もしギリシャへ旅行して、こんなのがホテルのロビーをウロウロしていたら、ワタシは怖いのでホテルを変えます。

ああ、しかし所詮場末のチンピラは大女帝の敵ではありませんでした。 チンピラが他のユーロ諸国に泣きついて、何とか借金の繰り延べを実現しかけたのですが、しかし女帝の腹心がこれをどんでん返しで一蹴してしまいました。
これからギリシャはどうなるのでしょうか?
それにしてもギリシャにとってユーロって一体何だったのでしょうか?
ギリシャがユーロ加盟したのは、勿論ギリシャの自由意思でした。 それどころかギリシャは本当はGDPの12%だった政府債務を、マーストリヒト条約の加盟基準値である3%以下と誤魔化してまで加盟したのです。
だから皆、ユーロ加盟はギリシャには余程の利益があるんだろうなあ・・・・・と思ってきました。
けれど普通に考えると、ギリシャにはユーロ加盟の利益は見当たらないのです。
だってユーロに加盟すると、自国の意思で金融政策をできなくなります。 またマーストリヒト条約の制約で財政政策の自由度も非常に少なくなります。
ユーロ圏の経済の中心はドイツなので、金融政策は殆どドイツの都合で行われる事になってしまうのです。
ドイツに近いフランスやオーストリアやオランダなどの国々ならば、景気不景気の変動もドイツとほぼ連動するからそれでも不都合はないでしょう。
でもギリシャぐらい離れているとそうは行きません。
さらに厄介なのは、ギリシャなど経済基盤の弱い国々にとって、ユーロと言う通貨は強すぎる事です。 だから常にユーロ高に苦しむ事になります。
EU加盟した時点で、EU内では関税で自国産業を守る事が出来なくなっていました。 しかしこの上強すぎるユーロでは、国内産業の競争力が奪われるばかりです。
それでなくても産業基盤の弱いギリシャで、通貨まで高くなると、観光客さへ減ってしまいます。 ユーロ圏外かの客が減るのは勿論ですが、ドイツ人だって大好きな休暇旅行はギリシャを避けて、トルコやチュニジアへ行ってしまうのです。
一方ユーロ加盟したからと言って、ドイツやフランスから投資が増えるわけでもありません。
ドイツがユーロ圏内で工場を作るなら、ドイツに近いポーランドのポンメルン(メルケルの生まれ故郷)やスロバキアなど、旧神聖ローマ帝国領を選ぶでしょう。
だって地理的にも文化的に近い上、賃金は安いのですから。
これではギリシャの経済は苦しくなるばかりです。
実は2013年にワタシはこの状況についてワタシなりに考えた事をエントリーしました。
ユーロ雑感 その3

その時貼ったグラフがこれです。
見ればわかると思いますが、ユーロ発足以前と以降で、加盟国の経常収支が劇的に変わっているのです。
ドイツが劇的に黒字を増やす一方、スペイン・イタリア・ギリシャなどが一期に赤字に転落しました。
現在ユーロの落ちこぼれ組であるこれら南欧諸国も、実はユーロ加盟まではそれなりに経常黒字国だったのです。 これは経済が弱ければ通貨も弱いので、輸出入のバランスが取れていたからでしょう。
一方ドイツもユーロ加盟までは経常赤字国でした。 これはドイツ産業の競争力が強いと、その分ドイツマルクが高くなってハンディキャップん戦を強いられたからでしょう。
でもユーロ加盟でハンディキャップは無くなったのです。
そこでドイツは自国の競争力に比べて安いユーロを使って、ジャンジャン輸出を増やしました。 だからユーロ加盟以降ドイツの失業率は非常に低い水準を保っているのです。
ユーロ危機になるまでは、南欧諸国だってユーロが自国通貨になったのを良い事に、ドイツ車をドンドン輸入していたのです。
ギリシャだってそうです。
で、そのお金はどこから?
勿論借金です。
つまり政府が気楽に国債を刷って、放漫財政に徹しました。 だから国民の4分の1が公務員で、しかもその公務員の多くが給料を貰うだけで、出勤もしないと言う幽霊公務員だったと言います。
本業の他に公務員としての給料を貰えたら、フォルクスワーゲンのローンぐらい払えるでしょう?
でもこんな事ができたのは、つまりはユーロ加盟のお蔭です。
何しろギリシャは過去200年間に100回もデフォルトしていたと言う国です。 冬季オリンピックと夏季オリンピックを合わせたオリンピックの頻度でデフォルトです。
本来ならこんな国の国債を買う人なんか殆どいないのです。 だから幾ら政府がばら撒きの為に借金をしたくてもできなかったのです。 それで無事に済んでいたのです。
しかしユーロ加盟のお蔭で、ギリシャ国債も普通にユーロ建てで発行できるのです。 ユーロ債ならユーロ圏の人々には為替リスクはありません。 マーストリヒト条約をクリアしたことで、デフォルトの心配もなくなりました。
これなら多少金利を高く設定すれば飛ぶように売れるでしょう。
つまり借金し放題になったのです。
先に書いたように、産業を育てると言う点では、どう考えてもギリシャにとってユーロ加盟は不利なのです。 それどころかひたすらドイツに有利と言う恐ろしいシステムなのです。
それでもギリシャがユーロ加盟をしたのは?
つまりはギリシャ人がユーロ加盟によってギリシャ経済を真面目に育てるとか、そういうことは考えていなかったからではないでしょうか?
少なくとも当時のギリシャの政治家達は、そういう事を無視したのです。 代わりに強い通貨を手に入れて、それを思いっきり使う事しか考えていなかったんじゃないかとしか思えません。
実際ユーロに加盟したお蔭で、何ともう12年もデフォルトしていないのです。 その代り大変な借金を抱え込んで、気が付けば国家的債務奴隷になってしまったのです。
ア~~ア。
現在のギリシャの状況をこんな風に説明している人もいます。
だからユーロのような「大きくて、フニャフニャした弱い通貨」の使用は、大歓迎なのです。もっと踏み込んだ言い方をすれば、ユーロ圏というダメな経済圏の盟主として「コノ、コノ、コノーッ!」とサド侯爵的にムチを打ち込む役回りは、ドイツにとってこの上ない快感な立場だということ。
今回大女帝がチンピラの要求を聞いてくれても、チンピラの未来は開けません。
なぜならユーロ圏にとどまる限り、強すぎる通貨で金融財政政策も不能では、産業は育たないでしょう。 その上完全に信用を失ったので国債発行も不能になりました。
だから何とか女帝様の所から逃げ出すのが賢明だと思うんですけどね。
以前読んだ「日本人が知らない韓国売春婦の真実」と言う本に、若い女性にホスト遊びをさせて借金を背負わせて売春婦に売ると言う悪徳業者の話がでていました。
ギリシャにとってのユーロってまさにこの悪徳女衒じゃないですか?