毎度毎度、同じ事を書いているのですが、しかしこの記事は札幌市を基準に書いているので、ワタシも札幌市民としての疑問を書いていきます。

2023年1月29日 幻冬舎
――寒すぎて、もう死にそう
今回の寒波で、まるで冷蔵庫のような室内。ストーブをつけたいが、灯油代が高くて、贅沢ができない……そんな悲痛の叫びは、日々奮闘するシングルマザーから。生活保護を受けているものの、生活は苦しく、そしてこの物価高。生きていくのも精一杯だといいます。
たとえば30代後半女性・パートタイマーの平均月収は推定11万2,249円(厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』より算出)。手取りにすると9万円ほどです。
そして仮に北海道・札幌市だとすると、最低生活費(2022年4月時点のデータ)は、小学生の子どもが1人いる場合で18万9,890円。その内訳は、「生活扶助基準額」として11万7,900円、「母子加算」として1万8,800円、「児童養育加算」として1万0,190円、「住宅扶助基準額」として4万3,000円。住宅扶助基準額は持ち家の場合支給されず、また実際の家賃のほうが低い場合は、実際の家賃額が支給されます。
基本的に生活保護費は、最低生活費と収入の差額が支給されますので、月々9万円強、手にすることになります。
最低生活費は、その地で生きていくために必要な最低金額。昨今の物価高は想定されていませんから、生活は日に日に厳しさを増します。実際にこの親子のように、灯油ストーブなどで暖をとるのを我慢して、家の中でもコートに毛布、などで耐え忍んでいる、というケースも珍しくないといいます。
最近は「異次元の少子化対策」に代表されるように、日本の先々について議論が交わされています。しかしそんな遠い未来でなく、いま、まさに「生きるのも大変」という人たちも。未来はもちろん「いま」にもクローズアップし、議論、さらには実行をお願いしたいものです。
まずこの母子の収入ですが、パートの手取りは9万円ですが、それでは生活できないので生活保護を受給しています。
所得はあるけれど、それが少なくて生活保護を受給する場合、無収入で生活保護を受給する場合との差額が支給されます。
だから結局この母子の収入は記事の通り、毎月18万9890円になります。
でも実はこの他に、冬季加算と言う物があります。 これは冬の間、生活保護費に加算されて支払われます。 金額と期間は地域、また家族構成により異なります。
この記事に合わせて、札幌で母子二人なら、10月から4月まで毎月18140円が、毎月加算されます。
だから母子10月から4月まで母子の収入は208030円になります。
これは母子二人が生活するには十分な額ではありませんか?
では札幌で灯油代はいくらかかるのでしょうか?
世帯平均では年1000リットル消費すると言われます。 但し、灯油暖房の家は、給湯も灯油にするので、夏の間に風呂その他の給湯で消費する分も含まれます。
現在の灯油は1リットル120円程ですから、年間12万円かかる事になります。
一方冬季加算は10月から4月まで7カ月支給されますから、年間では12万6980円になります。
つまり現在の灯油価格で考えても、冬季加算分だけで、平均的な一世帯分の灯油代を全部賄える事になります。
しかし現実に母子家庭が、毎月2万円の灯油代を必要とするとは思えません。
ワタシの1月分の灯油の請求書を見ると、使用料は68.8リットルで、8320円でした。
我が家は50.22㎡で、一人暮らしにはかなり広い上、ワタシがほぼ一日家にいるのでストーブを点けている時間も長くなりますが、日当たりが良い上集合住宅なので、これで済んでいます。
ストーブは自動温度調節で、22℃に設定していますが、点けっぱなしにするとやっぱり温度が上がりすぎるので、1~2時間ごとに消しています。
また給湯も灯油なので、お風呂や洗い物に必要な灯油代もこれに含まれています。
他家の情報を調べていたら、賃貸マンション、3LDK、80㎡、家族4人で月使用料が88~114リットルと言うのが出てきました。 これだと毎月12000円前後かかると言う事になります。
因みに札幌の場合、賃貸の集合住宅には集中暖房でない場合、ストーブが備え付けになっています。 灯油は各戸専用のタンクを用意している場合と、大型のタンクから各戸に配管してある場合があります。
現在我が家は配管式なので、毎月の使用料が正確にわかるのです。
ついでに戸建ても調べたら、4LDK で4人家族、410リットルと言うのが出てきました。 戸建てだと暖房や給湯の他にも、融雪に灯油を使う所もあるので、使用料が跳ね上がります。
でもこのサイズの住宅は、母子二人なら生活保護受給者でなくても、必要ないでしょう?
だから母子家庭なら、我が家と同様、厳冬期の1月、2月でも月1万円前後の灯油代があれば十分なはずです。
さらに言えば、北海道でストーブを焚き始めるのは10月ごろからで、4月までは絶対に必要です。 これは冬季加算の期間と重なります。
しかし灯油の使用量は1月、2月がピークで12月でも1月分の7割程度、11月分だと1月分の半分程度です。 そして三月、四月とまた、同様のペースで減っていきます。
だから冬季加算の大部分は灯油代以外に使えるのです。
しかも、昨年岸田政権は住民税非課税世帯に10万円の給付金を支給しています。
その上、札幌市も一世帯当たり、6万円の給付金を支給しています。
だから灯油の値上がり分は勿論、その他の物価上昇分も十分、賄えるはずです。
少なくともマトモな人なら母子二人、月20万の収入に、給付金まであれば、凍える事も、飢える事もないはずです。
こういう事実を全部無視して、生活保護カワイソウ物語を描く人達って一体何でしょうね?
ワタシは生活保護制度は、非常に大切な制度だと思っています。
実はワタシは難病を抱えているので、30代半ばから無職でした。
そでも父が幾ばくか残してくれたので、何とか暮らしてこられましたが、もし父の遺産がなければ生活保護に頼るしかありませんでした。
実は現在の日本では、厄介な慢性疾患を抱えて働けなくなり、資産もないとなると、生活保護以外のセーフティネットはありません。
障害者の場合は、障碍者年金があり、就労支援もそこそこ手厚いのですが、慢性疾患で入退院を繰り返すと言うような場合は絶対絶命になります。
入退院を繰り返すと結局職場を追われるし、病気持ちでは就職も難しいのです。
また民間の医療保険では、死亡時や入院時に相当額出る物は多数ありますが、回復の目途の立たない慢性疾患に対応するような物はありません。
だから資産もなく、家族の援助も期待できない人は、生活保護一択なのです。
現在生活保護の予算の半分程が医療費に使われていますが、そもそも難病患者始め、慢性疾患の患者のセーフティネットが生活保護一択だと言う事を考えたら、むしろこれは当然の帰結です。
医療費の割合の高さは、むしろ生活保護受給者の多くが、病人や高齢者など、ホントに働けない人である事を示しています。
だから色々不正の噂はあっても、基本的にはこの制度は「働けなくて困っている人を助ける」と言う本来の使われ方をしているのです。
だからこそワタシはこの制度は大事にしていくべきだと思うのです。
もしこの制度がなくなったら、慢性疾患を抱えた人の多くが自死せざるを得なくなります。
そしてそれを思うと、上記の記事のように怪しい「カワイソウ物語」には激しい怒りを感じます。
事実無根のカワイソウ物語を書いて、彼等は一体何を期待しているのでしょうか?
お金はあればあった方助かるけれど、納税者が納得しないような要求を続ければ、結局制度そのものが破綻します。
だから生活保護の問題を書くのなら、正確に支給額を報道して、納税者が納得を得られるようにしていくべきなのです。
逆に言えば、この手の「カワイソウ物語」を書く人間には、実は生活保護受給者を守る事などとは全く違う目的があるのではないでしょうか?