2014-01-23 23:10

動物を殺す その4

 ワタシの大好きな本に「エリオット先生奮戦記」と言うのがあります。 

 イギリスの片田舎で獣医師として働くジェームズ・エリオットが、その仕事の中で出会った動物達やその飼い主達、獣医師としての日常生活の中で拾ったエピソードを、ユーモラスに暖かく描いた本です。

 これらのエピソードの中に動物を安楽死させる場面がいくつかあります。

 動物を安楽死させるのは、実は獣医の重要な仕事の一つなのです。

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 エリオット先生が最初に患畜を安楽死させたのは、先生が大学を出て獣医師として働き始めてまで一週間余りの頃でした。

 エリオット先生はジークフリート・ファーノン獣医師の動物病院の助手として雇われて働きだしてから二度目の週末、ファーノン医院長は助手のエリオット先生に留守を任せて実家の母親の元に帰りました。

 ところがファーノン医院長は病院を出て間もなく、近郷の有力貴族の馬亭頭が往診を頼んで来ました。

 行って見るとこの貴族の愛馬が七転八倒の苦しみでした。 
 新米獣医のエリオット先生にも一目で診断が着きました。 腸ねん転です。
 そして馬の腸ねん転は治癒不能です。 鎮痛剤もききません。 腸ねん転に罹った馬は数時間から数日苦しみ続けて死ぬことになるのです。

 そこでエリオット先生は馬亭頭に安楽死を薦めます。
 しかし当然の事ですが、馬亭頭は断固拒否します。 主人の留守中に愛馬を死なせるような事になったら、馬亭頭としての立場がありません。

 そもそも彼は新米獣医エリオット先生の診断を信用しておらず、ファーノン医院長の診断を待つべきだと主張しました。

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 これにはエリオット先生も悩みました。

 エリオット先生が自分で馬の診断をするのは実はこれが初めてなのです。 雇用主の最重要な顧客の愛馬を安楽死させた後、解剖して死因を調べて誤審だったら?、エリオット先生は得たばかりの職を失う事になります。

 しかしファーノン先生が病院に戻るのは週明けです。
 馬はそれまでの間苦しみ続ける事になります。

 この馬の苦しみを見てエリオット先生は決意します。 
 そして馬亭頭に言います。
 
 「愛馬が週末の間苦しみ続けた事を、貴方の御主人が知ったら、お喜びにはならないでしょう。」

 これに馬亭頭がひるんだ隙に、エリオット先生は車から無痛激殺機を取り出して、馬を安楽死させました。

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 次のエピソードは犬の安楽死です。

 ある日エリオット先生は非常に貧しい老人の犬の往診を頼まれます。 先生が診察してみると、その老犬は触診でわかるほどの癌を抱えていて、すっかり弱り込んでいました。 
 治癒の見込みはありません。

 先生がそれを告げると、老人は即座に「だったら楽にしてやってください。」と答えました。

 先生が安楽死用の薬剤を犬に注射する間、老人は犬を抱きしめて居ました。
 
 そして老人の抱かれたまま犬は眠るように息絶えました。

 老人は先生に犬が苦しまずに死んだことを感謝します。 老人は一人暮らしでこの犬が唯一の伴侶でした。

 犬が死んだ後老人は往診料を払おうとしましたが、老人の余りの貧しさを見たエリオット先生は「無料です。」と答えてしまします。

 しかし先生が車を発進させて間もなく、老人が後を追って来ました。 老人は自分が特別な記念日に吸おうと思って大切にしまっていた葉巻を箱を差出して、エリオット先生に受け取ってくれるように頼んだのでした。
 
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 そして猫の安楽死のエピソードもあります。

 ある年のクリスマス、先生は富裕な未亡人の家へ往診を頼まれます。 この未亡人は犬を数匹飼っていたので、再々診察を頼んでくる良い顧客なのです。

 ところがその日、先生が診察を頼まれたのは雌の黒猫でした。 

 未亡人によるとこの猫は野良猫で、夏ごろから時々彼女に家に入ってくるようになり、ミルクを貰って暖炉の前で暫く休んで行くようになったのだそうです。

 ところがこの日猫は一匹の子猫を連れてきて、いつものように暖炉の前に寝転んだのですが、そのまま殆ど動かなくなってしまったと言うのです。
  
 エリオット先生が診察してみると、猫は触診でわかるほどの癌を抱えて居ました。
 
 先生がそう告げると、未亡人は即座に「それでは楽にしてやってください。」と頼みます。 
 
 未亡人は猫を抱いてやり、エリオット先生は猫に安楽死用の薬剤を注射し、猫は未亡人の膝で息絶えました。

 猫は自分の最後を知って、子猫を未亡人に託すために連れてきたのでした。 未亡人がその子猫を愛情をこめて育てた事は言うまでもありません。

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 どのエピソードを見ても明らかです。

 苦しむ動物を安楽死させるのは、獣医師としての職業的良心なのです。 そして一般のイギリス人も自分の愛する動物が苦しむ時は、安楽死させるのが飼い主の義務と考えているのです。
 
 「罪なき動物を苦しめてはならない。 彼等の苦しみを取り除いてやるのは人間の義務である。」と考えているのです。

 勿論これは動物に対する場合だけで、人間の安楽死は殺人ですし、自分が病気や怪我で苦しんでも、キリスト教徒なら自殺は許されません。

 古代から畜産を行い、家畜を屠殺して来た彼等は人間の命と動物の命を峻別しています。

 そして人間は動物の上に立つ者として、自分が愛する動物には、愛し守り慈しむとともに、最後には死の苦しみを和らげる義務も負うのです。

 こういう人間の西洋人の動物観が何かでトチ狂うと、スィート・キャロラインみたいに痛い事になるのですが、しかし一方で「罪なき動物を守る」と言う立場では大変真摯であると思うのです。

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 実は日本人も治癒不能な病気や怪我を抱えた犬や猫の安楽死を獣医師に頼む人は結構いるのです。 

 しかし日本人は動物を安楽死させるのは罪悪だと言う感覚があるので、獣医師に安楽死を頼んだ飼い主は動物を獣医師に託すとそのまま立ち去る場合が殆どだそうです。

 ヘリオット先生のエピソードに出てくる犬や猫のように、飼い主に抱かれて死ぬことはできないのです。

 動物を安楽死させるのは、勿論「罪なき動物を苦しませてはならない。」と言う善意だけが動機ではありません。
治療費がかさむのを避けたいとか、介護が面倒とか、人間にとって極めて利己的な理由もあるのです。

 それゆえ安楽死させるのが後ろめたく立ち合いたくないのでしょう。

 けれどそれだからこそ最後は抱きしめて看取ってやるべきではありませんか?

 その意味ではイギリス人の態度は飼い主として真摯だと思うのです。

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 ワタシは今、猫のよもちゃんと二人暮らしです。 だからワタシにとってよもちゃんは何より大切な伴侶です。

 けれど猫の寿命は精々20年だし、よもちゃんも今年で10歳になりますから、何年か後にはお別れしなくてはなりません。

 それでもしよもちゃんが苦しみ続けて安楽死させてあげなければならないような事になったら、ワタシはよもちゃんを抱きしめて死なせてあげようと思っています。

 ワタシはイギリス人じゃなきから、できるかどうかわからないけれど。

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 オマケ

 私が猫又に出会った話
 http://bottisoku.blog.fc2.com/blog-entry-4095.html

  
 

 

 

 
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コメント

安楽死の話、心温まるいい話でした。

よもぎ猫さんこんばんは・・・

安楽死の話、心温まるいい話でした。

ところで、都知事は枡添要一の変態で決まりとか言われてます。こいつは隠し子3人で養育費も十分払わず、資産10億円も在っても実の姉は生活保護自給者。外国人参政権賛成で妻は創価の幹部。自民党を除名されたのにテレビのインタビューには「離党」とかウソも平気。

こんな人物が都の知事になった暁には日本人は「安楽死」を選んだ方がましかも?

米国やフランスなら、軍隊で4星(元帥級)を得た人物は文句なしに大統領候補になれるとか聞きましたが、我が日本での田母神氏のマスコミの扱いは亡国の兆しの如くですけど、いつまでこんな事が続くのか。
  1. 2014-01-24 03:39
  2. URL
  3. コロ4号 #-
  4. 編集

Re: 安楽死の話、心温まるいい話でした。

> よもぎ猫さんこんばんは・・・
>
> 安楽死の話、心温まるいい話でした。

 哀しくも美しい話でしょう。 だからワタシはエリオット先生が好きなのです。
 しかも彼は愛国者です。

 http://yomouni.blog.fc2.com/blog-entry-2082.html

> ところで、都知事は枡添要一の変態で決まりとか言われてます。こいつは隠し子3人で養育費も十分払わず、資産10億円も在っても実の姉は生活保護自給者。外国人参政権賛成で妻は創価の幹部。自民党を除名されたのにテレビのインタビューには「離党」とかウソも平気。
>
> こんな人物が都の知事になった暁には日本人は「安楽死」を選んだ方がましかも?

 政治姿勢も問題ですが、こんなに金に汚く個人スキャンダルにまみれた人間だと、知事になったら違法献金とかその類の問題がバラバラでそうです。

 自民党はちゃんと身体検査したのでしょうか?

> 米国やフランスなら、軍隊で4星(元帥級)を得た人物は文句なしに大統領候補になれるとか聞きましたが、我が日本での田母神氏のマスコミの扱いは亡国の兆しの如くですけど、いつまでこんな事が続くのか。

 日本のマスゴミにとって田母神氏は劇毒物ですから、近づくのも怖いのです。
  1. 2014-01-24 11:03
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  3. よもぎねこ #-
  4. 編集

エリオット先生

 私も彼の著作は読んで共感していました。ところで彼は先の大戦では航空兵だったんですよね。
 そうやって戦争に向き合うことが出来なかった連中は・・・・日本の左巻きとかシナ朝鮮とか。
  1. 2014-01-24 20:00
  2. URL
  3. ご隠居 #-
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Re: エリオット先生

>  私も彼の著作は読んで共感していました。ところで彼は先の大戦では航空兵だったんですよね。
>  そうやって戦争に向き合うことが出来なかった連中は・・・・日本の左巻きとかシナ朝鮮とか。

 「エリオット先生奮戦記」は英語圏では大ベストセラーになって、テレビドラマ化もされました。

 これは話の内容の面白さもさることながら、エリオット氏の人柄が大きいと思います。 

 航空兵に志願する下りも至ってサラリと書かれていて、気楽に読み飛しそうなのですが、一回の出撃で死亡率が2割と言う兵科に初めての妊娠中の妻を置いて志願するのですからね。

 シナ朝鮮の「愛国心」とか「民族心」とかとは余りに違うので唖然とします。


  1. 2014-01-25 11:07
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  3. よもぎねこ #-
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鈴木孝夫著「日本人はなぜ日本を愛せないのか」という本にイギリス人と日本人の動物愛護に対する考え方が大きく違っている事例が書かれています。
南極観測隊が樺太犬を置き去りにしたのに対してイギリス人は大変怒ったそうだ。しかし英国南極調査隊は南極の基地が閉鎖される時100匹のハスキー犬を経済上の理由で射殺した。これに対してイギリス人は何の声もあげていない。
日本人は残酷と言う概念それ自体の相違に立脚していることを理解していないのだ、という事のようです。
  1. 2014-01-26 02:08
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  3. #4TqNN4I2
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Re: タイトルなし

> 鈴木孝夫著「日本人はなぜ日本を愛せないのか」という本にイギリス人と日本人の動物愛護に対する考え方が大きく違っている事例が書かれています。
> 南極観測隊が樺太犬を置き去りにしたのに対してイギリス人は大変怒ったそうだ。しかし英国南極調査隊は南極の基地が閉鎖される時100匹のハスキー犬を経済上の理由で射殺した。これに対してイギリス人は何の声もあげていない。
> 日本人は残酷と言う概念それ自体の相違に立脚していることを理解していないのだ、という事のようです。

 なるほどわかりやすい話ですね。
 
 イギリス人等西洋人がて動物と人を峻別する考え方は、彼等が古来牧畜をして、家畜を殺して食べないと生きて行くことができなかった事から来ているのです。

 しかし日本人は実は世界でも稀な非牧畜民族なのです。

 この違いが常に西洋人だけでなく、それ以外の日本人以外の民族との文化摩擦の根源になるのでしょう。
 
  1. 2014-01-26 09:56
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  3. よもぎねこ #-
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