紛争解決条項、新興2国が反対 TPP交渉、米と深い溝
ISDS条項に対しては米国が賛成、オーストラリアが反対の立場。新興2カ国の反対が表面化し、年内妥結に向けて協議を急ぐ米国と他国の溝が深いTPPの構図があらためて鮮明になった。
マレーシアとベトナムは米が求める国有企業改革にも反対する。米と新興国の対立を解きほぐせるかどうかが、年内妥結の成否を左右する大きな焦点に浮上してきた。
http://www.47news.jp/CN/201308/CN2013082601002222.html
マレーシアにはブミプトラ政策と言うマレー人優遇政策があります。 マレーシアは本来マレー人の国でした。
しかしイギリスの植民地支配を受けていた時、イギリスが労働力としてインド人や中国人を大量に受け入れました。
自国の領土に勝手に外国人を大量に連れ込まれるのはそれだけで大変な迷惑ですが、中国人は単に労働者として生活するだけでなく、マレーシアの経済を牛耳り、イギリスの手先となってマレー人の搾取しました。
第二次大戦で日本軍がマレー作戦でマレーシアに進軍した時、マレー人達は独立を願って、日本軍に協力しましたが、中国人は全面的にイギリス軍に協力しました。
そしてマレーシアが独立すると、今度は中国人移民の多いシンガポールが、マレーシアから独立しました。
このような歴史を考えれば、マレーシアのマレー人優遇政策もマレーシアの経済的独立を維持するうえで当然でしょう。
これはマレーシアがマレー人の国、マレーシアの「国体」を守る為に必要な政策なのです。
まして現在の中国の侵略主義を見れば、安全保障上も必要な政策でしょう。
けれどこれは勿論、一種の人種差別であり、また外国人投資家にとっても不利な政策です。
だからTPPでISDSが導入されたら、この政策の維持は不可能でしょう。
つまりマレーシアの独立その物が危うくなります。
ベトナムはTPP交渉参加国の中で唯一の社会主義国です。
ベトナムは現在、中国の侵略の脅威を最も深刻に感じている国の一つではありますが、しかし「国体」そのものは実は中国と同じなのです。
ベトナムが今も共産党の独裁を続けてることには勿論批判があります。 しかし一応ベトナム共産党の為に弁明するなら、中国の侵略に晒されている状態での民主化には大変な危険があると言う事です。
民主主義国家が謀略宣伝には脆弱であり、また国家の意思決定を迅速に行いにくい体制であることもまた事実です。
古くから民主主義が確立して、経済的にも豊かな国ならともかく、貧しくしかも元々民主主義の伝統の無い新興国が民主主義国家として安定した政権を持っている例は非常に少ないのです。
それを考えれば、今中国と半臨戦態勢のベトナムが簡単に民主化できないのは仕方がありません。
その社会主義国が資本主義国家と、貿易のみならず投資やサービスまでも、完全な共通ルールを作る事を目的としたTPPに加盟しようと言うのですから、最初から無茶苦茶なのです。
TPPにISDSが導入されたら、ベトナムの社会制度の根底が全部ISDSでの提訴の対象になってしまいます。
と言うわけで、ベトナムとマレーシアがISDSの導入に反対しています。 勿論ISDS導入に反対しているのは、この二国だけではありません。
自民党のTPP加盟条件にも「ISDSの導入はしない」と言う事が入っているし、オーストラリアもこれには反対しています。
実はアメリカ国内でも反対が出ています。
どの国であれ、一般国民の立場からすれば、自分達の国の国家主権によって決めた政策に、外国人投資家が文句を言って、結果自分達国民が賠償を支払わされると言う話なんかに賛成できるわけはありません。
ワタシもTPPには反対してきました。
しかしここに来て明白になったのは、ワタシ達日本のTPP反対派が反対理由に挙げて居た問題は、実は何処の加盟国にとっても深刻な問題であり、それらの国々からも反対の声が上がってきた事です。
ワタシ達日本の反対派は、TPPを日本対アメリカだけで見たので、大変悲観的になっていましたが、しかし実際にはそうではなかったのです。
どの加盟国もそれぞれ自国の守るべき分野は絶対に守るつもりで、守れる目途を建てているからこそ、交渉に参加しているたのです。
こうなると麻生副総理の最初のもくろみが当たっているんじゃないかと思います。 麻生副総理は反竹中平蔵、反新自由主義ですが、なぜか最初からTPP推進派でした。
これに関して西田参議院議員の質問には「TPPに問題は多いが、こう言う物は入っておかないと、後々面倒な事になる」と答えて居ました。
で、ISDSや農業完全撤廃などTPPの個別の問題は、加盟国各国の個別の利害が対立して、交渉は混乱を続け、最初に想定されたような「過激な自由貿易協定」なんかにはなりえないとの読みのようです。
TPPはとりあえず妥結するでしょうが、すっかり骨抜きになって、「過激な自由貿易協定」ではなく「なんちゃって自由貿易協定モドキ」になるのではないでしょうか?
しかしTPPはブロック経済政策です。 だからブロックから締め出されたら、後々思いがけないない面倒は起きるのかもしれません。
麻生副総理だけなく、マレーシアやベトナムも最初からそのような想定の元に加盟したのでしょう。 でなければ加盟できるはずもないのです。
皆様強かですね。