先日阿比留さんのブログで、TPP推進派遠州報国隊さんがコメントの中でISD条項について、興味深いご意見を書いて下さったのでご紹介します。
http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/2523629/
青字が遠州報国隊さんのコメントです。 緑字の方に対する反論です。
赤字はワタシ、よもぎねこのコメントです。
>ISD条項ってのはもともと先進国が発展途上国との取引をする上で、理不尽な状況が生じた場合、世界銀行傘下の国際機関(所在地;ワシントン)で解決するためのものだよね。
>しかも提訴する機関がアメリカの影響下にある機関です。
そうですね。
ただし、アメリカだけの影響下にあるわけではなく、中共の影響下にもあるし、日本の影響下にもあります。
ちなみに、世界銀行の上級副総裁は中共の人間です。
http://www.asahi.com/international/update/0924/TKY201109240358.html
>実際アメリカは連戦連勝ですから。
メキシコ政府は6勝、カナダ政府も1勝してますよ。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/tpp/pdfs/tpp02_06.pdf
証拠もなしにメチャクチャなことを書いちゃ、いけません(笑)
他人の受け売りで、別の人をバカにするのはやめましょう。
せめて自分で証拠・根拠を探してからにすべきです。
> あらら?
> ISD条項って途上国とのトラブルの為とかって言ってませんでした?
北米FTA(NAFTA)の加盟国は米国・メキシコ・カナダの3国です。
そして、TPP反対トリオは、NAFTAのISD条項を取り上げて大騒ぎしているので、その3国間での話を紹介しました。
ちなみに、米国から見れば、カナダもメキシコも「途上国」です。
投資保護の法制度の発達度合の相対比較において。
> つまり普通の先進国で民主主義国家が、国民の福祉や環境保全の為に変えた法律や制度が、一外国人投資家の為に阻止されてしまうことです。
たしかに、ISD条項がそういう方向に濫用されない枠組みは必要です。NAFTAはその点において無防備でした。その反省がTPPの交渉に生かせればいいと思います。わが外務省のFTA/EPA交渉チームが編纂した本には、そういった反省点や今後の課題が明記されているので、交渉に期待するところ大です。
これについては、su-mi さんのエントリーが参考になります。
http://su-mi.iza.ne.jp/blog/entry/2511750/
> 投資家保護なんて極一部の基準だけで、国民全体の福祉や環境に関わるような問題を他国の一投資家がかき回せるような発想をする国こそ、超途上国です。
あれは締結されたNAFTAの条文のアナを見つけた、弁護士業界の発想だと思います。私は、米国の国家意思だとは思いませんが。
まぁ、これだけの短時間でコメントを返されたということは、su-mi さんのブログは読んでおられないと思います。あなたのコメントの残りの部分については、su-mi さんのブログに対応する見解が書かれていて、私はそちらに賛同する立場です、とだけ書いておきます。
真に推進派だけあってISD条項について、大変重要な問題を示唆してくださいました。
つまりアメリカは自国の基準で、カナダのような立派な先進国も途上国とみなしているのです。
またこの遠州報国隊さんの仰ったメキシコ、カナダのISD条項でのアメリカへの勝訴と言うのが、カナダ企業、メキシコ企業がアメリカ政府を告訴しての場合だと、アメリカのような超先進国であってもISD条項で訴訟を起こされて負けると言うことになります。
つまり推進派である遠州報国隊さんご本人が、もうこのISD条項が途上国の政府の出鱈目な司法制度から投資家を守る為の条項なんかではない、と書いていらっしゃるわけです。
そしてもっと重要なコトも示唆してくださいました。
>あれは締結されたNAFTAの条文のアナを見つけた、弁護士業界の発想だと思います。私は、米国の国家意思だとは思いませんが。
そうなんです。
ISD条項で他国の政府に訴訟を焚きつけているのは、アメリカ合衆国ではないのです。
アメリカの破落戸弁護士達なのです。
これはアメリカ合衆国政府よりも余程厄介なコトです。 アメリカ政府ならどんな場合でも最低限の節度は期待できるけど、破落戸弁護士が相手ではそんな事は全然期待できないのです。
弁護士は訴訟に勝とうが負けようが、弁護料が稼げるのです。 だからどんな事でこじつけて訴訟に持ち込むのです。
このような破落戸弁護士の大増殖で、当のアメリカ政府やアメリカ企業も苦労しているぐらいですから。
以前佐藤ゆかり議員がISD条項が入ると、地方自治体などが地元の雇用や地域振興の為に、地元企業優先に行う公共事業なども訴訟に対象にされると指摘しておられました。
この場合も告訴されるのは地方自治体ではなく、国ですから国は各自治体の政策を全部掌握して、訴訟のリスクを管理しておかなければならいと仰いました。
しかし悪徳弁護士が弁護料稼ぎの為に出鱈目に起こす訴訟に対応するために、国が全自治体の政策を管理しきれますか?
そんな事は不可能なのです。
これはまさにエコノミストとしてJPモルガンで働いて、アメリカの訴訟社会とそのやり口をつぶさに見た方が持つ危機感です。
少し前の朝鮮日報での記事で見たのですが、アメリカ企業が起こしたISD条項での訴訟は15勝22敗との事でした。
だから推進派はISD条項は別にアメリカが格別有利だとか、そんな話ではないと言います。
しかしそもそもこの22敗がどんな訴訟だったかもわからないのです。 だから単純な勝率なんか意味がありません。
そして訴訟は勝てば良いと言う話ではないのです。
言われもない事で訴訟を起こされるなんかやられる方にはたまったものではありません。 いくら相手が弁護料目当ての破落戸弁護士でも、訴訟をされたらこちらも弁護士を雇って闘うしかないのです。
そんな事を始終されるようになったら?
勿論ISDで告訴されるのは個人ではなく日本政府ですから、別に弁護料の工面に苦労するわけではありません。
しかしトヨタ叩きの時の日本のマスゴミの対応を見ればわかりますが、もし日本政府が告訴されたら日本のマスゴミはどんな対応をするでしょうか?
告訴されただけで関係省庁を袋叩きにするでしょう。
彼等が日本の国益や福祉の立場から、日本政府の対応を擁護する事は今までも一度もないのです。
事実に関係なく日本側を叩くのです。
こんな事が繰り返されたら、いかに日本側が勝訴しても、日本の政治家も官僚も国民の福祉や環境を守るために制度を改革しようなどと言う意識を失っていくことになります。
それにしてもTPP推進派と言うのは不思議な人達です。
この遠州報国隊さんもこのようにご自分でISD条項の危険性を示唆して下さったのに、是非ともTPPにはISD条項を入れたいようです。
別にTPPにISD条項を入れなくてもいいではありませんか?
例えば現在TPP加盟国のうちベトナムなど所謂途上国に分類されている国とは、日本はすでにFATを結んでおり、そこにはISD条項が入っています。
だからTPPでISDが無くても日本は一向に困らないのです。
それでTPPにまた別の途上国が入れば?
その国とISD条項が入っている協定を別に結ぶまで投資を控えれば良いでしょう?
米豪FTAではオーストラリアは全国民が反対してこのISD条項を入れさせませんでした。
だから日本もオーストラリアと共闘して、TPPからISD条項を抜くように頑張れば良いのです。
しかし日本のTPP推進派はそんな知恵はありません。
代わりに民主党の交渉力に期待しているのです。
結局この方達はTPP教団の信徒なのです。 信徒が教団の教義の変更など要求する事はあり得ません。
敬虔なユダヤ教徒に「十戒の第2戒は変えたら?」なんて言っても、考えてくれるわけはないのです。
それと同じですね。
そんな罰当たりなコトを思いつくのは、つまりワタシが異教徒だからです。