ベルリンの壁が崩壊したのは30年前の11月9日だったのですね。 但しこれはドイツ時間ですから、日本では日付が変わって11月10日になっています。
これについて杉山隆男の「きのうの祖国」に面白い話が書かれていました。
ベルリンの壁が崩壊し、東ドイツと言う国が消滅して間もなく、東ベルリンに人相風体からどう見ても西側の人間だとしか思えない男たちが10人余現れました。
彼等は列を組んで「お前たちは騙されている。 資本主義は間違っている。 すぐに壁を戻せ。」と叫びながら歩きまわったというのです。
東ベルリンの住民たちにとっては、何とも奇異な光景だったようです。
ええ、ワタシも奇異に思います。
ワタシは1954年生まれですから、物心ついた頃は冷戦真っ最中でした。
テレビは毎日のように冷戦に関するニュースを報道していました。
オリンピックがあると、ソ連や東ドイツのメダリストが、西側へ亡命しました。
オリンピックのメダリストが逃げるなんて、子供心にも異常だとわかりますから、何でこんな事になるのか?
何でアメリカとソ連は仲が悪いのか?
そもそも共産主義って何なのか?
父に聞いてみました。
父は共産主義と言うのは、何でも平等に分けるという主義なのだと教えてくれました。
お父さん、それっていい事じゃないの?
ワタシはそう言いました。
すると父は言いました。
人間が皆、神様みたいだったら、それでうまく行く。 でも人間は神様じゃないから、共産主義は絶対にうまく行かない。
と言いました。
ワタシは子供だったから、この意味がわかりませんでした。
そもそも人間が神様みたいだったら、資本主義だってうまくいくはずで、不平等になんかならないのです。
だってワタシが依然通っていたキリスト教の日曜学校では、キリスト様は「服を二枚持っている人は、持っていない人一枚与えなさい。」と言っていたのですから。
それから少し大きくなって知恵が付き、新聞など読むようになると、共産主義と言うのは大変素晴らしい物のようでした。
ワタシが中学生になった時に、中国で文化大革命が起きました。
すると新聞には連日、この文化大革命の記事が載るようになりました。
因みに我が家の新聞は朝日新聞だったのです。
それによると中国人民は、全て人民の為に奉仕する事を喜び、平等の天国のようでした。
しかしヤッパリ、なんかオカシイと思ったのです。
だってこの平等の天国である共産主義国家から亡命する人は絶えなかったのですから。
中学生になると共産主義国家から逃げるのは、オリンピック選手だけでなく、有名な音楽家や作家、そして一般国民もまた命懸けで逃げているの事を知りました。
そんな素晴らしい国から、何で逃げ出すの?
一方、そのころになると日本国内では学生運動が、最高潮を迎えるようになりました。
ワタシが高校を受験した年、東大の安田講堂事件が起き、東大の入試が中止になり、大学入試全体が大混乱しました。
しかし学生運動は全国の大学だけでなく、高校にまで波及して、ワタシが入学したばかりの高校でも、活動家なる学生が現れてハンガーストライキをやるとか、学内集会をやるとかで、数日授業が潰れました。
でもワタシはこれ全然乗る気になりませんでした。
だってこうやって学生運動で騒いでいる人達って、皆共産主義を支持していて、日本を共産主義国家にしたいというのです。
でも大変不思議な事に、誰も日本からソ連や東ドイツや中国などの共産主義国家に亡命しないのです。
共産主義が嫌いで資本主義にあこがれる人達は、有名ピアニストやオリンピックメダリストから一般勤労者まで、命懸けで資本主義国家に亡命するのです。
だったら資本主義が嫌いで共産主義にあこがれる人達も、ソ連や中国や東ドイツに亡命すればよいでしょう?
北朝鮮に行くのもよいでしょう?
そして当時、既に海外旅行は一般国民でも簡単に行ける時代になっていました。
ワタシが小学生だった1960年代の前半までは、海外旅行というのは大変な贅沢で、大富豪や皇族、或いはノーベル賞級の科学者など超エリートだけしか行けない物でした。
ところが高度経済成長で、海外旅行は急速に庶民化して、ワタシが高校に入る頃には、ノウキョウがパリやロンドンで有名になりました。
日本各地のノウキョウが、欧米へ団体旅行をするようになったのです。
一方、若者達の間では、バッグパッカーとして、長期の海外放浪が流行し始めたのです。
それで旅行情報も一杯でるようになると、日本人が共産圏に入るのはそう難しいわけでもなければ、格別お金がかかるわけでもないこともわかってきました。
西側諸国よりは少し手続きは面倒ですが、それでも観光客として入国する事など簡単なのです。
共産圏の人達は、西側の諸国に出る事だけでも大変で、一般国民には殆ど不可能でした。
だからオリンピックに出られない人や、海外でコンサートをできない人達は、車の下に隠れるとか、非常手段を用いて脱出したのです。
見つかると射殺されるのだけれど・・・・。
それに比べると観光旅行に行って、そのまま亡命申請するって、超ラクチンでしょう?
それなのに何で逃げないの?
高校生のワタシから見ても、日本で共産主義革命をおきる可能性なんか全然ありませんでした。
だからいくらゲバ棒を振り回しても、無駄なのです。
だからゲバ棒なんか振り回すぐらいなら、既に自分達の理想世界が実現している国へ亡命した方がよいではありませんか?
因みに当時、学生運動が盛んだったのは東大始め、超一流大学でした。
だからゲバ棒を振り回している連中だって、頭はよいはずで、亡命したら言葉ぐらい幾らでも学べるはずです。
しかしながら、大変不思議な事に、ホントに共産圏に行ったのは、よど号ハイジャック犯ぐらいです。
他は皆、日本で就職するか、そのままプロの活動家になって、延々と実現不可能な革命の為の活動を続けているのです。
でもこれは日本だけの話ではないようでした。
日本で学生運動が燃え上がった時期は、欧米でも同様に学生運動が盛んでした。
そしてその学生達が暴力による共産主義革命を目指してテロを行うようになったのも同じでした。
そういう連中の中にはドイツ赤軍なんてグループもいました。
連中は世界中でテロをやったので、世界中を追い回される羽目になりました。
でもなぜか東ドイツにはいきませんでした。
ドイツ赤軍なんて作るぐらいなら、何で東ドイツに行かないの?
東ドイツに行ったら、本物の赤軍に入隊して、本物の戦車や戦闘機に乗ることだってできるかもしれないのに。
共産主義国家の労働者として、資本家に搾取されることもなく、幸せに暮らせるのに。
東ドイツは(東ドイツだけでなく共産圏はどこも)労働力不足に苦しんでいたので、健康な若者は大歓迎のはずでした。
でも結局、彼等も東ドイツにもその他の共産主義国家にもいかず、テロを繰り返した挙句、処刑や投獄されたのです。
そして学生運動のが下火になって間もなくベルリンの壁は崩壊し、共産圏と言う物がなくなりました。
それでも共産主義に未練のある連中もいるので、最初に紹介したように東ベルリンで「お前たちは騙されている!!」と喚きながら行進するのでしょう。
でもそんなに共産主義が好きなら、何で東ドイツが存続している間に、東ドイツに行けば良かったのに・・・・・。
こうなると彼等が本当に共産主義を信じていたとは思えません。
因みにこれについて日本共産党などは、ソ連始め現実に存在した共産主義国家をどれもこれも「間違った共産主義だ。」とか「本物の共産主義ではない。」とかいちゃもんをつけて回り、実際そういう国々相手に口喧嘩を繰り返しました。
そして「だからウリはそういう国にはいかないニダ」と言い訳にしたのでしょうね。
でもそうやって現実に存在する共産主義国家が全部「間違い」「本物でない」と言うなら、そもそも本物の共産主義国家を作る事なんかできるのでしょうか?
現実に政権を奪取して共産主義を実現する能力のある人達でさへ作れない本物の共産主義国家を、泡沫政党にしかなれない日本の共産主義者が作る事ができるのでしょうか?
しかしそれでも彼等は、日本で泡沫政党の地位にしがみついて「革命起すニダ」「日本の政治は間違っているニダ」と喚き続けているのです。
だからワタシは思うのです。
共産主義者って実は共産主義の理想なんか信じてはないのだと。
彼等はただこの理想をネタにして権力を得たいだけなのだと。
例えこの世に本物の共産主義国家が存在しても、そこが階級差別の一切ない労働者の天国であっても、そんな国に行ったら、一労働者として暮らすしかありません。
でも彼等はそれが絶対に嫌だから、日本で革命を起こし自分が独裁者になりたいのです。
だから絶対に日本から出て行かないのです。
こういう連中を支持しているのは、政治を日常生活や隣人への不満のはけ口にしている連中でしょう?
だから彼等はひたすら現政権や現体制、そして日本にヘイトスピーチを行う連中に喝采するのです。
非現実的な権勢欲に燃えて、国家転覆を企てる連中と、それを支持するタダひたすら不満と憎悪だけで生きている連中。
これじゃジリ貧になるのは当然でしょう?
でも同類は隣国にも沢山います。
10月18日、韓国の親北朝鮮派の学生達が、ソウルのアメリカ大使公邸に乱入して逮捕されるという事件がありました。
すると逮捕された学生の仲間達は、逮捕令状を棄却し逮捕された学生達が中間試験を受けられるように、要求したのでした。
なんかもう笑ってしまいました。
君達は北朝鮮が大好きなんだろう?
だったら中間試験がどうたら言ってないで、さっさと北朝鮮にいけばよいじゃないか?
君達は学歴差別や失業のない世界が理想なんだろう?
だったら中間試験の心配なんかしてないで、留置所から出たらさっさと北朝鮮に行ったら?
でも連中も絶対に北朝鮮に行く気はないんですよね?
北朝鮮には絶対行きたくない。
韓国で学歴にしがみついて生きていきたい。
でもヤッパリ、それだと自分より学歴の高いやつにバカにされて面白くないから、アメリカ大使館に乱入騒ぎなんか起こしているんですよね?