ふと窓の外を見るとまたチビちゃんが雪囲い板の上に乗っています。 でもなぜかお尻の向きが違います。
オイ、デブ虎、今まで何処へ行ってたんだよ。 随分待ったんだぞ。
あら、また来てたの? 何処へ行こうとワタシの勝手でしょう?
オマイ、それって意地悪だぞ。 モモババアは一度もそんな事言わなかったぞ。 ジブンが行った時に留守だったらいつも「待たせてごめんね。 寂しかったでしょう。」って言ってくれたんだ。
何言ってるのよ? それはチビちゃんが子猫だったから、モモちゃんがお母さん代わりに気を使ってくれたのよ。 大人になったらそんな事通用しないわよ。 それにしてもモモちゃんってホントにエライはね。 良くもまあ、こんな子面倒見たものだわ。
そりゃあ、あの婆さんは面倒見がいいからな。 ジブンがいったらいつでも優しくジブンの毛皮を舐めてくれたし、側に寝かせてくれたからなあ。 それにイロイロ教えてくれたし。 ジブンのコテン芸能だって、元はモモババアが教えてくれたんだ。
そんなに世話になっておきながら、「ババア」なんて! 何度注意したらわかるの? その失礼な言い方は止めなさい!!
それはわかってるけどさあ。 でも五月蝿いんだよ。 アイツ。 なんかあるとすぐ「お行儀が悪い!!」「そんな下品な事をしてはいけません。」「もっと短歌やコテン芸能のお勉強をしなさい。」って。
自分の子猫でもないのに言いすぎだよな。
それが馬鹿だって言うのよ。 いったいどこの世界に自分の子猫でもない子猫を、そんなに親身なって面倒見てくれる猫がいるのよ。 自分の子猫でなけりゃ、カラスに攫われても知らん顔する猫だって多いのよ。
ワタシだって五月蝿い不器量な子猫なんか相手にしたくないわよ。
だって、ママがいなくなってジブンは一人ぼっちだったんだぞ。 可愛がってくれる当然じゃないか? それを見捨てるなんて非猫道的だぞ。
何言ってるのよ? ママがいなくなって一人ぼっちなんて、ワタシなんかママと兄弟達を一緒にいたのに、人間がいきなりワタシ達兄弟を「野良猫が子を産んだから」って、ワタシ達兄弟を拉致して知り合いの獣医さんに持ち込んだのよ。 それから今度ワタシ一人があの同居人に拉致されたのよ。
チビちゃんなんか生まれた家で家族とずうっと一緒なのよ。 猫としては稀なる幸運だわ。
まあ、オマイは貰われた相手が悪かったからな。 確かにその点はジブンは非常に恵まれている事は認めるよ。 オマイの苦労はモモ婆さんもわかってるよ。
やっぱりジブンは恵まれ過ぎているのかなあ・・・・・・。
そうよ。
そうかなあ・・・・。
こうしてまた二匹の対話が続きます。 対話は重要です。 対話する事によって猫は他者の意見を知ります。 そして他者の意見を知る事はまた自分自身を知る事でもあるからです。
広島市長のように意見の違う他者と対話もせず、その言論を封殺しようとする人もいます。 このような人々が暗黒社会をもたらすのです。