2015-05-14 13:39

敬意の代償

 数日前、買い物に行く途中、お風呂屋さんの裏を通りかかったら、車の影からパトカーさんが出てきました。

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 パトカーさんはパトロール中なのか、挨拶しようと思ってもワタシなんぞには目もくれずにドンドン先へ行ってしまいます。 
 後ろ姿の尻尾の影に立派な玉々が見えます。 
 パトカーさんは優しくて、ミニパトや他の子猫が傍をウロウロしてパトカーさんに差し上げたご飯を食べようとしてもも、決して追い払うような事はなさいません。

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 それでワタシは「実はパトカーさんは女性で、この子猫達の母親では?」と言う疑念を持ったのですが、しかしこの立派な玉々を見れば、そんな疑惑は吹き飛びました。
 パトカーさんは本当に優しい男性で、子猫やミニパトを追い払うような事はなさらないのです。

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 それにしてもワタシはパトカーさんを見ていると、心からの敬意を覚えます。 パトカーさんだけでなく故白様もそうでした。
 以前我が家でも立派な玉々のある雄猫を飼っていた事がありました。 随分可愛がっていたのですが、しかし生後3年程だったでしょうか、一猫前になったと思ったら家出してしまいました。

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 玉々のある雄猫はどんなに可愛がられていても、ペットに甘んじる事を潔しとせず、自由と冒険を求めて家出してしまうのです。 そして苛酷な戦いを続けて町内に君臨するボス猫を目指します。
 パトカーさんも故白様亡き後、様々な曲折を経てこの町内に君臨されるようになりました。

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 しかしその代償は高価でした。
 パトカーさんは元々片方の後足が悪く、いつも体を揺すって歩かれます。 それなのに先月の終わりころ、前足の片方に怪我をされました。
 幸いこちらの怪我は良くなられたようです。 この時の歩き方を見ていたら、前足が悪いようには見えませんでした。

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 元来雄猫の生活は戦いの生活なので、いつも満身創痍なのです。
 我が家の雄猫も、始終怪我をして、あまりに酷い時は、その頃存命だった父が獣医さんに連れて行きました。
 しかし家出をしてしまえば、どんなに酷い怪我をしても獣医さんには行けません。 
 酷い後遺症が残る場合もあるし、勿論命を落とす事もあるのです。
 それでも雄猫はボスを目指して家出するのです。

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 こうした雄猫の生き様を見ていると、ワタシが今ハマっている「オーブリ&マンチュリ・シリーズ」の登場人物達と重なります。
 これはナポレオン戦争時のイギリス海軍を舞台にした海洋冒険小説ですが、冒険もさることながら当時のイギリス海軍の状況が克明に描かれているのが面白いのです。

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 それにしてもこの時代の海軍は苛酷です。 単純に船の居住性だけ見ても、現在の小型漁船以下です。 食糧や飲料水の管理技術もない事から、航海が長引けば、腐った水も十分の飲めないのに塩蔵の肉とコクゾウムシの湧いた乾パンを食べて過ごす事になります。
 しかも船足が遅いことからそもそも航海は今に比べて非常に長いのです。
 勿論軍艦ですから海戦を繰り返します。

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 ところがこのような苛酷な海軍に多数の少年兵がいるのです。 パウダーモンキーと言われる、火薬運びなど雑用をする少年兵は10歳以下と言うこともあります。 彼等は勿論下層階級の出身で人身売買同様に軍艦に載せられます。
 しかし軍艦に乗る少年は下層階級出身者だけではありません。
 ヤングジェントルマンと言われる士官候補生は、殆どが中流或いは上流階級の子弟ですが、普通12~13歳から入隊します。 艦長の召使いと言う名目で10歳以下の子が乗艦する場合も珍しくありません。

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 おっ!! パトカーさん、縄張りのマーキング!!
 
 ネルソン提督は牧師の息子でしたが、12歳で入隊しています。 しかし貴族や富裕層などの子弟も多いのです。
 こうした少年達は親達が、艦長その他海軍関係者へのコネを駆使して採用を頼み込むのです。 
 これは現代人の感覚から言うと、本当に理解不能です。 
 貴族の子でも富裕層の子でも、士官候補生として乗艦すれば、狭いガンルームに数人~数十人が押し込まれて、水や食料にも事欠く生活を強いられるのです。
 戦死の危険は大人と全然変わりません。 少年でも下士官の扱いなので、砲撃や切り込みの指揮するのですから。
 また見張りや帆の上げ下ろしの為にマストや帆桁に登るなど危険な作業もさせられます。

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 勿論これが少年達の将来のキャリアに繋がる、出世のチャンスになる事は事実です。 この時代はイギリスでもコネや姻戚がモノを言いますから、富裕層や貴族出身の候補生には出世のチャンスも大きいでしょう。
 しかしチャンスが大きいだけで、絶対に保障されるわけでもありません。 士官候補生が全部本物の士官であるリュテナント(海尉)なれるわけではありません。 なれるのは1割か2割程度です。

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 士官になるには任官試験をうけなければなりませんが、合格するには航海術をマスターしなければなりません。
 しかし12~13歳で乗艦しちゃうと、学歴は小学校卒です。 数学の学力は実数の加減乗除がちゃんとできるかどうかと言うレベルです。
 だから一応航海士や艦長が、航海中に暇をみては、航海術やそれに必要な数学の講義はするのです。
 しかしこれで三角関数を理解できるようなるってどれだけ大変なことか・・・・。
 できない中学生相手の学習塾講師をやっていたワタシの経験から言えば、余程本人が努力して、余程数学の才能が無ければ絶対無理でしょう。
 塾や家庭教師の助けなしで国公立大の理系に進学できるぐらいの子でなければ不可能でしょう。
 
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 航海術がマスターできず海尉任官試験に落ち続けて初老のヤングジェントルマンと言うのも結構いるのです。
 しかしそれ以前に戦死或いは事故や病死の確立が高いです。 
 それでもこの時代は戦死の多さは陸軍も同様です。 当時の陸軍はマスゲームのように綺麗に並んで行進して、至近距離で撃ちあうと言う戦法を取りました。 その為戦闘における戦死率はこの時代の陸軍は戦史史上最高なのです。
 だから同じ軍人なら「海軍の方がマシ」と思った親もいたのかも知れません。

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 ともあれ上流階級に生まれても男なら、声変わりもしない年齢で、このような危険な世界に放り込まれるのです。
 そうなるとこの時代の強烈な男尊女卑も理解できないではありません。 この時代は西洋史上でも最も女性の地位が低かった時代です。
 しかし女性でありさへすれば、こんな危険に追い込まれる事は絶対にないのです。
 成人女性よりも10歳以下の少年を危険に晒す時代なのです。
 このような時代であれば、男性が相応の敬意を受けるのは当然だと思わざるを得ません。

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 ワタシは白様やパトカーさんにはいつも敬語を使うのですが、それは彼等の苛酷な生活とそれに立ち向かう勇気を見ていると、敬意を払わらずにはいられないからです。
 しかし敬意の代償は大きいのです。

 ネルソン提督は提督になるまでに戦闘で片手と片目を喪っていました。 しかし提督になれないけれど戦傷で障碍を抱え込んだ軍人は無数にいます。 そしてそれ以上の戦死者がいます。 当時の医学では重症者は治療不能で結局死んでしまう場合が非常に多かったのです。

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 実は先週、パトカーさんが我が家にいらしたとき、顔面が血だらけでした。 
 それでワタシは凄く心配していました。
 その後、顔の傷は治ったようですが、しかし片目がオカシイのです。

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 どうかパトカーさんの傷が無事治りますように・・・・・。
 勇敢で優しいパトカーさんがネルソン提督になってしまわない事を祈っています。
 
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コメント

名誉ある服従

高貴なる義務ここに極まれりな感じですね。
近代海軍の父は誰がなんと言おうがイギリスですが、ハンパじゃないですね。

戦の辛苦を克服する!というイギリス海軍のスローガンを

ウォースパイト

というそうですが、
第一次大戦で建造され二次大戦で戦艦の黄昏の時代に最も活躍した奇跡の戦艦

ウォースパイト(クイーンエリザベス級戦艦のたしか三番艦)

の一代記が出ていまして非常に面白かったです。
  1. 2015-05-14 22:51
  2. URL
  3. ガンダム #iL.3UmOo
  4. 編集

Re: 名誉ある服従

> 高貴なる義務ここに極まれりな感じですね。
> 近代海軍の父は誰がなんと言おうがイギリスですが、ハンパじゃないですね。

 こうした少年兵を使う事は、イギリスだけではなく当時全ヨーロッパでは普通だったようです。
 ちなみに東郷平八郎は14歳で薩英戦争に従軍しています。 当時とすれば普通の感覚だったのでしょう。
 白虎隊だって殆ど同年の少年ですから。

> 戦の辛苦を克服する!というイギリス海軍のスローガンを
 
> ウォースパイト
>
> というそうですが、
> 第一次大戦で建造され二次大戦で戦艦の黄昏の時代に最も活躍した奇跡の戦艦
>
> ウォースパイト(クイーンエリザベス級戦艦のたしか三番艦)
>
> の一代記が出ていまして非常に面白かったです。

 面白そうですね。 探してみます。
  1. 2015-05-15 10:09
  2. URL
  3. よもぎねこ #-
  4. 編集

誇り高いパトカーさんの面構えはすばらしいですね。
けど斜め後ろから見たほっぺのラインが可愛くて悶死します。
  1. 2015-05-15 13:12
  2. URL
  3. こきち #97nXsu5.
  4. 編集

Re: タイトルなし

> 誇り高いパトカーさんの面構えはすばらしいですね。
> けど斜め後ろから見たほっぺのラインが可愛くて悶死します。

 これこそボス猫の勇姿なのです。
  1. 2015-05-15 19:48
  2. URL
  3. よもぎねこ #-
  4. 編集

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