今回のハマスのイスラエルテロ攻撃に対して、岸田首相はイスラエル・パレスチナ双方に自制を呼びかけました。
さらにイスラエルのネタニヤフ首相とパレスチナ自治政府のアッバス議長と個別の電話会談を予定しています。
2023年10月11日 産経新聞
岸田文雄首相は10日、イスラエルのネタニヤフ首相、パレスチナ自治政府のアッバス議長と近く個別に電話会談を行う方向で調整に入った。政府関係者が明らかにした。イスラエル軍とパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスが大規模な戦闘状態に陥っていることを踏まえ、イスラエルとアラブ諸国の双方とも良好な関係を持つ日本の立ち位置を生かし、停戦を呼びかける。
双方に自制を呼びかけるとしてイスラエルのネタニヤフ首相に電話するのはわかります。
しかしパレスチナ自治政府のアッバス議長に電話する意味がわかりません。
今回のテロを行ったのはハマスです。
パレスチナ自治政府は名目上は、国際的に認められたパレスチナの代表ではあります。 しかし現在のパレスチナ自治政府には、政府機関としてハマスをコントロールする能力はありません。
パレスチナ自治区は以イスラエルの両側、ガザ地区とヨルダン川西岸に分かれています。
現在、パレスチナ自治政府が支配しているのは、ヨルダン川西岸だけです。
地中海川のガザ地区は2007年からハマスが実行支配しています。
ハマスは2006年に武装蜂起して、ガザ地区にあったパレスチナ自治政府の大統領府や警察保安本部などを追い出して、ガザ地区を実行支配したのです。 以降、ガザ地区ではハマスの実効支配が続いています。
アッバス議長のパレスチナ自治政府には、ハマスを追い出してガザ地区を取り戻す力はありません。
今回のテロはそのハマスが、ガザ地区からイスラエルを攻撃したのです。
だからこの件で岸田首相がアッバス議長に電話をすると言うのは、北朝鮮のテロや軍事行動について、韓国の大統領に電話するような話です。
アッバス議長とすればそんな電話をされても「知らんがな」です。
因みにハマスは元々エジプトにあったイスラム過激派組織イスラム同胞団から生まれたテロ組織です。
イスラム同胞団にはエジプト政府も散々手を焼いてきたので、そのテロ組織がガザ地区を武力で占拠したと言う事は、エジプトにとっても極めて危険な話です。
そこでハマスがガザ地区を武装占拠すると、エジプト政府はイスラエルと共に、ガザ地区からの出入国管理を徹底的に厳格化しました。
ガザ地区は世界有数の人口密集地域ですが、地区内には工場も農園もないので、住民の多くはエジプトやイスラエルに働きに出ていました。
しかしこの国境管理の厳格化でこれが非常に難しくなりました。 その為、ガザ地区の失業者が激増し、住民は貧困化しました。
けれども考えてみればテロリストの支配域を封鎖するのは、当然でしょう?
例えばオウム真理教が、上九一色村を占拠したら、警察はとりあえず封鎖しますよね。
一方、ハマスはこの状況を利用して、輸入品に高率の関税をかけています。 人口過密地域であるガザ地区では、食料始め日用雑貨の殆んどをエジプトやイスラエルから輸入していました。
これに高率の関税をかけたのだから、ハマスの懐は大いに潤いましたが、一般ガザ地区住民の窮乏化は更に深刻化しました。
これがハマスの支配です。
パレスチナ自治政権は、ヨルダン川西岸地区の支配権は維持しているのですが、しかしガザ地区からハマスを追い出す事はできないのです。
そしてハマスはガザ地区から始終、ミサイルやロケット砲をイスラエルに打ち込んでいました。 そして主に民間人を殺傷してきました。
今回のテロも規模や犠牲者の数は、これまでのテロとけた違いですが、犠牲者が民間人であるのは同じです。
こういう状況を考えると岸田首相の声明や、アッバス議長への電話と言うのは余りと言えば余りにずれていて意味わかりません。
岸田首相はハマスがエジプト由来のテロ組織であり、パレスチナ自治政府から見れば、ガザ地区を不法占拠し続けていると言う事を知らないのでしょうか?
実はワタシも今までハマスとパレスチナの関係をよく知りませんでした。
ワタシは実は「遠い国、遥かな国」の事を読むのが好きで、中東関係の本もそこそこ読んだし、テレビを捨てるまではニュースもよく見たのですが、しかしハマスとパレスチナの関係は今一わかりませんでした。
ハマスがガザ地区に依拠して、時々ガザ地区からイスラエル領にミサイルやロケット砲を撃ち込む事はしっていました。 でもそれはハマスのメンバーの多くがガザ地区の住民で、それでハマスの存在がガザ地区全体で許容されている、ハマスがガザ地区の意志を代表しているのだと思っていたのです。
しかし現在のこのテロに関する日本の報道、更に岸田総理の声明などを見ていると、そう思うしかないのです。
だって日本の報道、特に中東専門家と称する人達の意見を見ていると、ハマス=パレスチナで、ハマスとパレスチナ自治政府が敵対関係にある事など全くわかりません。
例えば、日本の中東専門家として有名な高橋和夫の解説など典型です。
この人は昔々からずうっと中東問題の解説では必ず出てくる人気中東解説者なのですがイスラエル建国から始まり、パレスチナ人が土地を奪われた、カワイソウ、イスラエルが悪い!!、だから今回のテロが起きた、で終わります。
この話を聞くとハマス=パレスチナ人、だったら今回のテロについては、パレスチナ自治政府代表のアッバス議長と話せは何とかなるよね?と思ってしまいます。
だからこういう解説を聞いていれば、岸田総理の対応も「穏健で中立的で良い対応」と思ってしまいます。
しかしハマスはガザ地区を不法占拠しているテロ組織で、パレスチナ自治政府にはこれを駆逐するだけの力がないと言う事を知ったうえで岸田総理の発言を聞くと「????」「な、なに考えてるの?」としか言えません。
マジに岸田首相は何を考えているのでしょうか?
アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・イタリアは明確にイスラエルの自衛権の行使を支持しています。
だってハマスはテロ組織なのです。 パレスチナ自治政府から見ても、唯の無法物なのです。
無法者がテロを起こしたのだから、処罰するしかないでしょう?
ところが岸田首相の声明では、ハマスはパレスチナ人の意志を代表しており、パレスチナ自治政府のコントロール下にある事を前提にしているとしか思えないのです。
つまり岸田総理の認識は上の動画の高橋和夫の認識に沿っているとしか思えないのです。
岸田総理はこの高橋和夫等の話を信じているのでしょうか?
イヤイヤ、それはあり得ない。
一般国民ならテレビや新聞に溢れる「パレスチナカワイソウ、イスラエル悪い。 ハマス=パレスチナ」を信じるのは仕方ありません。(ワタシも長く信じていました。)7
しかし岸田総理の声明や、アッバス議長やネタニヤフ首相との電話会談は、外務省が用意するのです。 外務省の中東専門家が「パレスチナカワイソウ、イスラエル悪い。 ハマス=パレスチナ」を信じていると言う事はあり得ないでしょう?
外務省の専門家なら当然岸田首相の声明を出したり、電話会談をセットしたりする前に、アメリカ始め、日本の友好国の意志も確かめておくはずだからです。
と、すると岸田首相はハマスはテロ組織、アッバス議長はハマスに自国領を不法占拠されているけれどどうしようもないと言う事を知ったうえで、アッバス議長と電話会談する気なのでしょうか?
何のために?
これについて飯山陽博士は「国内向けかも?」と言っています。
実際国内では、テロリスト大好きな人達が、これを結構評価しているのです。
しかし岸田首相が国内向けにこれをやったのなら、日本の面汚しも良い事です。
そもそも日本の外交能力を致命的に疑われます。
だって幾ら国内でオカシナプロパガンダが横溢しているからって、それをそのまま外交の場に出してしまっては、日本は馬鹿できちんとした国際情勢を見る能力のない国と思われてしまいます。
超優秀な解決法としては、パレスチナ自治政府に日本が軍事支援して、ガザ地区のハマスを殲滅し、ガザ地区の支配権をパレスチナ自治政府に戻すと言うのもあります。
でも勿論これは殆ど不可能です。
岸田首相は一体何を考えているのでしょうか?