2002年にヨーロッパ旅行に行った時にコペンハーゲン空港に4時間滞在しました。
目的地はウィーンだったのですが、日本からウィーン直通の格安チケットはなかったので、コペンハーゲン空港経由になったのです。
しかもコペンハーゲン到着から、ウィーン行きの便へ出発まで4時間もあります。
それでも生まれて初めてのデンマークですから好奇心満々です。 まずは一目でも空港の外を見てみようと思いました。
それで到着すると直ぐに、必死になって空港の出口に向かいました。

このコペンハーゲン国際空港は、素晴らしく綺麗でモダンな空港なのですが、恐ろしく広いのです。
だからワタシのあやふやや英語で案内板を読んだり、道を聞いたりしながら、ウロウロと出口を探して歩くのは一苦労でした。
それでも何とか頑張って外に出ると、すぐ側に海が見えて、その海に何基もの風力発電の風車が見えます。
この風車は飛行機の窓からも見えたのですが、何とも幻想的でした。
しかしそれ以外は到って殺風景で、街も建物も見当たらず、見物できるような物はありません。
空港の周りってどこでもそんな感じだから仕方がないです。
ワタシはまた空港内に入りました。

しかしとにかく一応外を見て満足したので、今度はウィーン行きの便の出発ロビーを確認する事にしました。
けれど行きと違って余裕ができたので、キョロキョロと回りを見回して、空港内を見物しながら進みました。
そうやって歩いていると、東洋人の女性が何やら新聞を配っているのに出くわしました、彼女はワタシを見ると、黙ってその新聞を一部くれました。
見ると中国語繁字体の新聞です。
ワタシはそれをバッグに入れて、更に進みました。
すると今度は3歳ぐらいの可愛い女の子が一人で、ベンチに座っているのを見ました。 そしてビックリしました。
こ、乞食の子供???
その子は淡い日光のような金髪に、空色の瞳、透き通るように白い肌の妖精のように可憐な子だったのですが、着ているヨレヨレなのです。
3月の末だったので結構寒くて、その子は毛糸の頭巾をかぶり、毛糸のカーデガンを着ていたのですが、それがもうどれだけ洗濯を繰り返したらこうなるのかと思えるほど、色が黒ずんでヨレヨレになっているのです。
この子の着ていた服が、この子のところへ来るまでに、何十人の子供の間を渡り歩いたのでしょうか?

けれどヨレヨレの服を着ているのはこの子だけではありませんでした。
このコペンハーゲン国際空港は、北欧のハブ空港とかで利用客の多くは、北欧諸国の人のようです。
しかし周りを歩いているこれらの人々の服装が殆ど皆ヨレヨレなのです。
季節柄セーターを着ている人が多かったのですが、それが皆アクリル製の超安物のしかも洗濯しまくって形も崩れ、色も黒ずんでと言うのばかりなのです。
北欧はワタシの大好きなノルディックセーター始め、セーターの本場で、編み物が民族の伝統手芸なのですが、そんな洒落たモノを着ている人は全く見かけません。
模様や形がノルディックセーターでもアクリルのヨレヨレじゃなどうしようもありません。
セーターだけでなくズボンもシャツも皆ヨレヨレです。
「難病連のバザーに出したら全部捨てられる・・・・・。」と思いました。
ワタシは難病患者なので、北海道難病連盟(難病連)の会員だったことがあり、その時会で行うバザーの手伝いをしました。
北海道難病連盟は活動資金調達の一助にと、年の一度一般から不用品の寄付を募ってバザーをするのです。
その時集まる不用品の中で一番多いのが衣類でした。
しかし古い物や痛んだ物などは、並べても売れないので、バザーに出す前に選別して捨ててしまいます。 ワタシはこの作業を手伝っていて、自分が出したセーターを目の前で捨てられた事があります。
でも他の品と比べたら捨てられても文句を言えないので何も言えませんでした。
ところがこのコペンハーゲン空港を行く人々の着ているモノは、捨てられたワタシのセーターなんぞより遥かに酷いものでした。

とは言え皆さん凄くカッコイイのです。
あの乞食の子だって、妖精のように可憐だったけれど、大人は皆スラリと背が高く、肩幅が広く、腰がキュッとつぼんで足が長いのです。
そして淡い色の髪に白い肌です。
だから遠目にみるとホントに素敵です。
写真に撮って、セーターがヨレヨレとかわからなければ、日本人なんか幾らお洒落をしても敵いません。
こんなカッコイイ人達が、綺麗な街並みを歩く写真を見れば、北欧は天国のように見えるのは当然ではありませんか?

せっかく神様からカッコイイ容姿を授けられた人達が、かくも貧乏くさい恰好をしている理由は言うまでもなくこの北欧諸国の物価高です。
物価高の原因は勿論、物凄い税負担です。
所得税の税率だって高いのですが、消費税も20~30%です。 しかも輸入品の関税だってベラボウに高いのです。
だから免税のはずの空港内のレストランも凄いボッタクリ価格です。
なんか成田の倍ぐらいの感じです。
立ち食いでサンドイッチに飲み物を一杯でも、日本円にして1000円超えるような感じです。
これには食欲も吹き飛びました。
何だか非常に疲れる気がしました。
空港は凄く綺麗だし、その上完全バリアフリーだし、周りの人が凄くカッコイイけれど、何だかシンドイのです。

そうこうするうちにようやく4時間が過ぎて、ウィーン行きの便に乗りました。
その飛行機は道内のローカル線に使うような小さな飛行機だったのですが、乗り込んでなんだかホッとしました。
離陸すると間もなく若い可愛いスティワーデスが、機内食を配ってくれました。 凄く美味しいサンドイッチでした。
考えてみると、成田からコペンハーゲンまでスカンジナビア航空のスティワーデスは、ゴツイ中年女性で威嚇されているような気がしていたのです。
自分がゴツイ中年女のクセに文句を言える筋合いじゃないけれど、可愛い人を見ると気持ちが休まるのだと思いました。

ウィーンへ着いた2日目の朝、ホテルで朝食を食べていると、成田―コペンハーゲン便で隣の席にいた女性と会いました。
聞くと彼女は当日コペンハーゲン―ウィーン便があることを知らなかったので、コペンハーゲンに一泊して翌朝のウィーン行きに乗ったそうです。
「コペンハーゲンは何だか殺風景で嫌だった。」
「なぜか道に割れたガラス瓶が一杯散らばっていて、怖かった。」
「ホテルの朝食も粗末だった。 ここは良いわ。 こんなに美味しい物が沢山あって・・・。」
彼女はそんな話をしていました。

デンマークは他の北欧諸国同様、高福祉高負担国家です。 だから税金が高いだけではありません。 手厚い福祉を受けられるのです。
人が自分のお金を何に使いたいかは、その人の価値判断によります。
北欧の人々は大変堅実で、衣類だの美食だのと言った物で浮薄な浪費はせず、病気や障碍を抱え込んだり年を取ったりした時に手厚い福祉が得られるような使う事にしたのです。
でもワタシはたった4時間のデンマーク滞在で、そう言う堅実一途の生活は、日本人の感覚ではかなり辛い物があるんじゃないかと思いました。
ワタシは難病患者だから福祉が手厚いと丸儲けになる立場だし、日本人としては随分ケチなのですが、それでもあんな国はイヤだと言うのが実感です。

しかしながら読売新聞は絶賛しているようです。
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=54988
そしてこの高福祉の源泉については、三橋貴明氏が解説してくれています。
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/page-1.html#main