新聞とテレビはこのところ「悪い円安」を煽っていたのですが、今度は物価高の原因を「悪い円安」の責任、そしてその原因は日銀の金融緩和政策の責任にして、黒田日銀総裁のバッシングを扇動し始めたのです。
しかし事実を言えばそもそも現在、日本のインフレ率は2%に過ぎません。
IMFが予想する2022年度の世界的なインフレ率は7.4%、アメリカは8%です。
円安で輸入品の価格が上がるのは日本だけなのにヘンですね?
世界的に物価が上昇しているのは、一つはコロナの影響です。
欧米ではコロナ禍が事実上終わって消費が異常なほど増えたのに、中国のロックダウンは続いていて、未だに生産も流通も回復していません。
またロシアのウクライナ侵略戦争でエネルギー価格が急騰しました。
エネルギー価格も欧米のコロナ禍が終わる頃から上がり続けていたのですが、これにロシアのウクライナ侵略戦争が拍車を駆けました。
それで世界的なインフレが懸念されているのです。
そして日本の場合、天候不順で野菜の値段が高騰しています。 特に最近は玉葱の値上がりが酷くてワタシも閉口しています。
これは最大の産地北海道が去年不作で、しかも他の産地の作柄もよくないので、爆上げしていまいました。
そしてそれ以外の食料品や飲食店の値上げも増えてきました。
食料やガソリンなどは誰でも始終買うので、誰でもすぐに値上がりが気になるので「物価が上がった~~~!!」と言う感覚になるのですが、しかし前記のように日本の物価上昇率は2%過ぎないのです。
2%と言うのは、元来日銀が政策目標としてきたインフレターゲットです。
日銀は第一次安倍政権発足直後から2%のインフレターゲットを目標に、長々と金融緩和を続けてきたのですが、漸くその目標値に達したのです。
しかし実はこれ不十分なのです。
なぜなら日本の場合、物価上昇の主因が食料とエネルギー価格の上昇ですが、前記のようにこれは天候とかロシアのウクライナ侵略戦争とか、日本の経済活動に関係のない事での価格上昇なのです。
本来なら食料価格やエネルギー価格はこのように国内の経済活動より、天候とか海外情勢とか変動するので、金融政策はこういうモノを外した物価指数コアコアCPIで論じるべきなのです。
で、そのコアコアCPIは0.8%しか上昇していません。
これだと日銀総裁としては、まだまだ金融緩和を止めてはいけないとしか思えなでしょう。
そして玉葱とかガソリンの値段について文句を言われても困るとしか言いようがありません。
因みにこのレベルの話をすれば、今後カツオの値段の暴落が予想されています。 千葉で今カツオが途方もない豊漁なのです。 4月の35倍も取れてしまったのです。 しかも大型で脂がのって凄く美味しいというのです。
しかしそのため、5月の値段が半分になってしまいました。
大変だ~!!
大デフレだ!!
日銀はもっと金融緩和しなくちゃ!!
つまり本来の日銀の仕事、金融政策についていえば、黒田総裁のやっている事には、何の問題もないのです。 ところが新聞とテレビはひたすら「悪い円安」で黒田総裁を叩き、更に「物価高」で黒田総裁を叩こうとしてます。
物価上昇率が2%、コアコアCPIが0.8%で物価高と言うのも異常なのですが、玉葱とガソリンで叩くのです。
勿論、エネルギー価格が上がるのは困ります。
ガソリンも灯油も、そして石油や天然ガスを使った火力発電の電気代も、全部上がるので、国民も企業もみんな困るのです。
でもこれは日銀がどうにかできる事ではありません。
むしろ叩くべきは政府でしょう?
電気代を下げるには、まずは原発の稼働を急ぐべきです。 これは価格に関係なく一刻も早くやるべきです。 だって夏に首都圏でブラックアウトなんてことになると3桁の人が死にます。
またガソリン税を減税し、灯油やガスについては、石油元売りに補助金を出せばよいでしょう。
太陽光発電の電力買取価格をほぼゼロまで下げるのもよい方法です。
野菜の値段はどうにもなりませんが、とりあえず食料品の消費税をゼロにするなどの方法があります。
またロシアのウクライナ侵略戦争で小麦価格が上がっていますが、日本の場合、国内での小麦価格は政府が統制しています。 だから輸入価格の上昇分は政府が負担して、売渡価格を据え置きにすればよいのです。
これらは日銀には絶対にできないけれど、政府の決断でできます。
そしてこれを全部やれば、エネルギー価格の上昇分と食料価格の上昇分はほぼ完全に相殺できるのではないでしょうか?
ところが大変奇妙な事に、新聞とテレビはできる事をしないで物価高を放置する政府・岸田首相は非難せずに、なぜか全く責任のない日銀総裁をバッシングしています。
そしてこれに扇動されて黒田総裁をバッシングしている人達も結構います。
何で新聞とテレビは黒田総裁をバッシングするのでしょうか?
これはワタシの推測ですが、まず黒田総裁はバッシングしやすい人間と看做されたのだと思います。
だって日銀総裁は首相や財務大臣と比べて新聞やテレビに出る事は少ないです。 その為、一般国民向けに「配慮した発言」をすることにも慣れていません。 マスコミへの露出も少ない分、バッシングを受ける事もなく、バッシングされる事にも慣れていません。
だから新聞とテレビが一斉に叩き、ボコボコにバッシングされたら、精神的にダウンする可能性も高いです。
新聞とテレビは事実上財務省の広報機関なのですが、財務省は今も何とかアベノミックスを全否定して、緊縮増税路線を復活したいと望んでいます。
そこで新聞とテレビはひたすら「アベノミックスは失敗した」とプロパガンダしています。
その一つが「給料が上がらない!!」だったわけですが、この円安を機会に「悪い円安」を煽って金融緩和を止めさせたいのです。
その為には黒田総裁をバッシングして、2023年4月に黒田総裁の任期が切れたら、超緊縮派の人間を日銀総裁にしたいのではないでしょうか?
しかし恐ろし話です。
アメリカ始め欧米諸国が日本を遥かに上回るインフレなのに、日本のインフレ率が低いのは、日本の消費が全然増えていないからです。
日本もコロナによる行動制限は緩和し始めたのですが、それでもまだみんなマスクをしていて、コロナが終わったさあ遊ぼうなんて気分ではありません。
日本は欧米に比べたら死者は二桁少ない状態で済み、ロックダウンのような過酷な行動制限もなく、失業者もほとんど増えませんでした。
だから欧米式のリベンジ消費もその分少なくなるのは仕方ないでしょうが、しかしその分いつまで経ってもコロナへの用心を止められず、消費も増えないのです。
それで経済もコロナを引き摺り続けているのです。
から生産力と消費量の差、つまりGDPギャップは30兆円分もあるのです。しかも政府はその分を穴埋めするような補正予算を組む気はありません。
こんな状態で日銀が金融緩和を止めたらどうなるのでしょうか?
リーマンショックの後の3年間の超円高を思い出してください。
あの時のどれだけ多く人が職を失い露頭に迷ったか?
しかしそれでもひたすら黒田総裁をバッシングして、金融緩和を止めさせたいのが新聞とテレビ、そしてそれを操る財務省なのです。