暫く静かだったユーロがまた揉め始めました。
またギリシャがデフォルトしそうだし、スペインはバスクやカタロニアの分離独立の話が出ています。
スペインは元々多民族国家で、国家統一されたのも近世以降です。 地方の独立意識は元々非常に高かったのに、中央政府が大変な借金を背負い込んでしまいました。
自分の手で判子を押して借りた金ならともかく、元々信頼していたわけでもない中央政府が勝手にした借金です。
こんな政府の為に債務奴隷になるのなんか真っ平と思う人々が出るのは当然です。
しかしこれでスペインが分裂したら、スペイン国債は誰に返済義務があるのでしょうか?
分裂して独立国になった国々はユーロやEUに加盟する気でしょうか?
この気分はギリシャ人だって同じでしょう。 元々信頼の薄い政府の借金を国民がどこまで真面目に返す気があるのか・・・・・。
返さなくてはならないのか・・・・・・。

しかしユーロって地方分権の行きつく果てなのです。
ユーロは元々完全な主権国家だった国の集合であり、地方分権は主権を持たない地方の権限を極大化した物ですが、結果は同じです。
ユーロは通貨と金融政策を全加盟国で統一しました。 また防衛はNATOで共同で行います。 そして外交も安全保障や経済に基本に関わる物は共通です。
一方それ以外の行政権は完全にそれぞれの加盟国が保持しています。
勿論財政は完全に独立です。 だから全ての加盟国は独自に徴税して予算を組み、国債も発行できます。
またEU国内では国民の移動も資本の移動も自由です。 EU内では関税は一切かかりません。
これってユーロ加盟国を道州制の州だか都道府県に当てはめたら、地方主権とか地方分権とか言っている人達が目指す日本その物ですね。
そして現在のユーロのガタガタを見ると、地方分権の行きつく先が見えてきます。
ユーロ加盟国には元々大きな経済格差がありました。 ところがユーロ圏内では関税も資本の移動も撤廃されたのす。
だから加盟国同士で仁義なき経済競争が起きました。
地方分権を賞賛する人々によれば、競争をすればお互いに切磋琢磨する事で強くなるそうです。
確かにそう言う面はあります。
けれど哀しい事だけれど、最初から競争力に大きな格差がある状態で競争すれば、弱い国は負けるだけです。
しかもその格差を何とかする為に関税や補助金などで自国の産業を守る事もできません。 通貨を安くして競争力を維持すると言う事もできません。
それどころか他国の都合で通貨安で輸出を伸ばしている国とFTA何て結ばれるのではどうしよもないではありませんか?

それでも最初の内は薔薇色になのです。
なぜなら自由に国債が発行できたからです。 しかもその国債はハードカレンシーユーロの国債です。
だからギリシャのようにそれまで二年に一度はデフォルトしていたような凄い国の国債でもドンドン売れました。
それでギリシャ政府は気楽に発行した国債で工面したお金を、国民にバラ撒き、それで国民はドイツ車始め輸入品をドンドン買って、消費生活を楽しんだのです。
お蔭でユーロは凄い好景気に沸きました。
でもこんな事が続くわけはないのです。
で、その結果が今のユーロの騒動になっているのわけです。

日本で地方分権とか地方主権とかが実現したら、全く同じような事が起きるでしょう。
ユーロ圏程ではないけれど、日本国内だって結構経済格差はあるのです。
今まではその格差を地方交付税交付金とか言う形で国が埋めると共に、国が地方の財政を監視し、無茶苦茶を出来ないようにして来ました。
しかしもし地方分権などが確立して、国の補助や監督がなくなれば?
経済的に弱い地方が何とか生き延びるには、どうしたら良いでしょうか?
どうしても経済的に苦しい地方で、民主党政権のような無責任なポピュリスト政権が成立したら?
ギリシャと同じ事をやるに決まっているでしょう?
え、日本人がそんな事をするはずはないですって?
じゃあ夕張は何だったのですか?

夕張市のやった事って、ギリシャより悪どいですよ。
夕張市は国と道を誤魔化して、膨大な債権を発行して、そのお金で滅茶苦茶に大勢の公務員を雇いました。 しかも夕張市の職員は全国も有数の高給でした。
その上「石炭の歴史村」などの観光施設を作ったのですが、完全に採算を無視して大量の職員を雇い続けたのです。
こんな事をして破綻寸前に国に援助を求めながら、職員給与の引き上げと今までの最高額のボーナスの支給を決めていたのです。
ギリシャはここまで無茶苦茶はしていません。
個人のモラルと集団のモラルは別なのです。
個人では絶対できないような悪どい事だって「市の為」などと言えば出来てしまうのです。

夕張は小さな町で、しかも国にはこのようなトラブルを完全にコントロールする権限と財力がありましたから、国家的な経済問題などにはなりませんでした。
しかしもし地方分権などをして、ある程度大きな地方が夕張やギリシャのような事をすればどうなるでしょうか?
円建てで他の地方債よりもかなり金利の高い地方債をドンドン発行して、それを日本人だけでなく外国人も買いこんだら?
ギリシャ国債だって売れたので、円建てで金利が高い地方債なら日本人だけでなく、外国人だって喜んで買いますよ。
そしてその地方の債務がその地方では返済不能な額になったら?

しかし地方分権とか地方主権とか地域間競争とかを言ってる人って、そう言う事は何も考えて居ないようです。
アジア共通通貨圏などを作ると言っています。
尤もこの案ってこれ以前の問題かも知れません。 言っている事は支離滅裂ですから・・・・・・。
>公約案では、「国家の独立」について(1)独自の国防軍の編成(2)強制通用力を持つ独自通貨の発行(3)徴税-を満たすことで成り立つ、と定義した。在日米軍全廃は「独自の国防軍編成」の実現に必要とした。
>「強制通用力」を持つ独自通貨発行策として、アジア通貨統合や新たな国際通貨制度のルール設定を日本政府が主導していくことを盛り込んだ
(2045年までに在日米軍「全廃」 維新の衆院…)
一体これって何でしょうね?
国家の独立の条件に(2)強制通用力を持つ独自通貨の発行としながら、「強制通用力」を持つ独自通貨発行策として、アジア通貨統合や新たな国際通貨制度のルール設定を日本政府が主導していくことを盛り込んだ」って・・・・・。
それじゃそのアジア共通通貨圏に入る国の独立はどうなるのでしょうか?

ユーロはドイツによる第4帝国になると言う説があります。
そうするとこの橋下徹のアジア共通通貨圏は、大東亜共栄圏の再来でしょうか?
で、その時大阪府の債務はどうする気なのでしょうか?
この手の訳の分からない大風呂敷と支離滅裂が、地方分権とアジア共同体を夢見る人達の夢の根源ではないかと思います。