旅行も終わりに近づいたある日、ウィーン市内にあるスロバキアの観光案内に行きました。
ワタシが下手くそなドイツ語で観光案内のパンフレットを欲しいと言うと、案内係の綺麗なオネエサンは凄無愛想な口調で「ビザはあるの?」と聞いてきました。
ビザ??
そんなモンありません。
そんなモンは日本を出る前にスロバキアの大使館でも申請して貰わなきゃダメでしょう?
でもワタシは只、ウィーン見物にも飽きたので、スロバキアに足を延ばそうと思っただけです。 ウィーンからはスロバキアの首都プラチスラバまでドナウ川を下る遊覧船が出ています。
だからその船に乗ってドナウ川の遊覧を楽しみ、ついでにスロバキアの首都プラチスラバを見物しようと思いついたのです。

でもさ、日本人だったら殆どの国はノービザじゃなかった?
ワタシはまたヘタなドイツ語で、オネエサンに「ワタシ日本人アル、ビザいるか?」と聞いてみました。
するとオネエサンはさっきのつっけんどんな態度をコロリと変えて、微笑みながら山のように沢山のパンフレットをくれました。
ワタシは「ダンケ シェーン!!」と言ってそれを貰ってきました。
翌日ドナウ川の船着き場で、プラチスラバ行きの船に乗るときに、オーストリアの入管でパスポートを確認されました。 ワタシは威張ってパスポートを提出しました。
ワタシ: この菊の後紋章が目に入らぬか!!
オーストリアの入管; 恐れ入りました。
菊の後紋章のパスポートで簡単に船に乗り込む事ができました。
プラチスラバに着いて、船を降りるときはスロバキアの入管にパスポートを提出します。
ここでも「この菊の後紋章が目に入らぬか!」「恐れ入りました。」でオシマイです。

ウィーンのスロバキア観光案内のオネエサンが、無愛想だった理由はわかります。 ワタシはそれでなくてもヨレヨレの中年女ですが、この旅行で立ち寄ったイタリアのホテルに衣類の大半を置いてきてしまいました。
それでその後は殆ど着替えがなくなり、世にも貧乏臭い恰好で歩いていたのです。 その上下手くそなドイツ語なんか使うのです。
これじゃどう見てもどこかの極貧国からの不法移民です。
こんなのを入国させたら、不法滞在した挙句に人道を盾に生活保護だの、医療支援だのを寄越せとごねると思われても仕方ありません。
しかしそのオネエサンの不安の一発で吹き飛ばしたのは、「日本人」でした。
日本人だったら入国して厄介事を起こす事はない!!
観光客として気前よくユーロを落としてくれるだろう!!
それはまたスロバキア政府の見解でもあるのです。 だからオネエサンは大ニコニコで観光案内のパンフレットをどっさりくれたのです。

スロバキアへ入国したワタシは、楽しくこの首都を見物しました。
スロバキア政府が期待したほどのユーロは落としませんでしたが、それでも不法滞在も不法就労もせずに、夕方の船でウィーンへ戻りました。
ワタシはこうして簡単にスロバキアに入国できたので、この観光案内のオネエサンの話は笑い話で終わりです。
しかし中国人や韓国人なら笑話では済まないでしょう。
ワタシなんぞと違って高級ブランド品に身を固めた大富豪でも、中国人や韓国人では多くの国に観光するのにもビザを要求されるのです。
入国したいと思う国に、収入や資産や職業を証明する書類を出して、不法滞在や不法就労をするような人間ではない事を証明しなければなりません。
それをしてビザを用意していないと、遊覧船で二時間程の国への行くことができません。
あんな薄汚い貧乏臭い女が、ビザなしで入るのに、ウリのようなセレブにビザを要求するなんて差別ニダ!!
ウリもプラチスラバを見物しないニダ!!
我は金持ちアル!! プラチスラバの商店でも爆買いして、日本人より遥かに沢山ユーロ落すアル!!
だから差別止めて、我をビザ無しで入れるアル!!
こんな事を幾らプラチスラバの入管で喚いても無駄です。 速攻で叩き出されます。
それがどれほど悔しく惨めだかは想像に余りあります。

しかし主権国家はこのように自国に入国する外国人を「差別する」権利があるのです。 権利のある差別だから、「区別」と言うべきかも知れません。
どんな国も自国にとって有害だと判断した外国人は、追い出す権利があるのです。
その判断の基準を個人対して行う場合もありますし、また短期滞在ビザの免除のように国家単位で行う場合もあります。
「朝鮮人は出て行け!」と言うデモや街宣は、この主権国家の権利を国民が行使するように訴えているだけです。
ビザの要不要のように、国家が外国人を個人ではなく、国によって扱いを変える事が不当ではないのなら、国民が外国人の出国を個人ではなく国によって要求する事だって不当とはいえません。
ちなみに現在日本では韓国人は短期の訪日ではビザは必要なくなりました。 しかし平成18年までは必要でした。
また中国人は現在もビザが必要です。
だから成田や関空では、入管がビザのない中国人を入管が「中国人は出て行け」と追い返しています。
平成18年までは韓国人も「朝鮮人は出て行け」と追い返していました。