夕方、雪見に出たついでによもちゃんを探しました。 少し帰りが遅いので連れて帰ろうと思ったのです。
よもさ~~ん!! よもさ~~ん!!
同居に~~ん!!
あら、そんな所にいたの。 もう遅いから帰りましょう。
解ったよ。 でももうチョッと遊びたかったけどなあ。
もう十分遊んだでしょう。 遅くなると、またあのチコ様モドキが出てくるわよ。
そうなのよね。 白様がお隠れになってから、韓流黒猫がのさばって、それが消えたと思ったら今度はチコ様モドキなのよね。
ホントに白様は偉大だったのね。
白様は見かけは厳つくて、近寄り難い方だったけど、本当に紳士で一度も雌猫を虐めるような事はなさらなかったわ。 そしていつも誇り高く孤高の生活をされていたのよ。
そうね。 だからよもさんの子猫達の父親になったのよね。
あ~あ、チョッとそれは・・・・・。
ごめんなさい、余計な事言って。
良いのよ。 ワタシ、白様の子猫を産んだこと誇りに思っているわ。
そうね、それにあんなに可愛い子ばかりだったものね。
そうよ、だってワタシと白様の子猫達だもの。 白様は高貴なシャムのお血筋だったのよ。
解ってるわ、だから子猫達にもシャムの毛色が出ていたわ。
こうして春の雪を見ていると、白様の毛皮を思い出すわ。 白様は野良猫でいらしたから、毛皮は汚れていらしたけれど、お心はこの雪のように清らかで高貴な方だったわ。
ワタシは白様に始めて会った時、まだ生後一年足らずでまだ子猫同然だったの。 だから何が何だか良く解らないうちに子猫を産むことになってしまったのよね。
でも今思い出せば、これが雌猫の幸せだったのよね。 可哀相な同居人は一生この幸せを知らずに死ぬんだわ。
よもさん、何言ってるの?
気にしないで、同居人には関係ない事よ。
そうなの? だったら良いけど、早く帰りましょう。 雪が酷くなるわ。
同居人は先に帰っていて、ワタシはここで少し雪を見ているわ。
え、よもさん、ここまで来て家に入らないの?
ええ、少し一人になりたいのよ。
春の夕の儚い雪は、よもちゃんを初恋の思い出を誘いだしたようです。