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2017-05-31 20:39

ネグレクトと差別 イスラムテロ

 またテロが起きました。
 死者は80人、負傷者は300人を超えると言う規模です。

 カブールで爆発、80人死亡=日本大使館員2人軽傷
 
 犠牲者の数から言えば先日のマンチェスターのテロより遥かに深刻です。
 それでもベタ記事扱いなのは、起きたのが欧米ではないからです。

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 実はイスラム過激派によるテロが本当に頻発しているのは、イスラム諸国です。
 頻度も犠牲者数も欧米のそれを遥かに凌ぎます。

 またテロとは別にイスラム諸国内の非イスラム教徒、例えばエジプトのコプト教徒などへの迫害も激化しています。
 
 中東のイスラム諸国は元来オリエント文明から始まる非常に古い歴史を持つ国々ですから、イスラム以前に起源をもつ古い信仰を守る人々も沢山いたのです。

 そしてイスラム教が成立した7世紀以降千三百年余、こうした信仰は何とか生き延びてきました。

 けれども最近のイスラム世界はこうした信仰を抹殺しかねない状況です。

 またイスラム世界でのテロは、イスラム教徒同士が宗派争い、勢力争いで殺し合う、当に外道としか言えない事をやりまくっているのです。

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 で、こうした現実を欧米や日本の自称リベラリストは「イスラム過激派がテロを行うのは、イスラム教徒が差別されているからだ」と言うのです。

 イスラム教徒が差別されるからテロを行うと言うのなら、イスラム教徒が絶対マジョリティであるアフガニスタンやトルコでテロが起きるはずはないのです。

 もしテロが起きるとすれば、イスラム教徒から差別されて迫害されているコプト教徒など非イスラム教徒がテロを起こすはずです。
 
 しかしイスラム諸国ではこれらの差別と迫害に苦しむマイノリティはテロを起こすどころではありません。 ひたすら迫害に耐えている状態です。
 
 そりゃそうでしょう。
 今だって迫害されているのです。 もしテロを起こしてイスラム教徒を大量に殺傷したりすれば、それこそ皆殺しにされてしまいます。

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 つまりテロに差別なんか何の関係もないのです。
 
 現在イスラム諸国で起きているテロを考えれば、欧米で起きているテロは、イスラム諸国でのテロの火の粉が飛んできたと言う程度の話なのです。

 現在イスラム諸国ではどこも非常に原理主義化しています。  それで非イスラムへの迫害も激化しているのだし、またイスラム教の政治への介入が常態化しています。

 イスラム教は近代化の影響で、これまでの中世的で単純素朴な信仰から、宗教改革・宗教戦争へと至った時期のヨーロッパのキリスト教のような原理主義的な宗教へと変わってきたのです。

 そしてそういう祖国のイスラムの変貌が、そのまま欧米で暮らすイスラム移民に影響していると考えるべきなのです。

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 昔の移民なら、移民すればもう大富豪にでもなれない限り故郷へ帰る事もできませんでした。 それどころか手紙のやり取りさへ容易ではなく、出した手紙が届くには何か月もかかりました。

 だから一旦移民すれば、否応なしに祖国の影響もうけなくなりました。

 しかし現在の移民は違います。

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 難民としてヨーロッパに暮らす人達が、休暇に帰国したりするぐらいです。 だってヨーロッパと中東諸国の航空運賃なんて北海道・本州程度なのですから。

 またスマホやネットで常に祖国のニュースを見る事ができるし、衛星テレビやケーブルテレビで祖国の番組を見続けているのです。

 つまり身はヨーロッパに居ようとも、心は祖国そのままに暮らしているのです。
 だからそのまま祖国の影響を受けているのです。

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 アヤーン・ヒルシ・アリが著書「もう 服従しない」で書いていました。

 90年代末からオランダでイスラム教徒の女性のベール姿が非常に増えてきました。 オランダ人達は皆彼女達は最近二なって移民してきた女性達だと思っていたのです。
 ところアヤーンが調べてみると、彼女達の殆どが移民二世だったのです。
 
 イスラム諸国でも実は70年代ぐらいまでは、多くの女性がベールなど被っていませんでした。 ベールを被っているのは農村部や貧しくてお洒落の出来ない貧困層だけだったのです。

 ところがイスラム諸国が原理主義化するにつれて、ベールが復活し、そしてその影響がそのまま移民達にも表れているのです。

 つまりヨーロッパに移民しても、そこでヨーロッパの文化を身に着けるよりも、祖国の影響を受けてのイスラム化の方が進んでいるのです。

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 こうした状況を考えれば、ヨーロッパでのイスラム過激派の台頭やそれによるテロを「イスラム教徒への差別があるから」などとは絶対に言えないはずです。

 ところが自称リベラリスト達は、テロが起きる度に「イスラム教徒への差別をやめよう!! 差別があるからテロが起きる」と言うのです。

 思うにワタシは彼等こそ本当に差別主義者だと思うのです。

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 彼等がこんな事を延々と言い続けていられるのは、つまりは彼等が欧米のテロは問題にしても、イスラム諸国で起きているテロはネグレクトしているからです。

 実際自称リベラルメディアも欧米のテロは犠牲者が数人でも大々的に取りあげ何日も何日も騒ぎ続けます。 しかしイスラム諸国で起きたテロは、被害者が数百人に及んでもベタ記事一本で終わりです。

 そして彼等はこの犠牲者たちの事など全く考えません。
 
 だからテロがイスラム諸国と欧米で共に起きており、しかも実際にはイスラム諸国の方が遥かに酷いと言う事実も完全に脳内から消えているのです。

 つまり実は彼等はイスラム教徒の命など全く関心がないし、また実はイスラム教やイスラム文化にも、またイスラム諸国の現状にも完全に無関心です。

 だから自分達の夢見る多文化共存の理想だけをネタに「差別がなくなればテロが亡くなる」などと言えるのです。

 ワタシはこういう発想こそが、完全な差別でありネグレクトだと思うのです。

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 実は先日ブロゴスでマンチェスターのテロについての記事があったので、ワタシはムハンマドの布教時から来るイスラム教自体が持つ問題についてコメントしました。

 するとこんな返信を頂いたのです。

 宗教で嘘を吐くのは止めなさい。
 ムハンマドなんかどうでもいいです。

 ムハンマドなんかどうでもいい?

 そ、それって物凄いイスラム教徒への侮辱なのですが、しかし反差別の理想に燃える方達は全然そんなことは考えてもいないのです。

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 彼等のリベラリズムでは宗教と言うのは殆ど意味がないので、イスラム教徒が今もムハンマドの教理に従って行動する事など理解できないのです。

 彼等のリベラリズムによれば「今時、大昔の教祖の言う事を信じて行動する人間がいるはずはないではないか? イスラム教徒をそんな遅れた人間と考えるなんて差別だ」と言う感覚なのでしょう。

 こういう人達は、反差別と喚くだけで、実は本当にイスラム教徒やイスラム教徒を理解する意思はないのです。 

 これではテロは勿論、差別だって絶対になくならないでしょう。 本当に相手を理解する意思もないのに差別が消えるわけはありませんから。
  1. レイシスト
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2017-05-31 09:35

初夏になる

 ようやく初夏らしくなりました。

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 この数日ストーブは焚いていません。

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 この調子ならストーブをしまえそうです。

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 昨日はまた発寒川の水源の方へ行きました。

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 我家からはひたすら上り坂が続くので、電動自転車を買うまではここへ来るのは結構大変でした。

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 しかし電動自転車を買ってからは楽ちんです。

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 電動自転車だと登も下りも関係なく、普通に進めるので我が家のように山坂の多い所では凄く便利です。

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 この前来た時に比べて緑が一段と濃くなっていました。

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 林檎の花は散っていましたが、クルマバソウが咲いていました。

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 もうすっかり夏の空です。

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 だってもう明日から六月なのです。

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 札幌はこれから一年で一番快適な季節になります。

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 六月から七月までの二ヶ月は、暑くもなく寒くもなく唯ひたすら爽やかです。

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 随分長い間寒い思いをさせられたけれど、暫くは寒さとお別れです。

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 八重桜がまだ散り残っていました。

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 この辺りは我が家より100~200mは標高が高いのか、気温が少し低いようです。

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 折り返して下り坂になると、電動自転車のアシストレベルを下げる事ができます。

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 芝桜が満開でした。

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 我家が近づくころ、日が傾いて来ました。

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 日も随分長くなりました。

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 もうすぐ夏至なのです。

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 ベンチの廻りにはまだ林檎の花びらが残っていました。

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 八重桜の花びらもまだ残っています。

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 春の名残です。

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 エゾヤマザクラは完全に葉桜になり、実を付けていました。

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 林の床も緑になりました。

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 桐の花が満開でした。

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 夕方になっても寒くありません。

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 夕方になって寒くなかったのは今年初めてです。

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 これで本当に初夏になったのでしょう。

  1. 札幌の四季
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2017-05-30 12:22

安倍総理の改憲案について

 安倍総理が2020年までに憲法を改正したいと言っています。

 しかしその内容は9条は残すけれど、自衛隊は明記と言う何とも物足りない物です。

 これでは憲法改正を目指してきた保守派の人達は大変不満でしょう。

 安倍総理は何でこんなイジっこい改正案を出したのでしょうか?

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 理由は簡単です。

 憲法改正が非常に喫緊の課題であり、2020年までにと言う期限も、絶対にこの間に改正できなければならないと言うのが総理の認識だからでしょう。

 憲法改正には衆参両議院でそれぞれ3分の2を超える合意と言うハードルと共に、もう一つ国民投票と言うハードルがあります。

 衆参両議院の方は、もう確実に改憲勢力が3分の2を満たしています。 そしてこれは今後、余程の事がない限り変わらないでしょう。

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 しかし問題は国民投票です。
 
 近年漸く改憲派が過半数を占めるようになりましたが、しかしそれでもどの世論調査でも6割は超えていないのです。

 この程度の差だと、国民投票の直前に何か事件が、例えば自衛隊の不祥事でもあれば、一発でひっくり返ります。
 
 またそれを狙って自衛隊の不祥事を演出するぐらいの事は、護憲派なら幾らでもやるでしょう。
 
 (例えば美女が自衛隊員を誘惑して、性交渉に及んだ後、強姦されたと騒ぐなどすれば良いのです。 例え後から強姦でない事が証明されても、国民投票の直前一ヶ月程、強姦された!!と騒ぎ続ければ目標は達成できるのです、)

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 一方一回国民投票で改憲が否決されると、安倍政権が倒れるだけでなく、その後の政権が改憲に非常に消極的になるので、改憲は遥かに遠のきます。

 だから安倍総理としては、一回で確実に成功させる事を最大の目的にしているのです。

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 それは2020年と言う短期間を目標にして、内容が非常に不満でも改憲をしようと言う意図とも同義です。

 なぜ時間をかけても良いから、保守派が期待してきたような本格的な改憲をしないのか?
 
 理由は簡単です。

 日本はとにかく改憲を急ぎ、一刻も早く自衛隊を実質軍隊に変更しなければならないからです。

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 日本は今、戦後最悪の危機に直面しています。
 或いは建国最大の危機と言うべきかもしれません。

 だって古事記や日本書紀の歴史に遡っても、日本の歴史上、外国が日本の領土を侵略を明言した事など、元寇ぐらいしかないのです。

 ところが今中国が元寇と同じく日本の領土侵略を明言しているのです。

 しかも元寇の時代にはなかった核ミサイルなどと言う物を大量に日本向けているのです。

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 尖閣諸島の周辺を遊弋する中国公船を見ればわかりますが、中国の日本侵略計画は嘘でも冗談でもないのです。

 中国は侵略国家で、周辺諸国全てに侵略の手を広げています。

 そしてその為に軍備拡張を続けているのです。

 だからいつ何があっても不思議ではありません。

 明日中国の偽装漁船が尖閣諸島に上陸するかもしれないし、スクランブルに出た自衛隊機が撃墜されるかもしれないのです。

 勿論現在の北朝鮮の情勢だって「何か」そのモノです。

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 ところが日本はこの状態で、自衛隊の地位が曖昧なままなのです。

 だから自衛隊は膨大な兵器を持ちながらも、本来軍隊として国防の為に必要な行動をできないように、法で縛られたままなのです。

 中国の侵略に対応するためには、まずは自衛隊の交戦規定を、ポジティブリストからネガティブリストに変更するなど、大幅な変更を行い、また自衛隊員の身分を軍人とした確立して、降伏した場合は捕虜として扱って貰えるようにする必要があります。

 また攻撃用兵器も絶対必要です。
 これなしではバッターのいない野球チームと同じですから、どんなに守備が優秀でも負けるしかないのです。

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 こうした事をとにかく数年のうちにやってしまわないと、本当に中国の侵略を招くことになります。

 ワタシも戦後教育を受けた人間ですから、軍隊が戦争を起こすと教えられました。
 基地があるから攻撃されると言う珍説を信じ込むように教育されました。

 基地が無ければ攻撃されないなら、近代帝国主義による植民地支配などあり得なのです。

 帝国主義的侵略を受けて植民地化された国々は、マトモな基地は勿論、軍隊もそれどころか国家さへもなかったのですから。

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 ところが現在中国がやっている事は、19世紀の帝国主義そのモノ、イヤそれ以上に遥かに野蛮な帝国主義なのです。

 そもそも19世紀に自国に様々な経済援助や技術援助をしてくれた国を侵略しようとした国があったでしょうか?

 ところが中国は臆面もなくそれをやるのです。

 日本はこのような国から自国を守らなければならないのです。
 そうしなければ日本は勿論、中国の周辺諸国が全て中国の支配下に陥り、膨大なジェノサイトが起きるでしょう。

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 だから超低レベルでも何でも良いから、とにかく憲法改正は一発で後3年で成功させる。

 これが安倍総理の決意です。

 ワタシもこれは完全に支持します。

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 因みにこの憲法9条を残して自衛隊を明記と言う改憲案は、非常に強かです。

 この改憲案が出てから、護憲派カルト達の多くが「自衛隊は合憲だから、そのような明記は必要ない」と言いだしました。

 ハハハ!!
 さすが安倍さん!!

 そうですね。 最悪憲法改正ができなくても、この案を出す事で、護憲派カルト達に自衛隊が違憲でない事を認めさせてしまいました。

 更にまだ自衛隊違憲を固持している連中さへ、「自衛隊は国民に認められているから、このような改憲は必要ない。」と言っています。

 そうですね。 自衛隊は国民から認められているのです。
 つまり認められていないのは、オマイラ自衛隊を違憲なんて言う連中なんだよ!!

 これで連中は自衛隊は国民の側にあり、自分達が国民と自衛隊の敵の側だと認める嵌めになったのです。

 安倍総理カシコイ!!!

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 だから最悪改憲はできなくても、言いだすだけでも結構な効果があったのです。

 こうした強かさ故に安倍総理は長期政権を維持できるのです。

 ともあれ、これはその強かな安倍総理が、日本の状況にいかに危機感を持っているかと言う事です。
 
 これを想うと護憲派カルトは勿論、自称保守改憲派も実は呆れる程ノーテンキなのです。 そしてこうしたノーテンキさの根源は実は、連中が現実を見ない、イヤ連中は厄介な事があれば全部政府と米軍が信じている所から来ているのでしょう。

 しかし本当に日本を愛し、何より自分の生命と財産と自由と人権を守りたいなら、現実を見ていくしかないのです。

 だからワタシはこの現実を見て、安倍総理の改憲を全面的に支持します。
  1. 戦後民主主義
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2017-05-30 11:35

車上荒らしに遭う

 21日からずうっと肌寒い曇天が続きました。

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 そこでずうっと家に引き籠っていました。

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 少し天気晴れ間が見えた日に散歩に行きました。

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 ワタシが天候不順で引き籠っている間に、林檎の花は大かた終わっていました。

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 ワタシの大好きな花なのに!!

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 今年は余りに寒く、花の咲くタイミングがわからず、その上天気が悪くて外出ができない日が続いたので、大好きな花を幾つもみのがしました。

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 まあ、こんな年だってあるのです。

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 それでも久しぶりの散歩は気持ちが良かったです。

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 咲き残った林檎の花を探しながら、山の上のパン屋さんまでたどり着きました。

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 そこでワタシはカレーパンとピロシキを買いました。

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 帰宅後のオヤツか翌朝の朝ごはんにするつもりでした。

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 パン屋さんはカレーパンとピロシキを小さなレジ袋に入れてくれました。

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 ワタシはそれを自転車の前籠に入れて、そのまま自転車を漕いで行きました。

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 そうするうちにパン屋さんからの下り坂を走っていると、だんだん寒くなってきました。

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 結構分厚いマウンテンパーカーを着ているのに!!

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 ワタシはもうこれで散歩は諦めて、帰る事にしました。 それに間もなく夕暮れです。

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 しかし帰りに少し買い物をしなければなりません。

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 そこでそのまま、我が家の前の通りを通り越してスーパーへ行きました。

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 そして食糧を少し買いました。

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 それからその近くの別のスーパーによって、そこでも少し食糧を買いました。

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 そして漸く家に帰りました。

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 家に帰って、買ってきた食糧を冷蔵庫にしまっていると、カレーパンとピロシキの袋がありません。

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 ??

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 車上荒らしに遭ったのです。

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 おそらく最初のスーパーでです。

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 犯人はカラスです。

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 カラスの車上荒らしは、この近所では有名で、ワタシが日頃行くスーパーの駐輪場には皆「カラス注意!!」の看板が出ています。

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 だから本当はピロシキとカレーパンの袋は、絶対にリュックの中にしまっておくべきだったのです。 しかしワタシはウッカリそれを忘れていたのです。

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 カラスは今子育て中です。 だからきっとカレーパンとピロシキは巣に持ち帰って子供達に食べさせたのです。

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 ワタシは怒り心頭でしたが、しかし親が逮捕されたら、子供達はどうなるのでしょうか?

 それでカレーパンとピロシキは諦めました。

 しかし親が盗んだカレーパンとピロシキを食べて育った子供達は、泥棒に育つのでしょう。

 
  1. 札幌の四季
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2017-05-29 12:32

猫の本性と飼い主への愛情へのお返し

 よもさんは夏日になると朝から行方不明になります。
 朝早く出かけてなかなか帰って来ないのです。

 二時間程も帰らないとわたしも心配になって探しに行きます。 よもさんの首には猫探知機、つまり電波発信機が着いているので、その受信機を持って出かけるのです。

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 それで暫く探すと・・・・・・・。
 いました。

 ご近所のお宅のベランダに居ました。


 よもさん!! 何してるの?

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 ??

 よもさん!! よもさん!!

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 煩いわねえ・・・・。

 よもさん!! 何しているの!!
 早くいらっしゃい!!

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 煩いわね!!
 ご近所迷惑よ!!
 
 な、何がご近所迷惑よ?! 
 よもさんが帰って来ないから、わたしは心配で心配で、近所中探し回ったのよ!!

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 何でそんな余計な心配するのよ?

 だってよもさんに何かあったらどうするの?

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 何かって何?

 例えば韓流黒猫に強姦されるとか、三味線屋に捕まるとか・・・・。

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 韓流黒猫なんてとうの昔に白様が始末なさったわ。 
 それに今時の三味線屋は国内で猫を捕まえたりしないわ。 きっと猫の皮は中国から輸入するのよ。

 そ、そんなこと言っても、悪い猫や悪い猫はいるわ。
 だから早く帰りましょうよ。

 
 それでもこの日はよもさんも大人しく言う事を聞いて、ワタシと一緒に帰宅したのです。

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 しかし翌日また、夏日でした。 
 そしてまたよもさんは朝から行方不明です。

 わたしはまたよもさんを探し回りました。
 わたしはまたよもさんがあのベランダへ行ったのだと目星を付けて、行ってみました。

 すると見事に猫探知機が反応します。 
 しかしよもさんの姿は見えません。


 よもさ~~!! よもさ~~!!
 何処にいるの?

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 ・・・・・。

 よもさ~~ん!! よもさ~~!!

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 また、近所迷惑やってるんだから・・・・。


 よもさんは今度はベランダの下に潜り込んで、ワタシが呼んでも出てこないのです。
 
 ワタシは諦めて帰りました。
 しかしそれからまた一時間余り経った後で、もう一度探しに行くと、よもさんは今度はお隣の玄関先に移動していました。


 よもさん!! 

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 Zzzzz・・・・。

 よもさん!!

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 煩いわねえ・・・・。

 何でさっきは呼んでも来なかったのよ。

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 同居人があんまり煩くて近所迷惑だからよ。

 そ、そんなこと!!
 大体わたしがよもさんの事をどれだけ心配しているか、よもさんはわかってるの?

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 だったら聞くけど、同居人はそういう同居人の拘束をワタシがどんなに煩わしく思っているか、同居人はわかっているの?

 だって・・・・。

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 大体さあ、ワタシの首に電波発信機なんか付けて、ワタシの行動を監視して、ワタシのプライバシー権を侵害しているのよ。
 こんなに完全に猫権侵害よ!!

 そんなこと言っても、それがないとよもさん探すの大変なのよ。
 よもさんはわたしが幾ら呼んでも、その気がないと絶対出て来ないじゃない!! 
 今朝だってそうでしょう?

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 だから何? 
 ワタシにはワタシの猫権と言う物があるわ。

 
 わたしは頭に来てよもさんを捕まえて、家に閉じ込めました。
 そして散歩に出ました。


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 ったくもう・・・・。
 何が心配よ。
 だったら同居人がフラフラ出歩いている間、ワタシは同居人の事を心配していないとでも思っているのだろうか?

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 去年の9月には自転車で転んで骨折して入院したのよ。 同居人が帰ってくるまでワタシがどれほど心配した事か・・・・。
 どれ程悲しく心細い思いをしたことか・・・・。
 面倒を見てくれる妹さんに対してどれ程申し訳なく、肩身の狭い思いをした事か・・・・・。

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 それなのに同居人は相変わらず自転車でフラフラ出歩くのよ。
 せめて同居人に電波発信機を付けるぐらいの事はして良いと思うわ。
 ところが同居人は自分は電波発信機を付けるどころか、GPS携帯も持たないのよ。
 こんなの許せないわ。


 そしてまたこの翌日も素晴らしい快晴の夏日だったのですが、するとよもさんは・・・・・。


 よもさ~~!! よもさ~~!!

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 わたしは必死で近所を探し回りました。 この前いたベランダでは電波発信機は反応しませんでした。

 しかし暫くするとその少し先の豪邸の近くで反応しました。
 その豪邸の庭を覗くと・・・・・。

 
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 イヤだわ…・また同居人が近所迷惑やってる。

 よもさ~~ん!! 
 アッ!! そこね!!

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 まあ、イヤだ。 見つかったわ。

 よもさん、何してるの? 出てきなさい!!

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 イヤよ!!

 何で?

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 同居人が来ると貧乏の臭いがするのよ。
 ワタシがせっかく少しリッチな気分になっているのに、何で邪魔するのよ。

 そんなこと言っても他人様のお庭でリッチな気分なんて言ってもダメよ。

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 あら、このお宅の奥様は優しくて猫がお好きなのよ。 いつ来てもワタシを可愛がって下さるわ。
 可愛い猫は何処へ行っても歓迎されるのよ。
 これは猫特権ではなく、基本的猫権よ。


 よもさんはこう言って絶対に出てきませんでした。
 お庭には美しく躑躅が咲いていました。
 よもさんはわたしを無視して躑躅を鑑賞しながら、リッチな気分を味わい続けたのです。
 
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 皆様、おわかりですね。
 これが猫の本性であり、飼い主の愛情へのお返しなのです。
  1. 猫の生活
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2017-05-29 10:30

ホテルのバーを思い出す

 裏の桜さんがエントリーで嘗ての麻生総理時代の「ホテルのバー」騒動を取り上げていらっしゃいました。

 信用ならないとなるのは必然だよね?

 麻生さんが総理だった頃、マスコミは連日連夜、麻生総理のホテルのバーとホッケの煮つけに着いて騒ぎ続けました。

 そしてそれを麻生総理の「庶民感覚のなさ」「贅沢」として非難し続けたのです。

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 ところで少し主旨は違いますが、これで思い出したのが、2004年、小泉訪朝で曽我ひとみさんが北朝鮮から帰国した後、北朝鮮に残された家族とインドネシアのホテルで再開した時のことです。

 これは日本政府が粘り強い交渉の末、実現した物ですが、この時曽我さんは「中国は怖い」「北朝鮮から電話がかかって来ない所」など、北朝鮮の影響なしで、家族と面会できる場所を希望しました。

 面会する国をインドネシアにするのはわかるけれど、しかし「電話がかかって来ない」所などあるのでしょうか?

 ところがあったのです。 
 日本政府はそれをちゃんと見つけて予約しました。

 インドネシアの最高級ホテルのスウィートルームでした。

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 そうですね。
 ホテルのスィートルームと言うのは、外国首脳や大富豪やスーパースターが宿泊する事を前提に造られているので、安全管理が非常に厳格なのです。

 不用な電話をシャットアウトするなど、電話のコントロールも完全にできます。
 警備の為のSP等が待機宿泊できる設備もあります。 
 ホテル自体も万全の安全対策をしています。

 更にマスコミ関係者が押し寄せても、他の客に迷惑にならなようになっています。

 だってスーパースターが宿泊したりすれば、マスコミだけでなく山のようにファンが押し寄せるのですが、しかしそれでも対応できるようになっているのがスィートルームなのです。

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 だから曽我ひとみさんが家族と再会するには、ホテルのスウィートルームを使うのは、一番簡単でしかも実際には一番安上がりだったのです。

 安ホテルで同じ事をしようとすると、どれほどの費用が掛かるか想像もつきません。

 だからこれは贅沢でも何でもないのです。

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 ところがやはりこのニュースが流れた時「スウィートルームに泊まるなんて!!」と反感を持った人達がいました。 

 当時はワタシはまだテレビを持っていたので、この話ワイドショーで見たのです。 しかしその時ワイドショーの司会者は「でも曽我さんはダンボールに荷物を入れたりして個人で贅沢をしているわけではないから…」と言うだけで、安全対策上絶対に必要なのだと言う話しはしませんでした。

 ワタシはあれからずうっと違和感を持っていたのです。

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 因みに麻生さんがホテルのバーを使ったのも、同様です。
 
 総理には必ず数名のSPが着いてきます。
 また総理番と称するマスコミ関係者が30人余り常に総理を追いかけてきます。

 これで普通の小さな店に入って来られては、大迷惑なのです。

 また警備を店内だけでなく、店近所全域で行わなければならないので、大変な経費が掛かります。

 そして麻生総理同様仕事でホテルのバーを使う人達に言わせると、ホテルのバーは格別高価ではないと言います。

 勿論、ワタミのようなわけには行きませんが、しかし少し贅沢をする気になれば学生でも使える値段です。

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 こういう事は普通の常識があれば誰でもわるのです。
 わからない人でも、少し説明すれば直ぐに理解できます。

 またホテルのバーのメニューの価格など、ネット検索で直ぐに調べる事ができるのです。

 ところがマスコミはこうした事実を無視して、ひたすら「贅沢!!」と煽り続けたのです。

 以来彼等の悪意と無責任と非常識には腹が立っています。
 そしてテレビ番組のレベルの低さに呆れ果てました。

 
 懐かしい動画です。
 しかしこの男はまだこの手の嘘を吐き続けているのです。
  1. マスゴミ
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2017-05-27 22:53

宗教戦争は終わっていない イスラム教vsキリスト教

 ネットでこんな動画を拾いました。



 イスラム教徒達がイギリスのCommonwealth War Graves つまり、第一大戦、第二次大戦での戦死者達の墓を破壊している動画です。

 2013年にアップされた物ですが、しかし日本人のワタシが見ていても実に不愉快な動画です。


 第二次大戦の戦死者の中には、日本軍と戦った兵士も多いと思うのですが、このように墓地を壊すのを見ているとその卑劣さに吐き気がします。


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 確かにイギリスは中東諸国を植民地化しました。 しかし元植民地=Commonwealth(英国連邦)出身故にイギリスへの移民でも優遇されたのです。


 そしてイギリスで祖国より遥かに豊かに自由に暮らしているのではありませんか?


 ところが彼等はそれに感謝する意思はない全く無いようです。


 それにしても墓地を破壊するとはあまりにも卑劣ですが、しかし嘗てはキリスト教徒がユダヤ人墓地を破壊した事もあり、宗教問題故の憎悪では普通にやる事なのでしょう。


 ワタシはだからこれはテロと同様、イスラム教vsキリスト教の宗教戦争の一環だと思っているのです。


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 そもそもイスラム教がキリスト教徒に戦争を開始したのは、7世紀にイスラム教が成立した直後からです。


 サラセン帝国はまずビザンティン帝国領でキリスト教世界だったシリアやその周辺を征服し、更に同様キリスト教世界だったエジプトも征服しました。


 そしてこの時、征服された地域の人々の多くがイスラムに改宗しました。


 しかしサラセンの征服戦争は続き、北アフリカを横断してジブラルタルを超え、遂にはスペインを、また地中海を渡ってシチリアから南イタリアまでも支配下に収めるのです。


 そもそもイスラム教と言うのは、創始者ムハンマド自身が軍隊を率いてメッカをそしてアラビア半島を征服支配する所から始まった宗教なのです。 そしてその支配下で布教して行ったのです。


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 こうして北アフリカと東地中海がイスラム世界になると、サラセンの海賊達が、イタリアやフランスなどの地中海沿岸を襲うようになります。


 彼等はキリスト教徒の町や村を襲い、金品を奪うだけではなく人々を拉致して奴隷にするのです。 


 イスラム教徒からすれば、異教徒を奴隷化する事は全く罪ではないのです。


 因みにアフリカでの黒人奴隷狩りもこの少し前から始めています。 またウクライナやコーカサスなどスラブ世界でも奴隷狩りを行っているのです。


 イスラム教徒がキリスト教徒より人種差別をしなかったと言うのは、つまりはヨーロッパ人が専ら黒人奴隷狩りだけをしたのに対して、イスラム教徒側は人種に関係なく広範囲で奴隷狩りをした事です。


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 このようなサラセンの海賊に対してヨーロッパ側は全く無力でした。

 当時のヨーロッパはローマ帝国が滅亡し、国家と言える組織が亡くなっていたのです。 

 海賊を恐れた人々は、海岸の平地を捨て、山奥で暮らすしかなくなりました。 それは豊な農地を捨てる事であり、窮乏に苛まれる事でした。

 この時の悲惨さはを見ると国家が滅亡するとはどう言う事かを痛感させられます。 


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 しかしそれでもヨーロッパ側も少しずつ国家体制を整えていきました。 そしてそれにつれてイスラム世界に反撃を開始します。


 まずノルマン人の騎士達がイタリアに侵攻し、南イタリアとシチリアを奪還します。 そして更にその勢いの乗って、十字軍としてエルサレムに侵攻するのです。


 イスラム教vsキリスト教の戦いを語る場合、専らこの十字軍以降だけを語り、イスラム側が一方的被害者のように言われるのですが、これは違います。


 キリスト教側から言えば、今まで散々やられたのでやり返したのです。


 そしてこの頃からイスラム教vsキリスト教の戦いが互角になり、更にその後少しずつキリスト教側が優勢になって行くのです。


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 なぜならスペイン奪還(1492年)の頃からキリスト教世界は、中世から近世に移行し始めました。

 そして更に近代へと進歩するのです。


 これにより、国家体制はより強固になり、更に自然科学と産業の発達から、文化や産業でもイスラムを凌ぐようになって行ったのです。


 そして遂に第一次大戦の頃までに、イスラム世界の多くが植民地化されて完全にキリスト教世界に屈服させられる事になるのです。


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 この植民地支配により漸くサラセンの海賊が根絶されました。


 つまりこれまでサラセンの海賊は出没していたのです。

 

 ナポレオン戦争後でもなお、北アフリカで奴隷化されたキリスト教徒達を救出する活動をしていたキリスト教団がありました。

 

 ナポレオンの妻ジョゼフィーヌの従妹が、マルチニック島からフランスへ渡航途中、サラセンの海賊に襲われて、奴隷としてトルコのスルタンに売られその寵姫となった言う伝説があります。

 

 しかしさすがにキリスト教国の植民地になってしまっては、これは出来なくなりました。


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 また植民地下では奴隷制度も禁止されます。


 イスラム教徒が続けていた黒人奴隷狩りはそれより早く、アフリカがヨーロッパの植民地になるつれて不可能になっていました。 


 ヨーロッパ人はイスラム世界の植民地化により宗教戦争の完全勝利、そして終戦と信じているのでしょう。


 だから今のヨーロッパのリベラリスト達はひたすらその贖罪に励んでいます。


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 しかしイスラム側は全くそんな事は考えていないのです。

 

 そもそも思う理由はありません。


 そのように思うのは、近代化したヨーロッパ人にとって宗教と言う物が、嘗てのような意味を持たなくなったからです。


 近代化し世界の覇者となったヨーロッパ人達は、自分達が憐れなイスラム教徒達の精神までも征服したと信じているのです。

 

 けれども良くも悪くもイスラム教徒達は精神までもヨーロッパに征服されたわけではないのです。


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 イスラム圏では今も宗教はレパントの海戦の頃と全く変わらぬ重要性を持っているのです。


 ヨーロッパ諸国が植民地化で持ち込んだ近代リベラリズムを受け入れたのは、極少数のインテリだけなのです。


 キリスト教世界は近代化したけれど、イスラム世界はレパントの海戦(1571年)の頃と全く変わっていないのです。


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 例えばボコ・ハラムやISが女性を拉致し、彼女達を奴隷として売買する事は、先進国の人間からすれば非常にショッキングです。


 でも前記のようにイスラム諸国では奴隷制度は殆どの国で、植民地化されるまで続いていたのです。 それどころか植民地化されなかったサウジアラビアなど1970年代まで奴隷制度があったのです。


 イスラム世界の人々は、自分達の意思で奴隷制度が悪いと思って止めたのではないのです。 奴隷制度はコーランでも認められているのです。


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 それをヨーロッパの圧力で無理矢理禁止されたのですから、今だって本心では大いに不満でしょう。


 また植民地支配された当時だって、宗主国の目が届かない所では続いていても全然不思議ではないのです。


 今でもアフリカからヨーロッパを目指す移民達が、リビアで奴隷として売られていると言うニュースがあるぐらいです。


 アフリカ移民が「奴隷市場で売られている」=国際機関


 つまりイスラム世界って今でもこういう世界なのです。 


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 このようなイスラム教との休戦など完全にヨーロッパ人の独りよがりなのです。 ヨーロッパ人は自分達が近代社会に居るのでその感覚で、宗教戦争など過去の物と信じているのですが、しかしイスラム側は今も中世にいるのです。


 現在、自称リベラリスト達はひたすら「多様な価値観を尊重しろ」とか、多文化主義とかを推進しています。

 

 しかし価値観が違う文化が違うとは、つまり奴隷制を認める価値観、文化が存在すると言う事でもあるのです。

 

 自称リベラリスト達はこれ等の価値観を認める心算なのでしょうか?


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 イスラム世界の人々が中世の価値観で生きている以上、キリスト教との宗教戦争を中止する理由はありません。 異教徒を奴隷化する事への罪悪感もありません。 


 だからロザラムの少女強姦事件など起きて当然です。


 勿論、この動画のような墓地破壊と言うような事が起きるのも当然でしょう。


 今後イスラム教徒が増えれば増える程、テロと共にこの手の事件は頻発し、キリスト教徒側がブチ切れた所で、本格的な宗教戦争になるでしょう。


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 もしブチ切れなければ?


 イスラムに奴隷化されます。

  1. ヨーロッパ
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2017-05-27 14:59

あるソマリア女性の半生 神との戦い

 昨日のエントリー「中世に生きる人々 イスラム」に、エピキュリアンさんが下さったコメントには「神殺し」の話が出ていました。

 ヨーロッパの近代化の過程とは、神殺しの過程であり、イスラム世界も近代化するのはこの神殺しが必要だと仰るのです。

 「中世に生きる人々 イスラム」のエントリーでも触れましたが、アヤー・ヒルシ・アリは個人でこの神殺しをやったのです。

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 アヤーン・ヒルシ・アリは1969年にソマリアで生まれました。
 ソマリアはイスラム教の国ですから、アヤーンも当然イスラム教徒として育てられました。

 そして自身も敬虔なイスラム教徒でした。

 しかし1992年、父親から意に沿わない結婚を強制されたことで、オランダへ逃げて難民申請をして、オランダで自活し始めました。

 そしてオランダの価値観を身に着ける過程で、神殺しをしたのです。

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 彼女の自伝「もう、服従しない」は実は、神に服従しないと言う決意です。

 この自伝で非常に興味深いのが、彼女が神への服従を辞める=無神論者になるまでの自身の心理を描いた部分です。

 この為に彼女は必死で、ヴォルテールから始まって、スピノザなどヨーロッパの啓蒙思想や近代哲学を学び続けたのです。

 それは当にヨーロッパが近代以降、続けた神殺しの葛藤を個人で数年間の間に体験すると言う苛酷な物でした。

 こうした葛藤の末に彼女は遂に「もう 服従しない」と決意し、「自分は無神論者だ」と宣言したのです。

 しかしこの為に彼女は親族の全てから絶縁され、イスラム教徒達から、暗殺の危険に晒されるようになりました。 そして現在は暗殺の危険を逃れる為、完全に所在不明状態です。

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 この神との戦いには、誰も勝てるわけではありませんでした。

 彼女の妹は、神との戦いに負けて狂死してしまいます。
 
 彼女の妹は、幼少時からアヤーンより遥かに奔放で、頭が良く、厳しい母親に反抗して自分のやりたい事は何でもやるタイプでした。

 アヤーンは母親に逆らう事ができず、家事を全て押し付けられて、一人でそれをやり続けるのですが、妹は完全に拒否し通すのです。

 しかしその奔放さの挙句に、キリスト教徒の男性の婚外子を妊娠してしまいます。 そして中絶した後、アヤーンの居るオランダに来て、アヤーン同様難民申請をして、オランダで暮らす事になるのです。

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 本来ならオランダでの自由な生活は、彼女のような奔放な女性にとっては願ってもない物のはずでした。 いや、本人もまた姉であるアヤーンもそう信じていたのです。

 ところがオランダに来てほどなく妹は精神状態がオカシクなります。

 難民収容所でまた妊娠して中絶するハメになります。 更に難民申請が認められて姉のアヤーンと暮らし始めると、今度は完全な無気力状態に陥ります。

 彼女はオランダに着てから、自由に生きられる事を喜ぶよりも、中絶をしたことで、神が自分を許さないのではと言う恐怖に苛まれるようになったのです。

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 それでも一旦は回復して、オランダの大学に入学しました。 実はアヤーンもオランダの大学に入学したのですが、しかしアヤーンは知能検査の結果、入学申請は直ぐに認められなかったので、専門学校へ行くと言う回り道をしなければなりませんでした。
 
 ところが妹は一発で入学を認められたのですから、知能検査の結果だけなら、アヤーンより遥かに優秀だったのでしょう。

 アヤーンは、妹は子供の時からアヤーンより遥かに学業成績が優秀だった、自分は妹の何倍も勉強したのに、妹程良い成績は取れなかったと書いています。

 アヤーンはこのような妹の大学入学を喜び、これで妹の将来への不安も消えました。

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 ところが入学後半年程したある日、大学から妹が精神病院に送られたと言う連絡が来ます。
 
 アヤーンが精神病院に駆けつけると、妹は全身打撲で顔は人相が変わる程腫れあがった姿になって、壁をクッションで覆った部屋に監禁されていました。

 妹は大学の寮で「アッラー アクバル」と叫びながら、全身を壁や床に打ち付け続けていたのです。

 そしてこれ以降、妹が正気に戻る事はありませんでした。

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 アヤーンは何んとか妹をオランダに置いて、オランダで精神病の治療を受けさせようとしました。 その為に献身的に妹の看護を続けました。

 親族達はこのようなアヤーンに感動し、父親はアヤーンへの勘当を解きました。 父の薦める結婚を拒否してオランダへ逃げた事で、アヤーンは父親から勘当され、部族全部からも放逐されていたのです。

 しかし一方で親族達は皆、妹は母親の居るケニアに戻し、親族達で介護するべきだと言い出しました。 妹がこのような状態になったのは、つまりは「不信心者たちのせいだから」と言うのです。
 
 そして結局妹は母親の下に帰りました。

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 しかし母親の家での生活でも症状は改善しません。 更にまたどうしてか妊娠してしまいます。

 妊娠が外見からもわかるようになった頃、ある嵐の夜に妹は、「神が自分を捕まえようとしている」と叫び母親の家を飛び出してしまいました。

 母親は人を集めて必死に娘を探しました。
 
 そして翌朝、下半身を血まみれにして倒れている彼女を発見しました。 嵐の中を走り回っている間に流産したのです。

 妹はその後、数日で死にました。
 
 アヤーンがケニアに駆けつけた時には、葬儀は終わり妹は埋葬された後でした。

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 この妹の狂死は、当に神との戦いの象徴でしょう。
 
 実は中世ヨーロッパの話を読んでいて、非常に不思議なのは、大凡敬虔とも信心深いとも思えないような生活をしている人々が、しかし絶対にキリスト教を棄教しない事です。

 例えばイスラムの海賊に捕まって奴隷にされた人々の殆どが、イスラム教に改宗して自由を得るよりも、キリスト教を守って苛酷な奴隷生活を選ぶのです。

 それでは彼等がそれまでキリスト教の教えを守って、正しく清らかな生活をしていたかと言えば全然そんなことはありません。
 女は買うのは当然、船乗りなら機会があれば自分達も海賊をやるぐらいは平気な人達なのです。

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 大体中世では、修道士や娼婦を買うなんて全然問題にもされなかったし、それどころか法皇が女を囲うのだって普通、本来なら絶対禁止のはずの男色を楽しむ法皇だっていたのです。

 中世の人々って現代人からすれば、恐ろしく暴力的で、短絡的で、嘘吐きで、しかも非常に利己的です。
 
 どう考えても現代の不信心な一般人の方が遥かに善良で寛容で思いやりがあり、キリスト教精神に適う生活をしているのです。

 しかしそれでも信仰はどんな事があっても捨てられないのが中世に生きる人々なのです。

 大凡イスラム女性らしからぬ奔放な生活を楽しんでいたアヤーンの妹が、最後まで神を捨てられず、挙句に狂死した事を見れば、こうした中世キリスト教徒の心理も何がしか理解できます。

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 それではアヤーン・ヒルシ・アリがなぜ神に勝てたのか?

 それは彼女が元来非常に真面目で真摯な性格で、少女時代から常に真正面から神と対峙してきたからだと思うのです。

 彼女の性格が見事に顕れるのがオランダへ来てからの生活態度です。

 彼女はオランダで難民申請が通り生活保護が支給されても、「自分には手も足もある」と働き始めました。 オランダの生活保護も日本と同様で、仕事をして収入を得るとその分支給額を減額されます。 

 一方オランダ語が不自由な人間ができる仕事は、単純労働で最低賃金程度の賃金しか得られません。 しかもパートタイムが殆どです。 だから殆ど難民はそのまま働かず生活保護に頼り続けるのです。

 しかしアヤーンはそれでも掃除婦や工場のパートタイムなどをして働くことを選んだのです。
 
 けれども彼女はこれによりオランダ語に習熟する共にオランダの社会を深く知るようになりました。
 
 またこれでオランダ語が完璧になった事で、後にソマリア語の通訳の仕事を得るようになり、これで収入が激増しました。

 このような真摯さと誠実さが彼女の特性なのです。

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 アヤーンはこのように真面目な人ですから、親やコーラン学校で教えられた事は真面目に信じました。 しかし真面目に信じれば、真面目な疑問が出てくるのです。

 例えばアヤーンがまだ9歳の頃、一家は父親の都合でサウジアラビアに移住します。 そこでアヤーン姉妹はメッカのコーラン学校に入るのですが、ところがそのコーラン学校の女性教師は、アヤーン姉妹を黒人としてあからさまに侮蔑するのです。

 また11歳からケニアに移り、思春期にはそこでイスラム原理主義に傾倒するようになります。 しかしそれで真面目にイスラム教の教理を学ぶと解るのは、イスラム教での女性の地位の低さです。

 更にイスラム原理主義者の若者達の集会に参加すると、彼等もまた女性をマトモに人間扱いする意思がない事を思い知らされます。

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 一方ケニアで彼女が通っていた学校の授業は英語だったので、彼女は英語の小説を楽しむようになっており、女性が一人前に扱われ、自由に恋愛をできる世界がある事も知っていたのです。

 またケニアでソマリア人達は難民として暮らしているのに、ソマリア人達はキリスト教徒のケニア人を「不信心者」として侮蔑している事にも違和感を持ち続けていました。

 そして一番決定的なのは、彼女の母親との葛藤でしょう。

 アヤーンの母親は実はソマリア人では稀なアラブ式のイスラム教を頑なに信じていました。

 しかしそれは彼女の家庭と人生を破壊してしまいます。

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 アラブ式に厳格にイスラム教の戒律を守れば、女性は働く事は勿論、親族の男性に付き添いなしには、外出もできません。 だからイスラム教徒の夫は、常に妻の傍にいて面倒を見てやらなくてはなりません。
 
 彼女はこれを夫に要求するのですが、しかし夫つまりアヤーンの父親は、当時のソマリアの独裁政権を相手に反政府活動をしている大物活動家でした。

 彼はその為の投獄されたのですが、同じ部族の出身で彼を尊敬する刑務所長が脱獄させてくれたのです。 しかしその為にこの刑務所長は広場で銃殺されました。

 アヤーンの父親を慕い、そして彼の為に命を捨てるソマリア人は他にも多数いたのです。

 アヤーンの幼少時に一家がサウジアラビア・エチオピア・ケニアなどと次々と転居するのは、こうした父親の政治活動の為です。

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 こんな大物活動家、ソマリアの国士が妻に付き添って毎日買い物の面倒なんか見てやれるわけないでしょう?

 けれども妻はイスラム教を盾にこの要求を絶対に譲らず、ことある毎に夫を責めたてるのです。 
 妻にすればイスラムと言う絶対正義を背負っているので、夫の政治活動など構うどころではないのです。

 結局、夫は家を出てしまいました。

 この夫婦生活の破綻の影響を一番蒙ったのが、アヤーンでした。
 
 母親は夫に捨てられた絶望感から、子供達を虐待するのですが、長男は男子故に溺愛し甘やかし、気の強い妹には徹底的に反抗されるので、結局アヤーンに全ての絶望をぶつけるようになるのです。

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 こうした家庭に育った事が、アヤーンの神殺しの原点だったのかもしれません。
 
 良くも悪くもリベラリスト・革新派には、伝統的な家庭に育ち、てしかもその家庭の内実が不幸だった人が多いようです。

 ともあれこうした生育歴から、アヤーンは幼少期から神への信仰を育てると共に、神への疑念もまた同時に育ていていたのでしょう。

 そしてその為に正面から神と対峙する覚悟ができていたのです。

 しかしアヤーンの妹にはそのような覚悟はなかったのです。

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 オランダへ来て間もなく、「自分は神に背いた」と言う不安を口にする妹に、アヤーンは驚いて聞いたのです。
 
 「だって貴方は、今まで一度だって敬虔なイスラム教徒だった事なんかないじゃない?」

 そうなのです。
 一度だって敬虔イスラム教徒だった事が無かった故に、一度も神と正面から対峙して来なかった。 
 神の何たるかを考えて来なかった。

 そういう妹に神は不意打ちを食らわせて、狂死と言う無残な最期を遂げさせたのです。

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 ワタシはこの姉妹の神と葛藤は、当にヨーロッパが近世以降行ったきた神殺しの為の戦いを個人に凝縮した物だと思うのです。

 そして妹の狂死を想うと、欧米に移住したイスラム教徒の中で、神との戦いに勝ち、神殺しをして欧米式の価値観を得られる人間は本当に極僅かではないかと思うのです。

 圧倒的多数のイスラム教徒は欧米に移民しても、尚中世に生きる人々のまま生き続けるでしょう。
 
 だから今後イスラム教徒の増加につれて、欧米社会は混乱に陥って行かざるを得ないでしょう。
  1. 古本
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2017-05-26 14:21

小池の迷走 ポピュリズム

小池東京都知事が奇妙な事を言いだしました。

子どもいる自宅での喫煙制限、小池新党が公約で条例検討

 東京都議選(6月23日告示)に向け、小池百合子都知事が率いる地域政党「都民ファーストの会」は25日、「子どもを受動喫煙から守る条例」制定を公約にすると発表した。子どもがいる自宅や自家用車内での喫煙制限を検討するという。

 公共施設などの受動喫煙防止条例は自民、公明、民進、共産の主要各党が公約に入れ、横並びの状態。既に条例化を公約に入れていた同会は「極めて厳しい案を提案する」として差別化できる内容を考えていた。ただ私的な空間での行動を制限しかねず、他党から疑問視する声も出ている。

 同会は今後、詳細な内容を詰める。この日、記者会見した同会政策顧問の弁護士は「家の中については努力義務規定を設ける形になる」と見通しを説明。同会特別顧問の小池氏は「『個人の家に手を突っ込まないで』と思われるかもしれないが、(家や車の中での喫煙は)子どもの健康によい方向ではない」と話した。

朝日新聞社


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 なるほど、子供の受動喫煙は健康に悪いでしょう。

 しかし喫煙自体は合法なのです。


 その合法な事を自宅で行う事を、自治体が制限すると言う発想は何とも異様です。

 

 自宅での喫煙を制限するために、東京都警が個人の住宅を監視でもするのでしょうか?


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 ワタシは東京都民ではありませんが、それでも小池が東京都知事選に立候補したときは、当選を期待しました。


 しかし豊洲移転で迷走し始めて移行、小池のやる事はもう滅茶苦茶、売名の為のパフォーマンスの為なら都政の破壊も辞さない最悪のポピュリストとしか思えなくなりました。


 東京都知事選で小池が自民党の公認を貰えなかった時に、自民党側が言った言葉が言葉が、思い出されます。


 色々と検討し、調査したけれど、どうしても小池氏を公認する事はできない。


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 ワタシはこれを聞いたときは、意味が良くわかりませんでした。

 マスコミやネットでは、小池が都知事になると都議会の自民党議連の利権を奪われるからなどと言われました。


 勿論これは事実でしょう。


 しかし自民党側は、こうした小池の人間性を見抜いていたのも事実ではないでしょうか?


 だから小池を都知候補に公認にすれば自民党が楽勝であったにも拘らず公認しなかったのでは?と思ってしまうのです。


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 これは大人口の都市や国家での民主主義の問題です。


 一般有権者には、候補者の人間性や能力を知る事が非常に難しいのです。 

 

 理念のようなモノはそれまでの公的な言動だけで、比較的簡単にわかるのですが、しかし人間性や能力は実際に当人と接しない限り簡単にはわかりません。


 そこで綺麗事を言うのが上手、或いはパフォーマンスばかりが上手い人間が、票を集めて当選すると言う事態が起きるのです。


 一般有権者がその人間性や能力を知るのは、この人間が当選して、実際に権力を行使し始めてからになってしまうのです。


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 しかしこのポピュリズムを助長するのがマスコミです。

 

 マスコミは豊洲移転問題で、科学的事実を一切無視して、小池応援を続けました。


 勿論マスコミの多くが反自民だからでもあるでしょう。


 しかし彼等は人気取り商売の本性として、人気タレントをもてはやすのと同じノリで、こうしたパフォーマンの巧みな人間に迎合して、その人気を煽ってしまうのではないでしょうか?


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 ワタシが思い出すのは、鳩山由紀夫や菅直人へのマスコミの異常な入れ込みです。


 勿論、自民党政権を潰すと言う彼等の念願が叶っての応援だから殊更身が入ったのでしょう。


 しかし超高学歴で名門でいながら、誰にでも安易迎合する鳩山由紀夫や、市民活動家で政治=人気取りと考えている菅直人などは、当に天性のポピュリスト、ポピュリズム以外何もない人間だったのです。


 その場の人気取りに全てを賭けて、それ以外は何もない。


 このような人間達はマスコミにとっては、自分達に運命を委ねて、何でも注文を聞いてくれるアイドル歌手のような存在で、愛おしくてならなかったのではないでしょうか?


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 こうした人間の人間性の問題を指摘して、一般の人々に報せるのは、非常に難しいでしょう。


 だってそもそもそれは他人の人格攻撃になりますから、やればやった人間が自身の評価を落とし、憎まれるだけになるのです。

 だから自民党だって小池を公認しない理由さへ明確にはしなかったのでしょう。


 戦前は超鳩山由紀夫とでもいうべき、超ポピュリスト近衛文麿と言う男が首相になり、当時の新聞は熱狂しました。


 そしてそれが日本を満州事変から始まる泥沼の戦争へと追い込いこんだのです。


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 ともかく小池は今後も暫く、こうした意味不明の人気取りに熱中し、都政は全てその為に利用し続けるでしょう。

 

 日本国民としては何とか東京オリンピックだけは無事にやって欲しいです。 


 開催を決めた以上はちゃんとできないと日本の恥になりますから。

  1. 戦後民主主義
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2017-05-26 11:31

中世に生きる人々 イスラム

 以前、池内恵の北星学園大学での講義についてエントリーしました。
 そのエントリーでは書かなかったのですが、池内恵はもう一つ面白い話しをしました。

 それは「ザ・メッセージ」と言う映画の話です。 
 この映画は1976年、イスラム教の教祖ムハンマドが、天使の啓示を受けてから、メッカを征服するまでを描いています。
 サウジアラビアが資金を出して、ハリウッドで制作されました。
 
 サウジアラビアの注文で造られたイスラム教の映画なので、イスラム教の教えを守りムハンマドやその後継者アリは、光や透明人間状態で描かれています。
 一方、その他の点では、コーランの記述に非常に忠実に作られているそうです。

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 で池内恵によると、これは結構面白い、勧善懲悪の西部劇のような面白さだそうです。 

 つまり正義の味方が悪の街で、悪人達に苦しめられ一度は敗退するが、やがて力を付けて、仲間を集めて悪人達を懲らしめると言うストーリーなのです。

 で、池内恵によると、現在イスラム諸国ではこの手のドラマや映画が大量に作られて、盛んに放映されていると言うのです。

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 しかし考えてみると、これはイスラム世界では画期的な事でしょう。

 だってイスラム教ではコーランの翻訳は禁止されており、また偶像崇拝の禁止から、宗教画もありませんでした。

 コーランはアラビア語ですが、これはメッカ周辺のアラビア語で、アラビア語圏でもメッカを離れると簡単には理解できないようです。
 
 まして非アラビア語圏のイスラム教徒など、殆どはコーランの内容は理解できなかったのです。

 その上、イスラム教の教理から、宗教画は絶対禁止なのです。

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 中世のキリスト教会は、教会は宗教画や彫刻で埋め尽くされているのですが、これは民衆に説教をする時に、これらの絵や彫刻を使ったからそうです。

 中世に生きる人々は、読み書きができないだけでなく、抽象概念の把握が苦手で、単純で、子供のような面があるのです。

 そう言えばワタシが子供の頃通ったキリスト教の日曜学校でも、聖書のストーリーを紙芝居などを使って教えてくれました。
  
 ところがイスラム世界では、こうした民衆への教理の布教法が全く不可能だったのです。

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 それがこの「ザ・メッセージ」制作辺りから一転して、映画やドラマと言う、紙芝居や宗教画とは比べものにならない程リアルで、真柏性のある手段での布教が始まったのです。

 これがイスラム教についての一般庶民の認識を大いに変えた事は間違いないでしょう。

 実は今、外務省は在外邦人に対してラマダン期間中のテロの警報を出してます。
 
 これ付いて、NYTにこんな記事が出ていたのです。

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 ラマダーン月は単に断食をする月ではない。他の信徒といっしょに断食をし、断食明けに食事をともにすることでムスリムとして一体感を強化し、さらに苦労を共有することで自分の宗教を再確認し、信仰心を高揚させるという効能もある。

 多くのムスリムがこの時期、宗教的な感情を高ぶらせ、善行に励もうとする。メディアもそれを煽り立て、テレビではイスラームの栄光の歴史を辿る番組が目白押しになる。わたしも中東で何度かラマダーン月を経験したが、ムスリムたちがそうした大河ドラマをみるたびに、中身がそんな変わるわけでもないのに、毎度毎度ベーベー泣いているのに驚いたことがある。

 また、この時期には、とくに豊かな湾岸諸国目指してイスラーム圏から物乞いが飛行機に乗って集まってくるのも有名だ。喜捨は、イスラームの義務の1つであり、ラマダーン月のように宗教心が高揚する時期には信徒の財布の紐も緩まるので、それを目当てに物乞いたちがやってくるのである。もちろん湾岸諸国も対策を立てているようだが、とにかく世界中からやってくるので、対策が追いつかないらしい。(ISのテロが5月27日からのラマダーン月に起きるかもしれない

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 それにしても、また驚くのです。

 イスラムドラマに感動して、べーべー泣き、物乞いに気前よく施し、一方でテロに励む。

 ワタシがこれで思い出したのは、ヨーロッパ中世の人々の話です。

 彼等もキリスト教の祭日に教会へ行き、そこでキリストの受難などの説教を聞いて感動すると、貧者に施すなど善根を積もうとすると共に、キリストを処刑したユダヤ人への怒りに燃えて、棍棒を手にユダヤ人を襲ったのです。

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 ユダヤ人がキリストを処刑したのは事実ですが、しかし中世とはそれはもう千年余りも前の話です。

 それで憎まれても困るのですが、しかし宗教的感動で我を忘れた人々は、千年余り前にキリストを処刑の判決を出したユダヤ人のラビ達と、現在目の前にいる同じ町の住人として小商売に励むユダヤ人の区別がつかなくなっているのです。

 それにしても今のキリスト教徒で、キリスト教の映画やドラマでべーべー泣くとか、説教に感動して気前よく施すなどと言う人はまずいないと思います。

 しかしドラマで感情が高ぶってべーべー泣くとか、その感情に動かされて施しやテロに走ると言うの見ると、当にイスラム世界の人々と言うのは中世に生きる人々だと思うのです。

 中世に生きる人々は、感情の起伏が非常に激しかったのです。

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 実はワタシはイスラム世界に関する本など読むのが結構好きだったし、以前はペシャワール会の会員でした。

 でイスラム世界の何が面白いって、イスラム世界を見ていると、リアルタイムで中世の世界が見られるのです。

 例えば1970年代にアフガニスタンの調査をした岩村忍の「アフガニスタン紀行」などまさに、首都カブールから離れる従って、ドンドン時代を遡り、中世世界にタイムトリップしていくような面白さでした。

 またペシャワール会の会報で、現地の状況を読んでいると、中世の世界をリアルに見ているようでした。

 実際、中世ヨーロッパ史の権威阿部勤也も会員だったのですが、彼も会報でアフガニスタンとトライバルエリアは当に中世の世界だと書いていました。

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 ところがこの中世に生きる人々が、タイムマシンじゃなくて飛行機や難民船に乗って、ドンドン現代に押し寄せているのです。

 実はワタシはヨーロッパ中世史とイスラム世界に興味を持った頃から、考えていた命題があります。

 それは「人間は歴史の飛び級ができるか?」です。

 つまりヨーロッパや日本は、中世・近世・近代と言うステップを踏んで、500年かけて現代までたどり着いたのです。

 その間に何度も葛藤がありました。

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 ところが第二次世界大戦後、イスラム世界は(イスラム世界に限らずアジア・アフリカの国々は全て)いきなり制度上は、現代先進国と同じ民主制を採用したのです。

 選挙一つ取ってもそうですが、日本も欧米も、選挙制を導入した直後は制限選挙制で、その後相当の時間をかけて国民の要求を受けて普通選挙制に移行したのです。

 ところが第二次大戦後独立した国々は、殆ど皆いきなり普通選挙制を採用しているのです。 なるほど民主制を採用する以上は普通選挙制であるべきと言う理念には完全に賛同します。

 しかし現実問題として、国民全体の意識に関係なく、また民主主制を作る意識もないまま、いきなり普通選挙制を採用してマトモに運営できるのでしょうか?

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 そして当然ですが、民主制を採用する以上は思想信条宗教の自由は完全に保証すると言う建前になります。

 しかし前記の通りイスラム世界の人々の意識は完全に中世のままなのです。 少なくとも宗教については完全に中世です。

 宗教意識が中世のまま、民主制を採用し、その宗教意識をドラマや映画などと言うイスラム世界では画期的な手段を殊更煽れば?

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 実際、中世ヨーロッパではそういう事が何度ありました。

 中世ヨーロッパは普通選挙制ではないせよ、民主制の都市国家は幾つもあり、そう言う都市に異常に説教が上手く宗教意識を煽るのが上手い聖職者が現れると、そのまま事実上街の支配者になって宗教による恐怖政治を行い大混乱を引き起こすのです。

 その典型がフィレンツェに現れたサヴォナローラです。

 彼は忽ちフィレンツェの民衆の心を掴み、そしてフィレンツの支配者となったのです。

 そしてその後、宗教改革が始まると、ジョン・カルヴァンのジュネーブ支配など更に陰惨な宗教による恐怖政治が行わるようになります。

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 今イスラム世界で起きているイスラム原理主義政党の台頭など、これと同じではありませんか?

 以前、アヤーン・ヒルシ・アリの事を紹介しました。  ソマリア生まれのイスラム教徒だった彼女は、オランダに移住してからオランダの価値観を受け入れる為には、イスラム教との大変な葛藤を経験しました。

 それはヨーロッパが中世から近代までの350年分の葛藤だったのです。

 彼女の妹もオランダに移住するのですが、しかし妹はこの葛藤を乗り越える事ができず狂死してしまいます。

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 中世から現代への歴史の飛び級は、普通の人間にとっては殆ど不可能なのです。

 それが国家とか民族と言った集団ではまず不可能なのではないでしょうか?

 ワタシは歴史の飛び級は出来ないと思うのです。

 だからイスラム世界が中世から抜け出せば、現代に飛び級するのではなく、近世になるのです。

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 今イスラム世界で起きている事は、中世から近世への移行なのです。

 その葛藤が今始まっているのです。

 そしてイスラム移民と共にその火の粉が欧米に飛んでいるのです。

 このイスラム世界の宗教政治への願望は、イスラム世界が中世を抜け出して、近世・近代を超えるまで続くでしょう。

 これが無理矢理歴史の飛び級をやった結果なのです。

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 そして怖ろしいのは、ヨーロッパ史を見れば最も陰惨だったのが近世です。

 つまり人々の識字率が上がり、印刷機の発明で聖書が普及し、人々が自分の自身でキリスト教の教えを理解する事ができるようになったのは良いのですが、そうするとこれまでキリスト教の教えを独占してきたカソリック教会との対立が始まったのです。

 ヨーロッパの人々が本当にキリスト教を理解し、最も真剣に信仰するようになったのは、この時代でしょう。

 しかしその結果が宗教戦争なのです。

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 それを思うと、現在のイスラム世界が中世から脱出を始める時に起きるのは、宗教戦争ではないかと思うのです。

 宗教戦争は宗教を知性で理解しようとした人達が、その解釈を巡って争った戦争です。

 宗教の解釈など本来知性理解するのは不可能なのに、その解釈を限りなく追及して、しかも宗教であるが故に絶対真理・神の正義として徹底しようとすれば戦争になるのは当然です。

 イスラム世界も近代化により識字率が上がり、またドラマ等でイスラム信仰が更に深化した挙句に、この状況に陥ったのです。

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 そしてその場合、一つはイスラム教徒同志の週は争いと、もう一つはキリスト教に対する攻撃ではないでしょうか?

 少なくともヨーロッパに移民したイスラム教徒達が敵対するのは、キリスト教徒ではないのでしょうか?

 だからワタシはこうしたテロはテロでは終わらないと思います。

 これは来たるべき宗教戦争の前哨戦だと思うのです。

 日本は今のうちから、にこうした宗教戦争に巻き込まれないように用心するべきだと思うのです。


 オマケ・英語の出来る方は是非どうぞ 


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