この記事の殆どが「日本は早く加盟するべき、加盟しないと置いて行かれる」と言っているのですが、どうも釈然としませんでした。
ワタシがネトウヨで中国が嫌いと言うのもありますが、そもそも日本の加盟を急かせる記事は沢山あるのに、肝心のアジアインフラ銀行の中身についての説明が全くないのです。
これって皆わかっているんですか?
ワタシはわかりませんでした。
それで自分が見つけたサイトを抜粋して、アジアインフラ銀行の問題を整理してみました。

まずアジアインフラ銀行の仕組みです。 これは基本的にアジア開発銀行と同様になるようです。
詳しく知りたい方はこちらを見てください。
日本は中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加しなくていい 日本が中国にして上げることが出来る最大の親切とは?
銀行と言うのは、お金を貸して利子を取る事を仕事にしています。 銀行が貸し出すお金は、元々銀行が持っていた資本(自己資本)の他に預金者から集めたお金です。
アジア開発銀行の場合は、自己資本にあたるお金を、日本、アメリカ始め多くの国の政府が出して設立されました。 この出資金が普通の銀行の自己資本にあたります。
アジア開発銀行には預金者は居ません。 代わりに債券を売り出すと言う形で、お金を集めています。
アジア開発銀行の債権は、政府・民間企業だけでなく、個人でも買うことができます。
アジア開発銀行債権 個人向け
アジア開発銀行の運営は上手く行っているので、債権は順調に売れています。
こうして債権として集めたお金は、自己資本(日本やアメリカなど加盟国が最初に出資したお金)の7倍にもなります。
だからアジア開発銀行は自己資本の7倍ものお金を融資に回す事ができるのです。

アジア開発銀行は多くのアジア諸国に融資しています。 中国はその中でも一番多いのです。
だったら良いじゃん!!
別に中国がアジアインフラ銀行なんか作らなくても!!
しかしアジア開発銀行は実質的に日本とアメリカが仕切っている銀行です。 歴代総裁は全部日本人でした。 現在の日銀総裁の黒田さんも元はアジア開発銀行の総裁でした。
これではアジア開発銀行は中国の思い通りにはなりません。
中国はだからアジア開発銀行に倣って、しかし全部自分が仕切れる銀行を作りたいのです。
そしてアジア開発銀行と同様に債権を売る事で資金を集めたいのです。 それで集めた資金を自分の好きなように融資したいのです。

ところでアジアインフラ銀行への加盟を煽る人達は、「中国は膨大な資金を持っており、磁力のように世界中の国を吸い寄せている」それなのに「加盟しておかないと発言権が得られなくなる。」と言うモノです。
それでは加盟したら発言権は得られるのでしょうか?
しかしこれは無理のようです。
中国はAIIBに50%を出資し、本部を北京に置き、総裁も元政府高官。マイナーな出資比率で発言するなら、理事会の場しかないはずだが、中国側の説明では理事会はほとんど開かず、総裁の専決で諸事を決めていく。総裁は重要事項については共産党中央委員会にうかがいを立てる。突き詰めると同委員会総書記の習近平国家主席が最終決定権限を持つ。つまり、AIIBとは中国政府の各部局と同じように、党の指令下にある。
アジアインフラ銀行は結局、中国共産党の一機関に過ぎないのです。
しかも北京に本部を置き、主要言語は中国語になります。
これじゃ外国の出資者達は、発言する以前に銀行内の情報を得るも難しのでは? だって金融専門家に英語のできる人は幾らでもいるでしょうが、中国語のできる人など殆どいないでしょう?
漢字を知らない人達は、何処に融資したかをチェックしたくても、融資先の固有名詞もわかりません。
他人事ながら心配なんですが・・・・・。

そして問題は皆が期待する「中国の膨大な資金」です。
ところがこれがインチキなのです。
中国の外準残高は2014年末で3兆8430億ドル(世界2位の日本は1兆2千億ドル)もあるが、実は半年間で約1500億ドルも減った。景気の低迷や不動産相場の下落の中で、資金流出が年間で4千億ドル以上に上るからである(本欄3月1日付参照)。無論、習近平政権による不正蓄財追及から逃れるために、一部党幹部らが裏ルートで資産を外に持ち出していることも影響している。

中国の膨大な資金と言うのは、膨大な外貨準備を指しています。 しかし借入がドンドン増えて外貨準備が減っています。
実は中国は外貨準備を除く純資産を見ると、債務国なのです。

中国は14年9月末で1・8兆ドルの対外純債権を持ち、日本に次ぐが、外準を除くと、負債が資産を2・4兆ドルも上回る。実質的な中身からすれば、中国は債務大国であり、債権大国の日独とは大きく違う。

ところで中国にとっての外貨準備と言うのは、日本のそれとは意味合いが違います。
中国が膨大な外貨準備を持つようになったのは、数年前まで輸出競争力維持の為に元が上がるのを阻止するために、膨大なドル買い元売りを行ったからです。
そしてドルと元がペッグするような体制にしていまいました。
結局元の価値は中国が持っている外貨準備(米国債)に裏付けられているのです。 元はドル本位制とでもいうような貨幣なのです。
だから幾らお金に困っても外貨準備は取り崩せません。 それどころか現在中国はこの外貨の減少を止めようと必死なのです。
それでもその外貨準備はドンドン減り、一方海外からの借り入れが増えている・・・・・。
ちなみに貸しているのはイギリス始め欧米勢です。
これで中国は本当にアジアインフラ銀行に出資するお金を調達できるのでしょうか?

一方、中国は今大変お金が欲しいのです。
中国国内にはバブル期に作った膨大な生産設備があります。 不況に陥った現在多くの商品が生産過剰になっています。
特に鉄筋やセメントなど、中国での建築ブームが去った今行きどころがありません。
アジアにインフラ投資を行う事によって、何とかこれを売りさばきたいのです。
で、その資金は?
アジアインフラ銀行がこうしたインフラ投資に融資する予定です。

もうこうなると、ホントに怖いです。
中国政府は外貨準備を見せ金にして、海外から資金を集めようとしているだけではないすか?
そしてその資金は中国バブルの後始末に使われるだけではないのでしょうか?
しかし生産過剰な商品の始末をする為の投資が、収益を生むのでしょうか?
そんな投資で、投資した資金を回収できるのでしょうか?
勿論、イギリスなど伝統ある強欲禿鷹は、自分のお金を中国の好きに使わせる気はないでしょう。 それどころか頑張って自分が中国の金を毟り取る気でしょう。
御健闘をお祈りします。
しかし我が国の国民性から言って、そんな優秀な強欲禿鷹がいるとは思えません。
だからワタシは日本政府がアジアインフラ銀行に加盟しなかったことは、心から喜んでいます。
オマケ
中国投資銀、公正性や審査能力など疑問だらけ 他の国際機関に損害を与える恐れ