前回のエントリー「 火の無い所に立つ煙」にfuyunekoさんがコメントを下さいました。
>私が見たデータによると、世間をにぎわしている格差なるものは、90年代からスタートしています。(典拠は失念しました。)ということで、見たデータが正しいとすれば、「小泉が格差を作った」というのは嘘です。
>あー書きながら思い出しました。フリーターという存在を。フリーターという言葉が流行りだしたときは「自分のやりたいことを探すために今は束縛されない身でいたい。」しかし、今はそのフリーターなる人たちが「格差の犠牲者だ。」と騒ぎ、マスコミも「政治が悪い」と言いますね。一昔前は、フリーターを持ち上げていたような。。。
実際fuyunekoさんの仰る通りです。
以前「 小泉改革が格差を産んだ?」のエントリーでも取り上げましたが、日本人の所得格差は、高度経済成長時代一期に縮まったのですが、それがまたひらき始めたのは、90年代からです。
日本の経済がつまり石油ショックを克服して、ブラックマンデーも乗り越えてて、バブル経済へと驀進した時代から、所得格差は広がり始めました。

これは経済統計でもその通りだし、経済学者の評価でもその通りだし、ワタシ自身の記憶でもその通りです。
あの時代頃から日本は高齢化社会へ足を踏み入れ、またすざまじい資産インフレが起こりました。 これに関連して土地や株価が馬鹿馬鹿しいほど上がり、その勢いを駆って。空前の好景気になりました。
だから格差が開いたと言っても、求人は異常なほどあり、人手不足倒産などと言う事態も再々起きました。
その為短期のアルバイトの賃金が上がり、正社員よりも収入が多いフリーターが出てきました。 フリーターなんて言葉生まれたのはこの頃です。
正社員に比べて短時間で、しがらみも無く正社員以上の高賃金を得られたら、正社員に成りたくない人が出てくるのは当然なのです。
あの時代の日本経済の勢いと、驕りは忘れられません。( ヒンコン♪ヒンコン♪ヒンコカン…)

しかしバブルが弾けると、深刻な不況が訪れました。 そして求職難が訪れました。 大学を卒業した若者達が職に就けず、アルバイトや派遣でしのぎながら咆哮すると言う就職氷河期が始まったのです。
そしてそれとは別に本格的な高齢化社会が始まりました。 この20年で高齢者は人口の12%から20%にまで増えたのです。 これは社会にとって大きな負担です。
でも結婚とか子供を作るとか、個人の人生にとって決定的な問題を自由に選べる社会なら、必ず起きる問題です。 ワタシ自身がワタシの決定によって結婚せず子供を産まなかったのですから、誰を責める事もできません。

この間政治は混迷を続けました。 短命で分けのわからない政権交代が続きました。 自民党の一党支配も終わりました。
細川連立政権とか、訳のわからない馬鹿殿様が小沢一郎の後見で立ちました。
この馬鹿戸殿様はこのような若者達の苦闘を他所に「戦争責任は永遠である」などとのたまわれたりして、馬鹿と偽善の本性を現しましたが、それでもマスゴミは絶賛しました。
それから自民党が村山富市を担ぎ出して、総理大臣にしました。
この男は見事にマトモな政権担当能力がなく、この男に付いて外務大臣になった男は、国際会議に幼稚園児のように外務省の官僚に付き添ってもらいました。
でもやる事はやってくれました。 阪神淡路大虐殺と村山談話です。

政治がこんな見るも無残な彷徨を続ける間、経済は莫大な国債を発行して、公共投資で何とか誤魔化し続けたようです。 でも国債で公共事業を続けてもその効果はあやふやで、公共事業のための公共事業ではないか?と言う疑惑を拭い去る事はできませんでした。
この混乱と放縦がバブル崩壊から10年続き、これを外国に経済誌は「日本の失われた10年」と言いました。 そしてその時代に運悪く大学や高校を卒業した若者達は、今もマトモな職に就けず困っています。 彼らはいまも生きているしこれからも生きていかなくてはならないのに「失われた世代」と言われているのです。
この放縦と混乱にとにかく終止符を打ったのが小泉首相でした。 とにかく彼の時代からまた日本は景気が回復し、若者が就職できるようになったのです。 これは重大な事です。

勿論、この時代、世界的なバブル経済で、アメリカはじめ世界経済が絶好調でした。 だから日本の製品も沢山売れたのです。
ワタシは経済学なんか知らないので、この小泉時代の好景気のうち、どこまでが小泉改革により、どこまでが外需によるものか分ける方法を知りません。
しかしどうもそんな事は経済学者だって、知らないしやる気もないのでは無いかと思うのです。
ともかくたった数年前のこの時代、小泉総理の改革は国民の絶大な支持を受けて、改革派が破竹の勢いであった事を思えば今の状況は全く理解できません。

なるほど現在日本の失業率は史上最悪の5,7%だけど、これは世界的見れば最低レベルです。 そしてGDPはプラスに転じました。
大体今回の不況は日本の経済政策によるモノではなく、アメリカのトバッチリです。 それで世界中が四苦八苦の中、それでも日本は結構上手く立ち回りました。
アメリカやヨーロッパの銀行が何百も潰れる中で、日本の銀行は全く安泰です。
郵貯銀行の如きはこのドサクサにまぎれて莫大な利益を上げたのです。
現実にこれ以上どうすれば良いのでしょうか?
別の政権なら世界中の資本主義国家が蒙った深刻な経済混乱に関わりなく日本だけが好景気を維持できたのでしょうか?

しかしこのような現実には一切関わりなく、なぜか去年、一昨年から「小泉改革で格差が広がり、貧困化が進んだ」と言う、火の無い所に立つ煙が日本の報道を覆いつくしたのです。
それにしても実に異様です。
前述のようにワタシは90年代バブルに向かう時代から、現在までを自分で体験しています。 でも現在40代以上の有権者ならば皆これを成人として体験しているのです。
そして小泉政権の成立ならたった8年前の話です。 現在30代の人なら、全てあの時の状況を覚えているでしょう。
そしてその前の就職氷河期で最も深刻な苦悩を味わったのもこの世代です。
あの時代を覚えているはずの人達が「小泉改革で格差が広がり、貧困化が進んだ」と言うデマを何の疑問も無く受け入れているのでしょうか?

ともあれマスコミがこの際限も無い煽動を始めた時から、自民党政権を打倒すると言う目的が明確だったのでしょう。 そして小泉改革の命運も決まっていたのでしょう。
ワタシは個人的に小泉改革が万能薬とは思っていません。 また現在の不況の中で緊縮財政を続けるのは、狂気の沙汰と思っています。
しかし将来的には、改革は絶対必要で、だからこそ地道に気長に続けるべきだと思っています。
そして何よりも事実無根の煽動による改革潰しを見れば、そんな嘘を振り回して政権の収奪を図る人間は大悪党としか思えません。
「自分は善良で有能であるが、貧しく不幸である。 それは政治が悪いからだ。」と言うのは全ての人間にとって快適な思考ではあります。 だから悪党達はこの甘い言葉を喚き叫び続けるのでしょう。
この煽動の行き着く先には何があるのでしょうか?

ドアの向こうが地獄でない事を祈ります。