先週末のテレビではお笑いコンビ「次長課長」の河本準一の顔が、いやというほど流れていた。母親の生活保護受給問題で、虚偽申告など不正はなかったものの一定の高収入を得るようになった後も受給が続いた。同様のケースは掃いて捨てるほどあるだろう。河本は人気芸人ゆえに、1人袋だたきにされた感じだ。
良識が欠けていたのは確かで、責められても仕方ない。ただ河本の肩を持つつもりはないが、5~6年前から福祉事務所とも相談していたという。子が親をほったらかしにして、孤独死させる悲惨なケースも耳にする。親子の絆が弱まったいま、福祉事務所と相談しただけでもましな方だろう。
この問題は女性週刊誌で匿名報道され、片山さつき参院議員がブログで実名批判した。「不正受給の抜け道を許さない」という姿勢はわかるが、国会議員とはいえ個人名を出すのは行き過ぎではないのか。いったん名前が出てしまったら、ことの本質の議論を抜きに雪崩を打って河本に批判が集中するのは当然だ。
生活保護費は今年度で年間3兆7000億円が見込まれ、東京都のケースで親子3人家族が保護を受けた場合、住宅扶助と合わせ約24万円が支給されるとか。不正受給も増え続け、22年度は約128億円にも達した。月額6万5000円の国民年金生活者から見れば「バカバカしくてやってられない」と思えるだろう。
片山発言は生活保護の実態に目を向けさせたが、元々政治が悪いからこうなったのではないか。不正受給が増えたのは自民党政権時代からという。失政を棚に上げ“飛んで火に入る…”とばかりの個人批判は、選挙近しの“点数稼ぎ”と指摘されても仕方ない。(サンケイスポーツ・今村忠)
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/120528/ent12052807260001-n1.htm

まずこの今村記者は「同様のケースは掃いて捨てるほどあるだろう。河本は人気芸人ゆえに、1人袋だたきにされた感じだ。」と書いていますが、では河本氏のように母親をネタにして高額所得を得ているケースってあるのでしょうか?
河本氏はテレビや舞台で繰り返し母親への愛情の深さを吹聴して、それに関する本も出版して4000万とも言われる印税を得ています。
ところがそんな事をしながら彼はその印税の一部も母親を助ける為に使わなかったのです。
芸能人の全てが自分の母親をネタにして稼いでいるわけではありません。 けれど親の為に豪邸を建てたり、親族の多数を面倒見ている人は大勢います。
それでもそのような人達が舞台やテレビで自分の親孝行振りを吹聴したり、それで著書を書いて稼いでいるわけではありません。
しかし河本氏はこれと正反対です。
稼いだ金は全部自分の遊興費や奢侈に使い、自分の為に貯金をする事はあっても、母親を助ける金はなかったのです。
自分の時計一個分で母親が一年暮らせるのですが、それは生活保護費として国から出させたのです。
河本氏のやった事は、単に生活保護の不正受給と言うより、彼を愛したファンに対する裏切りです。
それも恐ろしくせこくて薄汚い裏切りなのです。
これなら同じ芸能人のインチキでも、学歴詐称や整形の方が遥かにマシではありませんか?
芸能人のスキャンダルでも、不倫とか泥酔して暴行事件を起こす方が、損得勘定に関わらないだけ爽やかではありませんか?
これに不快感を感じない人の神経を疑います。

更に驚くのが「福祉事務所と相談しただけでもましな方だろう」と言う記述です。
「福祉事務所と相談」の意味がわかりますか?
福祉事務所に生活保護を申請すると、福祉事務所はます扶養義務のある親族に連絡して、扶養が可能かどうかを問います。
何十年も音信不通で、生活保護を申請した当人が、居住地を知らないような親族までも、福祉事務所が連絡をして「福祉事務所と相談」しなければならない制度なのです。
そして扶養が不可能との解答を得て生活保護を支給し始めても、その後最低一年に一度は、本人や親族に連絡して扶養可能かどうかの問い合わせを続けます。
扶養義務者の所得が増えるなど状況が変われば、生活保護を打ち切る為です。
つまり生活保護を申請したら、河本氏が好むと好まざると「福祉事務所と相談」せざるを得ないのです。 本人が拒否しても福祉事務所が相談してくるのです。
唯現在の生活保護制度ではこの福祉事務所と相談には、所得を強制的に調べるなどの権限はありません。
だから嘘を言われたらそれまでです。
特に河本氏の場合のように扶養義務者が他府県に住むような場合は、幾らでも誤魔化せます。
河本氏がもしこの福祉事務所との相談に正直に所得等を応えて居れば、当然遥か昔に生活保護は支給停止になったでしょうね。 そうなればもう福祉事務所と相談する事はありませんん。
しかし虚偽の解答を繰り返すから、繰り返し繰り返し福祉事務所と相談する事になるのです。
こんな事は生活保護の制度を調べればすぐにわかります。
この記者はそれも知らずに書いているのでしょうか?
或は片山議員を誹謗中傷するために誤魔化しているのでしょうか?

またこのような記述にも驚きます。
「国会議員とはいえ個人名を出すのは行き過ぎではないのか。いったん名前が出てしまったら、ことの本質の議論を抜きに雪崩を打って河本に批判が集中するのは当然だ。」
これを読むとあたかも片山議員のブログで初めて河本氏の実名が明かされたかのように、思ってしまいます。
しかしこれは全然事実に反します。
河本氏の実名はこの不正受給問題が女性週刊誌に匿名で報道された直後から他の週刊誌で明かされていました。
ワタシはこの女性週刊誌の記事出た当日、それがが2チャンネルのニュースヘッドラインのスレッドに出た時に、「河本だろう」と言うカキコが出て居たのを見ました。
彼は上記のように母親ネタで売り、金満振りを吹聴していたので、誰にでも思い当たる名前だったのではないでしょうか?
それにしても事実関係を調べればすぐにわかる事を、敢えてこのように意図的に誤解させる報道をする記者の真意は何でしょうか?

そして「不正受給が増えたのは自民党政権時代からという。」と言うのは何の根拠に基づいて書いているのでしょうか?
自民党が戦後長期政権だったので、確かに現在の生活保護制度も経済の基盤も全て自民党時代の産物ではあります。
しかしそれを自民党政権時代からひたすら安易な弱者に同情報道を繰り返して世論をミスリードし続けたのはマスゴミではありませんか?
今村記者は「生活保護費は今年度で年間3兆7000億円が見込まれ、東京都のケースで親子3人家族が保護を受けた場合、住宅扶助と合わせ約24万円が支給されるとか。不正受給も増え続け、22年度は約128億円にも達した。月額6万5000円の国民年金生活者から見れば「バカバカしくてやってられない」と思えるだろう。」を書いています。
けれど例えば安倍政権時代に、母子加算と老齢加算を廃止した時、マスゴミはどのような報道をしたでしょうか?
あの時政府が親子三人の母子家庭で24万の生活保護費に、さらに3万以上加算されている母子加算を廃止すると決めたら、マスゴミはこような母子家庭を紹介して「子供を満腹させられない」とか「人間らしく生きたいだけなのに」などと言う話を垂れ流したのです。
また東日本大震災の折にも、義捐金を貰った人に生活保護を一時停止すると決まった時も、まるでそれを決めた役所が鬼悪魔のような報道を繰り返しました。

現在の生活保護支給額は、単身者では実質で大卒の一部上場会社の初任給の手取り程になります。
また母子家庭など、同世代の一般勤労者の手取りを超えるほどになります。
高学歴エリートでもなく、中小企業で働く父親ならいくら頑張っても、生活保護の支給額に相当する生活費を妻に渡す事は不可能です。
本来「健康で文化的な最低生活を保障する」と言う目的の生活保護が、ここまで奇形化して肥大化したのは、結局今まで生活保護に関する報道がある度に、常にマスゴミが全力を挙げて、異常な「生活保護受給者可哀相報道」を繰り返し、ひたすらその受給額を増やさせるようにしてきたからではありませんか?
そして安倍元首相や今回の片山議員のように、この問題に切り込む政治家や行政担当者には、まるで鬼か悪魔でもあるように誹謗中傷を繰り返してきたからです。
このようなリスクがある為に、人気取りを重要視する政治家達はこの問題に絶対手を付けず安易に、生活保護の増額に努めたのです。

人気取りの為なら政治家は絶対に生活保護の問題は、「カワイソウ!! 増額するから」の対応をするのです。
その典型が安倍総理が母子加算を廃止した時、それに対してマスゴミとタッグを組んで大々的に「カワイソー!!」キャンペーンをして、母子加算復活を公約した民主党ではありませんか?
民主党は政権を取るとすぐに、予備費を取り崩して学校の耐震化も辞めて、それを母子加算復活にあてたのではありませんか?
今村記者はこの時どんな記事を書いたのでしょうか?
是非知りたいものです。