもんね。
エッ、それは困る?
だったらキンペー君、対米輸出減らてくれる?
因みに靖国参拝など完全に日本の内政問題ですから、日本の首相や防衛相が参拝したことに対して、中国が何か具体的に日本に嫌がらせをすれば、それは国際的には極めて不当な行為と言う事にしかなりません。
キンペー君だってこのままでは、日本の首相が靖国参拝と言う形で、自分の命脈を握っている事はわかっているでしょう。
だから本来なら何とかこの靖国カードは取り下げるべきなのです。
しかし人治主義国家ですから、一度面子の問題にしてしまった事は、未来永劫取り下げる事はできないのです。
エドワード・ルトワックは「中国は戦略は下手」と言っていますが、ワタシもその通りだと思います。
靖国参拝問題のような本来の外交から言えば全くどうでも良いよな物でも、面子の問題になれば未来永劫譲れない。
こんな構造を持っている国では、柔軟で合理的な戦略などを建てることは不可能なのです。
言ってみればオークションで一度手を挙げたからには、何が何でも競り落とさなければならないと言うのが、中国政権なのです。
オークションで品物を競り落とす場合は、誰でも自分にとってその品物に出せる値段を決めて、それを超えたら諦めます。
外交で競り合う国益だって同じでしょう?
大した利益にもならない事に、際限もなく国力をつぎ込む事はできないのですから、利益の割に面倒が多い場合はさっさと諦めるのです。
しかし中国にはそれが絶対にできません。
面子を守る為には、何として競り落とさないならないのですから。
だから本来は宗教法人としての存立さへ難しかった靖国神社にトンデモナイ高値を付けてしまい、しかもその値を自分でドンドン競り上げているのです。
最後にこれを競り落とした時には、中国と言う国の全てを掛けて支払うハメになるのですが。