実は先週(7月25日)また原発見物に行きました。
昨年と同じ北電の関連団体の主催で、札幌からバスで北海道電力泊原発を見学に行くのです。
食事つきで、帰りに余市でサクランボ狩りができます。
尤も去年は参加費1500円だったけど、今年は2000円に値上げです。
でも今年も妹と一緒に申し込みました。
天気予報では雨だったのですが、幸いまあまあの天気でした。
コースは去年と殆ど同じですが、なぜか去年帰りに寄ったニッカウィスキー余市工場には寄らない事になっていました。
それに食事をした店も去年と同じでしたが、食事の為の時間が去年の半分以下だったので、食事を終わると直ぐに出発でした。

だから余り写真を撮っている暇もありませんでした。
この店の回りの風景、昭和で時間が静止しているようで、凄く好きなんですけどね。
そのかわりに今年は原発での解説と見学の時間が去年の3倍ぐらいありました。 何しろ去年は原発を見下ろす展望台から15分程眺めただけだったのですから。
それに今年は参加者が去年の半数だったこともあり、色々質問が出来ました。

今回のツアーで北電側が特に重点を置いて解説したのは、福島第一原発事故を受けて、強化した事故対策です。
基本的には電源喪失に対する対策と、冷却水の確保の為の対策です。
福島第一原発は昨年の3月11日の地震の直後、緊急停止しました。 そして非常電源が働きました。
福島第一原発は日本では最も古い原発の一つで、GMの技術を殆どそのまま移転したので、地震対策が弱いと言われていました。
しかし地震に関しては何の問題もなったのです。

原発が稼働すると言うのは、原子炉の中で臨界反応が起きていると言う事です。 臨界反応が起きると、膨大な核分裂が起きて、大量の熱とエネルギーを放出します。
この熱とエネルギーを発電に使うのです。
原発が停止すると言うのは、この臨界反応が止まると言う事です。
この臨界反応を止めるには、原子炉に制御棒を降ろすのですが、これが福島第一原発事故では、地震の時見事に降りて、臨界反応を止める事に成功したのです。
けれど原発が停止すると、原子炉での発電は停まります。
ところで核燃料は臨界反応をしていなくても、常に崩壊熱を出し続けます。
だから原発が停止しても、また核燃料自体を保存するためにも、常に冷やし続ける必要があります。
この冷却の為に原発では水を循環させています。
日本の原発は全部海岸にあるので、この水は皆海水を汲みあげて使います。 福島第一原発も、この泊原発もそうです。

だから原発が停止して、原子炉での発電が出来なくなった場合に備えて、原発では冷却設備を動かす為の非常用電源を設置してあります。
福島第一原発も原発が停止した直後に、この非常用電源が作動しました。 そして原子炉の冷却装置は通常通り続きました。
ここまでは完璧だったのです。
しかし地震の後一時間程で、津波が原発を襲いました。 そして津波がこの非常用電源と冷却水の取水施設を根こそぎ破壊しました。
特に一号炉では原子炉制御室の電源までも失い、原子炉内の監視も制御も不能になったのです。
そのために原子炉内の温度は崩壊熱で上がる一方になり、遂に燃料棒が溶解すると言う事態になりました。
そして制御棒も機能失い、原子炉のコントロールは不能になります。
これが福島第一原発の事故なのです。

だから今回の事故の後の対策と言うのは、津波の時の非常用電源の対策強化と、冷却水の確保に集中しています。
泊原発は元々、最大の津波を9.8mと想定して作られました。
そのために殆どの施設は海抜10mの敷地に建てられています。
非常用電源や冷却水の保存タンクも全部この高さに建てられていました。
しかし福島第一原発もやはり9.8mの津波を想定して、10mの高さに作られていたのです。
そこで泊原発ではこれを東日本大震災の津波と同様、16mの津波に対応するように対策を立てました

泊原発が実施した事故対策で一番安直な物は電源車の確保です。
ワタシは知らなかったのだけれど、電源車と言うのは普通停電事故に対応する為の物で、原発に用意しているわけではなかったのです。
そこで福島第一原発事故では、東京電力が慌てて電源車を送り込もうしたのですが、交通渋滞に巻き込まれて動けなくなりました。
それで東北電力が送り込んだのですが、今度はコンセントが合わない、コードが届かないとか、もうお話にならない馬鹿馬鹿しいトラブルで結局役に立たなかったのです。(ワタシはこれのニュースをテレビで見ていて、腰が抜けそうになりました)
それで泊原発ではまず自前の電源車を、津波の届かない高台31mに3台用意しました。
そしてその燃料確保の為に、大型のタンクローリー車と小型のタンクローリー車を確保しました。
それで原発の燃料タンクからタンクローリーで燃料を運んで、給油しながら10日ぐらいは電源車だけでも凌げる体制を用意しているとの事です。
また原発の回りが津波でグチャグチャになって、車が動けなくなった場合に備えて、工事用重機も用意して、オペレーターも確保しているとの事です。
更に31m地点に非常用電源と冷却水をタンクを増設しました。
また実際の電源喪失に対応する訓練も、もう既に数回実施したとのことです。
今回の原発見物では、この31m地点に入って、この新しい冷却水タンクや、電源車を見学できました。

以上は現在実施済みの対策です。
しかしこれとは別に津波の根本対策があります。 まず原発全体を16mの津波に対応する防波堤で囲む予定だそうです。 これはもうすぐ着工して来年中ぐらいに完成予定だそうです。
また泊原発の裏にある海抜100mの高台の上に巨大な地下貯水槽を作る予定だそうです。
これができると、電源がなくなっても、重力で冷却水を取り込めるようになります。
実は泊原発は海岸から100mの高さに切り立つ急勾配の岩山を、切り崩して高さ10mの敷地を確保して作られたのです。
最初から高さ100mの山の上に建てて置けば、津波の心配はゼロなのです、そうすると海からの冷却水取り入れにエネルギーを食われて発電効率が落ちるのだそうです。
現在10mの原発で使う冷却水取り入れに、総発電量の4%が使われています。
このため建設費を掛けてワザワザ山を削ったのです。
福島第一原発も同様でした。 発電効率を上げる為にワザワザ、地面を削って低い位置に原発を作ってしまいました。 このため津波の被害を受けたのです。

この他に今年から原発の沖をいつも海上保安庁の巡視船がパトロールする事になりました。
これは原発から見えました。
それから道警の武装警官が警備を始めました。
逆に言うと、今までそようなテロ対策は、一切されていなかったのです。
これは結構怖い話です。
でももしテロリストが入って、原子炉へ冷却水を送る循環系を爆破したらどうなるのでしょうか?
いくら冷却水や電源を確保しても、水の循環系に穴を開けられたら、どうしようもないでしょう? 数百度の高温の水を循環させているのです、穴が開いたらもうそれでおしまいです。
原子炉の格納容器は厚さ30㎝もあるような頑丈なステンレス鋼ですから、簡単には壊れません。 でもそこへの配管はそれほど丈夫ではないでしょう。
だから安全確保の為にしなければならい事は、まだまだこれから幾らでもあるのです。
絶対安全と言う事はあり得ないのです。

それでは原発を止めれば安全なのでしょうか?
現在、泊発電所は管直人に止められたままなのです。
しかし最初の方で説明しましたが、原子炉は停止していても、崩壊熱を出すので、冷却をしなければなりません。
そして現在の泊発電所の状態は実は、地震の直後から津波が来るまでの、福島第一原発と同じ状態です。
つまり制御棒が降りて、臨界反応が止まっている状態なのです。
だから冷却系が破壊されたら、必ずメルトダウンします。
それでは燃料棒を抜いてしまえば?
抜いても燃料棒は崩壊熱を出します。 だから燃料棒を冷却しなければ、燃料棒はメルトダウンします。
つまり原発を止めたって、止めなくたって、全然危険性は変わらないのです。
違うのは発電できるかできないだけなのです。

将来的に原発を全部廃止するべきか、或は今後も続けるかについては、イロイロな意見があると思います。
ワタシは個人的には原発懐疑派です。
しかし大江健三郎や坂本龍一などと一緒に騒いでいる反原発派は、人殺しだと思っています。
なぜなら上記のように、今原発を停止している事は、安全性から言っても全然意味はないのに、原発を止める事で電力不足になり、熱中症で死ぬ人や失業で絶望して自殺する人がドンドン出て居るからです。
全部彼等が殺したのです。
将来的に原発を全廃するにせよ、代替電源を確保するまでは原発を動かすべきす。
原発を止めても、これから廃炉にして、核燃料を処分するまでは、何十年もかかるのです。 それまでは原発が稼働してもしなくても、安全管理を続けなければならないのです。 それには大変なコストも技術も必要なのです。
だから本当に原発を止める為にも、冷静になって長期のしかも非常にお金のかかる事業を実行するために、経済社会の安定も確保できるように考えていくしかありません。
けれど今の反原発運動は、この「冷静に考える」と言う事を全力で拒否しているのです。 そして唯ひたすら原発を止めろと言うだけなのです。
これは愚かで醜悪なヒステリー以外の何物でもありません。
こんな醜悪な事をしても安全性など確保できません。 経済的損出を増やし、人々を貧困に追いやるだけです。
彼等は唯の破落戸で人殺しです。

原発見学が終わると、バスは余市のサクランボ農園に向かいます。 去年と同じ農園です。
去年はサクランボは冷夏で不作だったけれど、今年は大豊作です。
サクランボ狩りの時間は30分ですが、ワタシと妹は真っ赤に熟れた大きなサクランボを貪り食いました。
30分と言うとあっという間だけれど、しかし30分集中的に食べると、もう完全に満腹します。
それにしても今年のサクランボは美味しいです。
今年は原発見物に時間を取ったので、余市のニッカウィスキー工場の見学は無しでした。
お蔭で唯酒を飲みそこないました。

この日は天気予報では午後から雨と言う事になっていましたが、帰る頃になると晴れてきました。
サクランボで満腹のお腹を抱えて見上げる空はとても美しかったです。