テレビ朝日の高学歴記者が円安の問題を書いているのですが、内容が支離滅裂で論理性ゼロです。
結構長文ですから、全部は貼りませんが、問題部分を突っ込んでいきます。
重要部分が全部問題なのですが。
元記事を読みたい方はリンク先からどうぞ。

円が国際通貨でなくなる日 続く「悪い円安」 金利を“封印”した日本の凋落(2022年5月13日 テレビ朝日)
■「金利がないから何もできない」 円安で日本企業が海外から買収される懸念
アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)は5月4日、0.5%の利上げを決めた。一度に0.5%上げるのは22年ぶりのこと。コロナ禍から立ち上がる経済下で40年ぶりの高いインフレに直面するアメリカは速いペースで金利を引き上げる構えだ。
「日本は金利がないから何もできませんよ」。
中央省庁の中堅幹部は悔しそうに私にこう漏らす。金利の上げ下げで経済をコントロールする余地があるアメリカの姿がうらめしく映るのだろう。日米の金利の差が開くので、金利の高いドルが買われて円が売られ、円安が進む。アメリカ以外の各国も利上げの方向に動いている。
「円の価値が下がれば、日本企業が米中など海外から買収されやすくなる」(銀行系エコノミスト)。
こうした懸念も生じている。
この高学歴記者は何でFRBが金利をあげるかわかっているのでしょうか?
またなぜ日本が金利をあげないかわかっているのでしょうか?
FRBが金利をあげるのは、アメリカが現在猛烈なインフレだからです。 アメリカだけではありませんEUもイギリスも凄いインフレです。
ウクライナ戦争の為、エネルギーと食料の価格が異様に上がっているのが理由の一つです。
しかし最大の原因は、アメリカもEUもイギリスもコロナ対策で莫大な財政支出を続た事です。
欧米諸国のコロナ感染は日本よりはるかに深刻で、それに対して政府は強烈なロックダウン始め過激な感染抑止政策を行いました。
そしてそれで仕事を失う国民に対しては、多額の給付金や失業手当を出しました。
アメリカの出した失業手当は、大多数の低賃金労働者の賃金を上回る物だったので、失業していた方が収入が多いという人が多数いました。 その為、行動制限が解除されても、仕事に戻らない人が多く、労働力不足になりました。
欧米では厳しい行動制限が課されていましたから、その間は生産も激減したのですが、しかし行動制限で消費どころではありませんでした。
しかし行動制限が緩むと、これまでのため込んだストレスを吹き飛ばすように消費が増えた上、上記の理由で労働力不足と言う状態になりました。
これじゃ物価だった上がります。
インフレになります。
因みに労働力不足でインフレですから賃金も上がっています。
脱線しますが、アメリカが行動制限による失業対策として、失業を防ぐ代わりに高額の失業手当を出して、それが結果として好景気と賃金上昇を招いた事は、考えさせられます。
日本は失業絶対阻止で雇用調整助成金など企業の側にお金を出して、雇用は完全に守ったのですが、しかし賃金は上がりませんでした。
賃金をあげる為なら、アメリカ式が正解だったのかもしれません。
話を戻します。
で、日本はどうですか?
日本のコロナ感染は欧米に比べたら文字通りのさざ波で、犠牲者も二桁少なく、その分行動制限も「屁みたいな物」で、生産力の落ち込みも、消費の落ち込みも欧米に比べたら少なく済みました。
しかしこれほどコロナ感染が少ないにもかかわらず、欧米諸国が行動規制を完全に解除してからも蔓延防止条例など延々と行動規制が続いています。
今もまだマスクの着用が続いています。
これでは消費が回復するわけもないのです。
因みに岸田総理は「マスクを外すのは現実的ではない。」と言い、2類指定から5類に変更する決断も先延ばしです。
致死率がインフルエンザ並になった病気を何でここまで怖がらなくてはならないのか?
この人絶対にリスクを取る決断はしたくないんですよね。
それで日本経済にどんな悪影響があろうとも、とにかくマスコミに叩かれたくないのです。
しかしこれだと生産は減らない、需要は増えないままですから、インフレにはなりません。 昨年のインフレ率は漸く1.9%です。
これは元来日銀が定めていたインフレターゲットに届きません。
しかもこのインフレ率には、エネルギー価格の上昇や生鮮食料品の上昇分も含まれています。
本来インフレターゲットなど定める場合は、エネルギー価格と生鮮食料品の価格は除外するべきなのです。
なぜならエネルギー価格は外国での戦争など、日本の経済状態から来る需給とは全く関係ない要因で決まります。 また生鮮食料品も野菜の豊作不作や、魚の豊漁不漁など、これまた需給とは関係ない要因で決まってしまいます。
だから本来ならインフレターゲットなどを考える場合は、こうした要因を除いた物価指数(コアコアCPI)を使って考えるべきなのです。
そうなると昨年からのエネルギー価格の上昇が分は除外することになりますから、日本の物価上昇率は1.9%よりさらに低くなる事になります。
こういう状態では金利をあげる必要はないし、あげてはいけないのです。
金利が上がると、家や車を買う場合のローンも高くなるし、企業は設備投資や運営に必要なお金を借りるのが大変になります。
当然経済成長は落ち込み、失業や倒産が増えます。
逆にアメリカのように景気が過熱して、消費が増えて需要が供給を上回るとインフレになります。 そのインフレが現在のように7%とか8%とかになれば、いくら何でも経済に有害ですから、金利をあげて少し景気を悪くするのです。
中央銀行はこうやって経済をコントロールするために金利を利用するのです。
>「日本は金利がないから何もできませんよ」。
これを言った中央省庁の中堅幹部なる人物が実在したかどうかは知りません。
しかしこういう人が実在して中央省庁の中堅幹部をやっているとしたら、ホントに困ります。
インフレ率がインフレターゲットに届かない状態では、金利をあげるなんてことはできません。
選択肢はありません。
下げ一択です。
現在の金利がどうであろうと、上げるという選択肢はないのです。
因みに金利がなくてもできる事はあります。
財政出動をすればよいのです。
例えば政府は防衛費を5年間でGDPの2%まで増やす事を決めました。 だから補正予算など組んで、それを早く出せばよいのです。
国が財政出動をすると言う事は、政府が消費を増やすことになりますから、当然需要が増えて物価が上がります。
それで物価上昇が深刻になればいくらでも金利をあげる事ができます。
さらに円安で日本企業が買収されやすくなるも嘘です。
と言うよりリーマンショック時の円高で、エルピーダメモリーとシャープが怒鳴ったか思い出せばわかりますよね?
リーマンショック時の円高は、1ドル120円前後だったものが、80円台まで上がり、その状態が3年間続いたのです。
輸出企業にすれば、同じ価格で同じ数輸出しても、売り上げが3分の2になってしまう事になります。 この状態が3年も続けば、破綻する企業や身売りする企業が続出するのは自明です。
円高で業績が悪化し資金繰りがつかなくなって倒産しそうな企業の株は二束三文になりますから、簡単に他国に買収されてしまいます。
逆に円安で業績が良くなれば株は上がりますから、簡単に買収されません。
また日本で製造するのが不可能になるので、海外に工場を移転する企業も出ました。
これは日本の雇用が減り、地域社会の崩壊につながります。
実はこれはバブル後の円高で深刻化しました。
1985年までは1ドル250円前後でしたが、ところがその後数年で、120円程になりました。 これはリーマンショックをはるかに超える円高でした。
この円高で日本企業の多くが海外に工場を移転させ、それらの企業が海外で築いた生産力は日本のGDPの1.8倍になると言われます。
日本の経済成長が止まり、雇用が減り、賃金が上がらないという状態が始まったのは、この時期からです。
逆に言えばこの円高がなければ、日本のGDPはバブル期の2.8倍になっていたのです。
そしてこの円高がなければ就職氷河期なんてものもなかったでしょう。
■ 超低金利で競争力を奪い、賃金も上がらず
元記事のコピペができなので、元文を貼れませんが、書いていることはさらに奇妙です。
超低金利が競争力を奪う事はあり得ません。
超低金利だと日本企業は他国の企業に比べて安い金利をお金を借りて設備投資等に使えます。
何より金利が他国に比べて低ければ円安になりますから、輸出企業の収益は上がります。
企業収益が増えたら賃金も上がります。
この元記事では「アベノミックスで完全雇用になったけれど、非正規や時短労働者が増えたので賃金が上がらない」と言っています。
しかしリーマンショックとその後の民主党政権時は、非正規や時短労働者の解雇が続き、さらに輸出企業でも大規模なリストラが行われ正社員も大量に解雇されました。
因みにアベノミックス以降、正社員も増えています。 特に新卒者の就職内定率はバブル期並になり、コロナ禍の中でこの状態を維持しています。
また非正規の圧倒的多数は、主婦、高齢者、学生です。
これらの人々は、家庭や健康上の理由でフルタイムで働きたくないから、時短、非正規で働いているのです。
短時間勤務ですから、賃金は非常に低いです。 でも平均賃金や実質賃金を計算する場合は、こういう人も勤労者としてカウントされますから、こういう人が増えれば平均賃金は下がります。
但しアベノミックスで非正規労働者の時給は2~3割上がっています。
本来円安を問題にするなら、円高時と比較するべきなのですが、しかしこの記事は何の根拠もなく賃金が上がらない原因をアベノミックスと断定しているから奇妙です。
■他力本願型のアベノミックスの失敗「金利復活で円安を是正し財政規律を取り戻せ」
いやいやマクロ経済政策って、財政や国債金利など、民間企業や一般国民にならない事を行うための政策ですから、民間企業や一般国民から見れば完全な他力本願です。
それに官僚など政府側の人間が文句を言うのは、菩薩様は如来様が信者に「自分達を信じるな」と言うのと同じです。
しっかり菩薩・如来の役割を果たしてください。
要するにテレビ朝日は財務省の緊縮財政のプロパガンダをしているのです。
その為に中前国際経済研究所の中前さんとかいう人の珍説を紹介しています。
「日本経済が長期低迷から脱却できないのは、経済政策が間違っていたからである。 超低金利、財政赤字拡大、円安の三大失敗だ。」
だったら円高、高金利、緊縮で経済成長した時期があったのでしょうか?
直近ではリーマンショック時がそれにあたりますが、この時経済成長していましたか?
さすがにまともな経済学者なら、円高・高金利・緊縮で経済が成長するとは言ってくれないのでしょう。 だから一人で研究所をやっているヘンなオジサンを引っ張り出してきたんじゃないですか?
新聞とテレビは政府から様々な特権を授けられています。
そして実際にこれを与えてくれるのは閣僚や与党政治家ではなく官僚です。
さらに政治家は選挙で変わりますが、官僚は個人でも大学を卒業してから、定年までずうっと残る上、「省」「庁」としての組織は更に安定しています。
だから新聞とテレビは自分達の特権を維持る為には、彼等は官僚に従い、官僚の要求に応じてそのプロパガンダに協力します。
国民がこういうテレビと新聞を元に、政治を評価してしまうと、結局全てが官僚とそれと結託した利権集団の為の政治が続く事になります。
ワタシは日本の経済が成長しなかった最大の原因は、こうした新聞とテレビの情報統制により、官僚支配の利権政治が続いたからだと思っています。
日本の経済成長が低迷し続けたのは政治が間違っていたというのは事実ですが、これは金融と財政を司る財務省が、新聞とテレビを使って、緊縮政策のプロパガンダを続けてきたからです。
安倍総理が奇跡的にこれを打破したのですが、しかし緊縮財政を続けたい財務省は、また新聞とテレビを使って緊縮財政に戻したいのです。
ところがそれに同調しているのが岸田総理です。
最低です。