数日前にyuyuさんのエントリーでロシア民謡カチューシャが紹介されていました。
http://yuyuu.iza.ne.jp/blog/entry/1460578/
この歌は実は軍歌だそうです。 しかし反戦歌のような歌詞です。
これで思い出したのが遥か昔、NHKで見たソ連の小学校の入学式のです。
新入生を迎える上級生が「平和が続きますように。 機関銃がバババと唸ることありませんように・・・・。」とまるで日本の反戦団体が聞いたら、涙を流して大感動するような式辞を述べていました。
まだソ連崩壊など夢に有り得ないと思われた頃です。
ソ連は国民生活を犠牲にしても、軍備拡張をしていました。 だからワタシは大変驚き、30年程も前の番組なのにその場面だけを覚えているのです。
しかしロシアの歴史を見れば、平和を願う事と、軍備を拡張する事には、何の矛盾もありません。
ロシア人からすれば、戦争とは国を守る為の戦いで、軍隊とは自分達ロシア人を守ってくれる物です。
ロシアは歴史的には周辺からの侵略に苦しんだ国です。
中国が北方騎馬民族の侵略に苦しんだ事は知られていますが、ロシアはこの同じ騎馬民族に東から侵略される一方、西側からはドイツ騎士団などヨーロッパからの侵略にも晒されたのです。
地図を見れば解りますが、この国には天嶮となるような、山も河もありません。 また統一国家を作ったのは10世紀末の後進国家で、自然も厳しいので経済力もありませんでした。
だからロシアにとってこれらの侵略者に対向して生き延びるのは容易な事ではありませんでした。
ロシアがこの侵略から身を守る為に選んだ道は、専制君主を頂いて強権独裁で強固な軍事力を確保する事でした。 これはそれを拒否した同じスラブ民族国家であるポーランドが、歴史的に殆ど独立国として存在できなかったことを考えれば正解だったかも知れません。
近代になってもロシアの苦難は続きます。 ナポレオン戦争、第二次世界大戦、ロシアはモスクワ近くまで侵略され膨大な死者を出しました。
ナポレオンもヒットラーもロシア人を虐殺する事には、何の斟酌もありませんでした。
第二次世界大戦中はスターリンの独裁を反抗するロシア人の中には、ドイツ軍を協力したい人々も大勢いたといいますが、そんな事は関係なくスラブ殲滅作戦が遂行されたのです。
結局ロシア人は自分達の命を守る為には、自分達の軍隊を強固にして戦うしかないのです。
だからロシア人には平和とは、戦いに勝って自分達の国を守って得るものです。
だから軍隊は平和を守る為にあるのです。
だから反戦歌みたいな軍歌も、有り得るのですね。
でもこの軍隊と平和への認識は、むしろ世界標準です。
世界中のどの国でも国を守る為の軍隊があるから、国民が平和に暮らせると考えています。
特にそれを痛感したのが、長い間植民地支配に苦しんだアジア・アフリカの国々です。
だからこれらの国々は、独立するとまず軍隊を作り、国を守る体制を作ろうとしました。 だってそれが不十分だったおかげで何百年も植民地支配された経験があるのだから当然です。
日本は絶海の孤島だったので、ロシアを征服したモンゴルも撃退できたし、その後は外国からの侵略なんか考える必要もありませんでした。
そして太平洋戦争は日本側から宣戦布告して負けました。
この一回の経験が「軍隊がなければ戦争は無い。」「自分が望まなければ戦争は起きない。」と言う世界的には珍無類な世界観を盲信する事になったのです。
だから歴史的経緯から専制主義に寄らざるを得なかった彼らには心から同情します。
そして彼らが貧しさにも関わらず強大な軍事力を維持せざるを得なかった苦難も理解します。
また彼らがこの苦難に耐えて国を愛し守り続けた事を心から尊敬します。
でも残念だけれど被害者と言うのは善良でも優しくもありません。
ロシアが領土拡張に走り、一度得た領土を絶対手放さないのは、彼らが自分達の居住地の平和を守る為には、その周辺諸国を盾にしたいからです。
そうしないと自分達の生命が危険に晒されると思っているのですから、出来る限り自分達の安全を確保使用と必死なのです。
また支配地を容赦なく搾取するのは、搾取している自分達だって貧しいからです。 だから相手から搾取しても、それはお互いに平等になるだけです。
でもやられる方は堪ったもんじゃありません。
だからやられないように頑張るしかありません。
彼らが1000年に及ぶ苦難で得た世界観を変える力は、日本にはありません。 そんな権利もありません。
彼らはそう言う世界観で生きる人々だと思って付き合うしかないのです。
戦争の無い平和な世界は、全ての人類の望むところではあります。 でも世界中には様々な民族や宗教、思想信条があります。
それが時に対立するのはいたし方ない事です。
なぜならその対立がないと言うのは、結局民族とか宗教とか思想や信条に命を懸けるほどの価値を認めない事であり、結局人類が全て平準化されて、個性や独自の理念を失うということだからです。
そして独自の民族や宗教、思想信条を守りたければ、それを守る為に方策を昂じるしかありません。
外交で戦争を全て防ぐ事などできません。
必死で外交努力をしても、結局侵略され滅亡した国や民族など無数にあるのです。
そして日本は外交の経験など、世界中どの国と比べても少ないのです。 何を根拠に外交だけで世界中の外交のベテランに対向できると言うのでしょうか?
反戦歌みたいな軍歌を聴いて思った事を書いてみました。