ユーロ流通から、ユーロ圏内の経済状況は劇的に変化しました。
http://grandpalais1975.blog104.fc2.com/blog-date-201111.html
何とユーロ圏内で、経常収支赤字国と黒字国がガラリと入れ替わったのです。
実に以外なコトですが、ユーロ発足までドイツは経常赤字国でした。 一方フランスやイタリアやスペインは黒字国だったのです。
そしてギリシャの赤字だって大したことはなかったのです。
これは特に驚く事ではありません。 つまりフランス、イタリア、スペインなどの国々は、戦後一貫して経済的にパッとせずそのため通貨も下落気味でした。
だから通貨も弱く、そのため輸出価格は低く、輸入価格は高く、そしてそんな国の国債を買ってくれる人も少なかったのです。
つまり借金はできず、買いたい物も買えず、そして売る物は安かったので、経常収支が黒字を確保できていたのです。
つまり資本主義の神様による均衡が保てたのです。
ところがそれがユーロ流通で神様の神通力が亡くなったのです。
ところがユーロ発足後7年間で、ドイツは何と輸出をドルベースで2.5倍にも増やしました。 これは以下のブログ主が詳しく解説しています。
http://shahr.exblog.jp/11366863
ドイツの輸出は2002年から激増します。 そしてその輸出はユーロ圏内も圏外も等しく増えました。
そしてその内ユーロ圏内はほぼ6割を保ってきました。
この2002年以降と言うのは、ユーロ圏だけではなくアメリカも中国も経済絶好調で、日本もこのお蔭で輸出が絶好調でした。 だから小泉構造改革の緊縮政策にも拘らず、日本もコンスタントに2%の経済成長を続けました。 そして安倍政権の折にはプライマリーバランスが殆ど均衡するに至ったのです。
だからユーロ高にも拘らずドイツの輸出だって順調に増えたのは頷けます。
ああ、しかしそれはドイツだけの話だったようです。
この間、ユーロはドルベースでも1.6倍になりました。 だからドイツ以外のユーロ圏諸国は大変なハンディキャップを負うことになりました。
http://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2011/2011honbun/html/i1220000.html
ドイツ以外の国の殆どが軒並み赤字に転落します。 しかしドイツの輸出が増えているのでユーロは下がらないのです。
勿論ユーロ圏への観光客も減ります。 それどころかこの頃冷酷無情なドイツ人は、大好きなウアラプ(休暇旅行)の先をユーロ高で割高になったユーロ圏内のイタリアやギリシャから、圏外のトルコやクロアチアに変えたようです。
そりゃあ、ユーロ圏内なら出入国も楽だし、両替の手数もいらないけれど、でもドイツ人の観光客なんか世界中で大歓迎なんだから、そんな事はどうでも良いのです。
そして同じく日本人もこの頃ユーロ高に辟易して、ユーロ圏内の旅行は切ないものになりました。
それではドイツのおかげで輸出は減り、観光客も減り、経常収支が赤字転落した国々が苦悩したかと言うと、これは疑問です。
新車の登録数を見て下さい。
http://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2010/2010honbun/html/i1220000.html
何と!! 人口も所得もドイツより少ないフランスやイタリアが、ドイツよりも多くの新車を買い込んでいたのです。 それもあのリーマンショックの後まで!!
この新車はどこから来ていたのでしょうね?
勿論日本のメーカーだって良い思いをしたでしょう。 しかし10%の自動車関税なしに輸出できるドイツメーカーがどれだけ良い思いをしたことか・・・・・。
実際ドイツはリーマンショック後ユーロが下がってからも、ユーロベースの輸出は減らず、お蔭で失業率は最低水準に下がるという凄さでした。
つまりユーロ発足後ユーロが上がり続けもなを競争力を失わなかったのはドイツだけで、ユーロ圏の他の国はそのあおりで赤字転落したにもかかわらずドイツからの輸入を増やしたのです。
そんな事ができたのはユーロと言う共通通貨のお蔭で、幾らでも借金ができたからです。
と言うかそれまで長らく虚弱通貨のお蔭で自分の意思でなく借金を抑制されていた国々は、棚から牡丹餅でユーロと言うハードカレンシーを得て、自制心を育てる前に好き放題借金して素敵なドイツ車を買いまくったのです。
しかし誰がそのお金を貸したのでしょうか?
上の図は2チャンで拾ったギリシャ国債の保有先です。
ギリシャ国債の殆どはEUの銀行です。 特にユーロ圏内の銀行が保有しています。
何だこれなら問題はないじゃない?
だって日本の財政赤字はギリシャより酷いけれど、これが問題にならないのは、それが全部円建て、しかも95%を国内で保有しているからです。
だったらギリシャ国債なんか総額から言っても、保有先から言っても全然問題にならないはずです。
これはギリシャ国債だけではありません。
ギリシャのトバッチリでドンドン金利が上がったイタリアやフランスの国債などの問題を解決するために、さしあたり必要なお金は、たったの1兆ユーロ、100兆円余りだそうです。
http://tna6310147.iza.ne.jp/blog/entry/2517492/
なあんだ、だったら大した問題じゃないでしょう?
日本がバブルの後の不良債権処理に使ったお金は46兆円でした。
ユーロ圏内のGDPって1500兆円を超えて、日本の3倍以上、アメリカを超えるのです。 これなら欧州中央銀行が少し頑張って輪転機を回せば済むことです。
それでユーロ圏内がインフレになる事なんかあり得ません。
だって生産設備の稼働率がこれですから。
余裕ジャン!!
ジャンジャンお札を摺って、バンバン使っても、1兆ユーロ如きじゃ生産設備は使いきれないジャン!!
これじゃインフレになんかないよ。
けれどそれが出来ないのが現在のユーロ圏なのです。
だって通貨は共通でも国家ではないのです。 だからドイツ人はギリシャ人やイタリア人の為には、物価が1%でも上がる事は許しません。
それが落ちこぼれ諸国が、ドイツからの借金を返す為でも、ドイツ車を買う為の借金でもイヤなのです。
これがユーロの現実なのです。
クリスマスを前にドイツの天使様の苦悩が思いやられます。