この件で、中国は軍事情報偵察用の気球を世界中に飛ばしていた事が、わかってきました。
日本や南米でも正体不明の気球が飛んできて、対応を決めかねている間に領空から消えてしまうと言う事が、過去にも何度かあったようです。 アメリカに同様の気球が飛んできた事も、今回が初めてではなく、その時はアメリカも撃墜はしなかったようです。
何でこれまで撃墜しなかったははわかりません。
尤もアメリカは今回の撃墜にはF22から空対空ミサイルを発射しています。
この気球は非常に大きいし(バス三台分の大きさ)速度も遅いのだから、簡単に落とせそうな物なのですが、しかし一般の航空機が飛行するよりはるかに高い所を飛んでいたので、この高度に近づいて活動できる戦闘機は実はF22ぐらいだし、また超高速で飛行する戦闘機から、低速の気球を狙うのは実は非常に難しい為、機銃での撃墜も難しく空対空ミサイルを使ったと言われます。
こうなるとF22のような戦闘機を持たない国では、これを撃墜するのも容易ではないと言う事情もあるのあるかもしれません。
それにしても中国の対応には呆れます。
これほどあからさまな領空侵犯をしておきながら、アメリカを非難しています。
「盗人猛々しい」と言うのは中国の為にある言葉ではないでしょうか?
そしてこの盗人の余りの猛々しさに、アメリカも含めて、多くの国が何となく中国に遠慮をしているようにさへ思えます。
ところでワタシがこの件で思い出したのが、2016年のリムパックです。
アメリカ海軍は毎年、ハワイ周辺で、同盟国や友好国の海軍を招待して、リムパック(環太平洋合同軍事演習)を開催しています。
特に2010年からは、東南アジア諸国やNATO諸国も参加して、世界最大の海軍演習になっています。
そして2016年、アメリカはここに中国を招待したのです。
中国はこの招待に応じたのですが、しかし何と情報収集艦を連れてきて、演習をやっている傍で露骨に米軍始め他国艦艇の情報収集を始めました。
またこれ以外にも完全なマナー違反を行いました。
リムパック期間中は、参加各国の艦艇が、他国の乗員を招待してパーティーを繰り返すのが慣例でした。
ところが中国艦は自分の主催したパーティーには、日本を招きませんでした。
これで結局アメリカは次のリムパックから中国を招待するのを止めてしまいました。
なるほど2016年のリムパックには、米海軍始め参加国が最新鋭艦を参加させていたのですから、中国にすれば欲しい情報が一杯、宝の山に入り込んだ気分だったのでしょう。
しかし友好の為に招かれた演習に、情報収集艦を連れてきて露骨な情報収集をやると言う言う神経が理解不能です。
これって他家のパーティに招かれて、その家の主人夫婦の寝室に入り込み、クローゼットを調べるみたいな話でしょう? しかもこれを主人が見ている前で堂々とやっているのです。
更に中国艦主催のパーティに日本を招待しないと言うのは、リムパックの主催者であるアメリカを侮辱しているの同じです。
だからもうアメリカももう二度と中国を招待しない事にしたのです。
ところが中国は次のリムパックには、演習海域に情報収集艦を送り込んでいます。
こうなるともう腰が抜けるほどの図々しさと言うか、この国には普通の国家間、人間間で通用するマナーとかルールのような物が、一切通用しないとしか思えないです。
日本人は、中国は少なくとも儒教式の「礼」は重視すると言うイメージを持っているのですが、しかしこれはどうも日本人が高校漢文で習ってイメージしている儒教の倫理道徳とは全く別物でとしか思えません。
そして敢えてこれを中国古典で理解しようとするなら、中国は実は今も唐代・漢代そのままの華夷秩序そのままに世界を認識しており、中国が中心で世界が回るべきであり、中国が国際社会のルールを守ると言う発想は全くないのだ思わざるを得ません。
しかし現実にはアメリカのような中国よりはるかに強大な国が存在するのですが、中国にすればこの夷敵が自分よりも強大である事は、全く不当で理不尽なので、夷敵相手には何をしてもよいと言う発想で行動しているとしか思えないのです。
そして中国の華夷秩序では、日本は韓国やベトナム同様中国に臣従している「はず」なのです。 そんなの邪馬台国の時代で終わったんですけどね。
大変厄介な事に、中国は経済力をつけて、その経済力で軍事力をつけると、益々古代の妄想に嵌り続けています。
だったら日本としては、何とかこの狂人に余計な刺激はしない。 でも狂人が暴力を振るい出した時に対応できるようにしておくしかないのです。
オマケ
この件で以前のエントリーを思い出しました。
日本で「礼」と言うと、どんな人に対してもお互いに尊重しあう事を態度で表すと言うイメージですが、しかし儒教の礼と言うのは違うのです。
儒教では対等とか平等な関係と言うのはなく、人間関係は全て上下関係があるのです。
そしてその上下関係をきちんと守られた社会と言うのが儒教の理想社会です。
だからその儒教の礼と言うのは、上下関係に序列をきちんと守る為の物です。 その為、下位の相手には下位の相手として扱うのが「礼」に敵うのです。
そして中国は勝手に自分を世界の最上位、日本を自分の下位に位置付けているので、日本に対しては対等に扱う気がありません。
そういう感覚は幾ら言っても変わらないでしょうから、中国がそれでふんぞり返っているだけなら、こちらもその心算で対応すればよいだけです。
しかし唯ふんぞり返っているだけでは済まず、武力でこちらを従えようとしたら、こちらもその心算で対応するしかないのです。
中国を相手にするときには、常にその覚悟が必要なのです。