「先生、今私達のクラスが滅茶苦茶なの。 先生が悪いの。 5人の子が授業中に暴れるのに、先生が殴らないから、どうしようもないの。」
ワタシは一瞬、凄いショックを受けました。
子供が先生に他の子供を殴る事を望む!!
しかし考えてみれば当然の事です。 当時は学級崩壊とか荒れる学校とかが問題になっており、ワタシが教えてる小学生や中学生の学校もこういう授業崩壊が結構あったのです。
そしてそれは全クラスの生徒が騒ぐと言うよりも、数人の生徒が意図的に騒いで授業妨害をすることから起きているようでした。
ワタシにこの話をした「先生が殴らないから悪い」と言った二人の女の子は、成績は中の下か下の上くらいでお世辞にも勉強好きとは言えませんでした。
しかしそれでも毎日毎日学校へ行って、馬鹿騒ぎが続くのでは腹が立つのも当然です。
何とかして教室に秩序を!!
先生なら何としても悪い子は殴って、大人しくさせて自分達がちゃんと授業を受けられるようにしてほしい。
そう考えるのは当然なのです。

でも勿論学校教育法では体罰は禁止です。 実はその頃凄い体罰をする教師も結構いましたが、とにかく彼女達の担任は学校教育法を守って体罰をしなかったので、代わりに毎日授業が滅茶苦茶になっていたのです。
で、子供の人権と言う立場からすればどうなんでしょうか?
彼女達にすれば、クラスの5人の為に毎日学習権を侵害されている状態なのです。
彼女達には自分達の学習権を守る為に、この5人をクラスから追放する、或いはこのような狼藉を止めさせる為に担任に体罰等強力な措置を求める権利はないのでしょうか?
ちなみに学習権を侵害されているのは、彼女達二人だけではありません。 暴れている5人を除くクラスの子供達全員が学習権を侵害されているのです。
そしてこういう状況は当時、日本中の沢山の学校で起きており、多くの子供達が学習権を侵害されていたのです。

ところが当時この子達の学習権を守る為に、何か現実的は措置をすると言う話は全然出ませんでした。
勿論荒れる学校や学級崩壊は随分問題になりました。
しかし当時のマスゴミ報道を見ていると、「社会に歪を直さなければ・・・」「競争社会の問題・・・・」「詰め込み教育を止めろ」などと言う議論は随分ありました。
一方暴れる子供を体罰で抑え込む、或いは他の子とは分けて、別の教室で勉強させるとか言う処置を取る学校や教師がいると、マスゴミが大問題にしました。
体罰は勿論、そうやって問題のある子を安易に排除するようなやり方は、子供の人権を侵害するものだと言うのです。
それでそういう事をする学校の話がニュースになるたびに、自称教育評論家とかとテレビのコメンテーターとかが、そういう学校や教師を人でなしなにかのように非難していました。
そういわれると学校側は満足に反論することもせず、しかし陰では凄い体罰教師や、問題児の排除はしていたようです。
ワタシはその頃、教え子達の想像を絶する学校生活の話を聞いていて、子供達の現実とマスゴミの唱える理想のギャップに呆れるばかりでした。

その後ワタシは講師の仕事を辞めましたが、社会の歪とか落ちこぼれとかは、その後20年あまり経ってもなくなるわけはないので、教室で暴れて授業妨害をする子はいなくならなかったようです。
問題児童らを隔離、「特別教室」で指導へ 大阪市教委案
子どもの問題行動に対し、大阪市教育委員会がまとめた具体的な指導案の内容がわかった。一定レベルを超える悪質な問題行動を繰り返す児童・生徒を在籍する市立学校から引き離し、1カ所に集めて指導する「特別教室」を新たに設ける。10日に開く橋下徹市長との協議会で正式に示し、来春にも実施する方針。文部科学省によると、こうした対応は珍しいという。
問題のある子どもの安易な「排除」につながるとの批判も予想され、議論を呼ぶとみられる。市教委事務局関係者によると、特別教室には、問題行動の対応に豊富な経験や心理学など専門的知識がある教職員らを配置。社会や学校でのルールの大切さを教え、他者を思いやる態度を育てることに重点を置く。
対象となる行為は、校内暴力、非行、著しい授業妨害などを想定。具体的には、市教委が昨年9月に策定した問題行動の5段階の分類のうち、「レベル4」(激しい暴力など)と「レベル5」(極めて激しい暴力など)に該当する場合、特別教室で指導する。その際、出席停止や警察など関係機関へ連絡したうえで、行為の悪質さや周囲への影響の大きさなどを考慮して期間を定める。
おお、ようやくちゃんと大阪府が正面からこの問題への対応をする事にしたのですね。

けれどやっぱり「問題のある子どもの安易な「排除」につながるとの批判も予想され、議論を呼ぶとみられる。」なんてことを言いたくてうずうずしている連中がいるのです。
なるほど問題のある子達を排除せずに、他の子の学習権を確保する方法があるならそれが理想でしょう。
でもそんな魔法みたいな方法があるんですか?
確かに暴れる子供には色々な問題があると思います。
ワタシの塾の生徒に塾に他の子や講師に嫌がらせに来ているとしたか思えないどうしようもない子がいました。 その子は中学2年で綺麗な顔立ちの女の子だったのですが、目つきが完全に娼婦の目と言うか、韓国の自称慰安婦みたいな卑しい目をしていました。
しかしそれはその子のせいではありません。
その子は父親がいなくて、水商売をしている母親が始終男を家に連れ込んでいたのです。
後で児童虐待に関する本で知ったのですが、そういう家庭に女の子がいれば、殆どの場合母親が連れ込んだ男が、その子に性的虐待をしているとのことです。
だから彼女は中学2年の身で、普通の大人が一生知ることのない程の苦悩を抱えこんでいたのかも知れません。
それを思えば彼女がわざわざ学習塾に、講師や他の子供に嫌がらせをしに来る気持ちもわからなくはありません。
確かに本当に不幸な子なのです。

なるほどこういう不幸な子供をクラスから排除するのは冷酷であることはわかります。
しかし彼女の苦悩には、他の子は責任はないのです。
そしてこういう苦悩は簡単には取り除けないでしょう。 だから彼女も問題行動がいつ終わるかはわかりません。
そこで子供の人権を叫ぶ人々に聞きたいのですが、彼女の人権を最大限重視し、彼女をクラスから排除するべきではないと言うなら、他の子供の学習権はどうするのですか?
子供達は同じクラスの仲間なのだから、学習権の侵害に甘んじても、暴れる子供を受け入れるべきだと言うのでしょうか?
クラス子供達がみんなで暴れる子供を受け入れて、その子を立ち直らせると言うのは映画かドラマなら理想です。
しかし普通の子供にそんな義務があるのですか?
たまたまクラスに不幸な生い立ちから、性格が破綻して他の子供の学習権を侵害する子がいれば、他の子供達は自分の学習権を犠牲にして、他の子供の更生を助ける義務があるのですか?

これを大人で考えればわかりますが、そんな義務はありません。
大人の学校、例えば法科大学院とか英会話学校とかに、不幸な体験から精神的に破綻したクラスメートがいて、その人が授業中に騒いで授業がマトモに聞けなくなる、教室の物を壊す、などと言うことを続けたらどうしますか?
法科大学院の学生ならみんな人権の大切さを理解しているので、クラス全員でその不幸な学生をケアして、何とか彼が自分達と一緒に卒業できるように頑張りますか?
そんなことはあり得ないでしょう?
「他の人の迷惑になる行為をするなら退学してください」で御仕舞じゃないですか?
それなのに子供だったら「学習権を侵害する子をクラスに受け入れて、その子の迷惑行為を甘受するべきだ」と考えるのでしょうか?
しかも小中学校は義務教育であり、ここで教わる事は基礎的な読み書き算数など、全ての子供が将来生きていくうえで死活的に必要な事なのに・・・・・・・。

ワタシは実はこの大阪府の話をno-risuさんの所で知りました。 そして学習塾の講師をしていた頃の話を思い出したのです。
no-risuさんはこの「 問題のある子どもの安易な「排除」につながるとの批判も予想され、議論を呼ぶとみられる。」と言う朝日の報道を、人権屋の飯の種と批判しておられます。
ワタシはno-risuさんのこの意見を全面的に支持します。
そしてこの人権屋と言う人達に限りなく不審を抱きます。
所謂人権派弁護士や教育評論家もみなさんは、そんなに人権が大事なら、一部の問題児に学習権を侵害される他の数十人の子供達の人権はどうするつもりなのでしょう?
そしてこの問題だけでなく人権を振り回す人々に限りなく不審を抱きます。
人権は重要な概念です。 でも人権と喚きさえすれば正義なのは、中国や北朝鮮のように独裁政権が国民の人権を弾圧している国だけです。
日本のような民主主義国家では、所謂人権活動家が喚く人権問題は、国家による人権弾圧なんかではなく、彼等の好きな人の人権が彼等の嫌いな人の人権とぶつかる場合に限られているからです。