2018-02-06 13:30

日本の科学技術衰退について、駅弁大学卒業生の考察

 この数年、日本の科学論文が減少していると言うニュースが出て非常に気になっていました。

 日本の科学論文6%減少 国別2位から4位に転落 大学の研究費確保難しく 中国は4倍に

 一体何でこんな事に?
 ワタシもこれ凄く気になっていました。

 でも昨日これが原因じゃないかと思える記事が出ました。

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 没落する地方国立大の何とも悲惨な台所事情

 国立大学の研究費が激減し、理工系で研究費が年間50万なんて教授が普通になったと言うのです。

 それは2004年、小泉政権下での国立大学の独立行政法人化が原因です。

 多くの国立大教員は2004年の国立大学の独立行政法人化が転機になったと話す。国は、国立大学へ定期配分する基盤的予算(運営費交付金)を年々削減し、研究資金は公募・審査を通じた競争的資金で取ってくる形に変わった。しかも、その競争的資金の配分は、しばしば最新機器があって人数の多い大規模研究室や、学会の有力者がいる研究室に有利となるバイアスがある。結果として、研究資金は東大・京大など一握りのトップ大学に過度に集中する形となった。
 
 つまりこれで大学教授達は、研究費争奪の競争を強いられるようになったのです。

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 優勝劣敗の競争原理も、元々潤沢な予算があり、全ての大学に一定の研究費が配分された上で、優秀な大学が更に
研究費を増やすと言う状況なら良いと思います。

 しかし最初からそれ程潤沢とも言えない予算を、競争で取り合い、それが一部の大学に集中し、他は飢餓状態では論文の数は減って当然でしょう。
 
 なぜなら超一流大学と雖も、研究員の数には限りがあります。
 そして研究費を二倍にすれば二倍の論文が書ける物ではありません。

 一方研究費を50万なんてことにされた方は、全く論文なんか書くどころじゃなくなります。

 そして唯論文を出すだけで、予算を得られるわけではないから、「自分はいかに沢山の論文を書いたか」と言う事を、事務作業が加わります。

 だから研究費を削られなかった大学でも、教授達はやたらに多忙になり、研究の時間を削られるのです。

 これでは論文が減るのは道理です。

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 そしてこの競争原理では、小規模な地方の国立大学は絶対的な不利ですから、ドンドン研究費を削られて、研究そのモノが不可能になってしまったのでしょう。

 因みにこの記事について、2チャンにスレが立っていました。
 そこに「駅弁大学なんか研究しなくて良い」「駅弁大学は潰せ」などと言うカキコが沢山出ていました。

 実はワタシの大学は駅弁の中でも最低ランクでしかたら、是非潰したいと言う人達が沢山いるのだと思います。
 
 しかしワタシが駅弁大学の学部学生として卒論を書いていた時の経験から言うと、駅弁大学の研究だって基礎科学を支えているのです。

 また地域の地場産業の技術を支えているのも地方の国立大学です。

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 ワタシが卒論の時に所属した研究室の教授は、ノーベル化学賞を受賞した鈴木教授の弟子筋でした。 そして鈴木教授と同様に有機ホウ素化合物の研究をしていました。

 勿論ワタシの教授は鈴木教授とは比べものにはなりません。
 しかし有機ホウ素化合物について、多数の研究者がいろいろな立場から研究し、データを集めて行くうちに、鈴木教授の研究も生まれたのです。

 だから同じテーマで研究する人達は、能力のレベルに関係なく、常に連絡を取り合って、協力しあっていたのです。

 ノーベル賞の授賞者達は授賞式に出席した後、ノーベル賞チョコレートをお土産に買うのだそうです。

 だからワタシの大学の教授も鈴木教授からこのチョコレートを貰ったと思います。

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 科学の研究と言うのは、ピラミッドみたいなモノで、広い裾があって初めて高いピラミッドが立つのです。

 北海道の場合は、北大で博士課程を卒業した人達が、道内の駅弁大学で職を得て研究を続ける事が出来る体制でした。

 そうやって研究の裾野を広げていたのです。
 
 ワタシの大学はその裾の方だったのですが、その裾を狭めてしまえば、ピラミッドが低くなるのは当然でしょう?

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 そもそも北大だって偏差値から言えば、東大や京大、そして首都圏の高偏差値大学から言えば「駅弁」なのです。

 さらに思い返せば近年のノーベル賞受賞者のかなりの人が、長崎大学など地方の駅弁大学卒なのです。

 地方の駅弁大学の修士課程を卒業し、企業やアメリカの大学に行き、そこでノーベル賞受賞理由となった研究をしています。

 でもこの受賞者達の基礎教育を行ったのは、地方の駅弁大学です。

 しかし地方の大学で研究できなくなれば、こういう人達が生まれる事もなくなります。

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 現在の日本の受験体制では、数学から英語や古典文学や歴史まで、オールマイティに好成績を取れないと東大などの超一流大学には入れません。

 その上一定の受験技術のような物まで必要になります。

 けれども科学者になるような人は、必ずしもこうしたオールマイティ型とは限りません。

 地方の国立大学はこうした人達にとっては、敗者復活戦となるチャンスなのですが、その敗者復活戦がなくなります。

 もうこれではピラミッドの裾がドンドンボロボロになって崩壊していくのは当然ではありませんか?

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 実際、2004年に大学を独離行政法人化して以降、日本だけがドンドン研究論文が減っていると言う結果を見れば、この改革が失敗だったと考えるしかないではありまえんか?

 2004年以降、研究予算全体は格別減らしていません。

 大学進学率も大学院進学率も減っていません。

 そして世界中の先進国はこの10年余の間に、皆2割がた論文を増やしています。
 それなのに日本だけが1割弱も論文を減らしたのです。

 この間に日本の大学で何が変わったのか?
 
 大学の独立行政法人化とそれによる研究費配分法の改革です。 
 その後、論文が激減したのです。

 これは科学的に考えたら、この大学の独立行政法人化と研究費配分法が原因としか考えられません。

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 しかし地方の駅弁代大学の研究活動が不可能になる事については、更なる問題があります。

 地方の国立大学は近隣の企業から技術的な問題でイロイロな相談を受けていました。

 ワタシの大学は凄いド田舎にあったので、周りに工場は少なかったのですが、しかしそういう工場の技術者たちが始終大学に出入りしていました。

 地方の中小企業が本格的な研究室など持てないのは自明ですから、こうした地元大学のサポートは非常に重要だったでしょう。

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 また地域の環境調査も駅弁大学に依頼されていました。

 例えば水俣病の原因を突き止めたのも地元の熊本大学の長期の研究と調査です。

 これは実は非常に画期的な仕事で、この研究で初めて極微量の有毒物質でも、長期間にわたって蓄積すると人体に深刻な影響を与える事が初めてわかったのです。

 幾ら東大や京大が優秀でも、その優秀な人達が、北海道の東の果てや、九州の問題解決の為の研究を何十年も、地道に続けてくれる事を期待できますか?

 またワタシの叔父は岡山で果樹農家をしていたのですが、岡山大学の農学部の教授達と相談して常に新品種を導入していました。

 こういう対応は地元にとっては大変重要ですが、しかしこんな事をいくらしても研究成果とは認められません。

 だから研究費を増やす役には立たないでしょう。

 しかしこれで地方大学の水準が下がれば、このように地元をサポートする事も出来なくなってくるでしょう。

 これは地方の産業にとっても深刻な問題です。

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 ワタシは資本主義は支持します。
 しかし競争原理だけで全てが成功するとも思っていません。

 そもそも科学の発展には、資本主義的競争原理とは程遠い所で発展してきたのです。

 ガリレオはパドヴァ大学の数学の教授でしたが、当時数学の教授の給与は、法学部の教授10分の1だったのです。

 5次方程式の根の公式、二項定理の証明法などを一生求め続けた数学者は何人もいます。 一生研究をして結果をだせないまま死んだ人が何人も出た後で、天才が現れ5次方程式には根の公式は存在しない、二項定理の証明は不可能と証明したのです。

 しかしこれらの天才達も、一生を棒に振った人達の屍を乗り越える事で、成果を得たのです。

 こういう世界に短絡的な集中と選択の競争原理を持ち込むのは、根元的に間違っているのではないでしょうか?

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 元々日本の国立大学の教授や研究員の給与など至って倹しい物でした。

 ワタシの卒論の教授はコンパで自分の給与は、自分と同年配の息子の小学校教師より少ないとこぼしていました。 大学院を出ているので、同じ年齢でも小学校教師より勤続年数がかなり短くなるのです。
 
 ところが基本給は大学教授でも小学校の教諭でも、そう変わりません。 だから勤続年数の短い分教授の給与は安くなるのです。

 それでも教授は、早朝から深夜まで、自分の研究と学部学生の卒論指導、それに講義をこなしていました。
 そして地元企業から相談事を持ち込まれたら、それにも対応するのです。

 学歴を考えたら実に割の悪い職業なのです。

 にも拘らず科学の研究を志しているから、大学で働くのです。

 それを考えたら、彼等の仕事をこんな短絡的な経済的優勝劣敗主義だけで評価できるものでない事は明らかでしょう?

 こんな事をしていたら、日本の科学技術は崩壊してしまいます。

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オマケ あるファラオの話

 昔々、エジプトのあるファラオがこれまでと同じ人件費で、より高いピラミッドを作る為、労働者への報酬の支払い法を変える事にしました。

 これまでは全ての労働者に同じだけの給料を払っていたのですが、これからはより高い所に石を積む技術を持った優秀な労働者にはより高い給料を、基壇の下の部分にしか石を積めない低い技術しか持たない労働者には、より安い給料を出す事に変えたのです。

 総人件費は同じですから、当然低い技術の労働者の賃金は下がり、その分を高い技術を持つ技術者の賃金が増える事になりました。

 これなら全ての労働者がより高い技術を得る為に頑張り、より高いピラミッドを作れるはずでした。

 しかしピラミッドの建設はドンドン遅くなり、やがて全く進まなくなりました。

 なぜなら元々労働者達が受け取っていた給料は、彼等が健康を維持し、元気に働き続ける事ができるギリギリの給料でした。

 低い技術しか持たない労働者達は、その給料を減らされたので満足に食べる事もできなくなり、これまでのように元気に働く事ができなくなったのです。

 そしてこのままでは生きていないからと、この仕事を辞める人も出てきました。

 勿論、高い技術を持った労働者達は給料が増えて喜びました。 そしてより高い技術を身に着けようと頑張りました。
 
 しかしピラミッドの基壇を作るのは多数の労働者が必要なのです。 その労働者の相当数が満足に働く体力を喪い、或いは仕事を辞めてしまっては、基壇作りは進みません。

 そして基壇が作れなければ高い所に石を積む技術があってもどうしようもないのです。

 こうしてファラオのピラミッド建設は頓挫しました。

  1. 個人的体験から
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2017-12-13 12:14

難病連のバザーの思い出

 今朝起きてネットをしていたら、難病の話がでていました。
 それで昔難病連のバザーを手伝った時のことを思い出しました。

 ワタシの持病の診断がつき、特定疾患であることがわかって間もない頃のことですから、30年近く前の話です。

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 その頃、北海道難病連は毎年春先に大規模なバザーをやっていました。

 難病連の建物全部を会場にして、会場一杯に商品が並ぶのですが、これは皆バザーの為に寄付された品物でした。

 大変なのはこのバザーの為に寄付された品物を、整理して値段をつけて陳列する作業です。 バザーは一日で終わるのですが、これは数日かかりました。

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 ワタシはこの作業を手伝うボランティアを志願しました。 するとバザー前日に、陶磁器類の整理と陳列に回されました。

 そこでワタシ他数名で、寄付された陶磁器類を箱から出しては、値段をつけて綺麗に並べると言う作業をしました。 小学校の教室程もある部屋一杯にこういう陶磁器が並ぶのですから、これも結構大変な作業でした。

 しかし箱を開けては中身を見ると言う作業は、何やら宝探しでもしているようで結構楽しかったです。

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 そうやって皆で楽しく作業をしていると、突然一人が歓声を上げました。

 「わ~綺麗!!」

 出てきたのは素晴らしく綺麗な花瓶でした。

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 ノリタケのボンチャイナで、美しい花柄が描かれており、花瓶として随分な大型です。
 
 こんなモノをバザーに出しちゃう人がいるのですね。 根が俗物のワタシはこれが幾らするのか直ぐに考えてしまいました。

 しかし他の人達は唯花瓶の美しさに感動していていました。

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 そして一人が言ったのです。

 「これ買ってお仏壇に飾ったら娘たちが喜ぶだろうなあ。」

 お仏壇??

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 聞いてみると、この人は娘さんが二人いたのですが、二人とも筋ジストロフィーで亡くなったそうです。
 
 それで生前難病連の世話なったので、その恩返しの心算で、難病連のボランティアをいろいろしているのだそうです。

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 翌日、バザーが開始になり、ワタシは好奇心方々見に行きました。 
 会場は大変な人出でしたが、運よくこの人に会う事ができました。

 彼女は例の花瓶を「買えた」と言って喜んでいました。

 娘さん達もきっと喜んでいるでしょう。 

 この花瓶を寄付して下さった人も、この事を知ったら喜んで下さると思います。


  1. 個人的体験から
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2017-01-30 15:25

大入り超満員 桜井誠講演会 札幌

 昨日は午後から桜井誠の講演会に行きました。

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 都心にでるのは何か月ぶりだろうか・・・・・・。
 余りに長く山奥に引っ込んでいたので、地下鉄を降りた時からオロオロしてしまい、完全なお上りさん状態です。

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 それでも開演時間より30分以上前には、道庁に着きました。
講演会場は道庁の直ぐ裏手なので、少し写真など撮って時間を潰します。
 後でこれが大失敗だとわかるのですが・・・・・。

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 この日は暖かく、道路の雪がかなり融けていました。
 
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 道庁の前は中国人の観光客で一杯でした。 あの腹の底から絞り出すような声で、はしゃぎまわっています。

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 ひとしきり写真を撮ったので、ゆるゆると会場へ行きます。

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 しかしなんか雰囲気が違う・・・・・。
 この数年この会場で在特会関連の集会や講演会がある場合は、このあたりから道警の警察官の姿が見えるはずです。

 講演会の妨害にくる暴力集団を抑止するために道警の警察官が配備されているのです。
 特に桜井誠が来るような場合は、暴力集団が多数出現して大騒動になっていました。

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 ところが今回は一人もいない。
 警察官も暴力集団も一人もいない。
 一人も見ないまま、会場についてしまいました。

 やっぱり桜井誠が東京都知事選に出て、更に政党を設立しようとしているのが効いたのでしょう。

 これは良かった!!
 そう思って会場の部屋について愕然としました。

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 大入り超満員!!
 
 45席の狭い部屋は完全に満杯になり、後ろにまでビッシリ人が溢れています。
 
 こ、こんな事だとわかっていれば、道庁で写真なんか撮って時間を潰すんじゃなかった!!
 一体どこからこんなに湧いてきたんだよ!!

 殆ど全部、見た事のない人ばかりです。 
 これまでのデモや集会では、来る人は大凡決まっていて、大体皆顔見知りだったのに・・・・・・。

 余りの大入りに、主催者始め身内10人余りは部屋の外に出ていました。
 ワタシも入る場所がないので、講演の第一部桜井誠の独演の間中、部屋の外にいました。
 幸いスマホを貸してくれた方がいらしたので、部屋の外からスマホで桜井誠の講演を聞きました。 有難う御座います。

 内容は桜井誠が日頃動画やブログで言っている事をまとめた話でした。

 しかしなあ・・・・・こんなに人が来るなんて・・・・・。

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 10分の休憩をはさんで第二部が始まりました。
 第二部は桜井誠への質問その他と言う事なので、ワタシも無理矢理部屋へ入ります。

 図々しいオバサン根性を丸出しにして、場所を確保して、床に座り込みます。

 最初に日本第一等副党首高橋阿矢花さんの挨拶と講演がありました。

 高橋さんは札幌の方なので、ワタシも前々からデモや集会で何度もあっています。 
 非常に若くて美しくて、そして実に熱心に活動されていました。

 高橋さんは東京都知事選で桜井誠の選挙運動を手伝う心算だったのですが、東京に行ってみるとボランティアが大量に居て、する事がなかったそうです。

 ポスター貼りなどアッと言う間に終わったようです。

 実は自民党が創価学会始め怪しい宗教団体と手が切れないのは、選挙中のこうした雑用の人員をこれらの団体に頼らざるを得ないからだと言います。

 それを思うとこうした雑用を自前で一気にやる力のある政党と言うのはそれだけで、大変な力があるのです。

 それにしても高橋さん、演説が凄く上手くなりました。
 内容も話し方も素晴らしい!!
 しかも若く美しい!!

 いずれ日本版マリーヌ・ルペンになるかも?

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 高橋さんの講演の後は、党首桜井誠への質疑です。

 ワタシは図々しいオバチャン根性を丸出しにして、真っ先に質問させてもらいました。

 桜井誠は日韓合意を日本から破棄せよと言うのですが、ワタシは以前ブログに書いたように、あれは韓国から破棄させるための合意だと思っています。

 そこでその点を質問しました。

 もう一つ桜井誠は現行憲法も破棄を唱えています。 しかしこれもワタシは反対です。 石原慎太郎が同様の事を唱えた事がありましたが、しかしワタシはこれは現実的ではないと思うのです。

 桜井誠はワタシの事を「嫌な婆さん」と思ったに違いありません。 しかし丁寧に反論してくれました。
 ワタシはその反論に納得していません。 しかし対応は大変フェアです。

 桜井誠の意見はワタシも倫理的、感情的には全く同意なのです。
 しかし政党、政治家としてそれを政策目標にする場合には、それが実現可能か?と言う事が、倫理や感情以上に重要になります。

 その点、桜井誠と日本第一党の政策目標には疑念があるのです。

 だからワタシはまだ日本第一党には加盟していません。

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 それでは実現可能性がないから倫理的にも感情的にも当然の主張をする政党の存在意味はないのか?

 いいえ、そういう政党の存在もまた重要なのです。

 これは左側を見ればわかります。 成功した資本主義国家で共産党など全く存在意味はありませんでした。

 しかし彼等が執拗に自分達の政策を唱え振り回し続けた事で、日本の政治はその影響を受けませんでしたか?

 それどころか戦後70年余憲法改正もできず、拉致被害者の奪還できず、在日特権は拡大を続け、原発は止められて大変な経済的ダメージを受けて・・・・・。

 これは皆、左側で実現不可能な政策を唱える政党しか存在せず、現実の政治で問題が起き国会運営に支障が出れば、自民党はこれら左政党に妥協せざるを得ないと言う状況が続いてきたからでしょう。

 それを考えたら、実現可能性の有無に関わらず国家としてあるべき倫理、あるべき理想を唱える政党も絶対必要ではありませんか?
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 ワタシは民主主義国家の政治と言うのは、オーケストラだと思います。

 オーケストラと言うのは、沢山の楽器がそれぞれ違ったメロディを奏でているのです。
 そしてその個々のパートだけを聞いたら、どんな曲かもわからないのですが、しかし全体が揃うと見事な交響曲になるのです。
 
 ところが日本と言うオーケストラは、本来あるべき主旋律を奏でる楽器がありませんでした。

 これでは交響曲にならないのです。 延々と続く雑音の集合体にしかならないのです。

 だから日本第一党には主旋律を奏でるトランペットの役を期待します。

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 講演は無事に終わりました。

 会場を出ると札幌の街は日暮れの気配です。 大通公園では自衛隊員の皆様が雪像を作っていました。

 5時半から始まる懇親会まで何とか時間を潰さなくてはなりません。

 懇親会に出席して、桜井誠を捕まえて謝罪させよなければならないからです。

 桜井誠はワタシの質問には懇切に答えたのですが、なろうことかその時ワタシの事を「だからカアサンのそういう考えは・・・」などと言ったのです。

 カアサン??

 ワタシは桜井誠の母親じゃないよ!!
 タダ親しみを込めて言うなら「ネエサン」と言うべきでしょう?

 この男は常にこういう無礼で下品な言葉遣いをするから、パヨクに足を引っ張られて莫大な損害賠償請求をされたりするのです。

 今後、日本の主旋律を奏でる政党の党首になるからには、こういう言動は絶対にやめさせるべきではありませんか?

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2017-01-18 14:50

神戸のシャイロック 反ユダヤ主義雑感続編

 神戸のシャイロックについてのエントリーでは沢山の方からコメントを頂きました。

 特にご主人がユダヤ系アメリカ人であるカカシさんのコメントはユダヤ人が受けている誤解を丁寧に解いて下さった有難いモノでした。

 実際カカシさんがコメントに書いて下さったとおり、ユダヤ人は法も契約も守り真剣に商売をしてきたのです。 
 それでなくても迫害を受けている身で、違法行為や契約違反などやっていては、商売を続けることなどできなかったでしょう。

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 またパレスチナ問題について言えば、条約違反、協定違反を繰り返してきたのは実はアラブ側です。

 コイツラ、やっていることは今の韓国と同じで、イスラエルと条約や協定を締結して停戦しても、速攻で違反して攻勢を開始するのです。 そもそも最初からイスラエルとの協約や条約など守る気はないのです。

 イスラム教徒からすれば異教徒を相手の約束など守らなくても良いと言う感覚があるようです。 だから日本の商社なども、イスラム諸国相手での商売では随分煮え湯を飲まされてきました。
 
 しかしイスラエル軍は強く、いつも返り討ちに遭って、敢無く惨敗。 結果、アラブ側が停戦協定違反の攻撃を繰り返す度に、イスラエル占領地が増えてきたのです。

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 但しサイクス・ピコ条約やバルフォア宣言など、イスラエル建国に至る外交史も、またその後の際限のない協約締結と違反の繰り返しも大変複雑なので、殆どの外国人にはわけがわかりません。

 だから「ホロコーストの悲劇を宣伝するイスラエルが、パレスチナ人を徹底的に迫害する」と言うイメージが定着してしまうのです。

 そして「弱者の味方大好き」のリベラリストが、「パレスチナ人カワイソウ!!」論に飛びついて、イスラエルのイメージが凄く悪くなってしまうのです。

 本当にイスラエル政府が宣伝しなくてはならないのは、過去のホロコーストなんかではなく、建国後にアラブ諸国と締結した協定と、その違反が繰り返されたことではありませんか?

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 それにしてもユダヤ人はヨーロッパで迫害されてきたのでしょうか?

 一つは勿論宗教的な理由です。 近代以前、ヨーロッパでは宗教と言うのは、大変な力を持っていました。 そしてキリスト教は一神教ですから、他宗教に対して極めて攻撃的です。

 だからイスラム教徒相手に十字軍は繰り返しているし、同じキリスト教徒同士でも宗派争いで凄惨な迫害や戦争をやり続けました。
 
 これでユダヤ教徒にだけ寛大だったら、むしろその方が不思議です。

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 しかしもう一つの理由は、ユダヤ人の経済力でしょう。
 「神戸のシャイロック」のエントリーで名無しの権兵衛さんが、コメントで第一次大戦後のドイツのインフレ時の問題を書いて下さいました。

 ハイパーインフレ到来を見越したユダヤ人達は、貯金をアンティークコイン等に変えて資産を守り、後にドイツ人が二束三文で手放す嵌めになった株や不動産を買い取って、莫大な利益を上げたのです。
 
 これは違法でも不道徳でもありません。 「自分の資産を守りましょう」なんて今の日本の銀行や証券会社でも、盛大に宣伝しています。

 しかしこうした資産防衛の対応ができず、貧窮に追い込まれた人々からすれば、自分達が苦しむ中ぬくぬくと暮らす人間はそれだけで許せないのです。

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 古代ローマが滅亡した後、ヨーロッパの貨幣経済は崩壊しました。 そしてローマの知的文化もまた崩壊しました。
 またドイツなど古代ローマ外の地域では、そもそも貨幣経済が成立したのは近世以降です。

 しかしこうした中、ユダヤ人はユダヤ教により民族集団を維持した事から、貨幣経済での商取引や理財法も民族文化として維持し続けたのです。

 そしてキリスト教が長く貸金業を禁止した事から、金融業はユダヤ人の独占になる時代が続きました。

 このように民族の中で家業として受け継がれた商取引や理財の文化を持つ人々に、他のヨーロッパ人は経済で対抗できませんでした。

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 ヨーロッパで一番苛酷なユダヤ人迫害が残ったのは、ロシア・東欧です。 
 ポーランドなど、ナチの支配を避けてポーランドから避難していたユダヤ人が第二次大戦終戦後に戻ると、彼等を虐殺したのです。

 因みにトランプ次期大統領の娘婿の父親は、この時にポーランドを逃れてアメリカに移民した人です。

 なぜ東欧のユダヤ人迫害がかくも苛酷なのか?

 それはつまり東欧の経済が原始的だったからでしょう。 東欧と言うのはそもそも後進地域で、西欧の中世はローマ帝国崩壊から1492年のコンスタンチノープル陥落までですが、東欧の中世はこの1492年から始まるのです。

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 ワタシはゴーゴリーが好きなので、彼の小説を透して東欧のユダヤ人迫害を知りました。

 東欧の一般民衆の反ユダヤ主義って、そもそも主義など言えるような論理性は全くなく、何とも単純な殆ど天真爛漫とでも言うべきものです。
 
 ウクライナって広大なステップに、集落が散在する中、殆どの人間は自給自足に毛の生えたような単純素朴と言うか、原始的な経済生活をしているのです。

 そんな中でユダヤ人は、商店や居酒屋などを経営して、付けで商品を売ったり、チョッとした金貸しもするのです。

 すると相手は金利計算もできるかどうか? そもそも複利計算なんて想像もつかない連中ですから、赤子の手をねじるような簡単さで暴利を貪る事ができるのです。

 違法な事や不道徳な事をしているわけではないのです。 でもドンドン富がユダヤ人に集中していくことになります。

 一方、富を奪われた方からすると訳が分からない・・・・。
 少しの借金がアッと言う間に膨らんで、先祖代々受け継いできた農地を奪われてしまった・・・・。

 で、こういうことが幾らか続くと、何かのきっかけで村中ブチ切れてユダヤ人の商店を襲い、店主を惨殺して商品を略奪するのです。

 まるで子供が癇癪を起したような短絡的で天真爛漫な暴力なのです。

 これが共産主義化されるまで続いたのです。

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 でもこれ日本のサラ金に対する対応と同じでしょう?
 今のサラ金はお金を貸す時に、返済の為の計算書を渡すんじゃないですか?

 だからどんな風に借金が膨らむかはわかるはずなのに、それでも借りて返済不能になる人が沢山いるのです。
 
 しかし世論は完全に債務者に同情し、サラ金を攻撃しました。
 サラ金からの借金は、一人前の大人が自己責任で契約したのだと言う事は、殆ど問題にされませんでした。

 東欧ではこのサラ金を「キリストを処刑した」ユダヤ人がやっていたのですから、そりゃ憎悪の対照になりますよ。

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 一方近代以前に完全にユダヤ人迫害が消滅した地域があります。

 ヴェネツィア共和国です。

 「ベニスの商人」のアントニオは酷い反ユダヤ主義者で、年老いたシャイロックをいつも「犬」と罵り、足蹴にし、唾を吐きかけていました。

 しかし実はこれは完全なシェークスピアの創作で、同時代のヴェネツィア共和国ではこうしたユダヤ人迫害はなかったのです。

 それどころかレコンキスタでスペインから追われたユダヤ人難民を大量に受け入れました。

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 レコンキスタ以前のスペインウマイヤ朝では、当時のキリスト教社会よりも遥かに寛大なユダヤ人政策を取っていたので、多数のユダヤ人が居住していました。

 ところがこれを制服したキリスト教側は、ユダヤ人に死か改宗かを迫ったのです。 その為多くのユダヤ人がスペインを逃れたのですが、ヨーロッパでこれを受け入れてくれたのがヴェネツィアなのです。

 但しヴェネツィアは人工島に造られた街で、市街地には全く余裕はありません。 だから自費で埋立をして自分達の居住地を作ると言うのが条件でした。

 そこでユダヤ人達は自分達でお金を出し合って、自分達が住む為の土地を埋め立て島を作り、元々のヴェネツィアの島々と橋で結びました。
 
 凄い財力!!
 
 それでもワザワザ難民を受け入れたぐらいなので、ヴェネツィアでは迫害は全くなく、ユダヤ人のコミュニティーは栄えました。

 最盛期にはヴェネツィアのユダヤ教寺院のラビが、当時のヨーロッパのユダヤ教ラビの最高権威者だったぐらいです。

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 しかし迫害はなかったけれど、ユダヤ人達は他国でしたようにヴェネツィアの経済を牛耳るような事はできませんでした。

 この頃ヴェネツィアでは、国家と商人達がガッチリ団結し、国益を追求するヴェネツィア株式会社とでも言うべき体制を確立していました。

 個々の商人達も先祖代々数百年間オリエントで金払いの悪さで有名なイスラム商人や、それより強欲なアルメニア商人達を相手にやり合ってきた強か者ばかりです。

 当時、ヨーロッパの金融業はフィレンツェとヴェネツィアが仕切っていました。
 
 これではユダヤ人と雖もヴェネツィア商人との太刀打ちは容易ではありません。

 だからヴェネツィア市民達が「ユダヤ人が悪巧みをして富を収奪している」と憤る事はありませんでした。

 またヴェネツィアは事実上宗教の自由を認めていました。
 と言うか商売の都合で、トルコやアルメニアなど貿易相手先やアドリア海岸の属領の人間が沢山いて、彼等がそれぞれ自分達の宗教を信仰するのは無問題だったのです。

 だから別にユダヤ教だけ迫害する意味もないのです。 

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 ところがこのユダヤ人のコミュニティーは、成立後100年余りで急速に消滅していきました。
 今はユダヤ人が埋め立てた島に「ジュデッカ」と言う名が残るだけです。

 何で消滅したのか?
 
 迫害が無いから消滅したとしか言えません。

 迫害がないので、普通にヴェネツィア人と一緒に働き、通婚する事もさして問題になりませんでした。

 一方、ヴェネツィア市民になると、商売をする上で非常に有利でした。

 ヴェネツィア共和国は自国の商人の育成には、非常に手厚い援助をするのです。

 ヴェネツィア商人が他国で不当な扱いを受ければ、直ぐにヴェネツィア政府が乗り出してきます。
 また小資本しか持たない商人達の為に、国営の貿易船を運航して廉価で商品の運搬をするなど様々な国家支援があります。

 こんな国に住んでいれば、余程信心深い人間は別として、さっさと改宗してヴェネツィア市民権を取ろうと思うのは当然でしょう?

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 勿論いくらヴェネツィア共和国が寛大と言っても、この時代は簡単には外国人が市民権を得るのは簡単ではありません。
 
 でも例えば1509年、ヴェネツィアは全ヨーロッパを敵に回す大戦争に追い込まれました。 この時ヴェネツィア共和国は戦費調達の為に一定額の国債を買い入れた外国人や、、また兵役に応じた外国人に市民権を与えています。

 1492年にスペインを追われて漸くヴェネツィアに安住したのに、ここでヴェネツィア共和国が崩壊すれば、ユダヤ人達が行くところはないのです。
 彼等がこぞって国債を買い込み、兵役に応じた事は想像に難くありません。

 このようにしてユダヤ人のコミュニティーは消滅したのです。

 逆に言えば、ユダヤ人への差別が続く国と言うのは、16世紀のヴェネツィアのレベルにまだ到達していないと言う事かも知れません。

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 実際、宗教の自由が保障された近代以降の反ユダヤ主義と言うのは、ユダヤ人の理財能力への恐怖から生まれているのです。

 最近ではユダヤ人が国際資本主義とグローバリズムの推進者として憎まれるようになっています。

 イヤ、でもグローバリズムと自由貿易で一番儲けているのは、アメリカと日本なんですけど・・・・・。 
 
 日本は世界一の債権国、つまり世界中に金を貸して、その金利でリッチに暮らしているんですけど・・・・・。

 それなのにユダヤの陰謀なんて振り回すのは少し筋違いだと思うよ。

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 因みに小泉政権の郵政民営化騒動の頃、イスラエルでは「日本の陰謀」と言うのが出ていました。

①ユダヤ人の金融資本家を騙して、ゆうちょ銀行の株を大量に買わせる。

②ユダヤ人が経営権を握った途端に、日本人が一斉に貯金を引き出す。

③ゆうちょ銀行は破綻して、株券は紙切れ同然になる。

④捨て値になった株を日本政府が買戻し、再国有化する。

 そ、そうだ!!
 この手でユダヤ人の資本家から大金を巻き上げる事ができたのだ!!

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 つまりユダヤの陰謀論とはこの程度の話なのです。 
 日本が経済的に大成功をすれば、何とユダヤ人からさへ日本人の経済力への恐怖が湧き、陰謀論が生まれるのです。

 でもその根源は「富める者への嫉妬」と言う人間の本性から来る問題なのです。

 イヤ、貧窮に苦しむ人々の絶望その物です。

 だから幾らユダヤ人が「我々は違法行為も契約違反もしていない。 地道に商売をしただけだ。」と正論を唱えてもこれを抑えるのは不可能です。

 更に現在の欧米では、こうした経済問題とは別の反ユダヤ主義が復活しています。 
 
 イスラム教徒達による宗教的な反ユダヤ主義です。

 イスラム教徒とユダヤ人の確執は、ムハンマドがエルサレムを征服した頃から始まっています。 だからムハンマドの言葉として反ユダヤ主義がコーランに明記されているのです。

 全世界でイスラム教が狂信化している現在、これは非常に恐ろしい話です。

 欧米が安易なイスラム移民の受け入れを続けていると、大悲劇を再来になりかねません。

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 さて最後に、夕べ神戸シャイロック氏の霊魂が夢枕に立って、前回のエントリーについて抗議されたので、そのシャイロック氏の抗議の弁を紹介しておきます。

 因みにシャイロック氏は長く神戸で神戸市民を相手に時計屋をなさっていたので、完全な神戸弁です。 
 神戸の関西弁は大阪や京都と一味違って軽いのが特徴です。

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 アンタなあ、ボクの事、シャイロックとか書かはったけど、ボクはアンタのお祖父さんに何も悪い事してないよ。

 アンタのお祖父さんは人がええから、皆に好かれてるし、ボクもあの人は好きけやど、商売に甘すぎるわ。
 
 時計盗られのは不運やったけど、あんな簡単にあきらめて賠償なんかしたらあかんわ。

 もしも時計屋の中に悪いのがおって、「高い時計やから賠償金をン千万」とか吹っかけたらどないすんの?
 そうなったらアンタのお祖父さん、首吊るんかい?

 盗られた時計はアンタのお祖父さんの店に修理に出したモンばかっりやから、皆どっかこっか壊れとるんや。 盗った奴かてそのまま売りさばく事はできへんよ。

 盗った奴が売る為に修理に出したら、盗られた時計は結局アンタのお祖父さんの店に来るがな。
 そやからそれ待っとったらええねん。
 そんな簡単に諦めたらあかんわ。
 
 最後まで盗られた時計を取り戻す努力をせなあかんよ。
 そんでホンマに努力したら返ってきたやろ。

 アンタのお祖父さんは人がええから、人には好かれたし、ボクかてあの人は好きやよ。 
 そやけど商売に甘いからあんなよう働いたのに、一生貧乏やったやろ?

 日本人は何も考えんと、お人好し丸出しで直ぐに謝罪やら倍賞やらするから、いつも性質の悪い奴に付け込まれて酷い目の遭うてるんやろ?

 そんな甘い事ばっかりしてるから、シナや朝鮮に付け込まれて苦労してるんやろ?

 少し考えた方がええよ。

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 ハイ、全くその通りです。 
 すみませんでした。

  1. 個人的体験から
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2017-01-16 15:24

神戸のシャイロック 反ユダヤ主義雑感

 あれは父が死んだ翌年だったと思います。 
 母は夏の間、神戸で叔父一家と暮らしている祖母を札幌の我が家に招くことにしました。

 母とすれば父が死んだ淋しさを紛らせたかったし、それにいつも姑の世話で苦労をしている叔母をいたわる気持ちのあったようです。
 
 そこで叔父はその年大学に入学した甥(末弟の息子)に、大枚の小遣いを与えて祖母を札幌まで送らせました。 
 
 さてこうして祖母が我が家についた翌日の事だったでしょうか・・・・。
 昼食の後、皆で雑談をしていると、祖母が昔語りを始めました。

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 叔父一家は祖父母の代から、時計や宝飾品の修理の店をやっていました。
 時計のムーブメントではなく、ガラスや腕時計のバンドなどの外部の修理をする店です。

 祖父母と叔父と叔母、そして叔母の弟と、その他に一人か二人の人を雇って営業する純然たる零細企業です。
 毎日、店の一人が神戸中の時計屋を回って、修理する時計や宝飾品を集め、修理の済んだ物を届けていました。

 ある年、祖父母の末子に当たる叔父がこれに加わりました。
 叔父は当時まだ20代の独身で、母達兄弟の中では唯一大学を出て、働いていたのですが、しかしその年勤め先とトラブルがあって仕事を辞めて実家に戻っていたのです。

 で、この一番若い叔父が時計屋廻りをしたのですが、帰りの電車の中で集めた時計の入った鞄を盗られてしまったのです。

 これはもう完全に店側の落ち度ですから、祖父は叔父に時計預けた時計屋さん全てに、平謝りに謝り奪われた時計の代金を賠償しました。 それは細い商売をしている祖父母にとって経済的には大変な痛手ではありました。

 しかし幸い祖父もまた長男である叔父も、元来お客さん達には非常に好かれていたので、得意先の時計屋さんは皆、祖父一家の不運に同情して、気持ち良く賠償金を受け取ってくれました。

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 ところが一人だけ例外がいたのです。
 この一人だけは「賠償金は受け取らない。 同じ時計が戻らない限り絶対に許さない。」と言い張るのです。

 しかしそんなことを言われても盗まれた物です。 
 どうやったら取り戻せるのでしょうか?
 
 時計を盗られた叔父は、仕事を辞めて実家に戻った時から、少し精神が不安定だったのですが、これで完全にノイローゼになってしまいました。

 その為に祖父母一家は、この叔父が自殺するのではないかと心配しました。

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 こうして進退窮まった一家ができたのは、新聞広告を出す事ぐらいでした。

 「○○線の電車内で時計の入った鞄を置き忘れました。 拾った方が届けて下されば謝礼を差し上げます。 絶対、警察には言いません。」

 こんなモノでどうなるとも思えないけれど、しかし他に方法はなかったのです。

 だから毎日、毎日、幾つもの幾つもの新聞にこの広告を出し続けたのです。

 しかしこうして一ヶ月余り経ったある日、祖父の店に差出人不明の小包が届きました。
 中には叔父が奪われた時計が全部入っていました。
 
 これで祖父母一家を苦しめた災難が終わりました。

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 「あの人、ユダヤ人やった・・・・」

 祖母は最後にこう言いました。

 その時、ワタシは思ったのです。

 シェ、シェークスピアは天才だあ!!

 400年の時と、地球半周する距離を隔てても、ユダヤ人のやり口は全く同じ!!

 シャイロックもまたこの神戸の時計屋も、契約上は全く問題のない事を言っているのです。

 「期日内に返金できければ、1ポンドの肉を切り取る」と言うのは、アントニオが自身でシャイロックと結んだ契約書に書かれていたことです。
 そして電車の中で時計を盗まれたのは、完全に叔父の落ち度です。

 だからシャイロックも神戸の時計屋も「契約を守れ!」と言っているだけなのです。
 
 しかし彼等は相手の落ち度に付け込んで契約を盾に、徹底的に相手を追い込むのです。

 ワタシはこの祖母の話を聞いた時、腹が立つより感動してしまいました。

 天才とはかくも的確に、民族の性格を洞察する!!

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 しかし「ベニスの商人」と全く違う事があります。
 
 「ベニスの商人」アントニオは、元来猛烈な反ユダヤ主義者でした。 だから道でシャイロックと出会うと、いつも彼を「犬」と罵り、足蹴にして唾を吐きかけていたのです。

 アントニオは健康な若者で、シャイロックは老人でした。 しかもシャイロックは、それまでアントニオに何一つ悪い事はしていないのです。

 「ベニスの商人」は反ユダヤ主義の作品と言われますが、しかし実はシェークスピアはアントニオのようなキリスト教徒の非道も鮮明に描いているのです。

 しかしワタシの祖父母はどちらも小学校しか出ていない無学な人間で、反ユダヤ主義なんてそもそも知らないのです。
 そして相手は大事な得意先です。

 アントニオがシャイロックに働いたような非道は、想像もできなかったでしょう。

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 神戸には相当数のユダヤ人がいます。
 だから神戸には戦前からシナゴークがありました。

 またユダヤ人は迫害の歴史から、高価な時計や宝飾品を資産として持つ習慣があるので、時計宝石店にとっては上客でした。

 だから無学な祖父母も商売柄、この世にユダヤ人と言われる人間がいる事ぐらいは知ってたのでしょう。 しかしそれが全てです。

 そして日本では歴史的に反ユダヤなど一切ありませんでした。

 杉原千畝のビザで日本に来たユダヤ人の多くが、長い間神戸に滞在しました。 この時在留許可を出し続けたのは兵庫県警です。

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 そんなん酷いわ!!
 ウチのお祖父ちゃん、何もユダヤ人に悪い事してないやん!!
 お祖父ちゃんだけと違うわ、日本人誰もユダヤ人を苛めた事は無いんや!!
 そやのに、シャイロックみたいなことするて!!
 もしあれで叔父ちゃんが自殺でもしてたら、どないしてくれるん?
 こんな事ばっかりやるさかいに、世界中で嫌われるんやん!!

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 しかし長らく迫害を受けて来た民族の習慣は、数十年で変わるわけもないのでしょう。

 そして長く商業と金融に関わってきた民族としては、契約の厳守は絶対的な理念なのかもしれません。

 因みに祖父だって、このユダヤ人の時計屋が「絶対に賠償に応じない」と頑張り続けたお蔭で、結局全ての時計を取り戻すことができたのです。 その意味ではむしろ恩人なのです。

 神戸のシャイロック氏からすれば時計を盗まれたら安易にギブアップして、賠償を始めた祖父のだらしなさが許せなかったかもしれません。

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 反ユダヤ主義にはワタシは明確に反対です。 特に日本に無暗に出ているユダヤの陰謀論など全く荒唐無稽だと思います。

 そもそもユダヤ人は民族全体を統括するような組織を作って団結して行動する事ができないから、国を喪い、世界中を彷徨う嵌めになったのです。

 しかし祖父母一家の経験を見たら、ユダヤ人の性格に関する話は、嘘でも偏見でもなく全く事実だと思わざるを得ないし、こんな性格では嫌われて当然と思うのです。

216

 現在、ヨーロッパでもアメリカでも、また反ユダヤ主義が復活しているようです。
 しかもそれがリベラリストの間で強くなっていると言うのです。

 「政治的に正しい」村上春樹と日本的反ユダヤ主義の関係

 これは非常に不合理に思えます。
 けれど感覚的に理解できる面もあるのです。

 戦後欧米のリベラリストは反ナチから、薄気味が悪い程ユダヤ人に気を遣い、「カワイソウな被害者」としてのユダヤ人像を煽り続けました。

 しかしそうやって自分達が同情を続けた「カワイソウな被害者」から、自分がウチの祖父母一家が受けたような仕打ちをされたら?

 同情がそのまま憎悪に逆転するのではありませんか?

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 ワタシが祖母からこの神戸のシャイロックの話を聞いたのは1985年です。 
 因みにこの事件は1960年前後の事でしょう。

 しかしワタシがユダヤ人に違和感を持ったのは、実はそれより前、1970年代イスラエルがパレスチナへの攻勢をかけ続けていた頃です。

 当時のワタシはこのパレスチナ情勢には全く知識も興味もありませんでした。
 でもその頃イスラエルはやたらにホロコーストの追悼とか、「アンネの日記」の話とかを宣伝していました。

 日本で散々被害者を強調しながら、パレスチナでは極めて強硬な軍事攻勢を掛ける。

 それが実にイヤな感じでした。

 こんな被害宣伝さへなければ、パレスチナ問題など他の遠隔地の紛争の一つとして以上に不快感はなかったのに・・・・・。

 これは欧米のリベラリストも同じではないでしょうか?

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 因みに今日本で、一番嫌韓に燃え上がったいるのは、嘗て親韓派だった右派の人達です。

 彼等はソ連崩壊まで、反共の仲間として日本で韓国支援を訴え続けたのです。
 そしてその為には、右派であるにも拘らず竹島問題にも目を瞑ったのです。

 ところがその韓国はその支援に感謝する事なく、ひたすら日本を貶める事に熱中しているのです。
 これでは元親韓派がブチ切れるのは当然でしょう。

 逆に日本の左派は、北朝鮮を「地上の楽園」と讃え韓国の悪宣伝に熱中してきたのです。 このような左派にすれば、韓国に何の思い入れもありません。 
 
 だから北朝鮮を使っての日本悪い宣伝ができなくなれば、代わりに韓国を使う事には何の躊躇いもないのです。

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 これを思うと、今の欧米のリベラリストの反ユダヤ主義と、右派の親ユダヤと言う逆転も、理解できます。

 嘗て反ユダヤ主義だった欧米の右派は、ユダヤ人には何の貸しもありません。
 それで反イスラムの共闘の為なら、気楽に親ユダヤに転向できます。

 一方、「迫害されるカワイソウなユダヤ人」の為に反ユダヤ主義と戦ってきた心算のリベラリストからすれば、ネタニヤフ政権の国粋主義や、パレスチナ人への仕打ちは、自分達の善意や同情に対する裏切りであり、許し難い忘恩行為と感じるでしょう。

 同情や善意を裏切られたら、人間は絶対にそれを許せないのです。

 キリスト教が至高価値とする「愛」を仏教は全く評価しません。 それは「愛」は、一つ間違えると「憎悪」に逆転するからだと言います。

 そしてこの愛の逆転による憎悪は非常に恐ろしいのです。

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 ユダヤ人は長い間迫害されてきました。
 だから非ユダヤ人に対する不信や不寛容が身についてしまったのかもしれません。

 そして契約の厳守と言う商業民族の鉄則が、ユダヤ人の意図を超えて「冷酷無情」「金の亡者」と言う印象を与えるのでしょう。

 しかし今はイスラエルは強国だし、ユダヤ人迫害も少なくとも欧米では、表立ってはできないのです。

 迫害の歴史が続いたので、迫害の不当さを責めたい気持ちは当然でしょう。 しかし既に強国の民となった以上は、自分達がなぜこれほど嫌われてきたのか? それを冷静に考えるべきでしょう。
 
 もう迫害される弱者として他者にユダヤ人への理解や同情を求めるのではなく、ユダヤ人自身がその知性と能力とイスラエルの国力に相応する振る舞いをするように心がけるしかないのです。

 契約を理解できない馬鹿な連中を責めるだけでなく、彼等の文化を理解し、寛容に扱う雅量や品位も必要なのです。

 他者を変える事は不可能なのだから、自身が変わるしかないのです。

 そうしないと西欧の反ユダヤ主義がまた深刻化して、再度大悲劇になるのではないでしょうか?

  1. 個人的体験から
  2. TB(0)
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