ここでFIFAの会長がこんなことを言っていました。
11月20日 クーリエジャパン
国際サッカー連盟(FIFA)のジャンニ・インファンティノ会長は、ワールドカップ(W杯)カタール大会の開幕を翌日に控えた11月19日の会見で、同国での外国人労働者の扱いに対する批判の声を「偽善」だと断じた。
欧州では開催国カタールにおける外国人労働者問題やLGBT(性的少数者)に関する権利などについて批判が高まっており、インファンティノ会長は時折怒りを込めた口調で欧州側の批判の声を非難した。
「私は欧州の人間だが、欧州の人間は道徳的な教えを説く以前に、世界中で3000年にわたりやってきたことについて今後3000年謝り続けるべき」とコメント。
さらに「困っている人々を助けるためにこそ教育に投資し、よりよい未来と希望を与えなければならない。完璧でないことはいくつもあるが、改革と変化には時間がかかることをわれわれ自身が学ぶべき」とも主張。「一方的に道徳的な教えを説こうとするのは単なる偽善だ」と語った。
同会長は「12年前にカタールでのW杯開催を決定したことをいま批判されても受け入れがたい」とし、「カタールは大会への準備ができており、史上最高のW杯となるだろう」と述べた。
ここでこの会長が言う欧州でのカタールでのワールドカップ開催についての批判については日本ではあまり報道がないようです。
ワタシもわかりません。
しかし会長の発言からすると、欧州ではカタールでの外国人労働者の取り扱いについて、人権侵害などの批判が出ており、それを理由にカタールでの開催に反対する声が出ていたのでしょう。
カタールでの外国人労働者の扱いにどんな問題があるのかワタシは知りませんが、カタールだけでなく中東産油国はどこでも、随分と過酷な扱いをしていたのは知っています。
これら中東の産油国はどこも人口は非常に少ないのに、大量の石油が出るので、国民生活は大変豊です。
そこで豊かになった国民はこぞって外国から労働者を雇いました。 メイドなど家事使用人、建設労働者、医師、看護師、教師など、あらゆる職種で外国人労働者を大量に受け入れていました。
そして家事使用人や建設労働者などは、文字通り低賃金での奴隷労働を強いていました。
その一方でこうした労働者が勝手に仕事を止めて、他で就職して国に居ついたりしないように、日本人の感覚では勿論、外国人労働者の扱いに慣れた欧米人の想像を絶するような厳しい管理を行っていました。
しかし中東諸国は産油国以外は、殆どが貧困に苦しみ、更にシリアやレバノンのように長期間内戦状態で難民の流出が続いているような状況ですから、産油国で働きたい人は幾らでも湧いてくるのです。
しかもアラブ諸国は皆、アラビア語なので使い勝手は凄く良いのです。
更にフィリピンやインドなど、人口過剰で失業者の多かった国々からもこぞって中東産油国へ出稼ぎに行っていました。
韓国人も随分行っていました。
金賢姫の大韓航空機爆破事件であの大韓航空機に搭乗していた人々は、建設労働者として中東に出稼ぎに行っていた韓国人なのです。
日本人は外国人労働者の流入に非常にナーバスなのですが(実はワタシも非常にイヤです)、しかし中東の人々には全然そういう抵抗感がなかったのか、第二次大戦後独立し石油収入が入りだした直後から、ドンドン外国人労働者を入れています。
一方、出稼ぎに行く方も、これまた外国への出稼ぎに、殆ど抵抗がないらしく、これまたドンドンと行くのです。
これは考えてみれば当然ですが、産油国の代表格サウジ・アラビアにはメッカがあり、古来イスラム教徒は生涯に一度はここに巡礼したいと願っていました。
だからサウジアラビアやその周辺産油国に行くことに、抵抗感があるはずもないのです。
一方サウジアラビアや周辺国もこうした巡礼を昔から受け入れて来たのですから、外国人への抵抗感もないのでしょう。
しかしそれだけではなくこれらの国々には、古代から奴隷制度が存在し続けて、労働者が必要なら奴隷を買うと言う文化だったからでしょう。
ワタシは以前「イスラーム史の中の奴隷」と言う本を読んだ事があります。 これは中世アラビアの知識人が書いた「奴隷購入の書」を元に、アラブ世界での奴隷を描いています
それにしてもこのネタ本である「奴隷購入の書」って、現代式に言うと車やパソコンなどの商品購入の為の手引書みたい本なのです。
車やパソコンなどの購入手引書には、車種やメーカー別にその長所・短所、値段などが書かれているでしょう?
で「奴隷購入の書」も完全にその感覚で、当時のイスラム世界の商業圏全域から得られる奴隷を、人種や民族別に奴隷の特性や使用法が解説されているのです。
この当時のイスラム世界の商業圏は非常に広く、アメリカ大陸とオセアニアを除く全世界をほぼ網羅していました。
それでフランク人と呼ばれるヨーロッパ白人、中央アジアの遊牧民、サハラ以南の黒人、インド人、中国人、そしてイラン人やアラビア人など、同じイスラム教徒で同一民族の奴隷までいるので、実に多種多様な人種・民族の奴隷がいました。
「奴隷購入の書」では、これらの奴隷を民族・人種といった属性で分類して、属性ごとに用途や特徴を解説し、使用する場合の取り扱いの注意を書いています。
例えば「イラン人は高度は技術を持ち優秀だけれど、惨めな待遇に耐えられないから注意しするように」「黒人は厳しい労働にも耐えるが、女性でも体臭がキツイいので、性的な使用には向かない」とか、今なら大問題になるようなことが延々と書かれています。
奴隷の仕事も多岐にわたり、農作業や鉱山労働など我々現代人が「奴隷労働」から連想する単純肉体労働から、職人仕事などの技能労働、医師や秘書や経営管理などの現代なら高学歴エリートと言われる人々の仕事も奴隷にやらせています。
しかしよくもまあ、ここまで徹底的に人間を「物」扱いできるものかと呆れますが、しかしこの書は当時、結構重宝されたようです。
因みに中東諸国は軍隊まで奴隷で済ませていました。
中央アジアの遊牧民は騎兵としては抜群に強いので、こういう遊牧民の奴隷を買い込んで国防に利用していました。
で、でも他の用途はともかく、奴隷に武器を持たせるってどうなの?
そんなことをしたら直ぐに反乱されて自分達が奴隷にされるのでは?
実際、反乱は再々起きて、奴隷による御家乗っ取りも実際にありました。
例えばエジプトにマムルーク朝と言うのがあったのですが、このマムルークと言うのは、実は黒人以外の奴隷を指します。
遊牧民出身の騎兵奴隷が、エジプトの王家を乗っ取ってエジプトの支配者になったのです。
しかしこんなことが再々起きても、アラブ人は自分では戦わず、軍隊に奴隷を使うか、或いは遊牧民の傭兵を雇うかで済ませていました。
現在もサウジアラビアの軍隊は外国人傭兵で成り立っています。
こういう文化と歴史を持つ国々ですから、奴隷制度は1970年代ぐらいまで残ったし、外国人労働者の受け入れにも何の抵抗もなく、更に受け入れ当初から外国人労働者を奴隷並に厳しく管理しています。
つまりこれはカタールなど中東諸国の文化と伝統なのです。
これは勿論、現代の欧米人の人権感覚からすれば絶対に許せませんから、欧米の自称人権団体が騒ぐのは当然でしょう。
尤も欧米も第二次大戦まではアジア・アフリカ諸国の植民地支配をしていたし、黒人奴隷狩りはやったし、LGBTは迫害したし、色々問題があったのは確かです。
それを悪い事だと反省して止めたのは立派だとは思いますが、しかしだからと言ってすぐに他に国に「オレが止めたんだから、オマイラも止めろ!!」とふんぞり返ってお説教するのはいかがなものでしょうか?
この点はワタシもFIFA会長に同意します。
しかしそれじゃFIFAの会長は、中東諸国が古代から延々と続けてきた奴隷制度や奴隷狩りはどう思うんですか?
例えば欧州諸国が黒人奴隷狩りを始めたのは、17世紀からで19世紀には非人道的行為だとして止めたのです。
でもカタールなどイスラム圏では、少なくとも欧州より1000年前から黒人奴隷狩りを始めました。 イスラム圏が黒人奴隷狩りを止めたのは、アフリカ諸国や中東諸国自体が欧州に植民地化されてからです。
しかしコーランでもイスラム法でも奴隷制度は禁じていないので、ISがイラク周辺を支配していた時は、支配地の女性達を奴隷として売買していました。
欧州との違いは、イスラム圏の奴隷狩りには人種差別はなく、イスラム教徒は黒人奴隷狩りだけでなく、白人や東洋人の奴隷狩りもやっていたことです。
だから「奴隷購入の書」にも多種多様な人種・民族の奴隷の用途が書かれているのです。
しかしこれでは欧州が謝罪するような話ではないでしょう?
因みにFIFAの会長は「世界中で3000年にわたりやってきたことについて今後3000年謝り続けるべき」っていうけど、そもそも欧州が欧州以外の国々に何か加害するとか、影響力を持つようになったのって、近々400~500年の話です。
それ以前の欧州って世界的にもむしろ貧しい後進地域で、特に世界に貢献したわけじゃないけれど、害をなす程の力はありませんでした
それで一体何を反省しろというのでしょうね?
現在の欧米人にはFIFA会長のような自虐史観丸出しで、自国民に謝罪や反省を促す人間がぞろぞろ出てきました。
しかし現実の歴史を見ると、ワタシはこういう人間こそ鼻もちならない偽善者だと思ういますけど。