朝早く出かけてなかなか帰って来ないのです。
二時間程も帰らないとわたしも心配になって探しに行きます。 よもさんの首には猫探知機、つまり電波発信機が着いているので、その受信機を持って出かけるのです。
それで暫く探すと・・・・・・・。
いました。
ご近所のお宅のベランダに居ました。
よもさん!! 何してるの?
??
よもさん!! よもさん!!
煩いわねえ・・・・。
よもさん!! 何しているの!!
早くいらっしゃい!!
煩いわね!!
ご近所迷惑よ!!
な、何がご近所迷惑よ?!
よもさんが帰って来ないから、わたしは心配で心配で、近所中探し回ったのよ!!
何でそんな余計な心配するのよ?
だってよもさんに何かあったらどうするの?
何かって何?
例えば韓流黒猫に強姦されるとか、三味線屋に捕まるとか・・・・。
韓流黒猫なんてとうの昔に白様が始末なさったわ。
それに今時の三味線屋は国内で猫を捕まえたりしないわ。 きっと猫の皮は中国から輸入するのよ。
そ、そんなこと言っても、悪い猫や悪い猫はいるわ。
だから早く帰りましょうよ。
それでもこの日はよもさんも大人しく言う事を聞いて、ワタシと一緒に帰宅したのです。
しかし翌日また、夏日でした。
そしてまたよもさんは朝から行方不明です。
わたしはまたよもさんを探し回りました。
わたしはまたよもさんがあのベランダへ行ったのだと目星を付けて、行ってみました。
すると見事に猫探知機が反応します。
しかしよもさんの姿は見えません。
よもさ~~!! よもさ~~!!
何処にいるの?
・・・・・。
よもさ~~ん!! よもさ~~!!
また、近所迷惑やってるんだから・・・・。
よもさんは今度はベランダの下に潜り込んで、ワタシが呼んでも出てこないのです。
ワタシは諦めて帰りました。
しかしそれからまた一時間余り経った後で、もう一度探しに行くと、よもさんは今度はお隣の玄関先に移動していました。
よもさん!!
Zzzzz・・・・。
よもさん!!
煩いわねえ・・・・。
何でさっきは呼んでも来なかったのよ。
同居人があんまり煩くて近所迷惑だからよ。
そ、そんなこと!!
大体わたしがよもさんの事をどれだけ心配しているか、よもさんはわかってるの?
だったら聞くけど、同居人はそういう同居人の拘束をワタシがどんなに煩わしく思っているか、同居人はわかっているの?
だって・・・・。
大体さあ、ワタシの首に電波発信機なんか付けて、ワタシの行動を監視して、ワタシのプライバシー権を侵害しているのよ。
こんなに完全に猫権侵害よ!!
そんなこと言っても、それがないとよもさん探すの大変なのよ。
よもさんはわたしが幾ら呼んでも、その気がないと絶対出て来ないじゃない!!
今朝だってそうでしょう?
だから何?
ワタシにはワタシの猫権と言う物があるわ。
わたしは頭に来てよもさんを捕まえて、家に閉じ込めました。
そして散歩に出ました。
ったくもう・・・・。
何が心配よ。
だったら同居人がフラフラ出歩いている間、ワタシは同居人の事を心配していないとでも思っているのだろうか?
去年の9月には自転車で転んで骨折して入院したのよ。 同居人が帰ってくるまでワタシがどれほど心配した事か・・・・。
どれ程悲しく心細い思いをしたことか・・・・。
面倒を見てくれる妹さんに対してどれ程申し訳なく、肩身の狭い思いをした事か・・・・・。
それなのに同居人は相変わらず自転車でフラフラ出歩くのよ。
せめて同居人に電波発信機を付けるぐらいの事はして良いと思うわ。
ところが同居人は自分は電波発信機を付けるどころか、GPS携帯も持たないのよ。
こんなの許せないわ。
そしてまたこの翌日も素晴らしい快晴の夏日だったのですが、するとよもさんは・・・・・。
よもさ~~!! よもさ~~!!
わたしは必死で近所を探し回りました。 この前いたベランダでは電波発信機は反応しませんでした。
しかし暫くするとその少し先の豪邸の近くで反応しました。
その豪邸の庭を覗くと・・・・・。
イヤだわ…・また同居人が近所迷惑やってる。
よもさ~~ん!!
アッ!! そこね!!
まあ、イヤだ。 見つかったわ。
よもさん、何してるの? 出てきなさい!!
イヤよ!!
何で?
同居人が来ると貧乏の臭いがするのよ。
ワタシがせっかく少しリッチな気分になっているのに、何で邪魔するのよ。
そんなこと言っても他人様のお庭でリッチな気分なんて言ってもダメよ。
あら、このお宅の奥様は優しくて猫がお好きなのよ。 いつ来てもワタシを可愛がって下さるわ。
可愛い猫は何処へ行っても歓迎されるのよ。
これは猫特権ではなく、基本的猫権よ。
よもさんはこう言って絶対に出てきませんでした。
お庭には美しく躑躅が咲いていました。
よもさんはわたしを無視して躑躅を鑑賞しながら、リッチな気分を味わい続けたのです。
皆様、おわかりですね。
これが猫の本性であり、飼い主の愛情へのお返しなのです。