勿論子供だけでは行かず、大人に連れて行って貰うのですが、ワタシは母や祖母ではなく、父に連れて行って貰うのが一番好きでした。
だって父は母や祖母のようにワタシの体や髪をゴシゴシ洗わないし、帰りには必ずフルーツ牛乳を飲ませてくれましたから。
勿論、父と行くからには男湯に入るのです。
それが結構楽しみだったのです。

なぜなら男湯には、殆どいつも刺青をした客がいました。
今は刺青=暴力団と言う事で、殆どの銭湯も温泉も「刺青の方は入浴お断り」になっています。
しかし当時は暴力団でなくても、刺青を入れている人は結構いました。
夏の暑い日に上半身裸で土木作業をする人達の中に刺青をした人を普通に見かけました。
だから銭湯にも刺青の客は沢山いたのです。

刺青の図柄と言うのは、大体皆勇壮なものですが、それが子供心には随分恐ろしく見えました。
今でも覚えていますが、背中一面に青海波の中に般若の面の刺青をした御爺さんがいました。 前から見ると小柄な優しいそうな御爺さんなんですが、後ろに回ると恐ろしい般若がこちらを睨んでいる。
ワタシはその般若が怖くて堪らなかったのですが、しかし怖い物見たさで、どうしても見たくてたまらない。
それで父の陰に隠れて、般若に見つからないようにコッソリと見ました。
他にも子供がいる時に、怖い刺青の人がいれば、子供達皆で繋がって、背中へ回って刺青を見ました。
そんなわけで父とお風呂に行って刺青の人がいないと、何だか物足りない気がしました。
しかしワタシがまだ男湯に入れなくなる前に、我が家は内風呂のある家に引っ越しました。
そして今はまた近所の銭湯に通うようになったのですが、気が付けば銭湯の入口には「刺青の方の入浴はお断りします」と書かれています。
ふうん、今の子は刺青をみられないんだ。
ワタシはちょっとカワイソウな気がしました。

実は今外国人観光客が増えた事で、刺青客の入浴禁止をどうするか揉めているのだそうです。 その中には外国人にだけ刺青客の入浴を認めろなんてふざけた意見もあります。
ワタシは自分の楽しい思い出のお蔭で全然刺青は悪いと思えないので、刺青客の入浴jを認めても良いのでは?と思います。
しかしそれなら外国人だけと言うのはオカシイでしょう。
日本の刺青は魏志倭人伝の時代から歴史のあるモノで、世界的に優れた芸術性のあるものです。
だから刺青=暴力団と言う図式で、禁止して欲しくないのです。
刺青のヤクザと言えばこんなのの方が余程始末が悪いです。
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